会社で不動産賃貸業(大家業)を行う場合の経理・税務マニュアル




<このページの趣旨>
  • 不動産管理会社を利用して不動産賃貸業(大家業)を行っている人又は行おうとしている人向けに公認会計士・税理士として業務経験10年、不動産投資を始めて5年の筆者が自身の経験も含めて作成する経理・税務マニュアルです。
  • 不動産管理会社で不動産賃貸業(大家業)をしていて分からないこと、不効率になっていること、知らないで損していることをなくすために不動産賃貸業(大家業)で必要になる経理・税務知識を伝えていきたいです。
  • 特に、税理士や記帳代行会社に経理・税務業務を任せきりになっている人には是非読んでもらいたいです。
  • 経理のプロとして知っていることを出し惜しみせずに書いた結果、分量的には1冊の本ぐらいあります。良かったら「お気に入り登録」を利用して頂き、少しずつ読み進めたり、辞書がわりに使用して頂けると幸いです。

不動産賃貸業で利用できる不動産管理会社の種類

投資用不動産を購入していき個人事業主としてある程度規模が大きくなった場合やマンションを一棟買いしたり、相続により最初から多くの投資用不動産を所有する場合には、節税・業務リスク回避・相続対策のために不動産管理会社の設立を検討することになります。

不動産管理会社設立の目安金額については、「不動産管理会社を設立した方がお得?個人事業主の会社設立の本当の目安金額!」にまとめましたのでそちらをご覧ください。

実際に不動産管理会社を設立すると不動産管理業務を会社で行うことになりますが、会社と所有者(=個人事業主)との関係で不動産管理会社の形態は①管理委託方式、②一括転貸方式(サブリース方式)、③会社保有方式の3つに分かれます。

どれを選択するかはあなた次第ですが、不動産管理会社としての組織体制・管理体制が図れなければ、そもそも不動産管理会社を利用しての節税自体が否認されますし、一度選択すると後で変えるのは非常に困難になりますので、将来的に相続が発生する可能性があれば必ず考慮にいれて会社形態を判断すべきです。

管理委託方式

不動産管理会社を設立し、個人事業主から会社に物件清掃や家賃集金などの管理業務を委託する方式です。

会社が行った管理業務の対価分だけ会社の売上高になり、その分、個人事業主は管理業務の委託費用を払っているので、費用が膨らみ利益を圧縮できます。

個人事業主の税金は累進税率なので、稼げば稼ぐほど税率が上がりますが、会社の税金は一定税率なので、会社と個人事業主で所得を分散すれば税率が低い方を選択できるようになり節税に繋がります

さらに、会社から個人事業主に給料を払えば、個人事業主側では、所得税法上の給与所得に該当するため、給与所得控除が利用でき、最低でも65万円の控除(65万円の経費増加とほぼ同じ)を受けられるため節税に繋がります

注意点としては、会社できちんと管理業務を行っていることを証跡として残すことと、委託費用や給料を社会常識の範囲に抑えることです。実態のない取引又は一般的な取引と著しく異なる特殊な取引だと判断されれば、当然税務上否認されます。

一括転貸方式(サブリース方式)

不動産管理会社を設立して、会社が個人事業主が所有している賃貸用の部屋を一括して借り上げる方式です。

不動産管理会社側では、個人事業主から借り上げた部屋を一般の賃借人に賃貸し売上高を計上し、個人事業主に支払う賃料を経費に計上します。個人事業主側では、一括借り上げの際に、不動産管理会社から支払われた賃料を不動産所得の収入に計上することになります。

不動産管理会社の売上高から経費を差し引いた額が管理業務に対する対価ということになり、この対価分だけ個人事業主から不動産管理会社に利益の付け替えができたことになります。

つまり、会社と個人事業主で所得を分散できるので、所得税と法人税の税率の差による節税対策ができることになります。

さらに、会社から個人事業主に給料を払えば、個人事業主側では、所得税法上の給与所得に該当するため、給与所得控除が利用でき、最低でも65万円の控除(65万円の経費増加とほぼ同じ)を受けられるため節税に繋がります

注意点としては、管理委託方式と同じで、会社できちんと管理業務を行っていることを証跡として残すことと、委託費用や給料を社会常識の範囲に抑えることです。実態のない取引又は一般的な取引と著しく異なる特殊な取引だと判断されれば、当然税務上否認されます。

会社所有方式

個人事業主が所有している不動産を不動産管理会社に売却して、不動産管理会社で所有権自体を取得する方式です。

パターンとしては、①土地のみを売却する方法、②建物のみを売却する方法、③土地・建物の両方を売却する方法の3パターンがあります。

所有権が法人に移動するため、不動産賃貸の収入・支出ともに不動産管理会社に帰属し、構造的にはシンプルになります。

会社から個人事業主に給料を払えば、個人事業主側では、所得税法上の給与所得に該当するため、給与所得控除が利用でき、最低でも65万円の控除(65万円の経費増加とほぼ同じ)を受けられるため節税に繋がります

注意点としては、①個人事業主から不動産管理会社に不動産を売却するときの価額は時価にしなければならないという点と②2つ以上の不動産を不動産管理会社に集約してしまうと相続時に分けられなくなるという点です。

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不動産賃貸業を行う不動産管理会社にかかる税金の種類

不動産賃貸業を行う不動産管理会社にかかる税金の種類を確認しましょう。なお、社会保険料は厳密には税金ではありませんが、実質的に税金と全く変わらないので、一緒に議論していきます。

不動産賃貸業を行う不動産管理会社の経理・税務の最終ゴールは、①法人税法などの税法に則ってきちんとした節税対策を行い、②作業を効率化することで、なるべく経理・税務業務に係る作業量を減らして、尚且つ、③正確な税額を計算して納付することです。上記の最終ゴールを見据えるために、まずは税金の種類を知ることが大切になります。

税金の種類 内容
法人税
事業年度終了の日の翌日から2か月以内に税務署に申告する税金です。期中の取引記録に基づき、期末日後に法人税の申告書を作成します。
住民税
事業年度終了の日の翌日から2か月以内に地方自治体に申告する税金です。期中の取引記録に基づき、期末日後に住民税の申告書を作成します。
事業税
事業年度終了の日の翌日から2か月以内に地方自治体に申告する税金です。期中の取引記録に基づき、期末日後に事業税の申告書を作成します。
事業税の申告書は住民税の申告書と一体となっており、地方自治体に提出することになります。
消費税
2年前の売上高が1,000万円超である場合、又は資本金が1,000万円以上ある場合などは、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に消費税の申告義務があります。
固定資産税
土地・建物に対する固定資産税と償却資産(例:事業用のエアコンや道路の舗装)に対する固定資産税があります。
土地・建物に対する固定資産税は勝手に計算されますが、償却資産に対する固定資産税は1月末までに地方自治体に申告しなければなりません
労働保険
「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」を作成し、6月1日から7月10日までの間に所轄都道府県労働局及び労働基準監督署に提出します。
厚生年金・健康保険
「算定基礎届」が送られてくるので、それを7月10日までに郵送で事務センター又は管轄の年金事務所に提出します。

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会社規模と税金の関係

不動産管理会社の規模が大きくなるほど追加で払う税金の納付額は多くなります

税金の納付額に関係がある会社の規模を示す指標としては①売上高・②資本金・③固定資産がありますので、以下で見ていきましょう。

売上高と税金の関係

消費税課税事業者になる売上高1,000万円超基準と消費税の簡易課税制度が利用できなくなる売上高5,000万円超基準を覚えておきましょう。

まずは、消費税課税事業者になる売上高1,000万円超基準ですが、不動産管理会社の予想売上高が1,000万円超ぎりぎりになりそうな場合は回避したいところです。消費税の課税事業者になると、関与する税法が1つ増える分、税務上の論点が多くなるので、経理・税務の事務処理が煩雑になるためです。

次に、消費税の簡易課税制度が利用できなくなる売上高5,000万円超基準ですが、こちらも不動産管理会社の予想売上高が5,000万円超ぎりぎりになりそうな場合は回避したいところです。不動産管理会社の場合、消費税の簡易課税よりも原則課税の方が基本的に納税額が少なくなることが多いのですが、場合によっては簡易課税の方が納税額が少なるケースもあり、事務処理の煩雑さも考慮して、消費税の簡易課税の選択肢も残しておきたいためです。

なお、不動産管理会社の形態が会社所有方式の場合は、建物の取得があるため、消費税の還付を受けられる場合があります。よって、売上高の規模によらず、消費税の計算で原則処理を採用したのなら、消費税の還付や消費税の納付額の減額が発生しないかをチェックする必要があります

最後に、ここでの売上高とは、「課税売上高」のことを指しています。一括転貸方式(サブリース方式)や会社所有方式での住居の貸付けにかかる売上高は「課税売上高」に含まれないことに注意してください(事務所等の売上高は課税売上高に含まれます)。

資本金と税金の関係

資本金は1億円超かどうかで不動産管理会社が支払う納税額は大きく変わってきます。

資本金が1億円超の場合、①法人税の交際費が制限され、②法人税の軽減税率が利用できなくなり、③事業税の外形標準課税がかかってくることになります。

よって、資本金を1億円超に設定する場合は慎重な判断が必要になります

資本金1億円超というとかなり規模の大きな会社というイメージがありますが、役員が会社に貸付けを行っている場合は要注意です。役員の会社に対する貸付金は相続財産の対象になるため、資本金に振り替える処理を行うことがあります。長年役員から会社に対して貸付けを行っている場合には、資本金1億超を超えてしまうことがありますので注意が必要です。

資本金に関する論点では、他にも資本金1,000万円超の場合があります。しかし、この場合は多少不動産管理会社が支払う納税額は多くなりますが、影響はそこまで大きくありません。法人住民税の均等割が10万円程度増えるぐらいです。

固定資産と税金の関係

不動産管理会社の形態を管理委託方式・一括転貸方式(サブリース方式)・会社所有方式のどれにしているかで個人事業主に納付義務があるか不動産管理会社に納付義務があるかは異なりますが、固定資産を所有している場合、固定資産税がかかります

固定資産の例としては、土地・建物・構築物・器具備品があります。

不動産管理会社又は不動産を所有している個人事業主では、土地、建物、駐車場経営をする場合のコンクリート舗装費用(構築物)、部屋についているエアコン(器具備品)などが該当します。

土地・建物を所有している場合には、固定資産税がかかることは認知されていますが、実はコンクリート舗装費用、エアコン設置などにも固定資産税(償却資産税)がかかりますので注意してください。

会社を取り巻く経理・税務の外部業者とその利用方法

個人事業主が、経理・税務の専門知識なしに自分で記帳(仕訳を行うこと)をして、確定申告書まで作成することはそれほど難しい作業ではありません。

会計ソフトの進歩や所得税の申告書を作成してくれるシステムが非常に進歩したので、専門知識なしでもソフトの指示に従っていればある程度の申告書はできてしまいます。

しかし、会社形態の場合、経理・税務の専門知識なしに記帳を行い、法人税等の確定申告書を作成することは非常に困難になります。理由は以下の2つです。

<会社形態の場合専門知識なしに記帳・確定申告書を作成することが困難な2つの理由>

非定型的な業務に対する仕訳が出てくるため
会社形態を選択できるぐらい不動産管理会社が行う事業規模が大きくなると定型的な業務に対する仕訳以外に、非定型的な業務に対する仕訳が出てきますので、仕訳時の判断が非常に難しくなります
例えば、節税対策を行うために生命保険に加入する場合、きちんとした知識の元に取引を把握し、仕訳を行なわなければ、税務上否認される可能性があります
法人税の申告書の作成は税務知識がないと非常に難しいため
個人事業主にかかる税金は所得税が適用されますが、会社にかかる税金には法人税が適用されます
所得税に関する申告書は、小規模事業を行う個人事業主が作成するための申告書なのでそこまで複雑にできていませんが、法人税に関する申告書は大規模事業を行う会社の申告書なので、税務署も容赦がなく、非常に複雑です。
特に別表4や別表5などの納税額に直接関係してくる法人税の申告書の記載方法は非常に難解であり、税理士でも苦戦するほどです。

以上のことを考慮に入れると、会社の経理・税務作業は職人作業になるため、専門知識を持っている人を関わらせた方が良いということになります。

不動産賃貸業を営む不動産管理会社が利用できる経理・税務の専門知識を持っている外注先には記帳代行会社税理士事務所があります。

記帳代行会社とは不動産管理会社の定型的な仕訳をあなたの代わりに記帳をしてくれる会社です。それに対して税理士事務所は記帳代行会社の業務プラス非定型的な取引に対する仕訳の相談、税務書類の作成、申告の代理ができます

税理士事務所が税務業務のすべてを担当できるのに対して、記帳代行会社は税務に関係しない経理業務の一部を取り出して専門に行っている会社というイメージで良いでしょう。

もし、あなたが記帳代行会社を利用するのか税理士事務所を利用するのかを迷った場合には以下のメリット・デメリットを比較して検討していくことになるでしょう。

税理士事務所のメリット
  • 不動産管理会社で取引記録(契約書・見積書・請求書・納品書・入出金記録)さえ用意できれば、税理士事務所で記帳から税務申告書の作成までワンストップで行うことができる
  • 税理士として責任を負うので、正確な記帳が行われる可能性が記帳代行会社より高い
税理士事務所のデメリット
  • 税理士として正しい税務申告書を作成する責任を負うため、記帳代行会社より値段設定が高くなる
  • 不動産管理会社から報酬を貰っていますが、税理士法にも従わなくてはならないため、必ずしも不動産管理会社側の要望に従えない時がある
記帳代行会社のメリット
  • とにかく安い
記帳代行会社のデメリット
  • 税務申告書の作成ができないので、不動産管理会社が自分で申告書を作成するか税理士にさらに外注しないといけない
  • 定型外の仕訳に対する正確性に欠ける場合がある

記帳代行会社と税理士事務所のメリット、デメリットを記載しましたが、会社で利用できる外部業者を必ず利用しなければならない訳ではありません。会社の社内で経理・税務知識を持っている方がいれば、当然、外部業者を雇わないでも経理・税務作業は出来てしまいます。

よく税理士に作業を頼まないと税務調査が入り易くなると言われていますが、関係ないです。正確に申告書まで作成出来ている会社に税務調査が入っても追徴課税できなければ税務署側も入る意味が薄いでしょう。事実、税理士が絡んでなくても税務調査に入られにくい会社は存在しています。

大切なことは、不動産管理会社の経営者として、正確な記帳・申告作成業務を一番安く達成するためにはどうするか考えるべきです。

例えば、①社内に経理・税務知識が全くないので、税理士事務所にすべて外注する、②社内にある程度の経理・税務知識があるので、部分的に税理士事務所に相談する、③完全に社内だけで申告書まで作成する、④記帳代行会社を絡ませて単純作業だけを外部委託して、仕訳のチェック・申告作業は自製する等のあなたの会社が持っている経理・税務知識の程度でいろいろなバリエーションが考えられるでしょう。

経営者又は経理担当者として知っておきたい経理・税務知識のまとめ

不動産管理会社の経営を行う上で避けて通れない経理・税務業務は日々の業務の記帳(仕訳をすること)と事業年度が終了した後の法人税等の確定申告書の作成です。会社の場合、経理・税務業務を専門知識を持っている人(税理士や経理担当者)に任せることになりますが、経営者としても最低限の知識を持ち合わせていなければ、経営判断のミスや節税対策をとれないことに繋がります。

必要となる簿記・税務知識について

ここでは、不動産管理会社の①経営者、②社内の経理・税務の担当者の2つの場合に分けて、実務を行う上で最低限知っておいてほしい知識について説明していきます。

経営者に必要な簿記・税務知識について

不動産管理会社の経営者に必要な「簿記」の知識ですが、日商簿記3級程度の知識があれば十分でしょう。

現役の経営者ならば、日常業務の中で既存の仕事に必要な経理・税務の知識を得ていることも多いですが、簿記の体系をもう一度網羅的に確認すれば、節税に繋がる新しい発見をすることができる可能性があります

例えば、賃貸用不動産を新しく購入した時に、簿記の固定資産と経費の最低限の知識があれば、購入時の付随費用が固定資産になるか経費になるかが想像でき、売主との交渉次第では、税金の支払義務を遅らせることができる可能性があります。

経営者が必要になる「税務」の知識ですが、日常業務で経理担当者や税理士と話しあって聞いた知識程度で十分対応可能でしょう。

ただし、基本的に税理士が提案する節税対策はクリーンなものだけなので、ご自身でも節税対策を考える必要があるので、このホームページで出てくる節税対策の内容ぐらいは知っていると良いでしょう。

節税対策にもグレーゾーンが多く、たとえ合法でも、リスク管理のため税理士側からは提案したくないものもあります。経営者の側で提案をしてくれれば、リスクを説明の上議論ができるものもあるでしょう。

要は、税理士側では提案された節税対策が本当に大丈夫か検討することが多くなるので、経営者側でなにか思いついた時に積極的にお話頂けると議論がし易くなります

社内の経理担当者に必要な簿記・経理知識

社内の経理担当者に必要な簿記の知識ですが、日商簿記2級程度の知識があれば十分でしょう。日商簿記1級は上場企業で有価証券報告書を作成する人向けになります。通常の社内の経理担当者の簿記知識レベルは日商簿記2級程度で十分です。

社内の経理担当者が必要になる税務知識ですが、こちらは非常に多岐に渡ります。非常に長い記事になっていますが、この記事の内容を身につけていることが最低限の条件だと思います。私がこの記事を書いている目的も、少しでも多くの経理担当者に税務知識を届けたいというものです。

不動産管理会社の経理担当をする人(経営者が自分で経理担当をする場合も含む)は是非最後まで記事を読んでください

簿記の知識を身につけるための講座紹介

簿記の知識については、私が経営している別サイト「最速簿記」で学習できます。

特に日商簿記3級については無料で講義動画を配信していますので、是非ご覧ください。日商簿記2級講座は有料になりますが、日商簿記3級講座が良かったら購入して頂けるとありがたいです。

以下に、日商簿記3級講座のうち、不動産賃貸業を営む会社で必要になる章をまとめましたので、是非ご覧ください。

会社で必要になるシステムについて

ここでは、不動産管理会社で必要になるシステムを紹介します。経理システムはどの会社でも必須になりますが、他のシステムを所有するかは税理士等の専門家に業務を完全に任せてしまうか、会社で業務を行うかにより異なります。

なお、会社で業務を行う場合、システムを購入した方がどのシステムでも、ユーザーに便利なように自動記入システム(穴埋め形式で数字をいれていけば目的物が完成するイメージ)がついているので、利用した方が非常に効率的ですし、間違いも大幅に減るためお勧めします

例えば、申告書を作成するためには、税務システムを導入し、社員がいて、給与計算をしなければならない場合には給与システムを購入することを強くお勧めします。

それでは、一つずつ会社で必要になるシステムを見ていきましょう。

経理システム

経理システムとは、申告書の後ろにつける決算書(貸借対照表・損益計算表など)を作成するために取引を仕訳という形で記帳していくシステムなのですが、すべての会社で必ず用意する必要があるでしょう。

税理士事務所や記帳代行会社に記帳を任せているから、会計システム自体を所有してないという不動産管理会社が結構あります

自社で会計システムを所有していないということは、会計システムのデータを税理士事務所や記帳代行会社に握らているということになるので、仮に税理士事務所や記帳代行会社に不満(値段や業務など)があり、委託先を変更しようとした時にスムーズに変更作業が終わらなくなります

また、税理士事務所や記帳代行会社も人が行う作業なので、ミスをする可能性は0ではありませんが、その時に不利益を被るのは納税者である不動産管理会社です。重度なミスを見逃すと大変なことになるので、きちんと税理士事務所や記帳代行会社から会計データを貰って、自社で年度ごとに最低限のチェックをかけることはご自身の会社を守るためにも必須です。

市販で売られている経理システムはたくさんあります。ここでは、お勧めを2つほど挙げておきます。ぜひ参考にしてみてください。

  1. 弥生会計18 プロフェッショナル版

    価格 5.0
    操作 4.5
    機能 4.0
    ■シェアNo1ですべての会計・税理士事務所が対応可能!
    ■これ1つで予算管理・資金繰り・経営分析ができる!
    ■スタンダード版にない部門管理機能がある!

    【管理人のコメント】
    ・シェアNo1なので、すべての会計・税理士事務所で対応可能になるため、必然的に価格競争が起きやすく、税務報酬を安く抑えられるメリットがあります。
    ・きちんとした会計システムの中では一番値段が安いため導入しやすいです。
    ・従来の会計システムは記帳という管理業務に特化したシステムでしたが、資金繰り・予算管理・経営分析機能があるので、経営判断のための資料を作成するためにも利用できます
    ・廉価版にスタンダード版(4万円)というものもありますが、部門管理機能・資金繰り機能・予算管理機能・経営分析機能がないので、どちらかと言うと個人事業主向けになります。会社ならばプロフェッショナル版を強くお勧めします
    ・インターネットで利用できるオンライン版もありますが、オンライン版はシステム処理時間が非常に長くストレスフルなので、現状は弥生会計(デスクトップアプリ版)を購入することを強くお勧めします。

  2. PCA会計DX システムA

    価格 4.0
    操作 4.5
    機能 4.5
    ■部門管理機能が優れている!
    ■入力スピードが速い!
    ■専門知識がある人には使いやすい!

    【管理人のコメント】
    会社の規模が大きくなった時に利用する会計システム(従業員が50名強又は部門が2つ以上になったとき)だと考えて良いでしょう。
    値段が高くなる分、機能的には良くなります(部門管理機能や入力スピードなど)が、ある程度の専門知識がないと使いにくい会計システムかも知れません。
    ・少し値段は高いですが、会計システム・税務システム・給与システムすべてをPCA製品に集約すれば、作業効率は非常に上がりますので値段より時間を重視するのであれば、PCA製品が良いでしょう。
    ・上位版にシステムBというものがありますが、こちらは上場会社向けの機能追加ですので、システムAで機能的には十分でしょう。

税務システム

経理システムと異なり、記帳が完了し、事業年度終了後に税務申告書を自社で作成しようと考えたときに必要になります。

税務署から送られてきた申告書のひな形に必要な情報を入れていくことは、高い専門スキルが必要になり、まず専門家でない限り無理でしょう。

そこで登場するのが、税務システムです。税務システムは必要情報を入力すれば、ある程度自動で申告書を作成してくれる優れものです。税務システムを利用すれば、会社が提出する税務申告書を作成する作業はある程度の税金の知識があれば、可能になります

不動産賃貸業以外に業務を行っていなく安定している会社、又は税金の知識がある人が社内にいる会社の場合には、申告書まで自社で作成し、税理士にチェックしてもらう業務フローを作ってしまうのも一つの手段です。

社内に税務知識がある人がいると、節税対策をとる上でも、正確な税務申告をして余計な納税額を取られないためにも非常に有用です。

お勧めの税務システムを以下に紹介しますが、全部購入する必要はありません。最低限、法人税と消費税(申告義務があれば)のシステムを購入して頂き、購入した会計システムに同じような機能がなければ、内訳概況書や減価償却や年末調整・法定調書の税務システムを購入してください。

うまく自社で申告書まで作れる手段を構築できれば、税理士報酬を下げられるばかりでなく、節税対策を行うのにも非常にやりやすくなりますので、意欲があれば是非挑戦してみると良いでしょう。

<法人税法編>
  1. 法人税の達人 Standard Edition(スタンダード・エディション)

    価格 4.5
    操作 4.5
    機能 5.0
    ■税理士がお勧めしているシステム!
    ■連動計算で作業の効率アップ!
    ■業務エラーチェック機能で検算作業がスムーズに!

    【管理人のコメント】
    ・税理士会が特約店になっている影響で、税理士事務所で採用されている確率は非常に高いシステムですので、困ったときに相談しやすいです。
    ・連動計算機能というものがあり、一つ入力すると関連箇所も自動入力され、初心者でも申告書を作成し易いですし、作業効率が圧倒的に良いです。連動計算機能があるだけでも法人税の達人を買うメリットはあります。
    ・業務エラーチェック機能というものがあり、未入力箇所や整合性がない箇所などを教えてもらえて非常に便利です。
    ・もちろん、これ一つで住民税・事業税の申告書も作成できます。
    ・Light Edition(ライト・エディション)というのも3万円弱でありますが、PDF出力機能、業務エラーチェックがついていないので、自分でエラー箇所をチェックできる玄人向けの商品になります。また、Professional Edition(プロフェッショナル・エディション)というものも6万円弱でありますが、こちらはネットワーク(LAN)でのデータ共有が可能になるだけなので税理士事務所以外ではあまり必要ないかと考えらます。

  2. PCA法人税 システムA 平成29年度版

    価格 4.0
    操作 4.5
    機能 4.0
    ■PCA会計DXと一緒に使用すればデータ連動がスムーズ!
    ■申告書イメージのらくらく入力で使いやすい!
    ■専門知識がある人ならかなり便利!

    【管理人のコメント】
    PCA会計DXと同様に、管理会社の規模が大きくなった時(従業員が50名強又は部門が2つ以上になったとき)に利用する税務システムだと考えて良いでしょう。
    ・単品では値段的に法人税の達人に軍配が挙がりますが、会計システム・税務システム・給与システムすべてをPCA製品に集約すれば、データ連動をスムーズに出来て、作業効率は非常に上がります。値段より時間を重視するのであれば、PCA製品で揃えるのが良いでしょう。
    ・代替案として、弥生会計・法人税・消費税の達人・弥生給与という組み合わせもありますので、お金を取るか、時間短縮を取るかで判断すると良いでしょう。

<消費税法編>
  1. 消費税の達人 Standard Edition(スタンダード・エディション)

    価格 5.0
    操作 4.5
    機能 5.0
    ■税理士がお勧めしているシステム!
    ■連動計算で作業の効率アップ!
    ■さまざまな申告形態に対応!
    ■業務エラーチェック機能で検算作業がスムーズに!

    【管理人のコメント】
    ・税理士会が特約店になっている影響で、税理士事務所で採用されている確率は非常に高いシステムですので、困ったときに相談しやすいです。
    ・連動計算機能というものがあり、一つ入力すると関連箇所も自動入力され、初心者でも申告書を作成し易いですし、作業効率が圧倒的に良いです。連動計算機能があるだけでも消費税の達人を買うメリットはあります。
    ・会社の規模に応じて、一般課税・簡易課税の申告書および付表の作成が可能です。また、シミレーションも出来るので、税務申告前に一般課税と簡易課税のどちらが有利かも判断できます。
    ・業務エラーチェック機能というものがあり、未入力箇所や整合性がない箇所などを教えてもらえて非常に便利です。
    ・Light Edition(ライト・エディション)というのも1万円弱でありますが、PDF出力機能、業務エラーチェックがついていないので、自分でエラー箇所をチェックできる玄人向けの商品になります。また、Professional Edition(プロフェッショナル・エディション)というものも3万円強でありますが、こちらはネットワーク(LAN)でのデータ共有が可能になるだけなので税理士事務所以外ではあまり必要ないかと考えらます。

  2. PCA消費税【非営利法人対応】

    価格 4.0
    操作 4.0
    機能 4.0
    ■申告書イメージのらくらく入力で使いやすい!
    ■専門知識がある人ならかなり便利!
    ■慣れると非常に使いやすい!

    【管理人のコメント】
    PCA会計DXと同様に、管理会社の規模が大きくなった時(従業員が50名強又は部門が2つ以上になったとき)に利用する会計システムだと考えて良いでしょう。
    ・単品では値段的に消費税の達人に軍配が挙がりますが、会計システム・税務システム・給与システムすべてをPCA製品に集約すれば、データ連動をスムーズに出来て、作業効率は非常に上がります。値段より時間を重視するのであれば、PCA製品で揃えるのが良いでしょう。
    ・代替案として、弥生会計・法人税・消費税の達人・弥生給与という組み合わせもありますので、お金を取るか、時間短縮を取るかで判断すると良いでしょう。
    ・PCA消費税【非営利法人対応】はどちらかというと非営利法人の消費税を扱う時に非常に重宝しますが、一般事業会社の消費税でも問題なく利用できます。

給与計算システム

不動産管理会社に社員がいる場合は必要になるシステムです。

会社を経営して、社員を雇っていると税金の他に社会保険料の手続きも発生します。複雑な給与計算や年末調整手続き・煩雑な社会保険料の事務手続きの際に給与計算システムがあると非常に業務効率化ができます

社員が多くなればなるほど給与計算システムを所有しているかどうかで手間暇が大きく変わってくるので、ある程度の人数がいる不動産管理会社では是非購入してください

また、後から社員が多くなる予定がある会社であれば、最初の時点で導入しておいた方が、情報入力作業が一元化され楽なので、その場合も最初から購入しておくことをお勧めします。

  1. 弥生給与 18 通常版

    価格 4.0
    操作 4.5
    機能 5.0
    ■シェアNo1なので、多くの税理士事務所で対応可能!
    ■給与明細書作成手続き・社会保険手続き・年末調整手続きが効率的にミスなくできる!
    ■圧倒的に他の給与システムに比べて安価!

    【管理人のコメント】
    ・シェアNo1なので、多くの税理士事務所で対応可能になるため、必然的に価格競争が起きやすく、年末調整業務などの税務報酬を安く抑えられるメリットがあります。
    ・会社で必要になる税務以外の給与関係の手続きも網羅できるため非常に効率的です。
    ・きちんとした給与システムの中では圧倒的に値段が安いため導入しやすいです。
    ・廉価版にやよいの給与計算(3万円弱)というものもありますが、会社で利用するには少し機能が不足している(購入した後少し不便に感じる程度)ので、弥生給与を購入することを強くお勧めします
    ・インターネットで利用できるオンライン版もありますが、オンライン版はシステム処理時間が非常に長くストレスフルなので、現状は弥生給与(デスクトップアプリ版)を購入することを強くお勧めします。

  2. PCA給与DX システムA

    価格 4.0
    操作 4.5
    機能 4.5
    ■慣れると入力しやすい!
    ■専門知識がある人には使いやすい!
    ■PCA製品で揃えれば作業効率は一番良い!

    【管理人のコメント】
    会社の規模が大きくなった時に利用する給与システム(従業員が50名強又は部門が2つ以上になったとき)だと考えて良いでしょう。
    ・個人的には慣れると利用した給与システムの中では一番入力し易かったです。
    ・少し値段は高いですが、会計システム・税務システム・給与システムすべてをPCA製品に集約すれば、作業効率は非常に上がりますので値段より時間を重視するのであれば、PCA製品が良いでしょう。
    ・上位版にシステムBというものがありますが、システムAで機能的には十分でしょう。

経理・税務の年間スケジュールについて

経理・税務の年間スケジュールは大きく①期中スケジュールと②期末後スケジュールの2つに分類できます。

期中スケジュールでは、不動産管理会社で日々起こる取引を仕訳の形で表し、集計していくことがメイン業務になります。また、期中スケジュールのサブ業務として、固定資産税などの国や地方公共団体が納税額を指定してくる方式(賦課課税方式と言います)の税金支払いや会社が社員より徴収した源泉徴収税を計算・納税する業務や社会保険料の変更手続き業務があります。

期末後スケジュールは事業年度終了の日の翌日から2か月以内に法人税・住民税・事業税の申告書や消費税の申告書を作成し、納税することがメイン業務になります。

ざっくり言うと、期中スケジュールで仕訳という形で取引記録を集計しておき、期末日後にそれを申告書という形に変換し、納税することが経理・税務の年間スケジュールのメイン業務だと覚えておいてください。

経理・税務の期中スケジュール(仕訳から記帳まで)について

不動産管理会社の経理・税務の日常業務は、日々の取引を仕訳の形に表すことです。不動産管理会社で発生する日々の取引を仕訳の形にすると具体的に以下の4つに集約されます。

  • 不動産売買の仕訳
  • 固定資産計上の仕訳
  • 売上高関係の仕訳
  • 経費関係の仕訳

つまり、会社で不動産を購入して、不動産を賃貸するために広告宣伝費や修繕費などの経費を支払い、入居者が決まったら月々の賃料を売上高として計上し、最終的に不動産を売却して一連のサイクルが終了することになりますので、そのサイクルを仕訳という形で表すことが日常業務ということになります。

不動産管理会社で利用する勘定科目と仕訳例

日々の取引を仕訳の形に表す作業の前段階として、まずは、会計システムの初期設定があります。事業開始初年度の不動産管理会社の場合は、会計システムに登録されている勘定科目(売上高・交際費等仕訳を分類するするための枠のこと)を必ず確認してください

また事業開始初年度以外の会社でも、担当者が変更になったときには選択科目ミスをし易くなりますので、必ず担当者変更時に必要な勘定科目の担当者間での引継ぎと棚卸しをしてください

不動産管理会社で使用する勘定科目は一般の事業会社に比べて非常に少ないのが特徴です。また、不動産管理会社で使用する勘定科目は売上高・広告宣伝費・交際費等と基本的に会計システムに登録されている初歩的なものであり、内容も一般常識から推測できるものが多いです。

不動産管理会社で使用する勘定科目については、「不動産賃貸業で大家が仕訳で使う勘定科目一覧」で説明をしているので、ぜひご覧ください。

不動産管理会社の日々の取引の仕訳例を以下に、不動産売買の仕訳固定資産計上の仕訳売上の仕訳経費の仕訳に分けて記載しておきます。関連記事もあわせてご覧頂くと、不動産管理会社の経理・税務の日常業務で使用する仕訳をすべて網羅することができます

不動産売買の仕訳

管理委託方式、一括転貸方式(サブリース方式)の場合は不動産の所有者(個人事業主)、自社所有方式の場合は不動産管理会社の論点になりますが、不動産を購入する場合、不動産の購入価格だけでなく、仲介に入ってくれた会社に支払った仲介手数料、不動産を取得するために直接支払った金額(購入前の調査費用等)も固定資産(土地・建物)に計上されるので、必ず覚えておいてください。

不動産を取得するために直接支払った金額を経費計上していると税務調査時に必ず否認され、金額が大きいだけにかなりのダメージになります

また、節税対策を考えたいのならば、不動産の購入価額を土地と建物でどう按分するかを考えることになります。一般的に、購入価額を建物に多く計上できれば、節税に繋がります

詳細については、以下の【不動産売買に関する論点事項】の記事をご確認ください。

【不動産売買に関する論点事項】

固定資産計上の仕訳

不動産を購入したときには建物土地という勘定科目が固定資産に計上されます。また、賃貸用の部屋にエアコンを新しく購入した場合は固定資産の工具器具備品という勘定科目を使用します。

建物・工具器具備品(土地を除く)などの固定資産は税務上、減価償却という方法により、毎年一定額を固定資産から経費に振り替えます。言い換えると、固定資産関係の支払いをした場合には、その期の経費に計上するのではなく、一旦、固定資産に計上され、年度按分をしながら徐々に経費に計上されることになります。

固定資産の計上の仕訳で、論点になるのは次の2点です。なお、管理委託方式、一括転貸方式(サブリース方式)の場合は所有者(個人事業主)側の論点であり、自社所有方式の場合は、不動産管理会社側の論点になります。

固定資産の仕訳の論点
①建物の修繕を行った時の修繕にかかった費用が修繕費になるか資本的支出(固定資産)になるか
②固定資産を購入した時に固定資産の勘定科目をなににするか(建物・建物付属設備・構築物・工具器具備品)

①修繕費と資本的支出(固定資産)についての論点とは、ある修繕をした時に、修繕「」より良い材料を使った場合に修繕費という費用の勘定科目ではなく、固定資産に計上して、年度按分をしながら徐々に減価償却費という費用に計上して下さいというものです。

例えば、トイレの壁紙を張り替えたときに、張替え前と同じ壁紙を使用すれば、修繕費となり、消臭機能付きの壁紙に張り替えたのなら工具器具備品という固定資産になります。

②固定資産を購入した時に固定資産の勘定科目をなににするかについての論点とは、固定資産を購入したときに、勘定科目をなににするかということです。勘定科目によって、減価償却費として経費に計上できる年額が変わってきます

例えば、キッチンを入れ替えた場合、そのキッチンを取り外せれば、工具器具備品に計上できますし、取り外せないで建物と一体になってしまうのなら、建物に計上することになります。器具備品と建物のどちらで計上するかによって、1年間で計上できる減価償却費は3倍~7倍違ってきます

固定資産計上の仕訳に関する詳細については、以下の【固定資産計上の仕訳に関する論点事項】の記事をご確認ください。

【固定資産計上の仕訳に関する論点事項】

<資本的支出と修繕費関係>

<固定資産の勘定科目>

売上の仕訳

まず、不動産管理会社を営む場合、出てくる売上高は2つに分類されます。不動産を所有することによる不動産賃貸業としての売上高と不動産を管理することによる不動産管理業としての売上高です。

管理委託方式の場合、不動産の所有権自体は個人にあるため、不動産賃貸業の売上高は個人事業主に帰属し、不動産管理会社の方では不動産管理業に対する売上高を計上することになります。

一括転貸方式(サブリース方式)の場合には、不動産の所有者から部屋を一括で借り上げて、賃借人に貸し出すため、賃借人から貰った月々の売上高(=不動産賃貸業としての売上高)は不動産管理会社に帰属することになります。

なお、一括転貸方式(サブリース方式)は、所有者から部屋を一括で借り上げていますが、この費用が経費になるため、賃借人から貰った月々の売上高―所有者に支払った月々の経費が不動産管理会社の実質の利益になります。この不動産管理会社の実質的利益は不動産を管理することによる不動産管理業としての売上高と同義になります。

自社所有方式の場合、不動産の所有権自体が会社にあるため、不動産管理業としての売上高は登場しません。会社が所有する不動産に対する不動産賃貸業の売上高がそのまま会社に帰属することになります。

次に不動産賃貸業の売上高と不動産管理業の売上高の内容についてみていきましょう。

不動産賃貸業での売上高の種類は賃借人からの毎月の家賃礼金や権利金更新料その他の手数料収入ぐらいで種類が非常に限定されています。

敷金だけは賃貸借契約の内容により、以下のように売上高になったり、預り金になったり、勘定科目が変わるので注意が必要です。

敷金の仕訳
敷金を賃借人の退去時に返還する予定なら、流動負債の「預り金」や「保証金・敷金」に計上
敷金を賃借人の退去時に返還しないのなら、賃貸借契約で決めた時期に「売上」に計上
※ 敷金を返還するかどうかで仕訳が変わってきます。返還するのであれば、売上ではなくただ単に賃借人から預かっているだけだからです。

不動産管理会社の売上高の種類は不動産管理料の1つだけです。

このように、不動産管理会社の売上高の種類は非常に少ないのですが、一つだけ注意点があります。会計システムの初期設定だと、不動産管理会社で発生するすべての売上高の種類が売上高の1本に集約されてしまいます。勘定科目を追加してどの種類の売上高かを分かりやすくしておくか、または部門設定などをして補助簿でどの種類の売上高がいくらかわかるようにしておきましょう。

また、不動産管理会社の収入には、上記の不動産賃貸業・不動産管理業に付随したちょっとした収入が出てくることがあります。例えば、自動販売機設置に対する収益や電波塔設置に対する収益です。本業以外のちょっとした収益は売上高に含めず、「雑収入」という勘定科目にしておくのが良いでしょう。

不動産管理会社で必要になる売上の仕訳に関する詳細については、以下の【不動産管理会社の売上に関する論点事項】の記事をご確認ください。

【不動産管理会社の売上に関する論点事項】

経費の仕訳

不動産管理会社を営む場合、売上を計上するために直接又は間接的に費やした金額を経費(損金といいます)に計上することができます。経費(損金)に計上できるのは、その年に債務の確定した金額です。

ただし、交際費や寄付金のような経費(損金)に関しては一部経費に計上することができません。無制限に認めると課税の公平性を害する結果になるからです。

経費の仕訳に関する詳細については、以下の【不動産管理会社の経費に関する論点事項】の記事をご確認ください。

【不動産管理会社の経費に関する論点事項】

記帳はどのくらいの頻度で行うとよいか?

不動産管理会社の場合、1か月に1回必ず記帳(会計ソフトで仕訳を入力すること)を行ってください

不動産管理会社の形態が管理委託方式、一括転貸方式(サブリース方式)、会社所有方式のどれでも、月末に賃借人から家賃の入金があるという事実は変わらないはずなので、翌月10日ぐらいまでに入金確認・未納の場合は賃借人に督促をするとともに、月末締めで経費の領収書を集め、銀行口座の残高記帳も行いましょう。そのうえで、毎月中旬ぐらいに記帳を行うと業務サイクル的にちょうどよいでしょう。

なお、不動産管理会社の種類が自社所有方式の場合は、すべて会社の取引になるため、仕訳は会社部門に集約出来て問題ありませんが、不動産管理会社の種類が管理委託方式、一括転貸方式(サブリース方式)の場合は、取引の種類によって、仕訳が個人事業主と会社のどちらになるのか非常に煩雑になりますので、分類に注意してください。

期末後スケジュール(確定申告書の作成・提出・納税)について

流れとしては、会計システムに入力したデータの総点検後に確定申告書の作成・提出・納税を事業年度終了の日の翌日から2か月以内行うことになります。

例えば、3月末決算の会社ならば、5月末までに申告書の作成・提出・納税を行うことになります。

データの総点検を行おう

期中スケジュールで弥生会計などの会計システムを通じて記帳を行っていますので、まずは、その総点検をもう一度行うことになります。仕訳数が多い場合、ざっとすべての仕訳を見ていくと、結局なにを見ているかの認識が薄れてしまい、重要な修正箇所を見逃しがちになりますので、以下の手順で総点検を行いましょう。

  1. 決算数値の確認。前期・前々期比較を行う

    会計システムの中にある残高試算表から当期末の損益計算書の決算数値が異常値でないかを確認してください。残高試算表はエクセル化できるので、エクセルに落として、前々期、前期、当期と並べて異常値がないか比較するとさらに良いです。

  2. 仕訳をエクセル化して並び替え・検索機能を利用する

    その後に、各々の仕訳を確認していくことになります。会計システムに打ち込んだ仕訳はエクセル化できますので、エクセルの並び替え機能(ソート機能)や検索機能(CTRL+F)を使って、残高試算表を横断的に見て異常値のところ、金額の大きいところ、摘要欄がおかしいところを主にチェックしてください。
    なお、消費税の課税事業者の場合、消費税の区分(課税・非課税など)が前年度と相違していないかも必ず確認してください。

  3. 決算書の貸借対照表で赤字残高(マイナス残高)になっているものはないか確認する

    今までの手続きは決算書の損益計算書の正確性を確認するための手続きでした。今度は、貸借対照表の確認手続きになります。会計システムより決算書の貸借対照表を出力できるので、赤字残高(マイナス残高)になっている箇所がないか確認してください

確定申告書のチェックポイント

データの総点検が終わると次にいよいよ法人税・住民税・事業税・消費税(課税事業者の場合のみ)の確定申告書を作成することになります。

税務システム(達人シリーズなど)を利用している場合は、一つ数値を入力すると自動的に他の関連個所にも数値が入力されるようになっていますので、分かる箇所から数値を入力していけば、それなりに見れる申告書が出来上がります

ただし、どうしても間違ってはいけない箇所が一つだけ存在します。

法人税の別表4の記入だけは必ず丁寧に行ってください

別表4は会社の利益金額(決算書上の利益金額)を法人税上の利益金額に変換するための箇所です。つまり、別表4は会社の利益金額になるもののうち法人税の利益金額にならないものを減算し、会社の利益金額にならないもののうち法人税の利益金額になるものを加算して、法人税の利益金額を確定する箇所になりますので、ここを間違えると正確な税金額は算出されなくなります

別表の他の箇所も間違えると多少の影響は出てしまいますが、別表4だけは間違えるとダイレクトに納税額に影響してしまいますので、慎重に取り扱うことをお勧めします。

会計データ・税務申告書の控えは必ず入手しよう

法人税・住民税・事業税・消費税の申告書を税務署に提出し、算出された税額を納付すれば、その事業年度の経理・税務作業は終了になります。

申告書を税務署に提出する際には、必ず控えを作成し、税務署の受領印を貰ってください

銀行融資を受ける際に税務署の受領印がないと、確定した申告書か判断がつかず、融資を受けられない可能性があります

また、記帳代行会社や税理士事務所に日々の仕訳を依頼している場合は、必ず会計システム(弥生会計など)の入力データも貰ってください

すべての仕訳を確認したり、勘定科目の月次推移表を取り出したりするためには会計システムの入力データがあることが必須ですが、入力者側(記帳代行会社・税理士事務所)では、あまり会計システムの入力データをクライアント(不動産管理会社)に渡す習慣がありません

税務調査時や銀行から仕訳の内容を聞かれた時に会計システムのデータがあるかないかでは検索能力に雲泥の差がでますので、是非積極的に入手しておいて下さい。

確定申告を正確に作成するチェック体制について考えてみよう

どんな会社でも会計システム・税務システムさえあれば、確定申告書の作成まではできてしまいます。

ただし、その確定申告書の数値が取引記録を正確に反映し、税務調査時に否認されないものなのかどうかは別問題です。

つまり、確定申告を正確に作成するチェック体制を整えらるかどうかで、税務調査時の追加納税額が大きく変わってきます

正確な確定申告書を作成するためのチェック体制は次の2つの管理体制により決定されます。

  • 社内の経理課の作業に対する管理体制
  • 税理士事務所(記帳代行会社も含む)の作業に対する管理体制

社内の経理課の作業に対する管理体制

経理課がある不動産管理会社であれば、日々の取引を仕訳の形にする業務は社内の経理課の従業員が行うことになるでしょう。実はこの仕訳というものが、経理・税務業務のキモになります。仕訳が間違っていれば、仕訳を集計した決算書が間違ってくることは明白であり、決算書の利益を元に計算される法人税・住民税・事業税・消費税の納税額も間違って計算されることになります

よって、仕訳が間違えないようにチェックする管理体制を整えていくことが大切になります。

具体的な管理体制を構築するために必要になるチェック項目は次の2つにあります。

  • 仕訳を行う経理担当者に経理・税務の最低限の知識があるか?
  • 経理担当者の自己チェック・担当者と上席者のダブルチェックを行っているか?

仕訳を行う経理担当者に経理・税務の最低限の知識があるか?

仕訳を行う経理担当者に経理・税務の最低限の知識がないとまず正確な仕訳はできません。最近の会計システムでは、領収書などを読み込めば推定仕訳まで作成してくれる機能もありますが、残念ながら今のところ精度はまだまだ高くありません。

推定仕訳機能はアシスト機能としては十分な機能ですが、ちゃんとした知識がある人がいないとまだまだ自動で仕訳を作成してくれるレベルには到達していません

現状では、大切になるのは、経理・税務の知識を持った「人」になりますので、くれぐれも軽視しないようにしたいところです。

経理担当者の自己チェック・担当者と上席者のダブルチェックを行っているか?

経理担当者がどんなに優秀でも、人間である以上必ず仕訳の間違いは出てきます。仕訳の間違いを失くすこと自体はできませんが、自分で発見したり、他の人が発見することは可能です。

自己チェックは仕訳を入力した直後ではなく、必ず一日程度、時間を空けて実施してください。仕訳入力後、すぐに自己チェックを実施すると、頭の中が同じ間違い理論でチェック作業が進んでしまいますので、まずエラーを発見できません

ダブルチェック機能については、必ず実質があるものにしてください。上席者の確認印があるのに、内容を全くチェックしていない例をよく見かけます。

何のためにチェックをしているのかを必ず確認の上、確認項目が多くなりすぎて上席者の業務が圧迫されるようであれば、ダブルチェックの金額を決めて、その金額以上のものをきちんとチェックするという体制を整えるのでも良いでしょう。

大切なのは、誰が仕訳について責任を持つかの取り決めです。責任が社内で曖昧になると間違った仕訳を発見することはできません。通常はダブルチェックを行った上席者が最終責任を持つのが普通ですが、仕訳量が多い場合、仕訳担当者に金額が小さいものについては、責任を持って仕訳を行ってもらうことも大切になります。

税理士事務所(記帳代行会社も含む)の作業に対する管理体制

経理課が社内に設置している不動産管理会社では、税務申告書の作成又は確認のみを税理士事務所に依頼することもありますし、経理課が社内に設置されていない会社では、税務申告書の作成に加えて、日々の取引の仕訳についても税理士事務所や記帳代行会社に依頼することもあります。

税理士事務所・記帳代行会社は経理業務を専門として日々業務を行っているので、当然ですが、自分達で自己チェック機能やダブルチェック機能を保持しており、そこまで大きな間違いは起こしません

ただし、税理士事務所・記帳代行会社で不動産管理会社の仕訳を担当している人が、不動産業の税務・経理の専門家とは限りませんし、近年は経理・税務に対する委託報酬が大幅に下落しており、経理初心者が仕訳をしたり、上席者のダブルチェックの関与時間が大幅に削減されている可能性があるのも事実です。

経理・税務の委託業務は残念ながら、人が行う業務のため、委託報酬が下がれば、それに関与する人の質を落とすか、そもそも関与時間を削減するしか委託先である税理士事務所や記帳代行会社には選択肢が残されていません。

そこで、大規模な間違いを未然に防ぐためにも、残念ながら最低限の品質チェックを会社側で行うことが必要になります

少なくても、仕訳を実施する担当者の資質委託先の税理士事務所又は記帳代行会社の品質管理体制(自社に対して最大どのくらい時間が割けるのか、上席者のダブルチェック体制はどうなっているのか等)は確認しておきましょう。

なお、規模が大きい税理士事務所や記帳代行会社の場合、営業の人と実際の担当者は別の人になります。当然ながら、管理体制を確認しないといけないのは実際の担当者の方になりますので注意してください。

節税対策を考えてみよう

節税対策は2つに分類することができます。

1つ目は実際に納税額を減らしてしまうものです。

例えば、不動産管理会社を設立し、元々個人の不動産所得のみであったところを個人不動産所得と会社利益に分けられたとします。個人の不動産所得の税率は累進課税税率で多ければ多いほど税率が上がりますが、会社の利益に関する税率は一定なので、会社に利益を付け替えた方が、税率の違い分だけ節税になります

実際に納税額を減らしてしまうものは、制度間の格差を利用する方法が多いので、手間がかかり、実態が伴わないと税務上否認される可能性もあるグレーゾーンが多く存在する節税方法です。

2つ目は税金の支払いを翌期以降に遅らせるものです。

例えば、生命保険料を支払った時は経費に計上でき、支払った事業年度では利益が減少しますが、いずれ解約返戻金などの形で企業にお金が返ってきたときには収益に計上され、返金された事業年度では利益が増加します。

結局、保険料を払った時と保険料が戻ってきた時で税金の支払金額を付け替えているだけですが、1つ目の実際の納税額を減らしてしまうものに繋がる結論が出せたり、納税額の繰越期間に利息を生む方法を考えらる場合は有用な手段になる可能性はあります

スキームが比較的容易であり、年度末ぎりぎりでも実行できるものが多いため、利用し易い節税対策になります。

どちらが良い・悪いということはないのですが、経営者側できちんと上記のことを把握していないと、結局節税対策をしてみたけど、実態がないので否認されたり、繰延べ自体は成功したけど、最終的に納税金額は一緒になってしまったという結論になることがあります。むしろ、節税対策をするためには、諸経費がかさみますので、計画的に実行しないとなにもしない場合よりもマイナスになることもあると覚えておいてください。

なお個別の節税方法の記事は「会社の節税対策」で記載していますので、関心のある項目をご覧ください。

会社の節税対策

不動産管理会社で問題になる消費税について

まずは、消費税の課税事業者にならないかを意識しよう

「基準期間における課税売上高」1,000万円超の不動産管理会社には、消費税が課税されることになります。

「基準期間における課税売上高」とは、前々年の課税売上高のことをいいます。

なお、課税売上高とは、消費税が課税される対象になる売上高のことで不動産管理会社では、事業用の不動産の貸付け(一括転貸方式、自社所有方式)と不動産管理委託報酬(管理委託方式)が該当しますが、居住用の不動産の貸付け(一括転貸方式、自社所有方式)は課税売上に該当しません

要は、不動産管理会社の場合、2年前の事業用の不動産から計上される売上高又は不動産管理委託報酬が1,000万円を超える場合、消費税の課税対象になると覚えておくとよいでしょう。

消費税の計算方法はいろいろなパターンがあり、どのパターンを採用するかで納税額が大きく違ってきます。消費税の制度の説明とあなたの会社がどのパターンを選択するかの参考となる記事のまとめは、以下の「消費税の詳細」をご覧ください。

次に、不動産管理会社の消費税で特に問題になる論点を見ていこう

不動産管理会社を経営していると、どうしても外せない消費税の論点が3つあります。非常に難しい論点ですが、経営者や経理担当者ならば是非把握しておいて欲しい論点になります。

まず、1つ目の論点は建物の購入時に消費税の還付が受けられる可能性があることです。

賃貸用不動産を購入するときに、建物の価額には消費税が含まれています。つまり、買主側は自動的に消費税を払ったことになっています。

消費税は一年間に払った消費税と受け取った消費税の差額を清算することにより納税額が決定します。不動産購入時は払った消費税が多くなるので、消費税の還付を受けられる可能性が高くなります。

ただし、居住用の建物の購入に関しては、賃借人から受け取る家賃が非課税のため、購入時に支払った消費税も非課税になりますので、還付自体は起こりにくくなります。事業用のビルなどを購入した場合に消費税の還付が起こる可能性が高くなることを覚えておいてください。

2つ目の論点は、課税売上割合が著しく変動した場合は、消費税が増えたり、減ったりする可能性があることです。

課税売上割合とは端的に言うと、賃借人が住まいに利用している物件の売上高と事業用に利用している物件の売上高の合計のうち、事業用に利用している物件の売上高がどれくらいあるかという割合です。

事業用のビルを買えば、課税売上割合は上がりますし、住居用のアパートを買えば、課税売上割合は下がります。

不動産を購入した時から3年間の課税売上割合が大きく変動すると、消費税の調整を行わなければならなくなります

課税売上割合が上昇すれば、消費税額が減少する方向に調整をし、課税売上割合が下降すれば、消費税額が増加する方向に調整することになります。

3つ目の論点は、控除対象外消費税額等というものです。

不動産管理会社の場合、非課税売上高(≒住居の貸付けにかかる売上高)が多いので、消費税の税抜経理方式を採用している場合には、支払った消費税のすべてが受け取った消費税から控除できなくなります

支払った消費税の非課税売上高部分は控除できないので、本来は租税公課として経費計上できる可能性が高いのですが、建物の取得にかかる消費税の場合は長期前払費用として5年間に分けて経費計上しなければいけません

非常に難しい論点ですが、要は、建物取得をした時の消費税の一部は長期前払費用として長期前払費用という資産に計上し、5年かけて経費に計上していく可能性があると覚えておきましょう。

消費税の詳細

固定資産税・償却資産税について考えてみよう

固定資産税には、土地・建物に対する固定資産税と償却資産(例:事業用のエアコンや道路の舗装)に対する固定資産税があります。

土地・建物に対する固定資産税は役所が勝手に計算してくれますが、償却資産に対する固定資産税(以下、償却資産税)は1月末までに地方自治体に申告しなければなりません

償却資産税は、取得価額で150万円までは免税になるため、小規模な一般事業会社で課税対象になることは少ない税金です。

ただし、不動産管理会社で所有不動産に門や塀がある場合駐車場がある場合や、高額なエアコンがたくさんある場合償却資産税の申告対象になるので注意してください。

建物に計上するか償却資産に計上するか微妙なものに関して、法定耐用年数が短い償却資産に振り分ける節税対策もありますが、その場合は、償却資産税を慎重に検討することが求められますので注意してください。

詳しくは、以下のの「固定資産税・償却資産税の詳細」で解説しますので、是非そちらもご覧ください。

固定資産税・償却資産税の詳細

銀行融資を受けられるように確定申告書(損益計算書)を整えよう

不動産投資を続けていく限り、売上高を増やすためにも、また経営を安定させるためにも、新規の投資用不動産の購入が必要になります。手持ちの現金で不動産を購入できる場合は問題ありませんが、通常は銀行融資を受けることになります

銀行融資を受けるためには、銀行側の審査を受ける必要があり、その際に最も重要になるのは、確定申告書です。確定申告書の中には損益計算書というものがあり、これを見て、銀行の融資担当者は融資を決めることになります。損益計算書とは、会社の営業成績を数字で評価したものであり、1年間の具体的な利益金額を把握するために利用されます。

銀行の融資担当者は決算書の損益計算書を2年分程度見て、融資できるかを決定することになります。

よって、銀行融資を受けようと思ったら、不動産管理会社側としては、2年分の確定申告書(損益計算書)を整えることになります。

具体的には、損益計算書を必ず黒字(利益が出ている状態)にすることが必要ですが、それ以外にもいろいろ要件がありますので、以下の「銀行融資詳細」でまとめます。ご興味があれば、是非そちらをご覧ください。

銀行融資詳細

役員報酬と社会保険料について考えてみよう

不動産管理会社を利用するメリットの一つに役員に対して役員報酬を支払うことにより、節税対策ができるというものがあります。

役員報酬を払えば、会社側では経費扱いになるためお得ですし、報酬を会社から受け取った役員は給与所得が増えるものの、役員報酬が給与所得控除の対象になるため、最低でも65万円、仮に役員報酬を1,000万円に設定すると220万円が経費に近い扱いになり、会社と個人(役員)の納税額全体を考えると、給与所得控除分だけ節税に繋がります

また、会社の税率は一定なのに対して、役員報酬の税率は金額が大きくなると徐々に税率が高くなる累進課税のため、不動産管理会社で支払う役員報酬を700万円弱程度に設定すれば、まだ役員報酬にかかる税率が会社にかかる税率より低い状態なので最大限の節税効果を受けられることに繋がります。

では、役員報酬の金額は節税対策の効果を最も受けらえる700万円ですべての場合でいいのかというとそうではありません。

不動産管理会社も会社である以上、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入しなければなりません。

社会保険は健康保険と厚生年金保険に分けられるのですが、厚生年金保険は支払っている金額が大きいほど、老後に年金としてもらえる金額が多くなります。

そして、厚生年金保険の支払い金額を多くするには、役員報酬を高くすることが必要になります。

つまり、老後に年金としてもらえる金額を高くしたいと考えている経営者(役員)はある程度節税対策を諦めてでも役員報酬を多くすべきです。

また、不動産管理会社の規模によっては、700万円も役員報酬が支払えない可能性もあります。その場合、極論を言うと、健康保険の支払い額を最低限にする月額5万円程度の役員報酬を採用する手段もあります

健康保険はいくら支払ってもサービスに変わりはありませんので、あまり支払いたくないという立場もあります。

最低限の給与所得控除による節税を受けつつ、健康保険にも厚生年金にも入れ、結果的にトータルでは相当割安になる可能性もあります

このように、役員報酬と社会保険料については経営者(役員)の年齢や考え方の立場により、妥当な金額は異なってきますので、一度きちんと考えてみるべきでしょう。

役員報酬と社会保険料の詳細については、以下の「役員報酬と社会保険料の詳細」にまとめましたので、是非ご覧ください。

役員報酬と社会保険料の詳細