相続税の課税対象の範囲について!どの資産が課税対象になるの?

相続税を納税する義務があるかどうかの判断も含めて、相続税の納税額を計算するためには相続税の課税対象になっている財産等をすべて把握する必要があります

では、どんな財産が相続税の課税対象になるのでしょうか?

今回は、相続税の課税対象の範囲と金額について解説していきます。

課税対象について

相続税は、亡くなった人(被相続人)から相続・遺贈・死因贈与により取得したすべての財産の「合計額」を課税対象としています

この課税対象の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)を上回っていれば、相続税を納税する義務が生じ、下回っていれば、納税額はないことになります。

なお、遺贈とは、遺言により遺言者(将来の被相続人)の財産を無償で譲ることです。

死因贈与とは、贈与者(将来の被相続人)と受贈者(将来の相続人等)の間で、贈与者が死亡した時に、財産を受贈者に贈与するという「契約を結ぶこと」です。

遺贈は遺言者(将来の被相続人)1人で出来てしまう行為であるのに対して、死因贈与は、贈与者(将来の被相続人)と受贈者(将来の相続人等)の2人がいないとできない契約である点で両者は異なります。

課税対象の金額の計算式

相続税の課税対象の金額は以下の計算式で求めることができます。

課税対象の金額
    相続財産の価額(遺贈・死因贈与も含む)+みなし相続財産の価額+相続時精算課税制度適用財産の価額+相続開始前3年以内の贈与財産の価額-非課税財産の価額-債務控除の額

相続財産の価額(遺贈・死因贈与も含む)

相続財産だけでなく、遺贈・死因贈与により取得された財産も相続税の課税対象に含まれますので注意が必要です。

なお、「財産」とは金銭で見積もることができる経済的価値のあるもの(家・土地・車・預金など)のことを指します。

有形・無形を問わず、経済的価値があればなんでも相続税の課税対象になります。

つまり、借地権や信託受益権などは経済的価値があるので、相続税の課税対象になり、抵当権などは従たる権利で経済的価値がないので相続税の課税対象にはなりません

みなし相続財産

亡くなった人(被相続人)の相続により取得した財産ではないのですが、それと同様の経済的価値がある財産を被相続人の死亡により相続人等が取得する場合があります

これをみなし相続財産と言い、代表的なものに生命保険金死亡退職金などがあります。

生命保険金や死亡退職金は相続税の課税対象になります

相続時精算課税制度適用財産の価額

相続時精算課税制度とは、受贈者(将来の相続人)が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができ、贈与者(将来の被相続人)が亡くなった時にその贈与財産の「贈与時の価額」を相続税の課税対象に含める制度です。

簡単言えば、「相続税を支払う時まで贈与税の支払いを免除してあげますよ」という制度です。

よって、相続税の課税対象に相続時精算課税制度適用財産の価額が含まれます

相続開始前3年以内の贈与財産の価額

相続・遺贈・死因贈与により財産を取得した人が、相続の開始する3年「前」以内に贈与により財産を取得していた場合、相続税の課税対象に贈与財産の価額が算入されます

なお、算入される財産の価額は相続時の価額ではなく「贈与時の価額」になりますので注意が必要です。

例えば、有価証券で相続時の価額が100万円でも、贈与時の価額が300万円ならば、300万円が相続開始前3年以内の贈与財産の価額として算入されます。

また、相続開始前3年以内に贈与が行われていても、その受贈者が被相続人から相続・遺贈・死因贈与により財産を取得していない場合は、贈与財産の価額の算入はありません。

ただし、みなし相続財産(生命保険金や死亡退職金など)を相続により取得した人が相続開始前3年以内に贈与を受けていた場合は、贈与財産の価額が相続税の課税対象に算入されますので注意が必要です。

非課税財産の価額

相続・遺贈・死因贈与により取得した財産でも社会政策的見地や残された遺族の生活保障により相続税の課税対象から除外される財産があります

代表的なものに墓地や墓石(その敷地も含む)仏壇生命保険金や死亡退職金のうち一定額(それぞれ500万円×法定相続人の数)などがあります。

債務控除の額

亡くなった人(被相続人)に借入金などの債務がある場合は、その金額を財産から差し引く必要があります。

また、葬式費用や被相続人死亡後の公租公課の支払いなども、亡くなった人が残した財産から差し引いてやることが自然だと考えられます。

よって、被相続人が残した借入金の残高、葬式費用、公租公課などを債務控除の額として相続税の課税対象から差し引くことになります

まとめ

相続税の課税対象の金額は上記の計算式を覚えておけば計算できます。

ただし、重要な点として、上記の計算式は「各」相続人ごとに行い、最後に「合算する」必要があるということです。

例えば、葬式費用は通常債務控除の額として差し引くことになりますが、相続人が相続放棄をしている場合は、差し引くことができません。

必ず各々計算した後に合算する必要があるという認識だけは持っていてください。