この記事の概要
  1. 消費税の経理方法には税抜経理方式税込経理方式があります。
  2. 税理士が記帳業務を行う場合には税抜経理方式を採用した方が節税になるため良いです。
  3. 会社・個人事業主ご自身で記帳業務を行う場合は税込経理方式を選択した方が手間がかからず、税務否認リスクも負いません





「消費税の経理処理方法は税込経理方式と税抜経理方式のどちらが良いですか?」と不動産業を営む会社や個人事業主からよく聞かれます。

不動産業以外の場合、消費税の経理処理方法については、税抜経理方式にする方が、税込経理方式にするより税務上有利になるので良いのですが、不動産業に関してだけはどちらが良いか判断に迷うところです。

消費税の経理処理方法には税抜経理方式と税込経理方式の2つがある

消費税の経理処理方法には、税抜経理方式税込経理方式の2つがあり、どちらの方式を選択してもよいことになっています。

そして、一度選択した方式は、毎期継続して適用するのが原則ですが、上場会社のような大会社でなければ、例えば、翌期から税込経理方式から税抜経理方式に変更することも可能です。

なお、不動産業の売上高が少額で消費税の免税事業者になっている場合(課税売上高1,000万円以下)又は簡易課税方式を採用している場合(課税売上高5,000万円以下)は税込経理方式で処理することになります。

税抜経理方式とは

税抜経理方式とは、売り上げた金額のうち消費税に該当する金額を仮受消費税等として区分し、仕入をした金額又は経費として使用した金額のうち消費税に該当する金額を仮払消費税等として区分する方法です。

【売上高の消費税の仕訳(税抜経理方式)】
事務所賃貸の家賃220円が月末に銀行に入金されました。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
220円
売上高
仮受消費税等
200円
20円

【仕入高・経費の消費税の仕訳(税抜経理方式)】
消耗品110円を購入し、現金で支払いました。

借方
金額
貸方
金額
消耗品費
仮払消費税等
100円
10円
現金預金
110円

税込経理方式とは

税込経理方式とは、売り上げた金額総額(消費税部分も含む)を売上高に計上し、仕入をした金額又は経費として使用した金額総額(消費税部分も含む)を仕入高やそれぞれの経費科目に計上する方法です。

【売上高の消費税の仕訳(税込経理方式)】
事務所賃貸の家賃220円が月末に銀行に入金されました。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
220円
売上高
220円

【仕入高・経費の消費税の仕訳(税込経理方式)】
消耗品110円を購入し、現金で支払いました。

借方
金額
貸方
金額
消耗品費
110円
現金預金
110円

税抜経理方式のメリット

まずは、不動産業以外での税抜経理方式でのメリットを挙げます。

  • 仮受消費税と仮払消費税の差額が現時点での消費税の納税予定額になるので分かり易い
  • 税「抜き」で30万円未満までの減価償却資産の取得は経費に計上できる(税込経理方式の場合は「税込み」で30万円未満のため少しお得)
  • 交際費の利用金額も税抜きで判断するので税込みで判断されるより有利になる
  • 税抜きで償却資産の取得を判断するので、償却資産税の課税標準が税込経理方式より小さくなり有利になる

次に、上記メリットが不動産業にも当てはまるか考えてみましょう。

仮受消費税と仮払消費税の差額が現時点での消費税の納税予定額になるので分かり易い

結論から先に言うと残念ながら不動産業では、仮受消費税-仮払消費税が消費税の納税額にはなりません

土地の売却や居住用の建物の貸付けによる売上高などの消費税がかからない売上高が、全体の売上高の5%超ある場合は、期末に税務申告ソフトで実際の納税額を計算して、初めて消費税の納税額が分かることになります。

税抜きで30万円未満までの減価償却資産の取得は経費に計上できる

不動産業でも当然該当します。

仮に消費税抜きで299,999円のパソコンを購入した場合、税抜経理方式を採用していれば、全額経費に計上できますが、税込経理方式を採用している場合は、工具器具備品として固定資産に計上しなければいけなくなります

ちなみに、資本的支出の固定資産計上基準の20万円未満も同じ考え方をします。

仮に199,999円の固定資産に計上する工事に対する支出(資本的支出)も税抜経理方式を採用していれば、少額のため全額経費に計上できますが、税込経理方式を採用していると、税込み金額が20万円以上になるので原則通り固定資産計上することになります。

交際費の利用金額も税抜きで判断するので税込みで判断されるより有利になる

不動産業でも当然該当します。

中小法人の交際費は800万円まで全額経費に計上できます

この800万円の判断基準も税抜経理方式の方が税込経理方式より消費税部分だけ得をすることになります

仮に税抜きで800万円の交際費を使用した場合、税抜経理方式では800万円全額経費に計上できますが、税込経理方式では800×1.1-800=80万円分は経費に計上できなくなります。

税抜きで償却資産の取得を判断するので、償却資産税の課税標準が税込経理方式より小さくなり有利になる

不動産業でも当然該当します。

償却資産とは、土地及び建物以外で、事業用に使用するエアコンやパソコンなどの固定資産です。

150万円以上償却資産を所有していると償却資産税の課税対象になり、償却資産の金額が大きいほど納税額は大きくなります

税抜経理方式を採用していれば、税抜価額で計上した固定資産を課税標準にするので、税込経理方式で処理した場合より有利になります。

特に不動産業では償却資産税の課税対象になる償却資産は結構多いので、税抜経理方式にしておいた方がお得になります。

税込経理方式のメリット

まずは、不動産業以外での税込経理経理方式でのメリットを挙げます。

  • 税抜経理方式より売上高が大きく計上される
  • 仕訳が簡単

次に、上記メリットが不動産業でも当てはまるか考えてみましょう。

税抜経理方式より売上高が大きく計上される

不動産業でも当然該当します。

上記の税込経理方式の仕訳例と税抜経理方式の仕訳例を見てもらうと分かりますが、消費税部分(220円-200円=20円)だけ税込経理方式の方が売上高が大きく計上されています。

売上高が大きく計上されれば、その分事業規模が大きく見えますので、銀行融資対策としては、税込経理方式の方が良いでしょう。

仕訳が簡単

不動産業でも当然該当します。

こちらも上記の税込経理方式の仕訳例と税抜経理方式の仕訳例を見てもらうと分かりますが、税込経理方式の仕訳は1行なのに対して、税抜経理方式の仕訳は2行になります。

仕訳が1行で済む方が簡単なのが目に見えて分かるでしょう。

税込経理方式の場合、控除対象外消費税について考えなくて良い

最後に、税込経理方式を行う不動産業特有のメリットを紹介します。

これが、不動産業の消費税の処理で税抜経理方式と税込経理方式のどちらを採用するかを迷わせる最大の原因になります

なにかというと、税込経理方式を採用すると、控除対象外消費税が生じないので、難解な税務知識がなくても経理処理ができてしまうという点です。

控除対象外消費税については、「不動産購入時の建物に係る控除対象外消費税額の恐怖!」で詳しく説明していますが、非常に難しい税務論点になります。

税込経理方式を採用した場合、この控除対象外消費税額の論点を気にしなくてよく、後々の税務調査時に追徴課税される心配がないというのが、最大のメリットになると覚えておいてください。

結論

まず、税理士が業務として行う場合は、法人税等の納税額が安くなる可能性があるため、税抜経理方式を採用する可能性が高いでしょう。

問題なのは、会社や個人事業主自身で記帳を行っている場合です。

この場合、税抜経理方式を採用していると、控除対象外消費税が生じる可能性があるのですが、控除対象外消費税は非常に難解で、理解するまでに相当な時間がかかりますし、どうしても税務上の否認リスクを背負うことになります。

仮に税抜経理方式を採用したところで、税込経理方式と比べて、節税額は多くても数万円~数十万程度でしょうし、税込経理方式にしてしまった方が、余計な手間とストレスを抱え込まずに済みます

税理士に依頼せず、記帳を会社や個人事業主自身で行っている場合、記帳業務にかけられる時間を考慮しながら、税抜経理方式か税込経理方式かを検討してみてください。