中古でアパートやマンションを買った大家さんから「建物の耐用年数は何年で計算すればいい?」という質問をよく受けます。中古物件は新築の法定耐用年数より短い年数で減価償却できるのが大きなポイントです。
耐用年数を短くできれば毎年の減価償却費(=建物の購入代金を、使う年数に分けて費用にする仕組み)が増え、所得税や法人税を抑えられます。
この記事では中古物件の耐用年数の決め方を、計算式・具体的な計算例・リフォーム時の注意点まで、不動産業を専門とする税理士がわかりやすく解説します。
この記事を読むとできるようになること
- 中古物件の耐用年数を、自分で簡便法で計算できるようになる
- 木造・鉄骨・RC造など、物件タイプごとに正しい年数を選べるようになる
- 築年数を当てはめるだけで、毎年の減価償却費の目安をつかめるようになる
- リフォーム後でも、簡便法が使えるかどうかを自分で判断できるようになる
中古物件の耐用年数は「簡便法」で短くできる【結論】
中古物件の耐用年数は、原則として「簡便法」という簡単な計算式を使い、新築より短く設定できます。
新築の建物には構造ごとに「法定耐用年数」(=税法で決められた標準の使用年数)があります。しかし中古物件は買った時点ですでに何年も使われているため、残りの使える期間はその分短いと考えます。そこで法定耐用年数をそのまま使わず、中古向けの短い年数に置き換えられます。
簡便法の2つの計算式
- 法定耐用年数を全部過ぎた中古:法定耐用年数 × 20%
- 法定耐用年数を一部だけ過ぎた中古:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
そもそも中古物件の耐用年数とは?減価償却との関係
耐用年数とは、建物の取得価額を減価償却費として配分していく期間のことです。まず用語を整理します。
- 耐用年数
-
建物などの資産を、何年かけて経費(減価償却費)にするかを示す年数。
- 法定耐用年数
-
税法(耐用年数省令)で構造ごとに決められた、新築の標準的な耐用年数。
- 簡便法
-
中古資産の使用可能期間を見積もるのが難しいときに使える、決められた計算式。
- 減価償却費
-
建物の取得価額を耐用年数にわたって少しずつ費用にする会計処理。
中古資産は本来、取得後に実際に使える年数(使用可能期間)を見積もって耐用年数とします。ただしその見積もりは難しいため、国税庁は代わりに簡便法で計算してよいと認めています。
建物構造別の法定耐用年数の一覧表
中古の計算を始める前に、まず新築だった場合の法定耐用年数を構造ごとに確認します。
主な構造ごとの住宅用の法定耐用年数は次のとおりです。
| 構造 | 法定耐用年数(住宅用) |
|---|---|
| 木造・合成樹脂造 | 22年 |
| 木造モルタル造 | 20年 |
| 鉄骨造(骨格材3mm以下) | 19年 |
| 鉄骨造(3mm超4mm以下) | 27年 |
| 鉄骨造(4mm超) | 34年 |
| 鉄筋コンクリート造(RC・SRC) | 47年 |
これらは「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められた住宅用の法定耐用年数です。
一方、建物を事務所や店舗として使う場合は、住宅用と法定耐用年数が異なります。
主な構造の事務所用・店舗用の法定耐用年数は次のとおりです。
| 構造 | 事務所用 | 店舗用 |
|---|---|---|
| 木造・合成樹脂造 | 24年 | 22年 |
| 木造モルタル造 | 22年 | 20年 |
| 鉄骨造(骨格材3mm以下) | 22年 | 19年 |
| 鉄骨造(3mm超4mm以下) | 30年 | 27年 |
| 鉄骨造(4mm超) | 38年 | 34年 |
| 鉄筋コンクリート造(RC・SRC) | 50年 | 39年 |
法定耐用年数は「その建物が実際に何に使われるか」で決まります。
住宅として貸すアパート・マンションは住宅用、テナントに店舗として貸す物件は店舗用、自分の事務所として使う建物は事務所用の法定耐用年数を使います。
鉄骨造の「骨格材の肉厚」の調べ方
- 設計図書(構造図)や建築確認申請書の構造欄で確認できる
- 売買契約書・重要事項説明書の「建物の構造」欄にも記載があることが多い
- 登記簿(登記事項証明書)は「鉄骨造」までで、肉厚まで載らないことがある
- わからないときは施工会社・ハウスメーカー・管理会社に確認するのが確実
中古物件の耐用年数の計算方法【簡便法の2つの式】
簡便法の計算は、法定耐用年数を「全部過ぎているか」「一部だけ過ぎているか」の2パターンに分けて考えます。
① 法定耐用年数を全部過ぎた中古物件
築年数が法定耐用年数を超えている場合は 法定耐用年数 × 20% で計算します。例えば木造(22年)なら 22年 × 20% = 4.4年 → 4年 です。
② 法定耐用年数を一部だけ過ぎた中古物件
まだ法定耐用年数が残っている場合は (法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20% で計算します。
端数処理のルール
- 計算結果に1年未満の端数があるときは切り捨てる
- 計算結果が2年未満になるときは2年とする
- 経過年数は「新築されてから取得するまで」の期間で数える
減価償却の計算の基本は固定資産を取得した時の減価償却の記事でも解説しています。
中古物件の耐用年数の計算例
実際に数字を入れて計算します。代表的な5つのケースで見てみましょう。
| 物件(法定耐用年数) | 築年数 | 計算式 | 耐用年数 |
|---|---|---|---|
| 木造アパート(22年) | 築15年 | (22−15)+15×20%=7+3 | 10年 |
| 木造アパート(22年) | 築25年 | 22×20%=4.4 | 4年 |
| RCマンション(47年) | 築20年 | (47−20)+20×20%=27+4 | 31年 |
| 木造事務所(24年) | 築12年 | (24−12)+12×20%=12+2.4 | 14年 |
| RC店舗(39年) | 築15年 | (39−15)+15×20%=24+3 | 27年 |
国税庁も、法定耐用年数30年・経過10年の中古資産について「(30−10)+10×20%=22年」という計算例を示しています。築15年の木造アパートなら 22年→10年と耐用年数が短くなり、毎年の減価償却費を大きくできる わけです。
リフォーム(資本的支出)をした中古物件の耐用年数の注意点
取得後に大規模なリフォームをすると 簡便法が使えなくなる場合がある ので注意が必要です。ここでのリフォーム費用は、価値を高める「資本的支出」(=修繕費ではなく資産に上乗せする支出)を指します。
資本的支出の金額による3つの分かれ道
- 取得価額の50%以下:簡便法をそのまま使える
- 取得価額の50%超〜再取得価額の50%以下:簡便法は使えず特別な見積計算を行う
- 再取得価額(同じ新品を買う価格)の 50%超:簡便法は使えず法定耐用年数で計算する
「特別な見積計算」の計算式(取得価額の50%超〜再取得価額の50%以下のとき)
見積耐用年数 =(取得価額 + 資本的支出)÷ {(取得価額 ÷ 簡便法による耐用年数)+(資本的支出 ÷ 法定耐用年数)}
計算結果の端数は切り捨て、2年未満は2年とする点は簡便法と同じです。
再取得価額とは、その中古物件と同じものを新品で買った場合の価格です。リフォームが大規模になるほど「新品に近い」とみなされ、短い耐用年数が認められにくくなる、というイメージです。
中古物件の耐用年数でよくある間違い・注意点
最後に、税務調査で指摘されやすい3つの間違いを確認します。
間違えやすいポイント
- 土地には耐用年数がない。減価償却できるのは建物・設備などだけ
- 簡便法は事業に使い始めた年度にしか選べず、後から変更できない
- 建物本体と建物附属設備(給排水・電気など)は、本来は分けて償却する
中古物件を取得してから減価償却するまでの手順
ここまでの流れを、実際の作業手順として整理します。
登記簿や売買契約書で、木造・鉄骨・RCなどの構造と、住宅用・事務所用・店舗用などの用途を確認し、法定耐用年数を調べる。
新築年月から取得時までの年数を数える(1年未満の月数も後で使う)。
取得後に行った大規模リフォーム(資本的支出)が取得価額の50%を超えると簡便法は使えない。超えなければ簡便法で計算し、超える場合は特別な見積計算または法定耐用年数で計算する。
簡便法が使える場合は、全部経過なら「法定耐用年数×20%」、一部経過なら「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」で計算する。使えない場合は特別な見積計算または法定耐用年数による。端数は切り捨て、2年未満は2年。
求めた耐用年数に対応する償却率(定額法など)で1年分の減価償却費を計算する。
確定申告書や決算書に減価償却費として計上する。
まとめ|中古物件の耐用年数の考え方
この記事のまとめ
- 中古物件は簡便法で 新築の法定耐用年数より短く できる
- 全部経過は「法定×20%」、一部経過は「(法定−経過)+経過×20%」
- 端数は切り捨て、2年未満は2年
- 大規模リフォーム(資本的支出)があると簡便法が使えないことがある
耐用年数を短くできれば減価償却費が増え、節税につながります。ただし構造の判定やリフォームの扱いは個別性が高いため、迷う場合は、税理士にご相談ください。減価償却の基本は個人事業主の減価償却や固定資産取得時の減価償却の記事もあわせてご覧ください。
中古物件の耐用年数に関するよくある質問
- 中古物件の耐用年数は最短で何年になりますか?
-
簡便法でも下限は2年です。例えば住宅用の木造で法定耐用年数(22年)を全部過ぎた物件は、22年×20%=4.4年→4年になります。
- 中古マンション(RC造)の耐用年数は何年ですか?
-
居住用マンション(住宅用)の新築の法定耐用年数は47年です。築20年なら(47−20)+20×20%=31年が簡便法での耐用年数になります。ただし同じRC造でも用途で法定耐用年数は変わり、事務所用は50年・店舗用は39年なので、その分だけ中古の耐用年数も変わります。
- 土地にも耐用年数はありますか?
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ありません。土地は時間が経っても価値が減らないと考えるため、減価償却できるのは建物や設備などに限られます。
- リフォーム費用が高いと耐用年数はどうなりますか?
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資本的支出が中古物件の取得価額の50%を超えると簡便法は使えず、特別な計算や法定耐用年数で計算します。


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