遺産分割出来ているかどうかが重要
実は、小規模宅地等の特例は期限内申告だけでなく、期限後申告や修正申告でも適用可能です。
しかし、遺産分割を行い、誰にどの宅地等が帰属しているのかがはっきりしないと小規模宅地等の特例は適用できません。
つまり、小規模宅地等の特例の適用にあたっては、遺産分割出来ているかどうかが非常に重要になります。
遺産分割が遅くなればその分デメリットは増える
小規模宅地等の特例を適用するためには遺産分割をする必要があるということは分かりました。
ただし、小規模宅地等の特例を適用する上で、どの時期までに遺産分割が出来ているかも大切になります。
つまり、遺産分割ができる時期で以下の3つのグループに分けることができます。
- 遺産分割が相続税の申告期限内にできる
- 申告期限後3年以内に遺産分割ができる
- 申告期限後3年超かけて遺産分割ができる
1.2.の場合は小規模宅地等の特例を受けることが出来ますが、3.の場合は、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、係争中などで分割が出来ない理由があることを証明しなければ、小規模宅地等の特例を適用することはできません。
よって、3.のように遺産分割に3年超掛かってしまう場合は、手続きが煩雑になるばかりではなく、そもそも小規模宅地等の特例を適用できなくなるリスクも高くなることになります。
また、2.のように申告期限後3年以内に遺産分割が出来ても、申告期限内に申告できなければ、納税額が増えるリスクがあります。
例えば、相続税の申告期限までに遺産分割が出来ず、未分割による申告書を提出し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付したとします。
この場合、宅地等が未分割なので小規模宅地等の特例を適用できません。
よって、減額がない分、納税額が数百万円~数千万円増加することになります。
遺産分割が終了し、更生の請求を税務署にした時に小規模宅地等の特例が適用され、払い過ぎていた相続税は回収できることになりますが、申告時の納税額が増えるリスクは手許資金が少ない場合は看過できないことになります。
遺産分割の時期による小規模宅地等の特例を事例で確認してみよう
小規模宅地等の特例の適用は遺産分割の時期やその申告方法でパターンが細分化されます。
今回は代表的な事例を確認してみましょう。
【パターン1】
相続開始後、相続税の申告期限までに遺産分割協議が終了し、相続税の申告書も提出しました。
一番オーソドックスなパターンであり、他の要件さえ満たせば、当然に小規模宅地等の特例が適用できます。
【パターン2】
相続が開始しましたが、申告期限までに遺産分割協議がまとまらなかったので、未分割による申告書を提出し、あわせて「申告期限後3年以内の分割見込書」も添付しました。
未分割による申告書を提出している場合は、3年以内に遺産分割協議がまとまれば、更生の請求により小規模宅地等の特例を適用できます。
なお、未分割による申告書を提出する場合、当然納税義務も発生しますが、納税額には小規模宅地等の特例が反映されないので注意が必要です。
なお、当初の予定と異なり3年以内に遺産分割が出来ない場合には、再度、申告期限後3年を経過する日の翌日から2カ月を経過する日までに、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受けなければなりません。
【パターン3】
遺産分割が未了なので、申告期限までに相続税の申告書を提出していませんでした。
その後、遺産分割が終了したので期限後申告をしました(申告期限から3年以内)。
原則通りであれば、期限内に申告書を提出し、あわせて「申告期限後3年以内の分割見込書」も添付するべきです。
ただし、状況的にはパターン3の事例も実務上はありえます。
この場合、税務署長がやむを得ない事情があると認めた時は、小規模宅地等の特例を適用することができます。
【パターン4】
相続税の申告期限からすでに3年超経過していますが、遺産分割が終了していなく、申告書も提出していません。
相続税の申告書を提出していないということは、添付書類である「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」も提出していないことになります。
よって、この場合は小規模宅地等の特例を適用できません。