相続が発生すると、民法と相続税法という2つの法律に従い、相続財産を分割したり、相続税を支払ったりすることになります。

民法・相続税法ともに重要な要素として、「相続財産」があるのですが、実は、民法と相続税法で「相続財産」の範囲が異なります

そこで、今回は民法と相続税法の相続財産の範囲の違いである「みなし相続財産」について解説していきます。

この「みなし相続財産」の取り扱いは、非常に繊細で、相続において様々なトラブルが生じる原因になります

出来れば、相続税対策をする前に、この記事を読んでもらえればベストだと思います。

民法上の相続財産について

民法上の相続財産の例としては、以下のものがあります。

民法上の相続財産一覧
  1. 現金
  2. 預金
  3. 株式
  4. 土地
  5. 借地権
  6. 家屋
  7. 絵画・骨董品
  8. 貴金属
  9. 自動車

民法上の相続財産は、亡くなった人(被相続)が所有していたもののため比較的分かり易いと考えられます。

なお、土地の所有権だけでなく、借地権も相続財産に含まれますので、ご注意ください。

相続税法上の相続財産

民法上の相続財産より相続税法上の相続財産は範囲が広くなります

具体的には、みなし相続財産というものが民法上の相続財産にプラスされます

みなし相続財産とは、相続・遺贈によって承継されたものではないのですが、相続・遺贈によって承継されたものと同じ経済的効果を持つ財産のことです。

例えば、生命保険金は、亡くなった人(被相続人)の直接的な財産ではないですが、被相続の死亡により相続人が取得するものであり、相続等により承継されたものと同じ経済的効果を持ちます。

極端な例ですが、相続人が相続により取得した現預金が0円で、その代わりに生命保険金を1億円取得していた事例で相続税が0円と計算されてしまっては、実際は相続により1億円取得しているのだから、おかしいと感じるでしょう。

よって、生命保険金等のみなし相続財産は相続税法上の相続財産に含まれることになります。

なお、相続税法上のみなし相続財産には次のようなものがあります。

みなし相続財産
  1. 生命保険金(500万円×法定相続人の数を超える金額)
  2. 死亡退職金(500万円×法定相続人の数を超える金額)
  3. 生命保険契約に関する権利
  4. 家族以外の生前被相続人の世話していた人に対する相続財産の分与
  5. 被相続人の生前に財産や生計の確保の為に貢献した相続人に対する支払金銭
  6. 低額譲渡
  7. 債務の免除
  8. 信託受益権

生命保険契約に関する権利とは、夫が妻を保険の対象者として保険に加入し、保険料を支払っていた場合に、夫が亡くなって、妻が保険契約を引き継いだ場合の権利のことです。

この生命保険契約は、妻が亡くなるまで続き、掛け捨て保険でなければ、解約返戻金が存在するので、経済的効果があるものであり、みなし相続財産となります。

低額譲渡や債務免除は遺言により、著しく低い価格や無償で財産の譲渡や債務の免除を受けた時、時価との差額について経済的利益を得たと判断され、みなし相続財産になります。

相続放棄とみなし相続財産の関係

相続放棄をしてもみなし相続財産を取得することは可能です。

例えば、生命保険金について、受取人が相続放棄をした者になっていても、受取人固有の財産とみなされますので、当然相続放棄をした者は生命保険金を受け取れます。

ただし、相続税の計算上は注意が必要になります。

生命保険金には、残された家族の生活を保障する役割があるため、「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設定されています。

この法定相続人の数には、相続放棄をした者も含まれます(相続放棄をしていないものとして扱われます)。

ただし、そもそも非課税枠を利用できる人は、相続放棄をしていない法定相続人に限られます

つまり、相続放棄により相続人に該当しなくなった者が生命保険金を受け取った場合、非課税枠自体が利用できず、退職金の全額がみなし相続財産として相続税の対象となってしまいます

遺産分割とみなし相続財産の関係

前述の通り、民法上の相続財産と相続税法上の相続財産はみなし相続財産分だけ異なります。

みなし相続財産は相続税の納税額に不公平が生じないように、相続税法上、相続財産とみなしているに過ぎません。

一方、遺産分割は民法上の相続財産を基に行いますので、当然、みなし相続財産は遺産分割の対象に含まれません

遺留分とみなし相続財産の関係

遺留分とは、遺言の有無に関わらず、法定相続人に最低限の相続財産を取得することを認めた権利です。

遺留分は民法上の制度なので、相続税法上の財産であるみなし相続財産は対象外になります

そこで、法定相続人間の仲が悪いと遺留分において争いが生じる可能性が残ります

例えば、遺言書で親が2人の兄弟に「兄に土地、弟に生命保険金を残す」と記載したとします。

親が亡くなり、実際に相続が発生した時に、兄は遺言に基づき遺産分割を行おうとしましたが、弟は遺留分として土地の2分の1の所有権を求めることが出来てしまいます

親は兄と弟が喧嘩しないように半分ずつ財産を分けたつもりでしたが、実際には兄は土地の半分、弟は生命保険金と土地の半分を取得する可能性が高くなりますし、その間で兄弟間の仲はさらに悪化することが考えられます。