「蛍光灯が買えなくなる前にLED照明へ交換したいが、費用は経費になるのか?」と悩んでいませんか。
水俣条約(=水銀による健康被害や環境汚染を防ぐための国際条約)により、一般照明用の蛍光灯は2027年末までに製造・輸出入が禁止されます。そのため、LED照明への交換を進める会社や不動産オーナーが急増しています。
結論からいうと、LED照明への交換費用は、原則として修繕費(=支出した年に全額経費にできる費用)として処理できます。これは国税庁が質疑応答事例で公表している見解です。
ただし、工事の内容によっては固定資産(建物附属設備)として計上し、15年かけて減価償却するケースもあります。
この記事では、不動産業を専門とする税理士が、照明器具・LED照明の交換費用について、修繕費と資本的支出の判定、勘定科目・耐用年数・仕訳例まで、経理初心者の方にもわかりやすく解説します。
LED照明への交換費用は原則「修繕費」になる【国税庁の見解】
LED照明への交換費用は、原則として修繕費に計上できます。
国税庁は質疑応答事例で、次の取替えについて修繕費処理を認めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取替えの内容 | 事務室の蛍光灯100本をすべて蛍光灯型LEDランプに取替え |
| ランプの購入費用 | 1本あたり1万円 |
| 取付工事費 | 1本あたり1,000円 |
| 費用総額 | 110万円 |
| 税務上の判定 | 全額修繕費でOK |
110万円かかっても全額修繕費にできる
修繕費かどうかは金額の大小ではなく、支出の実質で判定します。蛍光灯型LEDランプは照明設備(建物附属設備)がその効用を発揮するための「部品」の1つにすぎず、部品の性能が上がっても設備全体の価値が高まったとまではいえない、というのが国税庁の理由です。
出典:国税庁 質疑応答事例「自社の事務室の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えた場合の取替費用の取扱いについて」(令和7年8月1日現在の法令・通達に基づく回答)
そもそも「修繕費」と「資本的支出」はどう違うのでしょうか。次章で2つの用語の意味を整理します。
修繕費と資本的支出の違い
修繕費は支出した年の経費になり、資本的支出は資産に計上して減価償却します。
- 修繕費
-
固定資産の通常の維持管理や、き損した部分の原状回復(=元の状態に戻すこと)のための費用です。支出した事業年度に全額を経費(損金)にできます。
- 資本的支出
-
固定資産の価値を高めたり、使用可能期間を延ばしたりする支出です。固定資産に計上し、減価償却によって数年に分けて経費化します。
- 減価償却
-
資産の取得費用を法定耐用年数(=税法で決められた使用年数)に分けて、少しずつ経費にしていく仕組みです。
この区分は、法人税法施行令第132条と法人税基本通達7-8-1・7-8-2で定められています。
判断基準の詳細は、関連記事「リフォーム費用の資本的支出と修繕費の判断基準」でも解説しています。
では、照明の工事でどのような場合に資産計上となるのか。次章で具体的なケースを見ていきます。
資産計上(資本的支出)になる3つのケース
照明器具・LED照明の工事でも、次の3つのケースでは資産計上が必要です。
| ケース | 工事の内容 | 税務上の扱い | 耐用年数 |
|---|---|---|---|
| ①照明設備全体の取替え | 器具・配線を含めて照明設備をまるごと交換する工事 | 建物附属設備(電気設備)として資産計上 | 15年 |
| ②新規設置・増設 | 照明がなかった場所への新設や増設(物理的な付加) | 資本的支出または新規の資産取得 | 15年 |
| ③大幅な性能アップ | 通常の取替えを超える高性能・高級な設備への交換 | 通常の取替費用を超える部分が資本的支出 | 15年 |
分かれ目は、ランプ・器具という「部品」の交換にとどまるか、照明「設備」としての交換・新設にあたるかです。
見積書に「照明設備更新工事」「電気設備工事一式」と書かれている場合は、修繕費にできない可能性があるため注意しましょう。
資産計上になった場合に使う勘定科目と耐用年数を、次章で確認します。
照明器具の勘定科目と耐用年数
建物に取り付けられた照明設備の法定耐用年数は15年(建物附属設備の電気設備)です。
| 照明器具の種類 | 勘定科目 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 天井・壁に固定された照明設備(配線を含む) | 建物附属設備(電気設備) | 15年 |
| スタンドライトなど持ち運びできる照明器具 | 器具備品(電気機器) | 6年 |
| LEDランプ・電球のみの購入(交換用) | 消耗品費または修繕費 | 購入した年の経費 |
出典:減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一「電気設備(照明設備を含む。)」(国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(PDF))
「修繕費か資産計上か、どうしても判断に迷う」という場合は、国税庁が示す金額の形式基準が使えます。次章で判定の手順を見ていきましょう。
迷ったときは金額で判定できる(国税庁の形式基準)
修繕費か資本的支出か迷ったときは、次の4ステップの形式基準で順番に判定できます。
1回の修理・交換の金額が20万円未満の場合、またはおおむね3年以内の周期で行われることが明らかな修理の場合は、修繕費にできます。
照明の新設・増設や、明らかなグレードアップ(価値を高める支出)は資本的支出になります。
修繕費か資本的支出か明らかでない場合、支出額が60万円未満なら修繕費にできます。
または、修理・交換した固定資産そのもの(照明設備なら帳簿上の建物附属設備)の前期末取得価額(=当初の取得価額に過去の資本的支出を加えた額)のおおむね10%以下でも修繕費にできます。
それでも区分できないときは、継続適用を条件に、支出額の30%を修繕費、残りを資本的支出とする処理が認められます。
出典:国税庁 タックスアンサーNo.5402「修繕費とならないものの判定」(令和7年4月1日現在法令等)
修繕費にできるリフォーム費用の具体例は「リフォーム費用を修繕費にするか固定資産にするかの一覧」にまとめています。
ここまでの判定を踏まえて、実際の仕訳を具体的な数字で確認しましょう。
LED照明への交換費用の仕訳例
仕訳は、修繕費なら支出時の1本、資産計上(建物附属設備)なら取得時と決算時(減価償却)の2段階になります。それぞれ具体例で見ていきましょう。
【例1】事務所の蛍光灯40本をLEDランプに交換し、ランプ代40万円と取付工事費4万円の合計44万円を普通預金から支払った場合(修繕費に該当)。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 修繕費 | 44万円 | 普通預金 | 44万円 |
【例2】照明設備全体を配線工事込みで300万円かけて取り替えた場合は、建物附属設備として資産計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 建物附属設備 | 300万円 | 普通預金 | 300万円 |
決算では、定額法(耐用年数15年・償却率0.067)で減価償却します。
300万円×0.067=年20.1万円を15年間にわたって経費化します(期中に取得した初年度は月割計算)。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 20.1万円 | 建物附属設備 | 20.1万円 |
個人の不動産賃貸業でも考え方は同じ
賃貸アパート・賃貸ビルの照明をLEDに交換した場合も判定の考え方は同じで、修繕費に該当すれば不動産所得の必要経費になります。
資産計上になった場合でも、金額が小さければ全額をその年の経費にできる特例があります。次章で確認しましょう。
40万円未満なら全額経費にできる【令和8年度税制改正】
修繕費にならず資産計上と判定された場合でも、1単位の取得価額が40万円未満なら、青色申告の中小企業者等は「少額減価償却資産の特例」で全額をその年の経費にできます。
修繕費の判定(前章)とは別段階の、いわば資産計上になった後の救済ルールです。
ここでいう取得価額は、器具本体の価格だけではありません。取付工事費などの付随費用を含めた合計額で40万円未満かどうかを判定します(法人税法施行令54条)。
また、判定は「通常1単位として取引される単位」ごとに行います(法人税基本通達7-1-11)。照明設備をまとめて取り替える工事は一式で判定されるため特例を使えないことが多く、高天井LED照明を1台ずつ取得するような場合に使いやすい制度です。
この特例を使える取得価額の上限は、令和8年度税制改正で30万円未満から40万円未満に引き上げられました(租税特別措置法67の5。令和8年4月1日以後の取得分から適用・年間合計300万円まで・適用期限は2029年3月31日)。
この40万円の特例のほかにも、金額の小さい資産には段階的なルールがあります。取得価額ごとの処理方法をまとめると、次のとおりです。
| 取得価額 | 処理方法 | 対象者 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費などで全額経費 | すべての事業者 |
| 20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等償却 | すべての事業者 |
| 40万円未満 | 少額減価償却資産の特例で全額経費(年300万円まで) | 青色申告の中小企業者等 |
表中の「一括償却資産」とは、取得価額20万円未満の資産を、耐用年数に関係なく3年間で3分の1ずつ経費化できる制度です(法人税法施行令133条の2)。
修繕費との合わせ技で、利益が出た年にLED照明への交換をまとめて行えば節税効果が高まります。蛍光灯の製造終了への対応と節税を同時に進められる制度です。
最後に、実務でつまずきやすい注意点をまとめます。
照明器具・LED交換の経理処理の注意点
LED交換の経理処理では、次の3つの注意点を押さえておきましょう。
見積書・請求書の工事内容を必ず確認する
「LEDランプ取替え」なら修繕費ですが、「照明設備更新工事」「電気設備工事一式」となっている場合は資産計上の可能性があります。工事の名目ではなく実際の内容で判定するため、内訳のわかる明細をもらいましょう。
大規模リフォームと同時の交換は資本的支出になりやすい
建物全体の改修・リニューアルと一体で照明工事を行うと、照明部分も含めて資本的支出と判定されることがあります。可能であれば工事を区分して見積もり・契約しましょう。
判定の根拠資料を保存しておく
税務調査で説明できるよう、工事明細・見積書・請求書・工事前後の写真と、修繕費と判定した根拠(国税庁の質疑応答事例など)をセットで保存しておくと安心です。
まとめ:LED照明への交換費用は原則修繕費。工事の内容で判定しよう
この記事のポイント
LED照明への交換費用は原則修繕費(国税庁の質疑応答事例)。照明設備全体の交換・新設は建物附属設備として15年で減価償却。迷ったら20万円・60万円などの形式基準で判定。40万円未満なら少額減価償却資産の特例で全額経費にできます。
蛍光灯の製造終了が迫り、照明器具のLED化と減価償却・修繕費の処理は、どの会社・不動産オーナーにも身近な論点になりました。
原則は修繕費、設備としての交換・新設なら資産計上という軸で判定すれば大きく迷うことはありません。判断に迷うケースや金額の大きい工事は、税理士に相談しながら進めると安心です。
よくある質問
- LED照明への交換は修繕費と資本的支出のどちらですか?
-
蛍光灯やランプをLEDに取り替えるだけなら原則修繕費です。国税庁の質疑応答事例でも、蛍光灯100本・総額110万円の取替えが修繕費と認められています。照明設備全体の交換や新設は資本的支出(資産計上)になります。
- 照明器具の耐用年数は何年ですか?
-
建物に固定された照明設備は建物附属設備(電気設備)として15年です。スタンドライトなど可動式の照明器具は器具備品として6年になります。
- 自分でLED電球を買って交換した場合の勘定科目は?
-
電球・ランプ代だけなら消耗品費で処理するのが一般的です。業者に取付けを依頼した場合は、工事費込みで修繕費として処理できます。どちらも購入・支出した年の経費になります。
- 賃借しているオフィスの照明をLEDに交換した費用も経費にできますか?
-
できます。ランプの取替えにとどまる限り、賃借物件でも原則修繕費です。ただし内装工事と一体で照明設備を新設する場合は内部造作として資産計上が必要になることがあります。詳しくは関連記事「内部造作の耐用年数は何年?」をご覧ください。


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