法人が事業を営む中で、部屋を2つに分けるために壁を設けるような工事をしたり、電気工事・水道工事などを行うことがあると思います。
これらの工事を総称して内部造作工事と言いますが、内部造作工事に要した費用は、支出年度に全額を損金(経費)に算入することはできず、いったん固定資産に計上され、減価償却を通して徐々に損金(経費)に算入していくことになります。
今回は、減価償却の計算で重要になる内部造作工事の耐用年数をどう決めていくかを考えていきましょう。
- 自己所有か他人所有かで内部造作工事の耐用年数は異なる。
- 自己所有建物の内部造作工事の場合は、元の建物の耐用年数と同じになる。
- 他人所有建物の内部造作工事の場合は、合理的に見積もった耐用年数になる。
- 内部造作工事が建物附属設備に該当する場合は、内部造作工事は建物附属設備の耐用年数で減価償却する。
内部造作とは
建物の床・天井・壁紙などの大掛かりな内装工事や電気・給排水工事をして取り付けられたものを内部造作といいます。
「自己所有」か「他人所有」かが非常に大事
まず最初にどうしても抑えておいて欲しい点は、「自己所有」の建物か「他人所有」の建物かにより、内部造作工事の耐用年数の決め方が異なるという点です。
不動産を所有している会社の場合、「自己所有」の建物に内部造作工事を行うことになります。
逆に不動産を所有していない会社の場合、オフィスや店舗を「賃借して」事業を営むため、「他人所有」建物に内部造作工事を行うことになります。
もし、「自己所有」建物の内部造作工事の耐用年数を、「他人所有」建物の内部造作工事の耐用年数で処理してしまうと、本来採用すべき耐用年数の半分ほどで減価償却費を計算してしまうことになり、非常に大きな金額の間違いに繋がる可能性もあります。
「自己所有」の建物に対する内部造作工事は金額が多額になりやすく、間違った時の影響も大きくなりますので、慎重に処理しましょう。
法人税法の取り扱いでは、工事が固定資産の取得と判断された場合、工事代金全額を一度に損金(経費)に計上することは出来ず、減価償却を通して毎年徐々に損金(経費)に計上していくことになります。
徐々に損金(経費)に計上する際に大切になるのが耐用年数で、耐用年数が短くなるほど、一年間に損金(経費)に計上出来る金額は多くなります。
自己所有の建物への内部造作工事
自己所有の建物への内部造作工事については、造作の構造が建物の構造と異なった場合でも、区分せず、建物に含めて建物の耐用年数を適用することになります。
例えば、事務所用の鉄筋コンクリート造の建物に木造の内部造作(ドア等)を設置した場合には、鉄筋コンクリート造の耐用年数(50年)を適用することになります。
木造(24年)の耐用年数と大幅にかけ離れた耐用年数を適用することになりますので注意が必要です。
木造の内部造作(ドア等)を建物から分離して、木造の耐用年数(24年)を適用したいところですが、法人税法上、残念ながら許されていません。
そもそも、木造の内部造作(ドア等)を50年も使える訳がないのですが、法人税法上は「課税の公平性」を維持するために適当な耐用年数を定めているだけです。
実際のところは、10年~20年位して、「除却をする際に」取得価額から減価償却累計額を差し引いた帳簿価格が損金(経費)として計上されるので問題ないというのが法人税法上の建付けなのでしょう。
他人所有の建物への内部造作工事
法人が、事務所や店舗などを「賃借」して、内部造作工事を行った場合の耐用年数は、建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積もった耐用年数になります。
【例:事務所を借りて、1部屋を2部屋に区切った場合の内部造作工事の見積り耐用年数】
工事名称
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取得価額
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個別耐用年数
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1年の減価償却費
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軽鉄工事
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200万円
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38年
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52,631円
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木工造作工事
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150万円
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24年
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62,500円
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合計
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350万円
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30年 ※
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115,131円
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※ 350万円÷115,131円=30.04年⇒30年(小数点切捨て)
建物附属設備に該当する場合
内部造作が電気設備・給排水設備・衛生設備・ガス設備に当たる場合は、自己所有の建物でも他人所有の建物でもその部分は建物附属設備に該当するため15年の耐用年数になります。
勘定科目も他の内部造作工事は「建物」勘定で処理されるのに対して、ここの部分だけは、「建物附属設備」で区分処理されます。
まとめ
繰り返しになりますが、「自己所有」の建物の耐用年数を「他人所有」の建物の耐用年数で処理してしまうと、影響が大きくなってしまうので、もしあなたが建物所有者である場合、細心の注意が必要になることを覚えておきましょう。