携帯基地局・アンテナ設置料の勘定科目と所得区分|法人・個人別に税理士が解説

家賃収入以外のちょっと嬉しい副収入

「アパートやビルの屋上に携帯電話のアンテナ(基地局)を設置させてほしい」——大家さんのもとには、ある日こんな打診が携帯電話会社から届くことがあります。

大家さんが受け取る設置料は毎月数万円になることもあり、うれしい収入です。

ところが、確定申告や決算のときになると、大家さん自身が「この設置料はどの収入に区分し、どの税金をどう払うのか」と迷いがちです。

この設置料の扱いは、受け取るのが個人か法人かによって、使う勘定科目も所得区分も変わります。

この記事では、携帯基地局・アンテナの設置料について、勘定科目・所得区分・消費税・確定申告のポイントを、個人と法人(マンション管理組合を含む)に分けて税理士がやさしく解説します。

目次

携帯基地局・アンテナ設置料の税務は「個人か法人か」で変わる

大家さんが携帯基地局・アンテナ設置料をどう扱うかは、まず受け取るのが個人か法人かで大きく分かれます。

さらに法人のなかでも、マンション管理組合は普通の会社と少し扱いが異なります。

まず、受け取る人ごとの違いを早見表で確認しましょう。

受け取る人課される税金収益・所得の扱い勘定科目/所得区分
個人
(大家)
所得税不動産所得
(家賃と合算)
不動産所得
(雑所得ではない)
普通法人
(資産管理会社など)
法人税益金
(全所得課税)
雑収入または売上高
マンション管理組合
(人格のない社団等)
法人税収益事業の所得のみ課税不動産貸付業として申告

表に出てきた用語の意味を、ここで整理しておきます。

設置料(賃料)

通信会社がアンテナを設置するために、大家さんが屋上や土地を貸して受け取るお金。基地局使用料ともいいます。

所得区分

個人の所得を10種類に分けた分類。基地局の設置料は不動産所得に入ります(法人にはこの区分はありません)。

益金(えききん)

法人の利益計算で収益にあたる金額。法人は所得区分ではなく、設置料を益金として扱います。

人格のない社団等

法人登記のない団体。マンション管理組合が典型で、税務上は法人とみなされます

収益事業

法人税法が定める34業種の事業。管理組合は、この収益事業の部分にだけ法人税がかかります。

それでは、個人・法人それぞれが設置料をどう扱うかを見ていきます。

【法人の場合】設置料は益金・勘定科目は雑収入か売上高

法人が受け取った携帯基地局・アンテナ設置料は益金になり、その設置料を雑収入または売上高という勘定科目で記帳します。

普通法人はすべての所得に法人税がかかる(全所得課税)ため、個人のような所得区分はありません。

したがって法人は、受け取った設置料をもれなく益金に算入すれば足ります。

法人がどちらの勘定科目を使うかは、設置料の金額の重要性で使い分けます。

設置料の金額の重要性使う勘定科目考え方
少額で重要性が低い雑収入
(営業外収益)
本業以外の少額な収益をまとめる
賃料収入全体から見て無視できない売上高銀行融資での見え方も考え、本業の収益として計上

資産管理会社など不動産賃貸が本業の法人は、設置料の金額がまとまるなら、その設置料を売上高に含めて計上するのが実務的です。売上高が大きくなるぶん、会社は金融機関に対して事業規模や収益基盤を示しやすく、融資の審査で有利になりやすいためです。

【法人のうちマンション管理組合の場合】収益事業の部分だけ課税

マンション管理組合も税務上は法人として扱われますが、法人税がかかるのは収益事業から生じた所得の部分だけです。

管理組合の多くは人格のない社団等にあたり、法人税法では法人とみなされます(法人税法3条)。

ただし普通法人と違い、管理組合には収益事業から生じた所得にだけ法人税がかかります(法人税法4条・7条)。

管理組合が屋上を基地局設置のために通信会社へ貸すことは、収益事業のひとつである不動産貸付業(法人税法施行令5条1項5号)に当たります。

この取扱いは、国税庁の質疑応答事例でも明確にされています。

国税庁は質疑応答事例「マンション管理組合が携帯電話基地局の設置場所を貸し付けた場合の収益事業判定」で、管理組合が携帯基地局の設置場所を貸して受け取る設置料収入は、収益事業である不動産貸付業に該当すると示しています。管理組合は、この設置料を管理費や組合員向けの駐車場収入とは区分して経理し、収益事業として申告します。

【個人の場合】所得区分は不動産所得(雑所得ではない)

個人が受け取った携帯基地局・アンテナ設置料は、不動産所得に区分します。雑所得ではありません。

その根拠は、所得税法26条所得税基本通達26-5です。

通達では「広告等のため、土地、家屋の屋上又は側面、塀等を使用させる場合の所得は、不動産所得に該当する」と定められています。

個人が屋上や土地をアンテナ設置のために貸すことは土地・建物の貸付けにあたるため、受け取る設置料は不動産所得になります。

ここで、個人が間違えやすい誤解を整理しておきます。

「金額が少ないから雑所得でよい」は誤りです。設置料が月数千円でも、土地・建物の貸付けである限り、大家さんはその収入を不動産所得として扱います。

個人が迷う「不動産所得か雑所得か」と自動販売機との違い

個人の所得区分は、その副収入が「不動産の貸付け」にあたるかどうかで決まります。

同じ副収入でも、基地局と自動販売機では区分が変わります。代表的なケースを表で比べてみましょう。

副収入の種類所得区分理由
基地局・アンテナの屋上や土地への設置料不動産所得大家さんが土地・建物を貸す=不動産の貸付け
看板・広告のための屋上や壁面の使用料不動産所得所得税基本通達26-5で不動産所得と明記
自動販売機の設置による手数料収入雑所得または事業所得場所の提供+販売協力の対価で、不動産の貸付けではない

自動販売機の設置収入は、大家さんが売上の一部を受け取る手数料に近い性格のお金です。

このため自動販売機の収入は不動産の貸付けとはいえず、大家さんはこれを雑所得(事業として継続的に行っている場合は事業所得)に区分するのが一般的です。

設置料の消費税は課税売上(簡易課税は第6種・不動産業)

個人・法人のどちらであっても、屋上にアンテナを設置させて受け取る設置料は消費税の課税売上になります。

大家さんが建物(屋上)を通信会社に使わせることは施設の貸付けにあたるため、受け取る設置料には消費税がかかります(国税庁タックスアンサーNo.6213)。

国税庁の質疑応答事例「マンション管理組合が携帯電話基地局の設置場所を貸し付けた場合の収益事業判定」でも、その注記で設置料収入は消費税の課税対象と明記されています。

ただし、大家さんが土地だけを貸す場合は、消費税の扱いが分かれます。

貸し方消費税根拠(国税庁タックスアンサー)
建物の屋上にアンテナを設置させる課税建物(屋上)を貸すのは「施設の貸付け」にあたり課税(No.6213 駐車場の使用料など
更地に鉄塔を建てさせて土地を貸す非課税の余地土地の貸付けは原則非課税(No.6201 非課税となる取引)。
ただし施設の利用に伴う土地の使用は課税(No.6213

更地を貸す場合でも、その土地がアンテナ設備の敷地として施設の利用に伴う土地の使用と評価されれば、大家さんが受け取る使用料は課税になり得ます。

契約の内容によって課税・非課税の判断が分かれるため、迷うときは税理士にご確認ください。

受け取る側の基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、消費税の免税事業者になります。消費税の簡易課税を選ぶ場合、建物の貸付けによる設置料は第6種事業(不動産業)でみなし仕入率40%になります(国税庁タックスアンサーNo.6509)。

受け取った設置料の仕訳例(法人・個人)

受け取った携帯基地局・アンテナ設置料を、法人は雑収入など、個人は不動産収入として記帳します。具体例を見てみましょう。

【法人】屋上のアンテナ設置料10万円(税込11万円)を受け取った場合

借方金額貸方金額
現金預金11万円雑収入10万円
仮受消費税等1万円

【個人】屋上のアンテナ設置料10万円(税込11万円)を受け取った場合

借方金額貸方金額
現金預金11万円不動産収入(賃貸料)10万円
仮受消費税等1万円

免税事業者の場合は、消費税を区分せず、受け取った11万円をそのまま収入に計上します。

設置料の確定申告のしかた(個人・法人別)

受け取った携帯基地局・アンテナ設置料は、個人は不動産所得として確定申告し、法人・管理組合は法人税の申告に含めて納税します。

個人は、家賃収入と同じ不動産所得なので、確定申告(原則、翌年3月15日まで)でまとめて申告します。

普通法人は、普段の決算・法人税の申告に益金として含めるだけで、特別な手続きは要りません。

ただし、普段他の課税所得がなく、申告をしていないマンション管理組合の場合は、収益事業を始めた時点で税務署へ「収益事業開始届出書」という書類を事前に提出する必要があります。

会社員が副業として基地局・アンテナの設置料を受け取る場合、申告が必要かどうかは金額で変わります。給与以外の所得が1年で20万円以下なら、所得税の確定申告は必要ありません(いわゆる「20万円ルール」)。ただし、所得税の申告をしない場合でも、住民税の申告は別に必要です。なお、医療費控除などで所得税の確定申告をするときは、設置料が20万円以下でも、その金額を申告に含めます。

設置料の税務で間違えやすい点(申告漏れ・区分・消費税)

大家さんは、設置料の申告漏れと区分のミスに注意が必要です。次の3点を確認しましょう。

  • 申告漏れ:設置料は携帯電話会社からの支払調書等で税務署に把握されやすく、申告漏れを指摘されやすい収入です。
  • 消費税の設定ミス:会計ソフトで設置料が「対象外」のままになっていないか、課税売上の税区分になっているかを確認します。
  • 所得区分の取り違え:個人は、金額が少なくても設置料を雑所得にせず、家賃収入と同じ不動産所得として申告します(少額でも不動産所得になります)。

まとめ|個人か法人かで扱いを押さえて正しく申告しよう

最後に、大家さんが受け取った設置料について、立場ごとの扱いと消費税のポイントを整理します。

  • 個人:所得税の不動産所得として、家賃収入と合算して申告。少額でも雑所得にはしない。
  • 普通法人:法人税の益金。勘定科目は雑収入または売上高。
  • マンション管理組合:人格のない社団等として法人扱い。設置料は収益事業の部分として課税。
  • 消費税:屋上の設置料は課税売上。更地は契約次第。免税点は1,000万円。簡易課税は第6種(40%)。

最後に、よくある質問をまとめます。

法人が受け取る基地局・アンテナの設置料の勘定科目は何ですか?

法人は、受け取った設置料を雑収入または売上高で記帳します。少額で重要性が低ければ雑収入、賃料収入全体から見て無視できない金額なら売上高で処理します。普通法人は全所得課税のため、収益事業の判定は不要です。

個人で受け取る設置料は不動産所得ですか、雑所得ですか?

不動産所得です。大家さんが土地や建物の屋上を貸す行為にあたるため、金額が少なくても雑所得ではなく不動産所得として、家賃収入と合算して申告します(所得税法26条、所得税基本通達26-5)。

マンション管理組合が受け取る設置料は課税されますか?

課税されます。管理組合は人格のない社団等として税務上は法人とみなされ、収益事業から生じた所得に法人税がかかります。屋上を基地局設置に貸すことは収益事業の不動産貸付業に当たり、管理組合はこれを管理費等とは区分して経理します。

設置料に消費税はかかりますか?簡易課税では何種事業ですか?

屋上の設置料は消費税の課税売上です。簡易課税では建物の貸付けとして第6種事業(不動産業・みなし仕入率40%)になります。受け取る側の基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら免税事業者です。

出典・参考

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