- 不動産売買契約を解除した場合の買主側の仕訳を知りたい人
- 不動産売買契約を解除した時に必要経費又は損金を計上できるか知りたい人
- 不動産売買契約を解除した時の消費税の処理方法について知りたい人
手付金とは
手付金とは土地や建物の不動産売買契約時に買主から売主に支払われるお金です。
不動産取引では、まずは手付を伴う不動産売買契約が結ばれ、後日に不動産の引き渡し、手付金以外の残代金の支払いが行われます。
手付金の仕訳
手付を伴う不動産売買契約が締結され、買主と売主の間で実際に不動産の引き渡しと残代金の支払いが終われば、手付金は不動産の購入代金の一部を先に支払ったと考えられ、不動産の取得価額に計上されます。
つまり、買主が支払った手付金は土地・建物の取得価額の中に含まれ、有形固定資産の一部として計上されます。
- 土地売買契約を締結し、手付金100万円を支払った。
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借方金額貸方金額前渡金100万円現金又は預金100万円
- 後日、無事に土地の引き渡しと土地の残代金2000万円の決済が行われた。
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借方金額貸方金額土地2100万円前渡金現金又は預金100万円
2000万円
実際には、不動産売買契約を締結しても、売主が物件の引渡しをできない場合や買主が残代金の支払いをできない場合があります。
このような場合に買主は手付金を放棄することによって、売主は手付金を返還するとともにさらに手付金と同額のお金を買主に支払うことによって、不動産売買契約を解除できます。
手付金の金額は不動産会社が売主の場合では、売買代金の2割以内と決まっていますが、それ以外では特段の定めはありません。
相場としては売買代金の5%~10%のことが多いでしょう。
大抵は仲介に入っている不動産会社から金額を指定されることになります。
買主側が手付金を放棄することによる解約…という事態は避けたいところですが、万が一、手付金放棄により買主側が契約解除をする場合、手付金は必要経費(個人事業主)や損金(法人)になると覚えておくと良いでしょう。
少し救われたような気がしますね。
なお仕訳例は以下のようになります。
- 土地売買契約を締結し、手付金100万円を支払った。
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借方金額貸方金額前渡金100万円現金又は預金100万円
- 後日、資金難により、残代金を支払えないため、買主が手付を放棄し、不動産売買契約を解除した。
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借方金額貸方金額雑損失 ※100万円前渡金100万円
※雑損失は営業外費用に計上する勘定科目の中で、他のいずれの勘定科目にもあてはまらないものを計上するところです。
ただ、手付金は金額的に非常に大きいので、営業外費用の中に新しい勘定科目を作成することも考えられます。
なお、買主の手付放棄による雑損失は、売主に対する補てん金なので、資産の譲渡等の対価に該当せず、消費税の課税の対象とならないでしょう(不課税取引)。
消費税課税事業者で弥生会計などの会計システムで仕訳をする場合は気を付けてください。
違約金とは
売主が不動産売買契約義務の履行に着手してしまうと、買主は手付金放棄による契約解除はできなくなります。
この場合に、買主がどうしても契約を解除したければ違約金を支払うことになります。
なお、違約金についてはあらかじめ定められている場合もあり、相場的には、売買代金の10%ぐらいが多いです。
違約金の仕訳
仕訳としては以下のようになります。
注意点として、違約金を支払う契約解除の場合は、手付金は返還されるということです。
勿論、相殺される場合もあります。
- 土地売買契約を締結し、手付金100万円を支払った。
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借方金額貸方金額前渡金100万円現金又は預金100万円
- 後日、買主が不動産売買契約を解除した。なお、売主がすでに契約義務の履行に着手してしまっていたので、手付金による解除を行えず、手付金100万円を相殺した後、違約金200万円を支払った。
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借方金額貸方金額雑損失 ※300万円前渡金
現金又は預金100万円
200万円
なお、違約金の支払いによる雑損失についても、消費税の課税の対象となりません(不課税取引)。
「手付金が解約手付の意味合いなら、違約金は発生しないのではないか?」という質問を頂きました。
売主が不動産売買義務の履行に着手してしまうと、買主側から手付金放棄による解約はできなくなります。
よって、仕訳の処理上も厳密には手付金の返還の仕訳と違約金の支払いの仕訳が必要になります。
例)
①手付金返還の仕訳
現金預金100万円/前渡金100万円
②違約金支払いの仕訳
雑損失200万円/現金預金200万円
なお、ブログ記事の中では、実務の場合に行われる手付金と違約金の相殺処理後の仕訳を記載しています。