「ガソリン代は車両費?それとも旅費交通費?」——事業で車を使う個人事業主や法人は、こうした勘定科目の判断に迷いがちです。
この記事は、事業で自動車を使う個人事業主・法人に向けて、ガソリン代・自動車税・保険料・駐車場代などの費用を、どの勘定科目・どの消費税区分で経費にするかを、不動産業を専門とする税理士が整理したものです。
なお、車の本体を買ったときの費用は減価償却という別の扱いになるため、この記事では日々の維持・使用にかかる費用を対象とします。
自動車費用は事業で使う分を経費にできる(勘定科目の基本)
自動車を事業のために使っていれば、その費用は経費に計上できます。
勘定科目は、ガソリン代なら旅費交通費、自動車税なら租税公課というように、費目ごとにおおよそ決まっています。
たとえばガソリン代1万円を事業用の口座から支払ったときの仕訳は、次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 1万円 | 普通預金 | 1万円 |
車の運用にかかる費用(ガソリン・修理・洗車など)は、まとめて「車両費」という1つの科目にもできます(所得・税額は同じ。ただし月極駐車場など性質が違うものは除きます)。
勘定科目に絶対の正解はありませんが、一度決めた科目は毎年同じように使い続けるのが原則です。
年によって科目を変えると、決算書の数字が前年と比べてぶれてしまいます。会計ソフトで科目を一度設定し、毎年同じ科目を使いましょう。
それでは、費目ごとの勘定科目と消費税の区分を早見表で確認しましょう。
自動車費用の勘定科目と消費税区分の早見表
費目ごとの勘定科目と、記帳のときに必要な消費税の区分を早見表にまとめました。
| 費用 | 勘定科目(費目別) | 消費税の区分 |
|---|---|---|
| ガソリン代 | 旅費交通費 | 課税(10%) |
| レッカー代 | ||
| 高速道路料金 | ||
| 駐車場代(一時利用) | ||
| 駐車場代(月極・事業所用) | 地代家賃 | |
| 車検の整備・代行費用 | 修繕費 | |
| 修理費 | ||
| 洗車代・ワイパー等の消耗品 | 消耗品費 | |
| 任意の自動車保険料 | 保険料 | 非課税(保険料) |
| 車検の自賠責保険料 | ||
| 自動車税 | 租税公課 | 不課税(税金) |
| 車検の自動車重量税 |
消費税の課税・非課税・不課税の考え方や、基本的な仕組みについては、消費税の仕組みをわかりやすく解説した記事で詳しく説明しています。
レッカー代・駐車場代・自動車保険など迷いやすい費用の勘定科目
早見表のうち、レッカー代・駐車場代・自動車保険料は使い方で勘定科目が変わり、質問の多い費用です。
レッカー代の勘定科目
故障や事故で自動車を運ぶレッカー代は、旅費交通費で経費にできます。
事故などで修理代とまとめて請求された場合は、全体を修繕費にまとめて処理するのが一般的です。
より細かく管理したいときは、移動分を旅費交通費、修理分を修繕費に分けてもかまいません。
駐車違反で車をレッカー移動されたときも、レッカー代や保管料は反則金とは別の実費なので、旅費交通費として経費にできます。
駐車場代の勘定科目
駐車場代は使い方で勘定科目が分かれます。
不動産の内見や商談のときに使うコインパーキングなどの一時利用は、旅費交通費で処理します。
事業所や店舗で月極で借りる駐車場は、地代家賃で処理します。
自動車保険料の勘定科目
事業で使う自動車の任意保険・自賠責保険は、保険料という勘定科目で経費にできます。
自動車保険などの保険料を1年分まとめて前払いしたときは、本来は使う期間に合わせて、月割りで少しずつ経費にするのが原則です。
ただし、支払った日から1年以内に使い切る前払い分は、毎年同じ処理を続けることを条件に、払った年に全額をまとめて経費にできます(短期前払費用の特例。月割りは不要です)。
経費にできない自動車費用(交通反則金)
自動車のために支払った費用でも、経費にできないものがあります。代表例が交通違反の反則金・罰金です。
スピード違反や駐車違反などの交通反則金・罰金・科料・過料は、経費にできません(所得税法第45条、法人税法第55条)。
仕事中の運転で生じた反則金でも、経費にできない点は変わりません。
個人事業主が事業用の口座から反則金を支払ったときは、経費ではなく事業主貸(=事業のお金を私的な支払いに充てたときに使う科目)で処理します。
法人が役員や従業員の反則金を肩代わりした場合、業務中の運転による違反であれば、その負担額は法人の経費(損金)になりません。
一方、私的な運転など業務に関係しない違反金を法人が肩代わりしたときは、その人への給与として扱われます。
この給与分は、従業員へのものであれば法人の経費になりますが、本人に給与として課税されます。
役員へのものは、法人の経費にもなりません(臨時の給与は定期同額給与に当たらないためです)。
個人事業主はマイカーの事業使用分を家事按分して経費にする
個人事業主が事業とプライベートの両方で自動車を使っている場合、自動車費用のうち事業で使った割合分だけを経費にします。
事業で使った割合を計算して経費にすることを、家事按分(=仕事とプライベートの共用費用を割合で分ける処理)といいます。
個人事業主は、按分の基準に走行距離や使用日数など合理的なものを選びます(所得税法第45条・所得税法施行令第96条)。
たとえば年間1万kmのうち事業利用が6,000km(6割)なら、ガソリン代や保険料などの60%を経費に計上します。
| 費目 | 年間の支払額 | 事業割合 | 経費にできる額 |
|---|---|---|---|
| ガソリン代 | 12万円 | 60% | 7万2,000円 |
| 自動車保険料 | 6万円 | 60% | 3万6,000円 |
| 自動車税 | 3万6,000円 | 60% | 2万1,600円 |
個人事業主は、按分の根拠(走行距離や業務日数の記録)を残しておくと、税務調査でも説明しやすくなります。会計ソフトでは、家事按分の割合を設定して期末にまとめて振り替えることもできます。
法人は社用車の名義と役員の私的利用に注意する
法人が社用車の費用を経費(損金)にするには、その自動車が法人の事業のために使われていることが前提です。
新しく設立した法人などでは、社用車を個人名義のまま購入・登録するケースがあります。
名義が個人でも、法人がその自動車を事業で使い費用を負担していれば経費にできます。
ただし私的利用との区別があいまいになりやすいため、法人は可能なら法人名義にしておくのが安全です。
役員が社用車を私的にも使っている場合、その私的利用分は役員への給与(経済的利益)として扱われます。
この分は役員に所得税がかかり、会社は源泉徴収(給与から所得税を天引きすること)が必要になります。
自動車費用の勘定科目と消費税区分のまとめ
自動車費用は、費目ごとの勘定科目で経費にでき、記帳のときは消費税の区分もあわせて確認します。
迷いやすい点を整理します。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 勘定科目の選び方 | ガソリン代などは費用ごとに勘定科目を分けるのが基本。「車両費」にまとめてもよい。一度決めた科目は毎年続ける |
| 消費税の区分 | ガソリン・修理・駐車場などは課税、保険料は非課税、税金は不課税 |
| 経費にできない費用 | 交通反則金・罰金は経費にできない。 |
| 個人のマイカー | 事業で使った割合分だけを家事按分して経費にする |
| 法人の社用車 | 法人の事業利用が前提。名義と役員の私的利用に注意 |
なお、車の本体購入費用は減価償却で費用化します。
とくに中古車を使った減価償却の節税は効果が大きいので、購入時は個人事業主の減価償却・法人の減価償却とあわせて確認してください。
自動車費用の経費計上でよくある質問
- ガソリン代の勘定科目は旅費交通費と車両費のどちらが正しいですか?
-
どちらも正しく、ガソリン代は旅費交通費でも車両費でも経費にできます。
車の費用をまとめて車両費にしてもよいですが、その場合は消費税のかかる費用とかからない費用が混ざり、消費税の集計が大変になります。
また、一度決めた科目は毎年同じように使い続けてください。
年によって変えると、決算書の数字が前年と比べてぶれてしまいます。
- 駐車違反の反則金やレッカー代は経費になりますか?
-
駐車違反やスピード違反の反則金は、基本的には、経費にできません。
ただし、社用の車を従業員が私的に利用しているときの反則金は会社が支払えば、給与として経費になります(従業員の方で追加で所得税が発生しますが…)。
一方、レッカー移動代や保管料は反則金とは別の実費なので、業務に関係するものは旅費交通費として経費にできます。
- 自動車保険料の消費税はどう処理しますか?
-
自動車保険料(任意保険・自賠責保険)は、消費税がかからない「非課税」の取引です。
- 個人事業主がマイカーを仕事にも使っています。保険料やガソリン代は全額経費にできますか?
-
全額は経費にできません。
プライベートと兼用しているマイカーは、事業で使った割合分だけを経費にします(家事按分)。
たとえば走行距離のうち事業利用が6割なら、保険料やガソリン代の6割が経費です。割合の根拠となる記録を残しておきましょう。
- 役員が社用車を私的にも使うとどうなりますか?
-
その私的に使った部分は、役員への給与(経済的利益)として扱われます。
役員に所得税がかかり、会社は源泉徴収(給与から所得税を天引きすること)が必要になります。
出典
- 国税庁タックスアンサー No.2210「やさしい必要経費の知識」
- 国税庁タックスアンサー No.5202「役員等に対する経済的利益」
- 国税庁タックスアンサー No.5300「損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期」
- 国税庁タックスアンサー No.5380「短期前払費用として損金算入ができる場合」(法人税基本通達2-2-14/個人は所得税基本通達37-30の2)
- 国税庁タックスアンサー No.6201「非課税となる取引」(保険料などの消費税非課税)
- 国税庁 法人税基本通達 第5款「罰科金」(9-5-8〜9-5-12。役員・使用人の反則金を法人が負担した場合の取扱い)
- e-Gov法令検索「所得税法(昭和40年法律第33号)第45条」(家事関連費・罰金等の必要経費不算入)
- e-Gov法令検索「所得税法施行令(昭和40年政令第96号)第96条」(家事関連費のうち必要経費に算入できる範囲)
- e-Gov法令検索「法人税法(昭和40年法律第34号)第55条」(罰金等の損金不算入)


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