別居の息子が父親の居宅を相続した場合の小規模宅地等の特例の適用の可否

今回は、税務相談でよく頂く質問に回答していこうと思います。

題材としては、別の場所に住んでいる息子が父親の住んでいる家の敷地を相続した時に特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例(80%減額)を適用できるかということです。

【事例】
父親が居住していた居宅を別居の息子が相続しました。
なお、母親は健在で、夫婦は同居していました。
この場合に小規模宅地等の特例を適用することは可能でしょうか?

結論から先に記載すると、この質問事項の事例では、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例は適用できません

特定居住用宅地等は現実に居住している者を保護しようという制度趣旨で成り立っています。

被相続人(亡くなった人)が居住していた居宅を配偶者以外が相続する場合、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例を適用できるのは、親族が同居親族家なき子に該当する場合のみです。

今回の事例では、別居の親族(息子)が相続しているため、勿論、同居親族には該当しません

よって、別居の親族(息子)が家なき子に該当するかどうかが最大の焦点になります。

しかし、家なき子の条件として、「被相続人に配偶者又は被相続人と同居する相続税法上の法定相続人がいないこと」というものがあります。

本事例では、母親(配偶者)が父親と一緒に暮らしており、家なき子の要件を満たさないことになります。

仮に、本事例で小規模宅地等の特例を認めてしまうと、別居していた息子に対して相続税法が同居していた配偶者や親族を排除する機会を与えてしまう可能性があるからです。

ちなみに、同居する母親(配偶者)がいなければ、家なき子に該当するので、息子が居宅を相続しても小規模宅地の特例を適用できることになります。

よって、上記の質問が来た時には、場合によりますが、一度母親に敷地を相続してもらい、母親の相続時に息子が敷地を相続した方が良い旨を返答しています。

ただし、どうしても、父親の相続時に息子が敷地を相続したいなどの要望がある場合があります。

例えば、配偶者居住権に基づく敷地利用権などは小規模宅地等の特例の対象になるので、息子に敷地の相続させつつ、相続税額を縮小させることも可能です。

ただし、配偶者居住権という目に見えない権利を設定するなど、どんどん複雑になり、税理士の手を借りないと相続対策が出来なくなります

専門家の手を借りることはその分費用が発生することになりますので、費用対効果をよく考えて相続税対策を取ることが必要になります