- 棚卸資産として所有している土地を売却した場合、引渡し日基準で収益計上を行います。
- 所有権移転登記の申請日に収益計上できる例外もありますが非常に稀なケースです。
不動産売買業を営む会社から「棚卸資産として所有している土地を売却した場合、所有権移転登記の申請日に収益計上することは可能ですか?」という質問を受けました。
そこで今回は、棚卸資産として所有している土地を売却した場合の収益計上時期について確認していきましょう。
収益計上の時期について
棚卸資産として所有している土地を売却した場合の収益計上の時期は引渡し日になります。
ただし、その引渡しの日がいつであるか分からない場合に限り、以下のいずれか早い日が収益計上時期になります。
- 代金の相当部分(おおむね50%以上)を収受するに至った日
- 所有権移転登記の申請をした日
所有権移転登記の申請をした日が収益計上日になることは非常に稀!
棚卸資産として販売する土地の収益計上日については、例外的に、所有権移転登記を申請した日にすることも可能な場合があります。
ただし、所有権移転登記を申請した日に収益を計上することが可能な場合は、基本的に山林や原野のように引渡し日の判定が困難な場合に限定されています。
通常の土地の売買の場合、引渡し日が判明しないという事態は想定されません(代金の支払い・権利証の受渡し・土地譲渡承諾書の記載があるため)。
よって、一般的な棚卸資産として所有している土地の売買の場合、引渡し日が明確なので、収益認識日は引渡し日(売買代金の支払日=権利証の受渡日=土地譲渡承諾書の記載日)ということになります。
土地を分筆して一括売買し、引渡しを数回に分けた場合
今回の質問に派生する質問として、一つの土地を5筆に分けて一括売買をし、何回かに分けて引渡しを行った後に、所有権移転登記の申請を行った場合に、所有権移転登記の申請日を収益計上時期にして良いかというものがあります。
この場合、一括売買の形式をとっていますが、それぞれの土地の売買による土地の引渡しが何回かに分けて個別独立的に行われているため、それぞれの引渡しの都度収益を計上することになります。
以下の条件を満たす場合、土地の引渡し日ごとに収益を認識しなければならないでしょう。
- それぞれの土地が取引の対象主体となり得ること
- それぞれの土地に使用価値があること
- 土地自体を分けることが可能であること
まとめ
棚卸資産として所有している不動産を売却した場合、基本的には引渡し日基準で収益計上を行うことになります。
所有権移転登記の申請をした日に収益計上できると誤解されている事業者が意外に多いので注意が必要です!
以下、今回参考にした法人税基本通達です。
棚卸資産の販売に係る収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、その引渡しの日がいつであるかについては、当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。
この場合において、当該棚卸資産が土地又は土地の上に存する権利であり、その引渡しの日がいつであるかが明らかでないときは、次に掲げる日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることができる。
- 代金の相当部分(おおむね50%以上)を収受するに至った日
- 所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)をした日
引用元:法人税基本通達2-1-2 棚卸資産の引渡しの日の判定