「納税準備預金はお得と聞いたけれど、デメリットはないの?」と気になっていませんか。
納税準備預金は、利息が非課税になる納税専用の預金口座です。
ただし、納税以外の目的では原則引き出せない、法人には非課税のメリットがほぼないなど、開設前に知っておきたい注意点もあります。
本記事では、納税準備預金の仕組み・メリット・デメリットから、勘定科目と仕訳、取扱いを終了する金融機関が増えている最新事情まで、税理士がわかりやすく解説します。
納税準備預金とは?納税専用で利息が非課税になる預金口座
納税準備預金とは、税金の納付に充てることを条件に、利息が非課税になる納税専用の預金口座です。
銀行・信用金庫・信用組合などの金融機関で開設できます。
国税庁も「租税(=税金)の納付に充てることを目的とした預金で、金融機関が他の預金と区分して管理しているもの」と説明しています(出典:国税庁・質疑応答事例)。
- 利用できる人
-
法人・個人事業主・個人(納税者本人)
- 預け入れ
-
いつでも自由(金額の制限は原則なし)
- 引き出し
-
原則として税金の納付に充てる場合のみ。納付書や納税告知書の提示が必要
- 利息
-
非課税(納税以外の目的で引き出した場合は課税)
- 対象となる税金
-
預金者が直接納付する国税・地方税(所得税・法人税・消費税・固定資産税など)
「引き出すときに納付書を見せる」という縛りと引き換えに、利息が非課税になる。これが納税準備預金の基本的な仕組みです。
ここからは、この仕組みがもたらすメリットを具体的に見ていきましょう。
納税準備預金の4つのメリット
納税準備預金の最大のメリットは、利息にかかる約20%の税金がゼロになることです。
納税準備預金の4つのメリット
- 利息にかかる所得税・住民税が非課税になる
- 普通預金より金利が高い場合がある
- 預金保険制度で保護される
- 納税資金を別枠で管理できる
①利息にかかる所得税・住民税が非課税になる
普通預金の利息からは、個人の場合20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)が源泉徴収されます。
源泉徴収とは、利息を受け取る前にあらかじめ税金が差し引かれる仕組みのことです。
一方、納税準備預金の利息は非課税です(租税特別措置法第5条)。
非課税の取り扱いは国税庁のタックスアンサーにも明記されています(出典:国税庁タックスアンサーNo.1310「利息を受け取ったとき」)。
利息1万円を受け取る場合で比較すると、次のとおりです。
| 預金の種類 | 差し引かれる税金 | 手取り額 |
|---|---|---|
| 普通預金(個人) | 2,031円 | 7,969円 |
| 納税準備預金 | 0円(非課税) | 1万円 |
納税準備預金なら、利息をまるごと受け取れます。
②普通預金より金利が高い場合がある
金融機関によっては、納税準備預金の金利を普通預金より高めに設定しています。
ただし、普通預金と同じ金利の金融機関もあります。開設前に金利を確認しましょう。
③預金保険制度の対象になる
納税準備預金は預金保険制度の対象です。
預金保険制度とは、金融機関が破綻しても預金者のお金を守る公的な仕組みのことです。
万が一のときも元本1,000万円とその利息まで保護されます(出典:預金保険機構)。
④納税資金を別枠で管理できる
実務上は、これが一番のメリットです。
事業用の口座と納税用の口座を分けておけば、納税資金をうっかり運転資金に使ってしまう失敗を防げます。
特に消費税は、赤字の年でも納付が発生することがある税金です。
もっとも、よいことばかりではありません。次に、開設前に必ず知っておきたいデメリットを確認しましょう。
納税準備預金の4つのデメリット【開設前に確認】
納税準備預金の最大のデメリットは、納税以外の目的では原則引き出せないことです。
納税準備預金の4つのデメリット
- 納税以外では原則引き出せず、事業資金が拘束される
- 納税以外の目的で引き出すと利息が課税される
- 法人には利息非課税のメリットがほぼない
- 取扱いを終了する金融機関が増えている
①事業資金が拘束される
引き出しは納税目的に限られるため、預け入れた分だけ自由に使える事業資金が減ります。
手元資金に余裕がない時期に多額を預け入れると、資金繰り(=事業のお金のやりくり)を圧迫しかねません。預入額は納税見込み額の範囲にとどめましょう。
②納税以外の目的で引き出すと利息が課税される
やむを得ず納税以外の目的で引き出した場合、引き出した日が含まれる利息計算期間に対応する利息は課税扱いになります(租税特別措置法第5条)。
さらに、金融機関によっては、その期間の利率を普通預金並みに引き下げる規定もあります。
③法人には利息非課税のメリットがほぼない
法人の場合、利息非課税の恩恵は実質的にありません。
意外に知られていないポイントなので、理由は次の章で詳しく解説します。
④取扱いを終了する金融機関が増えている
近年、納税準備預金の新規受付終了や取扱廃止を発表する金融機関が相次いでいます。
| 金融機関 | 取扱終了日 |
|---|---|
| 京都銀行 | 2024年12月30日 |
| 伊予銀行 | 2025年8月31日 |
| 京都信用金庫 | 2025年12月30日 |
上記は一例で、ほかにも新規受付を終了した金融機関があります(各金融機関の公表資料より)。
制度自体が廃止されたわけではありませんが、口座を作りたい金融機関で今も取り扱っているかを最初に確認する必要があります。
法人は利息非課税のメリットがほぼない理由
法人の預金利息から源泉徴収される所得税は、もともと法人税の前払いとして精算されるため、納税準備預金で非課税になっても実質的な得はありません。
法人の普通預金の利息からは、所得税・復興特別所得税の15.315%だけが源泉徴収されます(法人の利息に住民税はかかりません)。
この源泉徴収された所得税は、法人税の申告時に「所得税額控除」で精算されます。
所得税額控除とは、法人税から前払い分を差し引く仕組みのことです(法人税法第68条)。
つまり普通預金でも、源泉徴収された分は最終的に取り戻せるのです。
個人と法人の違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 個人・個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 源泉徴収される税金 | 20.315%(所得税等+住民税) | 15.315%(所得税等のみ) |
| 源泉徴収分の精算 | できない(源泉徴収で課税が完結) | 法人税の申告で精算(所得税額控除) |
| 非課税のメリット | ある | 実質ない |
納税準備預金で非課税になっても、「どうせ精算される前払い分」がなくなるだけで、トータルの税負担は変わりません。
法人が納税準備預金を使う意味
非課税の得はなくても、納税資金を別枠で管理できる効果は法人にも有効です。源泉徴収の精算(所得税額控除の申告調整)が不要になる分、経理処理がシンプルになる利点もあります。
では、実際に納税準備預金を使ったときの経理処理を見てみましょう。
納税準備預金の勘定科目と仕訳
納税準備預金の勘定科目は、「納税準備預金」として貸借対照表の「現金及び預金」に含めて表示します(金額が小さければ普通預金に含める処理も実務上は行われています)。
法人の仕訳
まずは法人の仕訳を、預け入れから納付までの流れで見ていきましょう。
預け入れ時(普通預金から100万円を預け入れ)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 納税準備預金 | 100万円 | 普通預金 | 100万円 |
利息の受取時(1,000円を受け取り)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 納税準備預金 | 1,000円 | 受取利息 | 1,000円 |
納税準備預金の利息は非課税のため源泉徴収されず、受け取った金額をそのまま全額計上します。
普通預金の利息のような源泉税の処理(所得税額控除の申告調整)は不要です。
法人税の納付時(80万円を納付)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払法人税等 | 80万円 | 納税準備預金 | 80万円 |
個人事業主の仕訳
個人事業主の場合も、預け入れ時の仕訳は法人と同じ形です。
法人と異なるのは、「利息を受け取ったとき」と「所得税・住民税を納付したとき」の2つです。順番に見ていきましょう。
①利息の受取時(1,000円を受け取り)
預金の利息は事業で稼いだ収入ではなく、事業主個人のお金(個人の利子所得)として扱われます。
事業のお金に個人のお金が入ってきた形になるので、帳簿上は「事業主からお金を借りた」という意味の「事業主借」で処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 納税準備預金 | 1,000円 | 事業主借 | 1,000円 |
納税準備預金の利息は非課税なので、確定申告も不要です。
②所得税・住民税の納付時(30万円を納付)
納税準備預金から納付しても事業の経費にはならないため、借方は「事業主のためにお金を立て替えた」という意味の「事業主貸」で処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 事業主貸 | 30万円 | 納税準備預金 | 30万円 |
経理処理がわかったところで、実際に口座を開設して納税するまでの流れを確認しましょう。
口座開設から納税までの流れ【4ステップ】
納税準備預金の口座開設から納税までは、次の4ステップで進めます。
取引のある金融機関が納税準備預金を扱っているか、窓口やWebサイトで確認します。取扱いを終了した金融機関が増えているため、最初に必ず確認しましょう。
本人確認書類や届出印など、必要書類は金融機関ごとに異なります。法人の場合は履歴事項全部証明書などが必要になることもあります。
前年の納税額や試算表をもとに納税見込み額を計算し、毎月または決算後に預け入れます。預けすぎると事業資金が拘束される点に注意してください。
納付書・納税告知書を金融機関の窓口に提示して引き出し、そのまま納付します。振替納税(=指定口座からの自動引き落としで納税する方法)の引落口座に指定できる金融機関もあります。
所得税の予定納税がある個人事業主は、納税準備預金との相性が特に良好です。詳しくは所得税の予定納税の解説記事をご覧ください。
取扱いがないときの納税資金準備の代替手段【比較】
納税準備預金を開設できなくても、「納税用の口座を分ける」だけで資金管理の効果はほぼ実現できます。
| 方法 | 利息の扱い | 引き出しやすさ | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 納税準備預金 | 非課税 | 納税目的に限定 | 個人事業主・相続税の納税資金を準備する人 |
| 普通預金の別口座 | 課税 | いつでも自由 | 手軽に納税資金を分けたい人 |
| 定期預金 | 課税 | 満期前の解約は手続きが必要 | 使い込みを確実に防ぎたい人 |
かつての超低金利の時代には、非課税メリットの金額はごくわずかでした。
しかし、近年は預金金利が上昇しており、預金残高によっては非課税の効果も無視できない金額になってきています。
そのうえで、金利にかかわらず最も重要なのは、納税資金を「別枠」にして手を付けないことです。
納税準備預金の取扱いがない場合でも、普通預金の別口座で目的は十分果たせます。
納付方法についても、振替納税やダイレクト納付(=e-Taxを使って口座引き落としで納付する方法)を併用すると、納付漏れによる延滞税を防ぎやすくなります。
なお、赤字の年でも住民税の均等割のように納付が必要な税金はあります。納税資金の準備は黒字・赤字を問わず大切です。
まとめ:納税準備預金は個人事業主の納税資金管理に向く制度
納税準備預金は、利息非課税のメリットを受けられる個人事業主や、相続税などまとまった納税資金を準備したい方に向いた制度です。
この記事のポイント
- 納税準備預金は納税専用の口座で、利息が非課税(租税特別措置法第5条)
- 納税以外の目的で引き出すと、その期間の利息は課税される
- 法人は所得税額控除で精算されるため、非課税の実質メリットはない
- 取扱いを終了する金融機関が増加中。開設前に必ず確認
- 取扱いがなければ、普通預金の別口座でも納税資金は管理できる
納税準備預金に関するよくある質問
- 納税準備預金は廃止されたのですか?
-
制度自体は廃止されていません。利息の非課税(租税特別措置法第5条)も引き続き有効です。ただし、新規受付の終了や取扱廃止を発表する金融機関が増えているため、開設前に取扱いの有無を確認してください。
- 納税以外の目的で引き出すとどうなりますか?
-
引き出した日が含まれる利息計算期間に対応する利息が課税扱いになります。口座が複数ある場合は、目的外の引き出しがあった口座の利息だけが課税され、他の口座の利息は非課税のままです(国税庁・質疑応答事例)。
- どの税金の支払いに使えますか?
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預金者本人が直接納付する国税・地方税に使えます。所得税・法人税・消費税・固定資産税・自動車税などが対象です。金融機関によっては、同居親族が納付する税金に使える場合もあります。
- 個人事業主が受け取った利息はどう処理しますか?
-
預金の利息は事業で稼いだ収入ではなく、事業主個人のお金(個人の利子所得)になるため、帳簿上は「事業主借」で処理します。納税準備預金の利息は非課税なので、源泉徴収はされず確定申告も不要です。


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