不動産賃貸業の銀行格付けアップ!決算を黒字化するための経理処理方法!
この記事の対象者
  1. 今年度の決算で赤字が予想でき、黒字化したい個人事業主や会社
  2. 賃貸用不動産の大規模改修工事などがあり、当期の業績が苦しい個人事業主や会社
  3. 少しでも利益を多く計上したい不動産賃貸事業者

決算書を黒字にするための経理処理方法について

不動産賃貸業を営んでいくためには、銀行から融資を受けることが前提になるため、当然銀行からの格付けが非常に重要になります

銀行の格付けは事業者が提出した決算書から判断されており、決算書はなるべく黒字(利益が計上されている状態)にしておきたいところです。

不動産賃貸業の場合、売上高の実績が期首の予算と大幅に乖離することは珍しく、最初に予想した売上高の範囲内で経費を使用する計画を建てていれば、決算は基本的に黒字になるでしょう。

ただし、突発的な大規模修繕工事を行い経費がかさんだ場合や不景気になり空室が多くなった場合などは赤字(損失が計上されている状態)になることもあります。

不況や震災などの特殊事情で発生した一過性の赤字であれば、それほど融資に影響は出ないでしょうが、正直どんな状態であろうと、赤字は出したくないところです。

そこで、今回は黒字決算へ導くための経理処理方法をいくつか紹介していきたいと思います。

物件取得時の諸費用を経費計上しない

最初に検討したいのが、通常の経理処理では経費として計上する費用の固定資産計上についてです。

例えば、不動産購入時に通常は経費計上する建物登録免許税・不動産取得税・司法書士手数料は固定資産計上することができます。

法人税法上は「諸費用を経費に計上できる」(基本通達7-3-3の2)と記載されているだけなので、裏を返せば、諸費用を固定資産に計上しても問題ありません。

ちなみに、土地に関する登録免許税等も固定資産計上できるのですが、土地は減価償却できない固定資産であり、売却時まで固定資産計上されたままになってしまうので、できれば土地に関する登録免許税等は経費に計上したいところです。

ただし、土地に関する登録免許税等を固定資産計上した場合は、土地の取得価額がその分大きくなるので、売却の時に利益が出にくくなり、場合によっては検討する価値があります。

なお、登録免許税・不動産取得税・司法書士手数料をそれぞれについて経費に計上するか、固定資産に計上するかを判断してもOKです。

例えば、建物の登録免許税だけを固定資産計上して、不動産取得税や司法書士手数料を経費計上しても問題ありません。

ちなみに、物件購入時の諸費用を経費か固定資産か選べるのは法人の場合だけです。

個人事業主の場合は、所得税法が適用され、所得税基本通達37-5で「業務の用に供される資産に係る登録免許税、不動産取得税等は必要経費に算入する。」とあるので、強制的に経費計上されることになります。

開業費・創立費を繰延資産に計上する

こちらは新規開業・創立の場合にだけ使える手段です。

開業前・創立前にかかった費用は初年度の費用として計上することもできますが、繰延資産として資産計上しておき、翌年度以降に償却して経費に計上することもできます。

開業費・創立費として繰延資産の対象となる経費の範囲は限定されていますが、①会社設立のためにかかる費用、②賃貸用不動産の購入に係る直接的な費用(調査費や出張費など)などが資産計上できることになります。

開業初年度ならば、開業費・創立費を繰延資産として資産計上するだけでかなり黒字に近づけるはずです。

修繕費として経費に計上されているものを固定資産に計上する

工事見積書を精査して修繕費(経費)と固定資産の区分をする場合、なるべく修繕費として経費に計上できるものがないかを探すのが通常ですが、今回は、逆に、資本的支出として固定資産に計上できるものがないかを探すことになります

税法上だけを考えれば、固定資産に計上しなくてはならないものを経費に計上すると問題ですが、経費に計上する可能性があるものを固定資産に計上してもあまり大きな問題にはなりません。

税務署側からすると、経費を固定資産に計上することで、利益が多くなり、結果として、納税者が税金を早めに納めてきただけだからです。

ただし、、経費計上することが明らかな工事費用まで固定資産計上できる訳ではなく、あくまで修繕費として経費計上するか資本的支出として固定資産計上するかが微妙な費用に限られますので、適用範囲が大きくならないように注意してください。

経費の計上を一部取り止める

経費の計上を一部取り止めることにより経費の総額を減らして黒字化する方法です。

税法的には、納税額が多くなる調整をしているだけなので問題ないです。

個人事業主や小規模の会社なら、私用部分の領収書が紛れ込んでいたという建て付けで領収書の一部を帳簿から取り消すことは可能でしょう。

ただし、ある程度以上の規模の会社になると流石に内部統制上あまり好ましくない方法です。

「恒常的に私用の領収書が紛れ込んでいるの?(=会社を私物化しているの?)」という疑いが強く出てしまいますので、少なくてもある程度以上の規模の会社はやらない方が良いでしょう。

減価償却費の計上を取りやめる

まず、個人事業主の減価償却費の計算は強制なのでこの方法は使えません。

法人の場合のみ利用できる手段です。

法人の場合、当期の決算が赤字になりそうならば、その年度の減価償却費の計算をしなくてもOKです。

つまり、本来の減価償却費の計上額分だけ経費が少なくなり、当期の決算が黒字に近づくことになります。

さらに、個別の固定資産ごとに当期の減価償却を行うか行わないかを選択することも可能です。

ただし、減価償却費の計上を取り止めたことは、法人税申告書の別表16を見れば、すぐに分かってしまうため、最終手段にしましょう。