「不動産を買って融資を受けたとき、抵当権設定費用や不動産担保取扱手数料はどの勘定科目で仕訳する?」と迷っていませんか。
処理を誤ると、経費にできるはずの費用をその年に落とせず、税金を多く払ってしまうこともあります。
本記事では、不動産購入・融資時に支払う費用の勘定科目と仕訳の時期を、不動産業専門の税理士がわかりやすく解説します。法人にも、不動産賃貸業を営む個人事業主にも対応した内容です。
不動産購入・融資時の費用の勘定科目と経費になる時期【一覧表】
不動産の購入や融資で支払う費用は、「経費になるもの」と「取得価額に算入するもの」の2つに分かれます。
まずは全体像を一覧表で確認しましょう。
| 費用 | 勘定科目 | 経費になる時期 |
|---|---|---|
| 抵当権設定の登録免許税 | 租税公課 | 登記を申請したとき(納付時) |
| 司法書士報酬 | 支払報酬料(支払手数料) | 登記が完了したとき |
| 不動産担保取扱手数料 | 支払手数料 | 融資が実行されたとき |
| 印紙税 | 租税公課 | 契約書に貼って消印したとき |
| 不動産取得税 | 租税公課 | 納税通知書が届いたとき |
| 仲介手数料 | 土地・建物(取得価額) | -(経費にならない) |
| 固定資産税清算金 | 土地・建物(取得価額) | -(経費にならない) |
| 火災保険料 | 保険料(前払分は前払費用) | 期間の経過に応じて |
| 引き継いだ敷金 | 預り金(負債) | -(負債に計上) |
表の上半分(登録免許税〜不動産取得税)は、支払った年の経費(法人は損金、個人事業主は必要経費)になります。
なお、表の「経費になる時期」は、お金を払った日と必ずしも同じではありません。
税務には「支払う義務が確定した日に経費へ計上する」というルール(債務確定基準・法人税基本通達2-2-12)があるからです。
もっとも、不動産購入ではほとんどの費用を決済日にまとめて支払うため、ふだんは「払った日=経費の日」で問題ありません。
ズレに注意が必要なのは、決算をまたぐときです。
たとえば3月決算の会社で、3月に登記が完了した司法書士報酬を4月に支払う場合は、3月の決算で未払金(=払う義務は確定しているが、まだ払っていないお金)として経費に計上します。
逆に、仕事の完了前に報酬を先払いしたときは前払金(=先に渡しただけのお金)としておき、仕事が完了したときに経費へ振り替えます。
一方、仲介手数料と固定資産税清算金は経費にできず、取得価額(=土地・建物の購入代金に上乗せして資産計上する金額)に算入します。
ここからは、特に質問の多い融資関連の費用から順に、仕訳例つきで見ていきます。
抵当権設定費用の勘定科目は「租税公課」と「支払報酬料」の2つ
抵当権設定費用は、登録免許税が「租税公課」、司法書士報酬が「支払報酬料(または、支払手数料)」です。
どちらも支払った年の経費になります。
仕訳の前に、用語をここで整理しておきます。
- 抵当権
-
抵当権とは、融資を返せなくなったときに備えて、金融機関が土地・建物を担保に取る権利です。住宅ローンや事業用の不動産融資で設定されます。
- 登録免許税
-
登録免許税とは、抵当権設定や所有権移転などの登記をするときに国に納める税金です。
納付は、銀行などの金融機関で現金で納め、その領収証書を登記の申請書に貼って法務局へ提出する方法が原則です(税額3万円以下なら収入印紙でも納められます)。
実務では、司法書士が立て替えて納付まで済ませ、あとで報酬と一緒に精算するのが通常です。
抵当権設定登記の登録免許税は借入額(債権金額)×0.4%です(国税庁タックスアンサーNo.7191)。
たとえば5,000万円の融資なら、5,000万円×0.4%=20万円です。
事業用はもちろん、賃貸アパート・マンションなど人に貸す住宅も軽減税率の対象外です。0.1%への軽減が使えるのは、個人が自分で住む家(床面積50㎡以上・取得後1年以内の登記など一定の要件)の住宅ローンだけです(租税特別措置法75条・令和9年3月31日まで)。
ここまでで、税率と勘定科目がそろいました。あとは数字を当てはめて仕訳にするだけです。
借入5,000万円の登録免許税20万円と、司法書士法人に報酬5万5,000円(税込)を支払った場合の仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 租税公課 | 20万円 | 普通預金 | 25万5,000円 |
| 支払報酬料 | 5万5,000円 |
経費になる時期は、登録免許税が登記を申請したとき、司法書士報酬が登記が完了したときです。登録免許税は申請時に納める税金なので、登記の完了を待つ必要はありません。
実務では売買の決済日に司法書士へまとめて支払い、同日に登記を申請します。登記は申請から数日〜2週間ほどで完了するため、上の仕訳例のように決済日にまとめて経費計上して差し支えありません。
決済日と登記完了日の間に決算日が挟まるときだけ、司法書士報酬の分を前払金とする厳密な処理を検討してください。
この抵当権設定とセットで金融機関に支払うのが、次の不動産担保取扱手数料です。
不動産担保取扱手数料の勘定科目は「支払手数料」が一般的
不動産担保取扱手数料(=融資で不動産を担保に入れるときに金融機関へ支払う事務手数料)は、「支払手数料」で全額その年の経費にするのが一般的です。
勘定科目に明文の定めはありませんが、金額が小さくない費用のため、内容の見えない雑費に入れるのは避けましょう。「支払手数料」で統一しておくのがおすすめです。
不動産担保取扱手数料は、金融機関ごとに金額が決まっており、無料の金融機関もあります。
融資事務手数料・融資取扱手数料という名称でも、処理は同じです。
経費になる時期は、金融機関のサービスが完了する融資実行のときです。通常は融資の実行と同時に口座から引き落とされるため、支払日=経費の日になります。
消費税は課税仕入です。税金ではなく、金融機関の事務というサービスへの対価だからです。
同じ融資関連でも、信用保証協会に支払う信用保証料は消費税が非課税で、保証期間に応じて長期前払費用として処理します。詳しくは信用保証料の勘定科目と仕訳で解説しています。
担保取扱手数料11万円(税込)を支払った場合の仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 11万円 | 普通預金 | 11万円 |
ここまでが金融機関に支払う費用です。次は、登記の実務を担う司法書士への報酬に潜む、見落としやすい論点を確認します。
司法書士報酬の勘定科目と源泉徴収【(報酬−1万円)×10.21%】
司法書士報酬は、「支払報酬料」(または支払手数料)で経費になり、個人の司法書士に支払うときは源泉徴収が必要です。
源泉徴収(=報酬から所得税を差し引いて、支払う側が代わりに国へ納める仕組み)の金額は(支払額−1万円)×10.21%です(国税庁タックスアンサーNo.2801)。
報酬5万円なら、(5万円−1万円)×10.21%=4,084円を差し引いて支払います。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払報酬料 | 5万円 | 普通預金 | 4万5,916円 |
| 預り金(源泉所得税) | 4,084円 |
報酬が経費になる時期は、登記という仕事が完了したときです。決済日に先に支払っていても、まだ経費になりません。
もっとも、登記は申請から数日〜2週間ほどで完了します。そのため実務では、支払日(決済日)に経費計上して差し支えありません(考え方は抵当権設定費用の章と同じです)。
預かった源泉所得税は、原則として翌月10日までに納付します(納期の特例を受けている場合は7月10日・翌年1月20日)。
源泉徴収では、次の3点に注意してください。
- 司法書士法人への支払いは源泉徴収が不要(源泉徴収の対象は個人の司法書士のみ)
- 司法書士に預ける登録免許税などの立替分は源泉徴収の対象外(報酬と区分して支払いが明らかな場合)
- 請求書で消費税額が区分されていれば、税抜の報酬額だけを源泉徴収の対象にできる
- 源泉徴収は支払う側の義務。ただし給与を支払っていない個人事業主が支払う報酬は対象外で、源泉徴収する必要はない(所得税法204条2項2号・国税庁タックスアンサーNo.2502)
それでは、司法書士に預けた登録免許税そのものや、購入時のほかの税金はどう処理するのでしょうか。
登録免許税・印紙税・不動産取得税は「租税公課」で経費になる
不動産購入に伴う税金は、原則としてすべて「租税公課」で経費(損金・必要経費)になります。
ただし、経費にするタイミングは税金ごとに違います。違いを表で確認しましょう。
| 税金 | 経費になる時期 | ポイント |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 登記を申請したとき(納付時) | 固定資産税評価額×税率 |
| 印紙税 | 契約書に貼って消印したとき | まとめ買いはいったん貯蔵品 |
| 不動産取得税 | 納税通知書が届いたとき | 支払いは購入の3〜6か月後 |
所有権移転登記の登録免許税は、土地が固定資産税評価額×1.5%(軽減税率・令和11年3月31日まで延長)、建物が同×2.0%です(自宅用の住宅用家屋には別途軽減があります)。
税率の一覧と仕訳は登録免許税の勘定科目は租税公課で詳しく解説しています。
印紙税は売買契約書に貼る印紙で納める税金です。
軽減措置により、記載金額が5,000万円超〜1億円以下なら3万円です(令和9年3月31日まで・国税庁タックスアンサーNo.7108)。
印紙をまとめ買いしたときは、いったん貯蔵品(資産)に計上し、契約書に貼って消印した分だけ租税公課に振り替えます。
不動産取得税は、納税通知書が届くのが購入の3〜6か月後になる点に注意してください。
なお、賦課課税方式(=役所が税額を決めて通知する方式)の税金は、実際に納付した日の経費にすることも認められます(法人税基本通達9-5-1)。
経費にできるのは通知書が届いた日からであり、決算をまたぐと計上する年度がズレます。
ここまで「経費になる」と説明してきましたが、実は法人には、税金の一部を取得価額に入れるという選択肢もあります。
登録免許税・不動産取得税は取得価額に算入しない選択ができる【法人】
登録免許税や不動産取得税などの租税公課等は、取得価額に算入せず、支払った年の経費にできることが国税庁の明文で認められています(法人税:タックスアンサーNo.5400、法人税基本通達7-3-3の2)。
一方、個人事業主に選択の明文はありません。不動産賃貸業など業務用の資産にかかる登録免許税・不動産取得税は、必要経費に算入するのが原則的な取扱いです(所得税基本通達37-5)。
早く損金にしたいなら、経費処理が有利です。取得価額に入れると、建物は減価償却(=何年もかけて少しずつ経費にする仕組み)でしか損金化できず、土地に至っては売却するまで損金になりません。
逆に、選択の余地がなく取得価額に算入しなければならない費用もあります。次で確認しましょう。
仲介手数料・固定資産税清算金は取得価額に算入する
仲介手数料と固定資産税清算金は、経費にできず、土地・建物の取得価額に算入します。
どちらも土地と建物の価格の比率で按分(=割り振ること)して資産計上します。
按分には、売買契約書の消費税額から建物価格を逆算する方法や、固定資産税評価額の比率を使う方法があります。
固定資産税清算金は税金ではなく売買代金の一部とみなされるため、建物分は消費税の課税仕入になる点も見落としがちです。
取得価額に入れる費用と経費にできる費用の区分は不動産取得時の付随費用の勘定科目で、土地・建物の按分方法は不動産売却の土地建物の按分で詳しく解説しています。
最後に、不動産購入時に発生しやすい残り2つの処理を確認します。
火災保険料は「保険料」、引き継いだ敷金は「預り金」
火災保険料と引き継いだ敷金は、決済の前後でお金が動いても、その金額をそのまま経費や売上にしてはいけない点が共通の落とし穴です。1つずつ順番に見ていきましょう。
火災保険料は当期分だけが「保険料」で経費になる
火災保険料を複数年分まとめて支払った場合は、当期分だけを保険料で経費にし、翌期以降の分は前払費用(資産)に計上して、期間の経過に応じて振り替えます。(火災保険とセットで加入する地震保険料も、同じ処理です。)
たとえば個人事業主(または12月決算の法人)が7月に5年分の火災保険料60万円を支払った場合、当期の経費は60万円÷5年×6か月÷12か月=6万円です。
引き継いだ敷金は「預り金」で売上にならない
敷金(=入居者が退去するときに返すお金として、大家が預かっている保証金)を売主から引き継いだときは、収益ではなく預り金(負債)で処理します。
オーナーチェンジ(=入居者がいる状態で賃貸物件を買うこと)では、売主から敷金を引き継ぎます。入居者へ返す義務ごと引き継ぐお金なので、売上にはなりません。
以上を踏まえて、勘定科目に迷ったときの判断の順序をまとめます。
まとめ|「経費か取得価額か」→「どの科目か」の順で判断する
不動産購入時の費用の勘定科目に迷ったら、最初に「経費になるか、取得価額に算入するか」を冒頭の一覧表で確かめます。
経費になるものは、次に「税金は租税公課、専門家への報酬は支払報酬料、金融機関の手数料は支払手数料」と当てはめれば、ほぼ判断できます。
この2ステップを踏まえて、本記事のポイントを整理します。
本記事のポイントは次のとおりです。
- 抵当権設定費用は登録免許税=租税公課、司法書士報酬=支払報酬料
- 不動産担保取扱手数料は支払手数料で全額経費(消費税は課税仕入)
- 個人の司法書士への報酬は(支払額−1万円)×10.21%の源泉徴収が必要
- 登録免許税・不動産取得税は、法人なら経費処理と取得価額算入を選択できる(経費処理が有利な場合が多い。個人事業主は業務用なら必要経費)
- 仲介手数料・固定資産税清算金は取得価額に算入(土地・建物に按分)
不動産の購入は金額が大きく、勘定科目や経費にする時期の誤りが税額に直結します。判断に迷う場合は、不動産業に強い税理士へ相談すると安心です。
よくある質問
- 抵当権設定費用はどの勘定科目で仕訳しますか?
-
抵当権設定費用は、内訳ごとに2つの勘定科目に分けて仕訳します。登録免許税(借入額×0.4%)は「租税公課」、司法書士報酬は「支払報酬料(または、支払手数料)」です。経費になる時期は、登録免許税が登記を申請したとき、司法書士報酬が登記が完了したときです。
- 不動産担保取扱手数料は経費になりますか?
-
支払手数料として全額その年の経費になります。消費税は課税仕入です。
- 司法書士報酬の源泉徴収はいくらですか?
-
(支払額−1万円)×10.21%です。報酬5万円なら4,084円を差し引いて支払います。司法書士法人への支払いは源泉徴収不要です。給与を支払っていない個人事業主が買主のときも源泉徴収は不要です。
- 登記費用は建物の取得価額に含めるべきですか?
-
法人の場合、登録免許税などの登記費用は取得価額に算入しないことができ、早期に損金化できるため経費処理が一般的です(国税庁タックスアンサーNo.5400)。個人事業主も、業務用の資産であれば取得価額に含めず、必要経費にするのが原則的な取扱いです(所得税基本通達37-5)。
出典・参考
- 国税庁タックスアンサーNo.7191 登録免許税の税額表
- 国税庁 登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ(住宅用家屋・抵当権設定0.1%の適用期限)
- 国税庁タックスアンサーNo.2801 司法書士等に支払う報酬・料金
- 国税庁タックスアンサーNo.2502 源泉徴収義務者とは
- 国税庁タックスアンサーNo.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用
- 国税庁タックスアンサーNo.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
- 法人税基本通達7-3-3の2(固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示)
- 法人税基本通達9-5-1(租税の損金算入の時期)
- 法人税基本通達2-2-12(債務の確定の判定)
- 所得税基本通達37-5(業務用資産に係る固定資産税・登録免許税等の必要経費算入)
- 国土交通省 令和8年度税制改正概要(土地の所有権移転登記の軽減税率の延長)
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