- 所有物件に対して電波障害・日照妨害・騒音などがあり、原因者から補償金を貰い、機能復旧するために新しく施設・設備を購入した時の税務上の処理方法を知りたい人
不動産を所有していると近隣関係者から補償金を貰えることがあります。
例えば、隣に高層マンションが建設されて、日照妨害が起きれば隣の高層マンションの所有者から補償金を貰える可能性があります。
今回は、補償金を貰って固定資産を取得した時の税務上の処理を見ていくことにしましょう。
機能復旧補償金や固定資産取得の仕訳を確認しよう
まずは、機能復旧補償金を貰って固定資産を取得した場合の仕訳を事例で確認してみましょう。
- あなたは賃貸用マンションを所有しています。
最近、隣に高層マンションが建設されたため、電波障害が生じテレビが映らなくなりました。そこで、電波障害を解消するために新しい受信アンテナを300万円かけて設置しました。
高層マンションの施工主からは200万円の補償金をもらっています。経理上の仕訳はどのようにすれば良いでしょうか?
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- 高層マンションの施工主からもらった200万円
⇒雑収入(営業外収益) - 受信アンテナの設置費用のうち200万円
⇒修繕費(販売費及び一般管理費) - 受信アンテナの設置費用のうち100万円
⇒構築物(固定資産)
なお、構築物は10年で減価償却を行うことになります。
仕訳で表すと以下の通りになります。
【施工主からもらった機能復旧補償金】
借方金額貸方金額現金又は預金200万円雑収入200万円【受信アンテナ設置費用】
借方金額貸方金額修繕費
構築物200万円
100万円現金又は預金300万円 - 高層マンションの施工主からもらった200万円
機能復旧のために支出した費用が修繕費になる根拠について
不動産賃貸業を営んでいる事業者が所有している建物について、電波障害・日照妨害・風害・騒音による機能の低下があり、原因者から機能を復旧するための補償金の交付を受けた場合、その補償金をもとに、補償金の交付の目的に合致した固定資産を取得したときは、取得に充てた補償金額のうち、機能復旧のために支出したと認められる金額は、修繕費として経費に算入することができます(法人税基本通達7-8-7)。
また、原因者から補償金の交付を受けた事業年度終了の時までに、機能復旧のための固定資産の取得をすることができなかった時でも、翌事業年度に速やかに固定資産を取得することが確実な場合は、補償金額のうち、固定資産の取得に充てることが確実な金額は、固定資産を取得をする時まで「仮受金」として経理することができます。
上記で説明した事例は、隣に高層マンションが建ってしまった故の電波障害にあたり、あなたの賃貸用マンションに機能低下があったことになるため、補償金額のうち、受信アンテナの設置という機能復旧のために支出した金額200万円は修繕費として経費に計上して良いことになります。
なお、参考までに補償金を受領して、翌年度に機能復旧のための受信アンテナを設置した時の仕訳も記載しておきます。
【施工主からもらった機能復旧補償金】
借方
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金額
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貸方
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金額
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現金又は預金
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200万円
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仮受金
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200万円
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【翌期の受信アンテナ設置時】
借方
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金額
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貸方
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金額
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---|---|---|---|
修繕費
構築物 |
200万円
100万円 |
現金又は預金
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300万円
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【アンテナ設置時に行う仮受金の振替】
借方
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金額
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貸方
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金額
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仮受金
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200万円
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雑収入
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200万円
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大切なのは、補償金の受入れによる雑収入と補償金を充当したことにより発生した修繕費を必ず同じ事業年度に処理して利益も損失も出ないようにすることです。
補償金のうち修繕費とされる金額の範囲について
補償金を受け入れた場合に修繕費とされる金額の範囲について最後に注意事項を挙げておきます。
厳密に言うと、交付された補償金は、固定資産の取得のために交付された補償金と経費補償をするために交付された補償金に分かれます。
法人税法基本通達7-8-7で規定されている修繕費として計上できる補償金は固定資産の取得のために交付された補償金の部分だけです。
例えば、補償金が500万円交付されていて、そのうち300万円を機能復旧のための固定資産の取得に充て、残り200万円が経費補償だったします。
その場合、補償金として雑収入に計上されるのは500万円ですが、固定資産の取得時に修繕費として処理できるのは300万円までです。
残り200万円も経費補償なので、経費として当期に使用されていれば、もちろん経費になりますが、翌期に経費として使用されるかもしれませんし、使用しない場合もあります。
その場合、必ずしも当年度の雑収入=修繕費にならないので注意が必要でしょう。