普通預金の会計帳簿(仕訳)と通帳残高の不一致を発生させないために!

普通預金等(銀行:普通預金、ゆうちょ銀行:普通貯金)の経理処理をしたことがある人ならば、一度は会計帳簿の月次残高が通帳残高と合わず苦労した経験があるのではないでしょうか?

普通預金の仕訳については非常に簡単なのですが、仕訳が抜けていたら、税金面で痛い目にあいますし、仕訳が間違っていたら、原因究明に非常に手間取り、実は実務上非常に厄介なものです。

そこで、普通預金について、根本から業務処理を改善し、より早く、正確に仕訳を作成・確認できる管理体制がないかを今回は考えていきたいと思います。

専用の普通預金(普通貯金)口座の開設

普通預金(普通貯金)の仕訳をする上で一番大事なことは入出金の事実を把握し、仕訳を漏らさないことです。

そのためには、専用の普通預金口座(普通貯金口座)を開設することが必要になります。

専用の普通預金口座で、通帳記帳をすれば、会社の入出金の事実をすべて把握できます

そして、通帳記帳をした入出金情報から仕訳を作成をすれば、経理処理は簡単になります


複数の預金通帳を持つ場合

小規模の会社ならば普通預金通帳は1つでも十分です。

ただし、規模が大きくなってくると、銀行との付き合いや業務管理の観点で普通預金通帳を複数持つことになるでしょう。

その場合は、通帳を使用目的別に分類してあげると効率的です。

例えば、①公共料金の支払い用、②売上入金用、③経費支払い用などに分類すれば、②売上入金用の通帳以外を経理担当者が預かれば、経営者的にも従業員に経営実態(売上高の推移)を把握させず、安心だったりします。

個人事業主の場合

個人事業主の場合、個人名義の通帳を利用して事業を行っていることも多いです。

この場合、個人名義の通帳でも事業専用の通帳を作成しないと、プライベートのお金が入り混じり、事業の預金の入出金の事実を網羅的に把握できず、仕訳が不完全になる可能性があります

結果的に、売上高の計上漏れや経費の計上忘れに繋がるので、是非、プライベートの通帳とは別に事業用の通帳を作成してください



仕訳のための勘定科目の設定

専用の普通預金通帳から入出金の事実が把握できたら、今度はそれを漏れなく仕訳する必要があります。

仕訳をするためには、会計ソフト(弥生会計など)の勘定科目を設定しなければなりません

なお、会計ソフト(弥生会計など)では、デフォルトで以下のように「普通預金」という勘定科目が設定されています。



普通預金(弥生会計)



あなたの会社(個人事業主を含む)の普通預金通帳が一つならば、そのまま「普通預金」という勘定科目を利用しても構いません。

しかし、あなたの会社(個人事業主を含む)の普通預金通帳が二つ以上あるのならば、「三菱UFJ銀行/東京支店」のように「普通預金」ではなく、それぞれの金融機関ごとに勘定科目を分けて管理しましょう。



普通預金口座を分類



それでは、なぜ、金融機関ごとに勘定科目を分ける必要があるのでしょうか?

税務申告に添付する決算書(貸借対照表)では、上記の図の右側「決算書項目」にある通り、現金・預金の勘定科目は統合されて「現金及び預金」と表示されます

よって、決算書を税務署に提出する場合や融資の際に銀行に開示する場合は、勘定科目を「普通預金」と設定しても、「三菱UFJ銀行/東京支店」と設定しても同じになります

しかし、内部管理用で考えると、両者には雲泥の差があります

すべての普通預金口座の仕訳を「普通預金」として仕訳していると、月次で普通預金口座の残高と会計帳簿の残高が一致せず、ズレを確認するときに非常に検証しづらいのです。

通常、普通預金口座の月次残高と会計帳簿の勘定残高は一致します。

もし、両者が一致していなければ、①仕訳の間違いがあるか②仕訳の漏れがありますので、普通預金通帳を元に、会計帳簿(勘定科目ごとの入力取引は総勘定元帳を見る)を一つずつチェックしていくことになります。

その時に、金融機関ごとに勘定科目を分けていれば、通帳1冊ごとに勘定科目が1つになるため非常にチェックし易いです。

例えば、会社の普通預金口座がA銀行とB銀行のもので、A銀行の通帳の月次残高と「A銀行」という勘定科目の月次残高が合っていれば、一致していないのはB銀行になるため、B銀行の取引だけ再度検証すれば良い訳です。

結果として、A銀行とB銀行を「普通預金」という勘定科目を使用した場合よりも、チェックする総量が非常に少なくなります。



普通預金の勘定残高分析


補助科目の設定の欠点について

会計ソフト(弥生会計など)では、補助科目というものが設定できます

補助科目とは勘定科目の内訳項目です。

つまり、勘定科目が「普通預金」ならば、その内訳項目として、「A銀行」、「B銀行」などと補助科目を設定できます。

また、会計ソフト(弥生会計など)では、補助科目に絞った総勘定元帳や月次残高も確認することができます。

そのため、「①金融機関ごとに勘定科目を設定しても、②勘定科目を「普通預金」にして、その補助科目でそれぞれの金融機関を設定しても同じではないか?」という質問を受けます。

結論としては、①入力・確認に手間がかかる、②仕訳入力を間違えるリスクが高くなるため、普通預金の入力では補助科目の利用は控えた方が良いということになります。


入力・確認に手間がかかる

補助科目を利用する場合、最初に勘定科目の「普通預金」を選択したあとに、補助科目として内訳項目を選択することになります。

つまり、補助科目を利用すると仕訳をするのに2段階の入力が必要になります

それに比べて、金融機関ごとに勘定科目を設定しておけば、入力は1回で済みます

仕訳を確認する場合も同じで、金融機関ごとに勘定科目を設定しておけば、1クリックで仕訳を表示できますが、補助科目を利用する場合2クリック必要になります

つまり、補助科目を利用する方が単純に2倍の手間がかかることになります。


仕訳入力を間違えるリスクが高くなる

普通預金の仕訳で補助科目を利用した場合の最大の問題点が仕訳の入力間違いリスクが高くなることです。

簡単に言うと、補助科目の選択間違えが多くなるということです。

注意していれば、「金融機関ごとに勘定科目を設定しても、補助科目で金融機関を設定しても入力間違えリスクは変わらないよ!」と思うかも知れません。

理論上はそうなのですが、うちの事務所でも試した限り、実際入力してみると、補助科目で金融機関を設定した方が間違える頻度がなぜか高くなります

勘定科目の設定がメインで「補助」をサブ項目と頭が勝手に判断して入力してしまうためか、仕訳の入力項目数が単純に増えて人間の処理自体が間に合わないのかは分かりませんが、補助科目の設定ミス(B銀行をA銀行と設定してしまうミス)が増えます

補助科目の設定ミスをすると、それぞれの銀行口座の普通預金口座とも合わなくなり、一つずつ仕訳を見直す必要が出てきてしまい、非常に時間を喰われ、非効率になります。


まとめ

普通預金(普通貯金)の効率的な経理実務を考えるとまず、仕訳の元になる事実を網羅的に把握することが重要になります。

そのために、①専用の普通預金通帳を用意したり、②会計ソフト(弥生会計など)の勘定科目を金融機関ごとに分類する必要があるということを覚えておきましょう。