「アパートの家賃収入が増えてきたのに、税金が高くて手取りが残らない…」そんな悩みはありませんか?
サブリース方式(一括転貸)なら、ご自身の物件をいったん自分の会社に貸し、会社から入居者へ貸し直すだけで、家賃収入を個人と会社に分けて節税できます。
この記事では、サブリース方式の仕組みと節税効果の計算例、税務署に否認されないための賃料設定と注意点を、不動産業専門の税理士がわかりやすく解説します。
サブリース方式(一括転貸)とは?仕組みをわかりやすく解説
サブリース方式とは、オーナーが所有する建物を自分の会社に一括で貸し、会社が入居者に転貸する方式です。
転貸(=又貸しのこと)という言葉のとおり、オーナーと入居者の間に自分の会社をはさむのがポイントです。まず用語を整理します。
- サブリース方式(一括転貸方式)
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サブリース方式とは、オーナーが建物を会社に一括で貸し、会社が入居者へ又貸しする方式です。家賃の差額が会社の利益になります。
- 不動産管理会社
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不動産管理会社とは、オーナーやその家族が役員・株主になっている同族経営の会社です。物件の管理や転貸を行います。
- 同族会社
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同族会社とは、親族など身内が支配する会社のことです。身内どうしの取引になるため、税務上は不自然な契約がないか特に確認されます。
例えば入居者からの家賃が月100万円、会社からオーナーへの支払いが月85万円なら、差額の月15万円が会社の利益になります。
オーナー個人に集中していた家賃収入の一部を会社に移す。この仕組みが節税の出発点です。
実は、会社を使った節税の方法はサブリース方式だけではなく、全部で3つあります。
次の章でそれぞれの違いを比較してみましょう。
不動産管理会社の3方式を比較|サブリース方式が向いている人
不動産管理会社を使った節税には3つの方式があり、サブリース方式は「移せる所得の大きさ」と「導入のしやすさ」のバランス型です。
| 方式 | 仕組み | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 管理委託方式 | 個人の物件の管理を会社に任せ、管理料を支払う | 契約だけで始められ導入が最も簡単 | 移せる所得は管理料(目安5〜10%)に限られ小さい |
| サブリース方式 | 会社が建物を一括借上げして入居者に転貸する | 賃料差額(目安10〜20%)を移転でき委託方式より効果が大きい | 空室リスクを会社が負う・契約や口座の実態整備が必要 |
| 不動産所有方式 | 建物そのものを会社に売却して会社が貸主になる | 家賃収入の全額が会社に入り効果は最大 | 建物の売買代金や登記費用など移転コストが大きい |
管理委託方式の詳細は「管理委託方式を採用した場合の節税対策と注意点」を、不動産所有方式の詳細は「賃貸用不動産を会社に売却する節税対策の詳細と検討事項」を、会社設立そのものの判断は「不動産管理会社の設立メリット・デメリット完全ガイド」をご覧ください。
3方式の違いがわかったところで、そもそもなぜサブリース方式を導入すると節税できるのか、理由を見ていきます。
サブリース方式で節税できる3つの理由
サブリース方式を導入すると節税できる最大の理由は、1人に集中した所得を分散して、累進課税の高い税率を避けられるからです。
- 所得分散(=収入を家族や会社など複数に分けること)で個人の高い税率を避けられる
- 個人の所得税率は最高45%、中小法人の法人税率は所得800万円以下の部分が15%と税率差が大きい
- 家族に給与を払えば給与所得控除(=給与をもらう人に認められるみなし経費)が1人あたり最低65万円使える
所得税は所得が増えるほど税率が上がる累進課税で、税率は5%から45%の7段階です。
家賃収入が1人に集中すると、それだけ高い税率で課税されてしまいます(出典:国税庁タックスアンサー「No.2260 所得税の税率」)。
一方、資本金1億円以下の中小法人の法人税率は、所得800万円以下の部分が15%です(出典:国税庁タックスアンサー「No.5759 法人税の税率」)。
さらに会社から配偶者やお子さんに給与を支払えば、令和7年分以降は1人あたり最低65万円の給与所得控除が受けられます(出典:国税庁タックスアンサー「No.1410 給与所得控除」)。
理屈がわかったところで、実際にいくら安くなるのかをモデルケースの数字で確認しましょう。
節税効果はいくら?モデルケースで計算
課税所得が900万円を超えるオーナーなら、年間50万円以上の節税になるケースもあります。
次の前提で概算してみます。
- 満室賃料が年1,200万円(月100万円)のアパートをオーナー個人が所有
- 会社への賃料は満室賃料の85%(年1,020万円)に設定し、差額180万円が会社の収入
- オーナーの課税所得は1,100万円(所得税率33%の区分)
- ほかに収入のない配偶者(社会保険の扶養内)へ会社から給与を年120万円支給
| 項目 | 金額の目安 | 計算式・前提 |
|---|---|---|
| オーナーの税負担の減少 | 約▲78万円 | 所得180万円減×約43.7%(所得税33%+住民税10%+復興特別所得税) |
| 会社の税負担の増加 | 約+19万円 | 利益50万円(180万円−給与120万円−諸経費10万円)×法人税等約23%+住民税均等割約7万円 |
| 配偶者の税負担の増加 | 約+1万円 | 給与120万円−給与所得控除65万円=所得55万円。基礎控除以下のため所得税0円・住民税は少額 |
| 家族全体の節税効果 | 約58万円/年 | 78万円−19万円−1万円 |
この金額は一定の前提を置いた概算です。家族構成や社会保険への加入状況によって結果は変わるため、実行する前に必ず税理士に試算してもらいましょう。
ところで、この計算例では会社への賃料を「満室賃料の85%」と置きました。
実はこの賃料をいくらにするかが、節税効果と否認リスクの分かれ目です。
次の章で適切な目安を確認しましょう。
賃料はいくらに設定する?税務署に否認されない目安
実務では、オーナーから会社への賃料を満室賃料の80〜90%程度に設定するのが税務署に否認されない一般的な目安です。
言い換えると、会社に残す取り分は満室賃料の10〜20%程度です。
外部のサブリース会社が建物を借り上げる際の相場が満室賃料の85〜90%であることが、実務上の根拠とされています。
ただし、この水準は法令で決められたものではありません。
空室リスクが高い地域や築年数の古い物件では、より会社の取り分を大きくしても合理性が認められる余地があると考えられます。
会社の取り分を不自然に大きくすると、同族会社の行為計算の否認(=身内の会社を使った不自然な取引による節税を税務署が認めないルール。所得税法157条)の対象になるおそれがあります。
詳しくは「不動産管理料の適正額と行為計算の否認規定」で解説しています。
賃料は賃貸借契約書に明記し、変更する場合は覚書を作成して、銀行口座を通した入出金の記録を残すことが大切です。
賃料は契約書に明記し、変更する場合は覚書を作成して、銀行口座を通した入出金の記録を残すことが大切です。
ここまでで「いくらで会社に貸すか」が決まりました。
次は、その賃料で実際に契約を結び、サブリース方式を始めるまでの手順です。
サブリース方式を始める手続きの流れ
手続きは契約と名義の切り替えが中心で、大きく4つのステップで完了します。
定款と登記簿の事業目的に不動産賃貸業・不動産管理業を加えます。
記載がないまま家賃のやり取りを始めると、税務署に疑念を持たれる原因になります。
賃料(満室賃料の80〜90%が目安)と、修繕費などの費用をどちらが負担するかを契約書に明記します。
貸主が会社に変わることを入居者に通知し、賃貸借契約の契約主体を会社にします。
入居者からの家賃は会社の口座で受け取り、会社からオーナーへの賃料も口座振込にして記録を残します。
手順そのものはシンプルですが、税務調査では「契約どおりの実態があるか」が厳しく確認されます。
次の注意点を必ず押さえてください。
税務調査で否認されない5つの注意点
否認を防ぐ最大のポイントは、契約・お金・管理の実態をすべて形に残すことです。
- 建物賃貸借契約書を必ず作成する(賃料・契約期間などの条件を明記する)
- 定款・登記簿の事業目的に不動産賃貸業・不動産管理業を入れておく
- 費用の負担先(小規模修繕など)を個人と会社のどちらにするか事前に決めておく
- 入居者との契約主体を会社にする(貸主名義の切り替えを忘れない)
- 個人・会社それぞれ名義の銀行口座で入出金し、記録を保管する
税務は形式ではなく実質で判断されます。
契約書を作っても、お金の流れや管理の実態が伴っていなければ、取引の実在を証明できません。
最後に、運用を始めた後につまずきやすい2つの論点を確認しておきましょう。
会社が赤字になったら?敷金・礼金は誰のもの?
サブリース方式の運用後につまずきやすい論点は、「会社の赤字への対処」と「敷金・礼金の帰属」の2つです。
結論から言えば、赤字は原因によって対処法が変わり、敷金・礼金は契約主体である会社が受け取ります。
順に見ていきましょう。
【論点1】会社が赤字になったら?原因別の対処法
赤字への対処は、原因が「空室」なのか「一時的な費用」なのかで変わります。
空室が原因の場合は、節税どころか賃貸経営そのものの危機です。
空室対策を実行し、改善が見込めなければ売却も選択肢になります。
修繕費がたまたまかさんだなど一時的な赤字なら、サブリース方式を続けて問題ありません。
会社の利益が少なすぎる場合は、覚書を作成したうえで1〜2年ごとに賃料を見直し、会社に適切な利益が残るよう調整しましょう。
【論点2】敷金・礼金は誰のもの?
入居者と契約しているのは会社なので、敷金・礼金・保証金は会社に帰属します。
オーナー個人の口座で受け取ると契約と実態が食い違うため、注意してください。
まとめ|サブリース方式の節税は実態づくりとセットで
サブリース方式は、家賃収入を会社に分散して所得税の累進課税を避ける、一定規模以上のオーナーに有効な節税対策です。
ただし、その効果は契約書・銀行口座・登記といった実態づくりとセットで初めて手に入ります。
- 会社への賃料は満室賃料の80〜90%が実務の目安
- 家族への給与で給与所得控除(最低65万円)を活用できる
- 節税効果は年間数十万円規模になるケースもある(要個別試算)
- 契約書・銀行口座・登記の実態整備が否認を防ぐカギ
サブリース方式の節税は、賃料設定や契約書の整備を誤ると効果が出ないばかりか、否認のリスクも生じます。
当税理士事務所は、不動産業のお客様を多数サポートしてきた実績をもとに、物件の状況に合わせた最適な方式をご提案しますので、お気軽にご相談ください。
サブリース方式の節税に関するよくある質問
- サブリース方式と管理委託方式はどちらが節税になりますか?
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会社に移せる所得はサブリース方式の方が大きく、目安は賃料の10〜20%です。
管理委託方式の管理料は5〜10%程度のため、節税効果を重視するならサブリース方式が有利です。
ただし、サブリース方式の場合、空室リスクを会社が負い、年度によって利益がブレる可能性がある点には注意してください。
- 会社への賃料を満室賃料の70%にしても大丈夫ですか?
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一般的な目安(80〜90%)より会社の取り分が大きくなるため、否認のリスクが高まります。
空室リスクが特に高い物件など、合理的な理由を説明できる場合を除き、避けた方が安全です。
- 個人で結んだ入居者との契約はどうなりますか?
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貸主の地位を会社に切り替える手続きを行います。
入居者には貸主の変更と新しい振込先を通知し、契約主体を会社にしておくことが実態づくりの重要なポイントです。
- サブリース方式にすると確定申告はどう変わりますか?
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オーナー個人は会社から受け取る賃料で不動産所得を申告し、会社は別途法人税の申告を行います。
申告が2本立てになり手間が増えるため、早めに税理士に連絡するなどの対策をとりましょう。


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