土地や建物を売ったとき、その売却損益は「契約した日」と「引き渡した日」のどちらで計上すればよいのか、迷ったことはありませんか。
売却損益を計上する事業年度が1年ずれるだけで、納める税金のタイミングが大きく変わることもあります。
この記事では、事業用の土地・建物(固定資産)を売却したときの計上時期について、引渡日基準と契約日基準の違い、法人と個人それぞれの取り扱い、期末をまたぐときの注意点を、仕訳例つきで税理士がわかりやすく解説します。
不動産売却の計上時期は「引き渡した日」が原則です
事業用の土地・建物を売却したときの売却損益は、原則として買主に土地・建物を引き渡した日に計上します。
「土地・建物を引き渡した日」とは、買主がその土地・建物を自由に使える状態になった日を指します。
売主は、この日を基準に売却損益を計上します。この考え方を引渡日基準といいます(法人税基本通達2-1-14、所得税基本通達36-12)。
ただし、土地・建物については例外があり、売買契約の効力が発生した日(通常は契約締結日)に売却損益を計上する契約日基準も認められています。
なお、引渡日基準と契約日基準は、いったん選んだ基準を継続して適用するのが原則です。法人・個人を問わず、その期(その年)だけ有利なほうに変えることはできません。
ところが不動産の取引では、契約日・決済日・登記日と日付が分かれるため、どの日を「引き渡した日」とみるかが分かりにくくなります。次の章で確認しましょう。
不動産の「引き渡した日」は決済日|契約日・登記日との違い
前章の「買主に土地・建物を引き渡した日」とは、実務では決済日を指します。
不動産の売買には、大きく3つの節目があります。
①売買契約を結ぶ契約日、②残代金を決済して土地・建物と登記書類を受け渡す決済日、③法務局で登記が終わる登記完了日です。
このうち、どの日を「引き渡した日」とみるかが問題になります。
税法では、引き渡した日を資産に対する支配が買主に移った日で判断します。
買主がその土地・建物を自由に使えるようになる、つまり支配が移るのは、代金を決済して土地・建物と登記に必要な書類を受け取る決済日です(法人税基本通達2-1-14、所得税基本通達36-12)。
3つの節目を表で整理します。
| 節目 | 起きること | 引き渡した日か |
|---|---|---|
| 契約日 | 不動産売買契約を結ぶ | × まだ支配は移っていない (決済日までは売主が土地・建物を利用し続けられる) |
| 決済日 | 残代金の決済・土地・建物と登記書類の受け渡し | ◯ 支配が買主に移る (買主が土地・建物の利用を始める) |
| 登記完了日 | 法務局で登記が終わる | × すでに支配が買主に移っている (登記は所有権を第三者に主張するための対抗要件にすぎないので、契約当事者の法律関係には関係しない) |
したがって、引渡日基準でいう「引き渡した日」は決済日で確定します。
注意したいのは、登記が完了した日を引き渡した日と勘違いしないことです。
登記は第三者に所有権を主張するための手続き(対抗要件)で、計上時期そのものを決めるものではありません。
期末をまたぐ土地・建物の売却の計上時期|計算例と仕訳
同じ土地・建物の売却でも、引渡日基準と契約日基準のどちらを使うかで、売却損益を計上する事業年度が1年変わります。
具体例で確認しましょう。
3月末決算の法人が、3月20日に土地(帳簿価額8,000万円)の売買契約を結び、4月10日に代金1億円を受け取って引き渡し、4月25日に登記が完了したケースです。
何が変わるのかを表で確認します。
| 基準 | 売却損益計上日 | 売却損益計上年度 |
|---|---|---|
| 引渡日基準(原則) | 4月10日 | 翌期(4月以降の事業年度) |
| 契約日基準(特例) | 3月20日 | 当期(3月決算の事業年度) |
このときの仕訳例は次のとおりです(売却益は1億円−8,000万円=2,000万円)。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 1億円 | 土地 | 8,000万円 |
| 固定資産売却益 | 2,000万円 |
期末をまたぐ土地・建物の売却では、契約日基準を利用するか、引渡日基準を利用するかで売却損益が別々の事業年度に分かれることになります。
ただし、選んだ基準は継続して使うことが条件で、その期だけ都合よく変えることはできません。
引渡日基準と契約日基準の比較
引渡日基準と契約日基準のどちらを使うかで、土地・建物の売却損益が入る事業年度が変わります。
どちらを使うかが問題になるのは、初めて土地・建物を売却して基準を選ぶときか、正当な理由があって基準を自発的に変更するときです。
2つの基準を並べて比較します。
| 基準 | 売却損益を計上する日 | 売却損益が入る事業年度 | 選択の判断基準 |
|---|---|---|---|
| 引渡日基準 | 引き渡した日 (決済日) | 引き渡した日の属する事業年度 | ・当期が黒字のとき、土地・建物の売却益を翌期に繰り延べて当期の利益の上乗せを避けられる ・当期が赤字のとき、土地・建物の売却損を翌期に繰り延べて翌期の利益と相殺できる |
| 契約日基準 | 契約した日 (効力発生日) | 契約した日の属する事業年度 | ・当期が黒字のとき、土地・建物の売却損を当期に計上して利益を抑えられる ・当期が赤字のとき、土地・建物の売却益を当期に計上して赤字を埋められる |
なお、原則として、売主がいったん採用した基準は、その期だけ都合よく変えることはできません。
変更できるのは、事業内容や経営環境の変化に対応して、より適切な処理にするための正当な理由がある場合に限られます。
正当な理由があって基準を自発的に変更するときには細心の注意を払ってください。
売却にかかる消費税の計上時期|建物は課税・土地は非課税
建物の売却には消費税がかかり、その消費税は売却損益と同じ日に課税売上として計上します。土地の売却には消費税はかかりません。
建物の消費税を計上する「同じ日」とは、引渡日基準なら引き渡した日、契約日基準なら契約した日です(消費税法基本通達9-1-13)。
土地と建物をまとめて売るときは、売却代金を土地分と建物分に分け、建物分にだけ消費税がかかります。
土地・建物の売却の計上時期で間違えやすい3つの注意点
土地・建物の売却の計上時期で売主が間違えやすいのは、次の3つです。
| 注意点 | よくある間違い | 正しい扱い |
|---|---|---|
| ①登記日との取り違え | 登記が完了した日に計上する | 計上日は引き渡した日か契約した日。登記は対抗要件で計上日ではない |
| ②基準の安易な変更 | その期だけ有利な基準に変える | 原則は、いったん選んだ基準を継続して使う |
| ③棚卸資産との混同 | 販売用の不動産も同じ基準で計上する | 販売用(棚卸資産)は別ルール(以下の関連記事参照) |
関連記事

まとめ|土地・建物の売却の計上時期のポイント
土地・建物の売却の計上時期は、次の要点を押さえておけば大丈夫です。
- 売主は、土地・建物の売却損益を、原則として引き渡した日に計上する
- 契約した日に計上する契約日基準も選べる。ただし同じ基準を続けて使うことが条件
- 法人は益金、個人は譲渡所得として計上時期を判断する(法基通2-1-14・所基通36-12)
- 登記が完了した日は、売却損益を計上する日には関係しない
- 建物の売却には消費税がかかり、売却損益と同じ日に計上する。土地の売却に消費税はかからない
- 販売用の不動産(棚卸資産)を売ったときは、計上時期が別のルールになる(↑に関連記事あり)
期末をまたぐ売却では、計上時期の選び方で税金のタイミングが変わります。
判断に迷うときは、税理士にご相談ください。
出典・参考
- 国税庁 法人税基本通達2-1-14(固定資産の譲渡に係る収益の帰属の時期)
- 国税庁 所得税基本通達36-12(譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期)
- 国税庁 タックスアンサー No.6201(非課税となる取引)
- 国税庁 タックスアンサー No.3240(個人が事業用建物等を譲渡した場合の消費税)
- 国税庁 消費税法基本通達9-1-13(固定資産の譲渡の時期)
- e-Gov 法人税法第22条の2
よくある質問
- 土地を売りました。売却益はいつ計上しますか?
-
原則として、買主に土地を引き渡した日(=代金の決済日)に売却損益を計上します。土地・建物は、売買契約を結んだ契約日に計上することも認められています。
- 登記が完了した日に売却損益を計上するのではないのですか?
-
いいえ。登記が完了した日は、売却損益を計上する日ではありません。計上するのは引き渡した日か契約した日で、登記は所有権を他の人に主張するための手続きにすぎないからです。
- 法人と個人で売却損益の計上時期は違いますか?
-
計上する時期の考え方は、法人も個人も同じで、原則は引き渡した日です。違うのは、法人は益金として(法基通2-1-14)、個人は譲渡所得として(所基通36-12)扱う点です。どちらも契約した日を売却損益の計上時期に選べますが、選んだ基準は続けて使う必要があります。
- 建物を売ったときの消費税は、いつの売上に含めますか?
-
売却損益を計上する日と同じで、引き渡した日か契約した日の課税売上に含めます(消費税法基本通達9-1-13)。土地の売却には消費税はかかりません。


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