「オフィスや店舗の内装工事をしたけれど、何年で減価償却すればいいの?」と迷っていませんか。
内部造作の耐用年数は、建物が自己所有か賃借(他人所有)かで決め方がまったく異なります。
ここを間違えると毎年の減価償却費がズレてしまい、税務調査で指摘されるおそれもあります。
この記事では、不動産業を専門とする税理士が、国税庁の通達を根拠に、内部造作の耐用年数の判定基準・計算例・勘定科目まで初心者向けにわかりやすく解説します。
内部造作とは?内装工事でつくられた建物内部の資産
内部造作とは、内装工事によって建物の内部に取り付けられた床・壁・天井・間仕切りなどの造作物のことです。
代表例は、次のような内装工事です。
- 部屋を仕切る壁(間仕切り)の設置
- 床・天井・壁紙の張り替え
- 電気・給排水の工事
これらの費用は、支払った年に全額を経費にすることはできません。
いったん資産に計上し、減価償却(=費用を何年かに分けて少しずつ経費にする仕組み)で経費化していきます。
今回の本題に入る前に、この記事で繰り返し登場する基本用語を表で整理しておきます。
- 内部造作
-
内装工事で建物の内部に取り付けられた床・壁・天井・間仕切りなどの造作物のことです。
- 法定耐用年数
-
税法が資産の種類・構造・用途ごとに定めた標準の使用可能期間のことです(耐用年数省令の別表)。新品で取得した資産には、原則としてこの年数を使います。
- 耐用年数
-
減価償却費の計算の基礎になる、その資産の使用可能期間のことです。実際に適用している年数を指し、中古で取得した建物などでは法定耐用年数と異なることがあります。
- 建物附属設備
-
電気設備(照明設備を含む)・給排水や衛生設備・ガス設備・冷暖房設備・昇降機・可動間仕切りなど、建物と一体になって機能する設備のことです。税法上は耐用年数省令の別表第一に細目が列挙されており、この区分に当てはめて判定します(列挙にない設備は「前掲のもの以外のもの」という区分に含めます)。
- 定額法
-
毎年同じ金額を減価償却費として計上する計算方法です。建物や内部造作はこの方法で償却します。
ここまでが用語の整理です。次に、耐用年数を判定するうえで最も重要な「建物の所有区分」を確認します。
内部造作の耐用年数は「自己所有」か「賃借」かで決まる
内部造作の耐用年数は、工事をした建物が自己所有か賃借かで決め方が変わります。これが本記事の結論です。
| 区分 | 耐用年数の決め方 | 根拠 | 償却方法 |
|---|---|---|---|
| 自己所有の建物 | 建物本体と同じ耐用年数(建物附属設備に該当する部分を除く) | 耐用年数通達1-2-3 | 定額法 |
| 賃借(他人所有)の建物 | 造作の種類・用途・材質から合理的に見積もった年数 | 耐用年数通達1-1-3(タックスアンサーNo.5406) | 定額法 |
内装工事をした建物が自己所有か賃借かを確認します。ここがすべての出発点です。
電気・給排水・冷暖房など建物附属設備に当たる工事は、附属設備の耐用年数を使います。
自己所有なら建物本体と同じ年数、賃借なら合理的に見積もった年数を適用します。
全体像がつかめたところで、まず自己所有建物のルールから具体的に見ていきましょう。
自己所有建物の内部造作は「建物本体と同じ耐用年数」
自己所有の建物に行った内部造作は、建物附属設備に該当する場合を除き、建物本体と同じ耐用年数を適用します(耐用年数通達1-2-3)。
このとき適用する年数は、新築を前提とした法定耐用年数とは限りません。
オフィスや店舗など建物本体の耐用年数は、すでに固定資産台帳(=資産ごとに取得価額や耐用年数を記録した一覧表)で決まっています。
内部造作には、固定資産台帳に記載された建物本体の耐用年数をそのまま使います。
中古で取得した建物などは、法定耐用年数と異なる耐用年数になっていることがあります。建物本体の耐用年数がどう決まっているかは、中古物件の耐用年数の計算方法も参考になります。
一方、建物附属設備に該当する工事(電気・給排水など)は、決め方が異なります。
附属設備には建物本体の年数を使いません。設備の種類ごとに定められた法定耐用年数(多くは15年)を適用します。
両者の違いをまとめると、次のとおりです。
| 区分 | 耐用年数の決め方 | 年数の例 |
|---|---|---|
| 床・壁・天井などの内部造作 | 建物本体と同じ年数(固定資産台帳の年数) | 建物本体が50年なら50年 |
| 建物附属設備に該当する工事 | 設備の種類ごとの法定耐用年数 | 給排水設備15年・蓄電池電源設備6年など |
次は、オフィスや店舗を借りて事業をしている会社に関係する、賃借建物の内部造作の耐用年数のルールです。
賃借建物(他人の建物)の内部造作は「合理的に見積もった耐用年数」
賃借した建物に行った内部造作は、その建物の耐用年数や造作の種類・用途・材質をもとに合理的に見積もった年数で償却します(国税庁タックスアンサーNo.5406)。
「合理的に見積もる」とは、その内装があと何年使えるかを、材質や工事内容といった客観的な事実から説明できる形で決めることです。
最終的に適用する耐用年数は、1つだけです。
同一の建物に行った造作は、まとめて一の資産として総合的に見積もります。部分ごとに別々の年数で償却することはできません。
ただし、電気設備や給排水設備など建物附属設備に該当する部分は区分し、附属設備の耐用年数(多くは15年)で償却します。
では、この「合理的に見積もった年数」は実務でどう決めるのでしょうか。決め方は原則と特例の2つに整理できます。
【原則】工事明細から加重平均で見積もる
実務では、工事明細を使って次の3ステップで総合的に耐用年数を見積もる方法が定石です。
先ほど見たとおり、電気・給排水など建物附属設備に当たる部分は別枠(法定耐用年数)です。残った造作が見積りの対象になります。
内容ごとに材質などから妥当な年数を仮に付し、「金額÷年数」で年あたりの要償却額を計算します。この仮の年数をそのまま償却に使うわけではありません。
1年未満の端数は切り捨てます。こうして全体に適用する1つの年数が決まり、計算過程がそのまま見積りの根拠資料になります。
【計算例】賃借した店舗の内装工事(造作部分の合計3,800万円)の場合
| 造作の内容 | 金額 | 見積年数 | 年あたりの要償却額 |
|---|---|---|---|
| ショーウインドウ | 1,000万円 | 16年 | 62.5万円 |
| 床の防水タイル | 800万円 | 10年 | 80万円 |
| 木造の内装部分 | 2,000万円 | 22年 | 90.9万円 |
| 合計 | 3,800万円 | - | 233.4万円 |
総合耐用年数=3,800万円÷233.4万円≒16.2年 → 16年(端数切捨て)で全体を償却します。
【特例】賃借期間を耐用年数にできる(要件は2つ)
次の2つの要件を両方満たす場合は、賃借期間そのものを耐用年数として償却できます。
- 賃借期間の定めがあり、契約の更新ができないこと
- 有益費の請求や買取請求ができないこと(=かけた内装代を退去時に貸主へ請求できないこと)
例えば更新できない10年の定期借家契約で、内装代の買取請求もできない場合は、10年で償却できます。
短い期間で経費化できるため、要件を満たすか必ず契約書で確認したい特例です。
建物附属設備に該当する内装工事の耐用年数一覧
ここまでの章でたびたび登場した「建物附属設備に該当する部分」の耐用年数を、この章で一覧表にまとめます。
前述の通り、電気・給排水・冷暖房などの設備工事は、内部造作と区分して建物附属設備の耐用年数を適用します。
| 設備の種類 | 細目 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 電気設備(照明設備を含む) | 蓄電池電源設備 | 6年 |
| 電気設備(照明設備を含む) | その他のもの | 15年 |
| 給排水・衛生設備、ガス設備 | - | 15年 |
| 冷房・暖房・通風・ボイラー設備 | 冷暖房設備(冷凍機の出力22kW以下) | 13年 |
| 冷房・暖房・通風・ボイラー設備 | その他のもの | 15年 |
| 可動間仕切り | 簡易なもの | 3年 |
| 可動間仕切り | その他のもの | 15年 |
| 店用簡易装備 | - | 3年 |
ここまでで耐用年数の決め方が出そろいました。次は具体的な金額で減価償却費を計算してみます。
内部造作の減価償却の計算例【定額法】
内部造作は税務上「建物」として扱われるため、減価償却の方法は定額法です。定率法は選べません(国税庁No.5406 内部造作の減価償却方法)。
【設例1】自己所有の建物に内部造作をした場合
自己所有の鉄筋コンクリート造の事務所ビル(固定資産台帳の耐用年数50年)に、内部造作900万円の内装工事をした場合で計算します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得価額 | 900万円 |
| 耐用年数 | 50年(建物本体と同じ=固定資産台帳の年数) |
| 定額法の償却率 | 0.020 |
| 年間の減価償却費 | 900万円×0.020=18万円 |
決算時の減価償却の仕訳は、次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 18万円 | 建物 | 18万円 |
【設例2】賃借した店舗に内部造作をした場合
賃借した店舗に、内部造作600万円の内装工事をした場合で計算します。
| ケース | 耐用年数 | 計算式 | 年間の減価償却費 |
|---|---|---|---|
| 原則(合理的見積り) | 15年と見積り | 600万円×0.067 | 40万2,000円 |
| 賃借期間の特例 | 10年(更新不可・買取請求不可) | 600万円×0.100 | 60万円 |
いずれも「取得価額×定額法の償却率」で計算します。
同じ工事でも、特例が使えると年間の経費が約20万円多くなります。
原則どおり15年と見積もった場合の、決算時の減価償却の仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 40万2,000円 | 建物 | 40万2,000円 |
内部造作の勘定科目と仕訳例
内部造作の勘定科目は「建物」、附属設備に該当する部分は「建物附属設備」です。賃借物件の内装でも、資産としては建物勘定で計上します。
【仕訳例】内装工事900万円(床・壁・天井の造作600万円、給排水・電気設備300万円)を普通預金から支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 建物 | 600万円 | 普通預金 | 900万円 |
| 建物附属設備 | 300万円 |
同じ建物への造作は、まとめて一の資産として判定します。
工事明細を分割して1件あたりの金額を小さく見せることはできず、判定は造作全体の合計額で行います。中小企業者等の少額減価償却資産の特例(取得価額40万円未満・租税特別措置法67条の5)を使えるかどうかも、この合計額で判定します(特例の詳細は記事末尾のFAQをご覧ください)。
ここまでの内容を踏まえて、実務でよくある間違いをまとめて確認します。
内部造作の耐用年数でよくある間違い【注意点】
税務調査で指摘されやすいのは、次の3つの間違いです。
✕ 賃借建物(他人の建物)の内部造作で、工事明細ごとに個別の年数を適用
◯ 賃借建物の内部造作は、まとめて1つの資産として総合的に見積もります。
✕ 賃借建物(他人の建物)の内部造作で、更新できる普通借家なのに賃借期間で償却
◯ 賃借期間の特例は「更新不可」かつ「買取請求不可」の場合だけです。
✕ 修繕費にできる費用まで資産計上
◯ 原状回復のための工事や、既存の内部造作を撤去するための費用は、修繕費にできる場合があります。
それでは、この記事の要点を振り返ります。
まとめ|内部造作の耐用年数は「所有区分」の確認から
この記事のポイント
- 内部造作の耐用年数は自己所有か賃借かで決め方が異なる
- 自己所有の建物は建物本体と同じ耐用年数(建物附属設備を除く)
- 賃借の建物の耐用年数は合理的に見積もった年数。要件を満たせば賃借期間でもよい
- 償却方法は定額法、勘定科目は建物・建物附属設備
内部造作の耐用年数に関するよくある質問
- 賃借物件の内装工事の耐用年数は一律15年ですか?
-
一律15年にはなりません。
賃借建物の内部造作は、造作の種類・用途・材質から合理的に見積もった年数で償却します(国税庁No.5406)。
実務では、工事明細から加重平均で見積もると結果的に15年前後に収まる例が多いため「15年」がよく使われますが、「一律15年」と定めた規定はありません。
見積りの計算過程を根拠資料として残しておきましょう。
- 内部造作の減価償却に定率法は使えますか?
-
使えません。
内部造作は建物附属設備に該当する部分を除き建物として扱われ、平成19年4月1日以後に取得したものは定額法で償却します(国税庁No.5406質疑応答)。
- 少額の内部造作は一括で経費にできますか?
-
中小企業者等であれば、取得価額40万円未満の減価償却資産を年合計300万円まで全額損金にできる特例があります(租税特別措置法67条の5・国税庁No.5408。適用期限は2029年3月31日までの取得分)。
対象資産の種類は限定されていないため、内部造作(建物)も使えます。
ただし同一建物の造作はまとめて一の資産として判定するため、工事の合計額で40万円未満かどうかを判定します。
- 内部造作の耐用年数を「賃借期間」にできるのはどんな場合ですか?
-
「契約に賃借期間の定めがあり、更新ができない」「有益費の請求や買取請求ができない」という2つの要件を両方満たす場合です。
この場合は、年数を合理的に見積もる代わりに、賃借期間そのものを耐用年数として償却できます(耐用年数通達1-1-3)。更新のない定期借家契約が典型例です。


コメント