
- ユニットバスの交換工事が資本的支出か修繕費か知りたい人
- ユニットバスの交換工事の勘定科目について知りたい人
- 既存の浴槽を除却した時に少しでも経費を多く計上したい人
浴槽交換工事は修繕費又は資本的支出?
不動産賃貸業を営んでいると、賃借人の退去時に畳の交換やクロスの張り替え工事とともに浴室交換工事が行われることがあります。
浴室交換工事を行う場合、その工事代金は修繕費として経費に計上される場合と資本的支出になり固定資産に計上される場合があります。
業者からもらう見積書の中の工事明細を確認し、また実際に完成した浴室を見ながら、修繕費として経費に計上される部分と資本的支出として固定資産に計上される部分に区分けしていくことになります。
なお、資本的支出として固定資産に計上される部分は次のいずれかに該当する部分であり、それ以外は修繕費として経費に計上されます。
- 当初予測された使用可能期間を延長させる支出
- 固定資産の取得時の価額を増加させる支出
固定資産に計上される部分は、建物に該当する部分、建物付属設備に該当する部分、器具備品に該当する部分に分けられ、シャワーや浴槽等それぞれの耐用年数で減価償却を行い、徐々に固定資産を取り崩して、経費に計上していくことになります。
ユニットバスとは?
ユニットバスとは、工場で予め防水性の高い素材を用いて天井・浴槽・床・壁を制作しておき、現場に制作済みの材料を搬入して、組み立てることによって完成する浴室のことです。
従来のタイルを一枚ずつ貼っていく工法に比べて、短時間で施工が可能であり、さらに水漏れもしにくいというメリットがあります。
ユニットバスへの交換工事の固定資産計上について
ユニットバスへの交換工事は建物の一部分の①取壊し・廃棄と②新設が同時に行われるので、浴室を新設したことによって建物の価値が高まり、また耐久性を増すことにも繋がります。
よって、ユニットバスへの交換工事は、資本的支出として固定資産に計上されることになります。
ユニットバスの交換工事の勘定科目は?
ユニットバスの交換工事が固定資産に計上されることは分かりましたが、具体的な勘定科目は建物・建物附属設備・器具備品のどれになるのでしょうか?
まず、ユニットバスは建物と一体・不可分であり、取り外しが可能な器具備品には当たりません。
次に、ユニットバスが給排水設備に該当すれば建物付属設備に当たりますが、ユニットバスと建物を繋いでいる先が給排水設備であって、ユニットバス自体は給排水設備に当たりません。
よって、ユニットバスは、全体を1つの単位として償却することになり、建物勘定に計上されることになります。
浴室の解体工事は経費に計上できます
ユニットバスへの交換工事が建物勘定に該当することが分かりました。
すると、浴室の解体工事をした場合の浴室部分の未償却残高(建物勘定で処理されている既存浴室の残存価額)はどうなるのでしょうか?
結論から先に言うと、固定資産除却損として経費に計上することが可能です。
通常、建物を最初に建てた時は建物勘定一本で仕訳をしており、浴室の部分の価額を建物価額と分離して個別に計上していることはないです。
そこで、浴室部分の未償却残高を把握するためには、建物を建てた当初の見積書を見て、建物全体に対する浴室部分の価額を把握して、現状の建物の帳簿価額(取得価額―各年度の減価償却額の合計)を按分して、浴室の未償却残高(=固定資産除却損)を計算することになります。
建物を建てた当初の見積書がない場合は、建物の取得価額と総床面積をもとに1平方メートル当たりの建築単価を計算して、これに浴室部分の床面積を掛けて算定した金額を取り壊した部分に対応する取得価額として、取壊し直前の浴室部分の未償却残額(=固定資産除却損)を計算します。
なお、ユニットバスの交換工事をするときに、既存の浴室の撤去にかかった費用を業者からもらう見積書で把握することができます。
この撤去費用は既存の浴室を撤去するための費用であり、ユニットバスを導入するためのものではないので、当然経費に計上することができます。
ユニットバスへの交換工事の場合、既存の浴室の撤去費用は経費に計上でき、少しだけ経費を増やせる可能性があるのに、見積書の中身をあまり確認せず、すべてを固定資産(建物)に計上している人が結構多いので注意しましょう。