銀行から融資を受ける前に経理上の対策を行おう

会社が銀行から融資を受けずに経営していくことは大変なことです。

稀に無借金経営の会社も存在しますが、事業を拡大する上で、レバレッジをかけることができるようになるため、銀行から融資を受けることは大切になります。

そして、銀行から融資を受けようと考えると、融資を受ける「」に経理上の対策を行うことは非常に重要になります

銀行側としては、利息と元本をきちんと返済できる会社にお金を貸したい訳なので、赤字の会社には、お金を貸したくありません

一方で、中小規模の会社は、ギリギリの利益水準で操業していることも多く、良くて少額の黒字、悪いと、赤字続きということも多いです。

よって、中小規模の会社が銀行融資を受けようと考えたら、その前に赤字でなくなる、または黒字が増える経理上の対策を行わないといけなくなります

戦略的に経理上の対策を行わないと、いざ銀行から融資を受ける際に、土俵にすら乗れないという可能性があります。

決算書上の利益の種類は4つある

赤字であるだけで、銀行融資を受けるのは非常に難しくなりますので、銀行融資を受ける前は「赤字絶対ダメ!」と覚えておきましょう。

結論として、銀行融資を受ける際は、前年度以前の決算で利益が出ていること(黒字であること)が重要なのですが、実は利益の概念にも以下の4つがあります

  • 売上総利益
    売上総利益とは、売上高から売上原価を差し引いた利益です。
    別名で粗利益(粗利)とも言います。
    取り扱っている商品の純粋な利益です。
  • 営業利益
    売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益です。
    取り扱っている商品の純粋な利益から間接的にかかる費用(管理部門の人件費や交際費など)を引いた利益で、会社の営業の実質的な利益を言います。
  • 経常利益
    営業利益から営業外損益を差し引いた利益です。
    営業外損益とは、銀行利息など本業以外に発生した経常的な損益のことです。
    つまり、経常利益とは、本業以外の損益を加味した1年間の通常の利益のことです。
  • 当期純利益
    経常利益から特別損益を差し引いた利益です。
    特別損益とは保険金収入などイレギュラーな損益です。
    つまり、当期純利益とは、イレギュラーの事象も含めた当期の利益金額ということになります。

ちなみに、あなたの事業の各利益の金額を知りたければ、確定申告書(法人税)の後ろに添付されている決算書の損益計算書(P/L)でそれぞれの利益は確認することができます

税務署に提出している確定申告書(法人税)の「控え」で確認してみてください。

各利益の性質と黒字化対策について

銀行から融資を受ける上で知っておきたい各利益の内容と黒字化対策について見ていきましょう。

売上総利益

売上総利益とは、売上高-売上原価が黒字のことですが、仮に、売上総損失だと、商売をすればするほど赤字になる体質なので、事業継続が難しいということになります。

よって、銀行などの第三者に決算書を見せる前年度と前々年度には、黒字化しておくことが必須でしょう。

営業利益

営業利益は、売上総利益から管理部門の人件費や交際費等の商品やサービスを作り込むのに直接関わらない間接的な経費を抜いた「後」の利益になります。

中小企業では、営業利益ではなく、営業損失になっている企業も結構多いです。

莫大な営業損失であれば、どうにもなりませんが、多少の営業損失なら、例えば、経費の領収書を除くことでどうにか黒字にできないでしょうか?

意図的な売上高の未計上や経費の水増しは、税務上禁止行為ですが、経費の領収書があるのに、それを帳簿に載せないで、経費金額を少なくすることは脱税にはなりません

経費の領収書を除く調整は、納税額が増える方に働くので、税務署的にも文句はないはずです。

経常利益

経常利益についてなのですが、大きな損益の発生源は、借入金がある場合の支払利息でしょう。

もし、借入金がなければ、支払利息も発生せず、意識しなくても、営業利益であるならば、経常利益にもなるはずです。

しかし、例えば、不動産賃貸業を営んでいて、銀行からの借入金が多ければ、支払利息が発生してしまいますので、経常損失になることがあります。

銀行融資を受けるために経常損失を生じさせない対策として、例えば、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の解約があります。

経営セーフティ共済とは、掛金(毎年支払うお金)の全額を損金(経費)に計上できる一方で、解約時には解約金の全額を益金(収益)に計上できる制度です。

つまり、経営セーフティ共済に事前に加入しておけば、利益が出ている年度は掛金部分が節税対策になり、しかも、銀行融資を受ける前年度等に解約すれば、経常損失を経常利益に変えらる可能性があります。

加入から解約までに40か月以上あれば、掛金の全額が戻ってきますので、経営セーフティ共済をうまく利用できると銀行融資を受けやすくなり、さらに節税対策もできてしまうことになります。

当期純利益

当期純利益は経常利益から特別損益を差し引いて計算されます。

銀行融資を考えた際は、当期純損失でない方が当然良いわけですが、経常利益であって、当期純損失の場合とは、毎年起きないようなイレギュラーな損失が発生して、利益を食い潰しているということです。

当期純利益か当期純損失かの違いではなく、むしろ、会社や個人事業主の今後の経営にも影響してくるでしょうから、融資をする方としては、特別損失の内容を詳しく聞きたいということになります。

特別損失の内容のヒアリングの結果、経営を行っていく上で特に重要な要素でなければ、イレギュラーな事象が発生し、当期純損失になっただけなので、融資に影響しない場合もあるでしょう。

ただし、そうは言っても、財務制限条項(お金を借りた後、事業者の経営が苦しくなった時に銀行が介入できる権利)等の銀行側からの要件を見る限り、当期純利益であることが含まれていることも多いので、指標としては当期純利益にしておくことがベストでしょう。

黒字化対策は前年度と前々年度の損益計算書で行う

銀行から融資を受けたいのなら、「最新の」確定申告書に添付されている決算書に含まれる損益計算書の損益は黒字にしておいた方が良いでしょう。

つまり、損益計算書に売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益が順番に表示されているのがベストな状態です。

また、「最新の」というのは、当年度のことではなく、前年度と前々年度のことです。

当年度の確定申告書や決算書が作成されるのは翌年度以降なので、当年度期中では、まだ確定申告書や決算書は作成されていません。

当年度の業績も月次決算書などを見れば確認できてしまい、銀行から提出を求められることもありますが、作成途中の月次決算書に関しては赤字でも、なんとでも理由をつけられますし、先方もそれを知っているのでそれほど気にしていなかったりします(業績が大きく落ちていれば別)。

よって、銀行から融資を受けようと思ったら、まずは、前年度と前々年度の利益に気をつけましょう

最後に節税対策の注意点

銀行からの融資を考えているのなら、各段階損益が利益になるように、言い換えれば、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益が計上されているか注意しながら経理業務を行いましょう

よくある事例ですが、税金の計算のもとになる当期純利益をギリギリに抑えたいあまりに、その他の段階損益がどこかで赤字になっている場合です。

もし銀行からの融資を想定しているのなら、少なくても、前年度、前々年度は、当期純利益がギリギリになる節税対策は避けた方が良いでしょう。