【この記事の対象者】
- 定期的に行う修繕工事の税務処理を知りたい人
- 修繕費の要件の一つである周期の短い費用について知りたい人
不動産賃貸業を営んでいると、どうしても避けられない税務上の論点に、工事費が修繕費として経費計上になるか、又は、資本的支出として固定資産計上になるかというものがあります。
仮に、修繕費として経費計上したものが実際には資本的支出として固定資産に計上しなければならなかった場合、経費から固定資産に振り替えた分だけ経費は少なくなり、利益が多くなるため、納税額も増えることになります。
よって、不動産賃貸業で税務調査が行われると、必ず税務調査官が調べる論点として修繕費として経費計上されているか、又は、資本的支出として固定資産計上されているかというものがあります。
今回はそんな修繕費(経費)か資本的支出(固定資産)かという論点の一つで、定期メンテナンス費用について実例を挙げて見ていきます。
定期メンテナンス費用に上手く当てはまれば、修繕費か資本的支出かの細かい検討をしないでも、修繕費として全額経費に計上することができます。
定期メンテナンス費用とは
定期メンテナンス費用(=定期修繕費用)とは、メンテナンス(=修理)がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが過去の実績その他の事情からみて明らかな工事に対する費用です(法人税法基本通達7-8-3)。
定期メンテナンス費用の具体例
では、実際に税務上の定期メンテナンス費用にあたるものにはどんなものがあるかを見ていきましょう。
その他の事情でも定期メンテナンス費用に該当する
上記の事例は過去の実績が売主の工事記録という客観的な資料ですぐに証明できる場合でした。
ただ、定期メンテナンス工事の修繕費計上を認めている法人税法基本通達7-8-3では、「過去の実績その他の事情」を要件としており、その他の事情でも修繕費に計上できる可能性があるとしています。
例えば、新築の建物の貯水タンクで過去のメンテナンス履歴がまだないものだとしても、3年周期で反復してメンテナンスが必要であるならば、そのメンテナンス費用は修繕費として経費に計上できる可能性があるわけです。
客観的な証拠を用意しておこう
過去の実績・その他の事情のどちらでも修繕費として経費に計上できる可能性はあるわけですが、いずれにしろ客観的な資料を必ず用意しておくことが必要と考えれます。
不動産売買時に売主から「この貯水タンクは古いので3年ごとにメンテナンスが必要だよ」と言われて、その記録をメモに取っているだけでも、修繕費として経費に計上できるかもしれません。
ただ、もしあなたが税務調査官で、納税者が売主から聞いた記録のメモだけで定期メンテナンス費用として工事費を修繕費に計上していた場合、調査時にそのヒアリングメモを納税者から見せられても、「本当か?」と思いますよね。
3年周期で反復してメンテナンス費用を計上しているという「客観的」な証拠(例えば、売主が保管している過去の工事実績表)があれば、要らぬ議論をせずとも良い訳です。
なぜメンテナンス費用として修繕費にしたいのか?
最後になぜメンテナンス費用として修繕費にしたいかということを説明してこの記事を終わりにしましょう。
工事見積書を確認して、本当に単なる修繕費になるのか、新たな部品が加わるなど実は耐用年数も伸びているため資本的支出になるのかを判別することは非常に難しい時があります。
それにも関わらず、もし定期メンテナンス費用でなければ、税務調査の時に「この工事は資本的支出ではなく、なぜ修繕費になるの?」という議論をしなくてはならなくなります。
「メンテナンス費用で3年周期で反復して支出する費用です。」と言えてしまえば、資本的支出と修繕費の細かい議論をしなくて良くなるため楽になります。
定期メンテナンス費用は、3年縛りという足枷があるため、少し使いづらい制度ですが、細かい議論をしなくて良いという大きなメリットもあることを覚えておきましょう。
コメント