従業員の福利厚生と節税対策のために養老保険(生命保険)を利用する方法

従業員の福利厚生制度を充実させることは、企業に優秀な人材を集める上で非常に重要なポイントになります。

しかし、福利厚生制度を整えるためには、当然お金が必要になり、多くの企業では二の足を踏まざる負えない状況です。

そこで、今回は養老保険(生命保険の一種)を利用し、従業員に対する福利厚生制度を整えるとともに企業の節税対策にも役立つ方法を考えていきましょう。

養老保険とは

養老保険とは、生命保険の一種で生存保険と死亡保険を組み合わせた保険

つまり、養老保険は、被保険者(保険の対象者)が保険期間満了まで生存したときは満期保険金支払われ、仮に保険期間内に死亡した場合でも、死亡保険金が支払われる生命保険になります。

福利厚生のための養老保険とは

企業では、従業員の福利厚生のために養老保険に加入する場合があります。

仮に従業員に不幸が起きてしまった場合に、死亡退職金や弔慰金を養老保険(生命保険)を活用して従業員の家族に支払うためです。

節税対策のための養老保険とは

養老保険は企業の節税対策としても有効です。

死亡保険金の受取人を被保険者の家族、満期保険金の受取人を企業とした養老保険を企業が契約した場合、毎年の支払保険料の半分は法人の損金(経費)に算入することができます

例えば、年間200万円を支払保険料とする養老保険に企業が加入した場合、半分の100万円を損金(経費)に算入することができます

2019年6月末の国税庁による税制改正により、支払保険料の100%を損金(経費)にする生命保険は消滅しました。

現状では、支払保険料の40%を損金(経費)に算入できる生命保険が主流ですが、養老保険では支払保険料の50%を損金(経費)に算入できるので、節税対策の面では少しだけ有利になります。

仕訳の損金算入額で節税効果を確認しよう

養老保険の加入が節税対策になることを仕訳の損金算入額で確認してみましょう。

事例としては、年間200万円の養老保険を企業が加入した場合を想定しています。

借方
金額
貸方
金額
福利厚生費(損金科目)
積立保険金(資産科目)
100万円
100万円
普通預金
200万円

福利厚生費部分が法人税法上の損金(経費)にはなります。なお、積立保険金は企業の資産(財産)として計上されることになります。

養老保険に加入する上での注意点

養老保険に加入する際に1つだけ注意して頂きたい事項があります。

役員又は役員の親族だけを養老保険の対象(被保険者)とした養老保険に加入した場合、支払保険料は損金にはならず、その役員等に対する報酬や給与になってしまうということです。

上記の仕訳に当てはめるならば、福利厚生費の部分が役員報酬という損金科目に変わります。

ただし、もし支払保険料が役員報酬と認定された場合、損金(経費)に算入できません

役員報酬は、毎月一定の金額か事前に決められた金額以外は損金に算入できないという決まりがあるためです。

よって、役員個人側では、養老保険の支払保険料部分が報酬の増加になり、所得税が増税に繋がり、企業側では、養老保険の支払保険料部分が損金(経費)算入できないので、納税額がダブルで増えることになります。

参考までに根拠条文である法人税基本通達9-3-4、タックスアンサー(法人税)No5211を以下に提示します。

死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする

法人が役員に対して支給する給与の額のうち定期同額給与、事前確定届出給与又は業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されない


満期保険金・死亡保険金受取時の仕訳

最後に、満期保険金・死亡保険金受取時の企業の仕訳について確認しておきましょう。

従業員の福利厚生のために企業は以下の保険に加入します。
毎年の保険料の支払額、満期保険金又は死亡保険金受取時の企業の仕訳はどうなるでしょうか?

  • 保険種類 養老保険
  • 契約者 企業
  • 被保険者 従業員(4名 簡便的に全員45歳)
  • 満期保険金受取人 企業
  • 死亡保険金受取人 従業員の家族
  • 年間の支払保険料 220万円
  • 死亡保険金・満期保険金 1,000万円
  • 保険期間・保険料払込期間 65歳まで
【毎年の支払保険料の仕訳】
毎年の法人税法上の損金(経費)算入額は、支払保険料220万円の半分の110万円になります。

借方
金額
貸方
金額
福利厚生費(損金科目)
積立保険金(資産科目)
110万円
110万円
普通預金
220万円



【従業員が死亡してしまった場合の企業の仕訳】
被保険者である従業員が保険期間中に死亡してしまった場合、死亡保険金の受取人は従業員の家族であり、法人には一切お金は入ってきません。
よって、法人に資産として積み立ててある保険積立金を取り崩す仕訳をすることになります。

借方
金額
貸方
金額
雑損失(損金科目)
440万円
積立保険金(資産科目)
440万円

※積立保険金の貸借対照表金額のうち対象分を取り崩す仕訳をします。


【満期保険金を受け取った時の企業の仕訳】
被保険者である従業員が退職まで生存していた場合、満期保険金が企業に入金されます。
よって、法人では以下の仕訳が必要になります。

借方
金額
貸方
金額
普通預金(資産科目)
1,000万円
積立保険金(資産科目)
雑収入(益金科目)
440万円
560万円

※積立保険金の貸借対照表計上金額のうち対象分を取り崩し、受け取った保険金との差額を雑収入にします。