建物・建物付属設備・構築物の税金上の違い




この記事の対象者
  1. 税法上の建物・建物附属設備・構築物の違いを知りたい人
  2. 建物から建物附属設備・構築物を分けて節税をはかりたい人




勘定科目を分けると経費が多く計上できる

不動産投資を行うと、入居率、利回り、返済方法などに焦点が当てられがちですが、税務上の減価償却にも気を遣えば、だいぶ楽に不動産投資で手元にお金が残ることになります。

よく、賃貸用に土地と建物を一括で購入した時に土地と建物勘定のみの分離を行い、建物付属設備や構築物の勘定を使用しない方がいます。

税法上はそれでも間違いではありませんが、建物の耐用年数より建物附属設備や構築物の耐用年数の方が短いので、減価償却を通して経費に計上できる金額は、その取得した不動産を建物・建物附属設備・構築物のどれに該当するかを細かく分けて判定した方が多くなります。

例えば、鉄筋コンクリート造りの建物の耐用年数は47年ですが、電気設備・給排水設備であれば建物附属設備になり耐用年数は15年です。

つまり、3倍の速さで減価償却を行うことができるので、経費に計上できる金額も建物より建物付属設備に振り分けた方が3倍多くなります。

中古不動産の購入時や土地の上に新しく建物を建てる時にきちんと工事見積書を入手できれば、その詳細な中身を検討することにより、建物勘定、建物付属設備勘定、構築物勘定への振り分けができ、不動産投資が非常に楽になります。

今回は工事見積書等の詳細なデータを入手できたとして、税法上の建物・建物附属設備・構築物とはどんなものなのかを検討していくことにしましょう。

一般的な建物・建物附属設備・構築物と税法上の建物・建物附属設備・構築物は少しずれるところがあるので、必ず税法上の定義を理解した上で区分することをおすすめします。

建物とは

建物とは相当な期間存在することを前提に土地の上に建てられた工作物で、屋根・壁・柱から構成される工作物です。

主に、賃貸目的で使用されるアパートやマンション・事務所・店舗・工場・倉庫などがあります。

それぞれの耐用年数については、「耐用年数省令別表第一」の建物に記載されています。

なお、税法や税法に関係がある法令では建物を以下のように定義しています。

建物は防水、床、外装、窓及び構造体の部分からなるもの。防水、床、外装、窓及び構造体の部分のうちいずれが欠けても建物とならない。

固定資産の耐用年数の算定方式(昭和26年大蔵省主税局)

建物とは、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう。

不動産登記事務取扱手続準則122条

建物附属設備とは

建物附属設備とは建物に付属して機能する工作物をいいます。

具体的に例を挙げると以下の通りです。

耐用年数については、「耐用年数省令別表第一」の建物附属設備に記載されています。

  1. 照明等に係る電気設備
  2. 給排水設備
  3. ガス設備
  4. 冷暖房などの空調設備
  5. エレベーターなどの昇降機設備
  6. 消火・排煙設備、火災報知器、格納式避難設備
  7. 内装工事費用(居住用⇒事務所用に改装など)

構築物とは

構築物とは土地の上に建てられた建物以外の工作物や建物に付属しないで機能する設備のことです。

具体例を挙げると以下の通りになります。

耐用年数については、「耐用年数省令別表第一」の構築物に記載されています。

  1. 防壁
  2. 貯水用タンク
  3. アンテナ
  4. 青空駐車場の舗装路面
  5. アスファルト敷の舗装道路

まとめ

考え方としてはまずは上記の定義に当てはめて、建物・建物附属設備・構築物の区分けを検討することになります。

なお、減価償却の方法として定率法を採用すると、固定資産を取得した初期時点で、定額法より多くの経費を計上できたのですが、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備および構築物から定率法を利用することができなくなり、減価償却方法は定額法で一本化されてしまいました。

建物の減価償却方法は従来から定額法のみだったので変わりませんが、建物から建物附属設備・構築物を区分けして減価償却費を多く計上するというメリットが少し薄れてしまいました。

それでも、建物と建物附属設備・構築物の間には耐用年数の大きな違いがあるため、少しでも建物附属設備・構築物に取得価額を振り分けられた方が経費の計上が有利になることは変わりませんので、可能ならば区分すべきだと考えられます。