土地や建物を取得すると、本体価格のほかに仲介手数料・登記費用・各種税金・保険料など、さまざまな付随費用がかかります。
これらを「取得価額に入れるのか、その年の経費にできるのか」で迷う方は少なくありません。
この記事では付随費用の勘定科目を、取得価額に算入・経費にできる・資産計上して期間配分の3区分に整理して、税理士がわかりやすく解説します。
不動産取得時の付随費用は「3つの区分」で勘定科目が決まる
不動産取得時の付随費用は、①取得に直接かかる費用、②取得に間接的にかかる費用、③効果が翌期以降にも及ぶ費用、の3つに分けると勘定科目が決まります。
それぞれ ①取得価額に算入、②経費にできる、③資産計上して期間配分、となります。まずは下の早見表で全体像をつかんでください。
| 区分 | 付随費用 | 勘定科目 | 取得価額への算入 |
|---|---|---|---|
| ①直接費用 | 仲介手数料 | 取得価額(土地・建物) | 算入する |
| 固定資産税・都市計画税の清算金 | |||
| ②間接費用 | 不動産取得税 | 租税公課 | 算入しないでよい |
| 登録免許税 | |||
| 印紙税 | |||
| 登記の司法書士報酬 | 支払手数料 | 算入しないでよい | |
| ③期間配分 | 火災保険料 | 保険料/長期前払費用 | 算入しない(期間で配分) |
| 地震保険料 |
3区分の考え方
- 取得に直接的に関係する費用 → 取得価額に算入。
- 取得に間接的に関係する費用 → 経費にできる(根拠:法人税基本通達7-3-3の2)。
- 効果が翌期以降にも及ぶ費用 → 資産計上して期間配分。
取得価額に「算入する」付随費用(直接費用)
仲介手数料と固定資産税・都市計画税の清算金は、取得価額に算入します。
不動産会社に支払う仲介手数料
不動産会社に支払う仲介手数料は、取得のために直接かかる費用です。
そのため土地・建物の取得価額に算入します。土地と建物を一括で取得した場合は、それぞれの価額で按分します。
固定資産税・都市計画税の清算金
固定資産税・都市計画税とは、毎年1月1日に土地・建物を所有している人に対して、市区町村がかける地方税です。
固定資産税・都市計画税の清算金とは、1月1日の所有者(売主)が納めた税の未経過分を、買主が日割りで分担するお金です。
これは税金の納付ではなく購入対価の一部と税法上は考えます。
そのため取得価額に算入し、経費にはできません。
よくある間違い
- 清算金を「租税公課」で経費にしてしまう例が多いですが、正しくは取得価額に算入します。
「経費にできる」付随費用(間接費用=租税公課・支払手数料)
不動産取得税・登録免許税・印紙税と登記の司法書士報酬は、取得に間接的な費用です。
そのため取得価額に算入せず、経費にできます(任意)。
不動産取得税・登録免許税・印紙税
これらは租税公課で経費処理できます。取得に直接ではなく、結果的・間接的に生じる税金だからです(法基通7-3-3の2)。
登録免許税の勘定科目や仕訳をより詳しく知りたい方は、登録免許税の勘定科目は租税公課|不動産取得時の仕訳をご覧ください。
登記の司法書士報酬
登記を依頼した司法書士報酬は支払手数料(もしくは支払報酬料)で経費処理できます。
登記を司法書士に依頼すると、司法書士からの請求書には登録免許税(司法書士が立て替えた実費)と司法書士報酬がまとめて記載されるのが一般的です。
しかし両者は消費税と源泉徴収の扱いが異なるため、次のように分けて計上します。
| 項目 | 勘定科目 | 消費税 | 源泉徴収 |
|---|---|---|---|
| 登録免許税 | 租税公課 | 不課税 | 不要 |
| 司法書士報酬 | 支払手数料 (支払報酬料) | 課税 | 個人の司法書士=必要 司法書士法人=不要 |
購入時の仕訳をいつ計上するか(仕訳の時期)や、融資にともなう抵当権設定費用などは、不動産購入時にかかる報酬や租税公課の勘定科目と仕訳の時期で解説しています。
「資産計上して期間配分する」付随費用(火災保険料・地震保険料)
数年分を前払いする火災保険料・地震保険料は、当期分だけを保険料とし、翌期以降分は長期前払費用にします。
火災保険料
当期分は保険料、翌期以降分は長期前払費用として計上します(1年以内に費用化する分は前払費用)。
保険期間で按分し、毎期、対応する分を費用に振り替えます。
地震保険料
地震保険料も同じく、契約期間に応じて期間按分して各期の費用にします。
【法人】取得に間接的にかかる費用は経費か取得価額算入かを選べる
法人の場合、②の取得に間接的にかかる費用は、経費にも取得価額算入にもできるため、その期の所得状況で有利な方を選びます(法基通7-3-3の2)。
判断のコツ
- 当期純利益がプラスになりそう → 経費処理で当期の損金を増やす。
- 当期純利益がマイナスになりそう → 取得価額に算入し、減価償却で将来へ繰り延べる。
【個人事業主】取得に間接的にかかる費用は原則その年の必要経費(選べない)
取得に間接的にかかる費用は、法人なら経費か取得価額算入かを選べますが、個人で不動産賃貸業を営む場合は基本的に選べません。
土地・建物に係る不動産取得税・登録免許税・印紙税などは、原則その年の必要経費です。
つまり、法人のように所得に応じて取得価額へ算入するという調整はできないのが、法人との大きな違いです(所基通37-5・49-3、国税庁No.2215)。
個人でも法人と同じ扱いの費用
仲介手数料・固定資産税の清算金は、個人でも取得価額に算入します。
算入した金額のうち、建物分は毎年の減価償却で費用になり、土地分は売却するまで費用にならず売却時の取得費になります。
火災保険料・地震保険料の期間按分も法人と同じです。
仕訳例で確認(取得時の具体例)
3区分を仕訳にすると次のとおりです。
前提として、次の費用がかかったとします(税抜・按分は簡略化)。
- 土地本体:3,000万円
- 仲介手数料:99万円
- 固定資産税の清算金:12万円
- 登録免許税:25万円
- 司法書士報酬:15万円
- 火災保険料(5年分):25万円(うち当期分5万円)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 土地 | 3,111万円 | 現金 | 3,176万円 |
| 租税公課(登録免許税) | 25万円 | ||
| 支払手数料(司法書士報酬) | 15万円 | ||
| 保険料 | 5万円 | ||
| 長期前払費用 | 20万円 |
土地の取得価額=本体3,000万円+仲介手数料99万円+清算金12万円=3,111万円です。
後日、不動産取得税30万円を納付したときの仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 租税公課 | 30万円 | 現金 | 30万円 |
取得時の費用で間違えやすい注意点
間違えやすいポイント
- 固定資産税の清算金を経費にしてしまう(正しくは取得価額算入)。
- 登録免許税と司法書士報酬を一括計上し、消費税区分を誤る。
- 個人の司法書士への報酬で源泉徴収を忘れる。
- 仲介手数料を土地建物で按分せず、片方に寄せてしまう。
まとめ
この記事のまとめ
- 取得に「直接」=取得価額算入(仲介手数料・清算金)。
- 取得に「間接」=経費にできる(不動産取得税・登録免許税・印紙税・司法書士報酬)。
- 効果が翌期以降に及ぶ=資産計上して期間配分(火災・地震保険料)。
- 法人は所得状況で経費/算入を選択、個人は原則必要経費。
- 不動産取得税は取得価額に入れますか?
-
法人なら、取得価額に入れることも、経費(租税公課)にすることも選べます。個人で不動産賃貸業を営む場合は、原則その年の必要経費になります。
- 固定資産税の清算金は経費にできますか?
-
できません。購入対価の一部として取得価額に算入します。
- 不動産(土地・建物)を取得したときに支払う仲介手数料は、どの勘定科目ですか?
-
取得に直接要した費用なので、土地・建物の取得価額に算入します。
- 火災保険料を5年分払いました。全額その年の経費にできますか?
-
できません。当期分は保険料、翌期以降分は長期前払費用として期間按分します。


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