法人や個人事業主が建物を所有している場合の減価償却費について!

法人や個人事業主が建物を所有している場合、建物取得価額の一部を毎年減価償却費として経費に振り替えることができます

減価償却費は、経費に計上できる金額を増やせるにも関わらず、法人や個人事業主であまり関心が持たれていないことが多いです。

そこで、今回は法人や個人事業主が建物を所有する場合の減価償却費について説明していきます。

建物の減価償却費とは

高額な建物の取得価額を、取得した年度に一括で経費計上させるのではなく、分割して1年ずつ経費計上させていく方法を減価償却費といいます。

減価償却費の計上理由は、法人や個人事業主が所有する建物は、時間の経過とともに劣化していくため、その価値減少分を、経費として反映させる必要があるためです。

税法上は、建物の構造(木造や鉄骨鉄筋コンクリート造など)・用途(事務所用や住宅用など)によって、「法定」耐用年数という使用可能期間が定められており、その「法定」耐用年数によって、減価償却費は計算されることになります。

頻出する建物の法定耐用年数は以下の通りになります。

  • 住宅用の木造建物→22年
  • 事務所用の鉄骨鉄筋コンクリート造建物→50年
  • 住宅用の鉄骨鉄筋コンクリート造建物→47年

なお、建物を所有している場合、土地も所有していますが、土地は、時間の経過とともに劣化しないので、価値の減少分を経費に反映させる必要がなく、減価償却費は計上されません

建物の減価償却費は定額法になる

減価償却費の計上方法には、定額法定率法の2つの方法があります。

定額法は、毎年同額ずつを減価償却として経費に計上していく方法です。

例えば、法定耐用年数22年の新築の木造建物(取得価額2,200万円)を定額法で減価償却する場合、2,200万円÷22年=100万円が各年度の経費に計上されることになります。

定率法は、帳簿価額(取得価額-前年度までの減価償却費の累計額)に耐用年数より決定された償却率を乗じて算出した減価償却費を経費に計上していく方法です。

例えば、耐用年数22年の新築の木造建物(取得価額2,200万円)を定率法で減価償却する場合、2,200万円×0.099(法定耐用年数22年の場合の償却率)=217.8万円が1年目の経費に計上され、(2,200万円-217.8万円)×0.099=196.2万円が2年目の経費に計上されることになります。

ただし、現状では、法人・個人事業主ともに建物の減価償却費の計算方法は「定額法」に限定されています

平成10年4月以前に取得した法人の建物には、定率法が認められていたのですが、税制改正により平成10年4月1日以降の建物の減価償却費は定額法に統一されてしまいました。

なお、定額法に統一には遡及効はないので、平成10年4月以前に取得した建物を所有している法人では、定率法で減価償却を行っている建物が存在する場合があります。

法人と個人の減価償却費の相違点について

法人では、各年度に減価償却費を計上することは任意です。

決算が赤字になりそうならば、各々の建物ごとに減価償却費を計上するかしないかを決めることができます。

一方、個人事業主では、各年度に減価償却費を計上することは強制です。

決算が赤字になりそうでも、必ず減価償却費を計上することが強制されます

減価償却費の計算開始日に注意!

会計処理上、建物の取得価額を「建物」という勘定科目に仕訳をするのは、引き渡しを受けた日になります。

それに対して、建物の減価償却費の計算開始日は供用日(実際に建物を使い始めた日)になります。

通常の場合は、引渡し日=供用日になるため問題は生じませんが、例えば、賃貸用の中古マンションの引渡しを受けたけど、内装をすべて変えるためにまだ賃貸人の募集もかけられない状態だと、引渡し日≠供用日になる可能性もあるため注意が必要です。

引渡し日≠供用日の場合で、仮に引渡し日から減価償却費を計算してしまった場合、過大に減価償却費を計上してしまうことになります。

中古建物の耐用年数について

中古建物を取得した場合に減価償却費を計算するための耐用年数は、新築建物を取得した場合の法定耐用年数より短くなります

中古建物の耐用年数の計算方法は、①築年数が法定耐用年数を超えている場合と②築年数が耐用年数を超えていない場合で分けられます。

築年数が法定耐用年数を超えている場合

中古建物の耐用年数は、法定耐用年数×0.2(小数点以下切り捨て)で計算されます。

例えば、築30年の中古の住宅用の木造住宅を取得した場合の耐用年数は、22年(法定耐用年数)×0.2=4年になります。

築年数が耐用年数を超えていない場合

中古建物の耐用年数は、(法定耐用年数-築年数)+築年数×0.2(小数点以下切り捨て)で計算されます。

例えば、築10年の中古の住宅用の木造住宅を取得した場合の耐用年数は、(22年‐10年)+10年×0.2=14年になります。