賃貸人の敷金・保証金と礼金の仕訳




この記事の対象者
  1. 賃貸人側の敷金・保証金・礼金の仕訳を知りたい人
  2. 賃貸人側の敷金・保証金・礼金の勘定科目を知りたい人
  3. 賃貸人側の敷金・保証金・礼金の消費税の取り扱いを知りたい人




敷金とは

敷金(保証金という名目の時もある)とは、入居者が家賃を滞納した時や退去時に部屋の破損があった時に備えて、賃貸借契約の締結の段階であらかじめ担保として預かっておくお金のことを言います。

よって、賃貸借契約が終了した時に借主に返還する必要があります。

しかし、敷金の返還額は法律上きちんとは決められていないので、賃貸借契約の結び方によっては、返還額が一部であったり全額返還しない場合もあります。

礼金とは

礼金とは、賃貸借契約締結時に賃貸人(大家)に家賃の前払金として払うお金です。

家賃の前払金なので、賃貸人(大家)は賃借人(入居者)の退去時に礼金を返還する義務はありません

なお、賃貸人(大家)は礼金の全額をもらえるわけではありません

部屋の募集をかけて、賃借人(入居者)を決めてくれた不動産会社に、お礼として1か月分程度のコンサルティングフィーの支払いをします。

よって、礼金1か月分を賃借人(入居者)からもらって初めて賃貸人(大家)の収支は合うことになります。

礼金0だと賃貸人(大家)側が最初に手出しでお金を払っていることになります。

敷金(保証金)と礼金の仕訳・勘定科目について

敷金(保証金)について

敷金(保証金)の仕訳のポイントは、預かったお金を返還するかどうかです。

敷金(保証金)を返還する場合

返還するときは、預かったお金はただの預り金なので、収益計上する必要はありません。

不動産賃貸借契約を締結し、借主より敷金10万円が振り込まれた。
敷金は賃貸借契約終了時に借主に返還する。
【敷金預け入れ時】

借方
金額
貸方
金額
現金又は預金
10万円
預り金
10万円

【敷金返還時】

借方
金額
貸方
金額
預り金
10万円
現金又は預金
10万円

勘定科目で見ると、2年間預かったお金を返還するだけなので、現金又は預金(資産)預り金(負債)しかでてきません。

敷金(保証金)を返還しない場合

逆に敷金を返還しないときは、返還しないことが決まった段階で、預り金から家賃収入計上に振り替えなければなりません

敷金を返還しないことが決定するタイミングは以下の3つのパターンが考えられるでしょう。

  • 賃貸借契約締結時に返還しない金額が決定する場合
  • 賃貸借契約期間の経過とともに返還しない金額が決定する場合
  • 賃貸借契約の期間終了時に返還しない金額を決定する場合

敷金を返還しないことが決定するタイミングと返還しない金額で無数のパターンができますが、勘定科目も含めて、以下の仕訳で基本を覚えておけば、どのような場合でも仕訳が思い浮かぶでしょう。

賃貸借契約時に返還しない金額が決定する場合
不動産賃貸借契約を締結し、借主から敷金5万円の支払いを受けた。
なお、敷金については、契約締結時に返還されないことが確定した。
【契約締結時の仕訳】

借方
金額
貸方
金額
現金又は預金
5万円
売上
5万円

初めから返還されないので、家賃収入と同じように売上(収益)計上が必要となります。

預り金(負債)は出てきません。

賃貸借契約期間の経過とともに返還しない金額が決定する場合
不動産賃貸借契約を期首に締結し、敷金5万円を契約締結時に受け取っている。
この敷金は2年間で償却されていくものとする。
【敷金受取時の仕訳】

借方
金額
貸方
金額
現金又は預金
5万円
預り金
5万円

【期末の敷金償却時の仕訳(1年目)】

借方
金額
貸方
金額
預り金
2.5万円
売上
2.5万円

【期末の敷金償却時の仕訳(2年目)】

借方
金額
貸方
金額
預り金
2.5万円
売上
2.5万円

契約締結時は、お金を預かっているので、預り金(負債)で処理します。期末ごとに預り金が売上(収益)に振り替えられ、2年経過時に預り金(負債)勘定は0になります。

賃貸借契約の期間終了時に返還しない金額を決定する場合
不動産賃貸借契約を期首に締結し、敷金5万円を契約締結時に受け取っている。
この敷金は契約期間終了後に一括償却される。
【敷金受取時】

借方
金額
貸方
金額
現金又は預金
5万円
預り金
5万円

【契約期間終了時】

借方
金額
貸方
金額
預り金
5万円
売上
5万円

契約締結時では、敷金はまだ預かっている状態なので、預り金(負債)に計上します。

契約期間終了時に一括で預り金から売上に5万円が振り替えられます。

礼金について

礼金は賃貸借契約締結日に売上(収益)として計上します。

なお、不動産会社に払ったコンサルティングフィーやAD(賃借人側の不動産会社に対する広告宣伝費)は、広告宣伝費(費用)に計上します。

賃貸借契約を締結し、礼金として賃料の1か月分10万円を受け取った。
なお、不動産会社にコンサルティングフィーとして賃料の1か月分10万円を支払っている。
【礼金受け取り時の仕訳】

借方
金額
貸方
金額
現金又は預金
10万円
売上
10万円

【コンサルティングフィーの仕訳】

借方
金額
貸方
金額
広告宣伝費
10万円
現金又は預金
10万円

賃料の1か月分の礼金をもらっても、通常は賃料の1か月分のコンサルティングフィーが出てしまうので、収支で考えると0ということになります。
さらにAD(客付けしてくれた賃借人の側の不動産会社にも広告宣伝費を払うこと)を支出すれば、そのAD分だけ手出しということになります。

敷金・礼金の消費税の取り扱い

敷金のうち賃貸借契約終了後に返還される金額は消費税の課税対象外取引です。

敷金のうち借主に返還しない部分と礼金は売上計上されるため消費税の課税の有無の論点が発生します。

売上計上される敷金と礼金については、賃貸借契約の対象となった不動産の科目・使用目的によって消費税の課税の有無が異なります。

賃貸借契約の対象物が土地の場合又は居住用の建物の場合、消費税は非課税となります。

賃貸借契約の対象物が土地や居住用の建物以外の場合は、消費税が課税されることになります。

毎月かかる家賃の消費税の区分と基本的には一致しますので、もし家賃と返還されない敷金又は礼金の消費税区分が違っていたら注意が必要です。

なお、どんな場合でもコンサルティングフィーやADなどの広告宣伝費の勘定科目で処理される費用の消費税は課税になります。

使用目的等
消費税の課税の有無
敷金(保証金)のうち返還される部分
課税対象外
返還義務のない敷金(保証金)や礼金
土地の賃貸や居住用建物の賃貸
非課税取引
返還義務のない敷金(保証金)や礼金
居住用建物以外の賃貸
課税取引
広告宣伝費(費用)
課税取引