「通帳に入ってきたお金は、どこまでが自社の売上高になるのか?」不動産業を営む会社の経理では、その線引きに迷う場面が少なくありません。
預かっただけのお金まで売上高に計上すると、会社の利益が実態よりふくらみ、本来は払わなくてよい法人税などの税金まで納めることになります。
本記事では、不動産業を営む会社を対象に、不動産賃貸業・不動産管理業・不動産仲介業の3つに分けて、売上高と預り金の分け方を仕訳イメージつきで解説します。
不動産業を営む会社の売上高は3種類|預り金との違い
不動産業を営む会社の売上高になるのは、通帳に入金された金額のうち自社に帰属する分だけで、返還義務のあるお金は預り金として区別します。
不動産業を営む会社の売上高は以下の3つに分類されます。
- 不動産を所有し、賃貸することによる不動産賃貸業としての売上高
- 他人の不動産を管理することによる不動産管理業としての売上高
- 他人の不動産の売買や貸借を媒介することによる仲介業としての売上高
不動産賃貸業の売上高の仕訳|家賃・礼金・更新料
不動産賃貸業では、賃借人から受け取る家賃・礼金・更新料が売上高になります。
礼金は、入居のお礼として賃借人が賃貸人に支払うお金で、敷金と違って退去時に返還しません。
更新料は、賃貸借契約を更新する時に、賃借人が引き続き借りるために支払うお金です。
礼金と更新料はいずれも返還しないお金のため、家賃と同じように受け取った時点で売上高になります。
【仕訳イメージ】
〈家賃・礼金・更新料〉
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10万円 | 売上高 | 10万円 |
※ 売上高の下に家賃・礼金・更新料の補助科目を作っておくと、内訳を区分して把握できます。
不動産賃貸業の売上高の仕訳|敷金・保証金は売上高と預り金に分かれる
敷金や保証金は、退去時に返還しないものだけが売上高になり、返還するものは預り金として処理します。
敷金は、家賃の滞納や退去時の原状回復費用に備えて、賃貸人が賃借人から契約時に預かるお金です。
保証金は、事業用の物件などで敷金の代わりに使われる名称で、性質は敷金と同じです。
賃借人から入居時に受け取る敷金や保証金は、賃貸借契約の内容により、以下のように勘定科目が変わります。
- 敷金や保証金を賃借人の退去時に返還する→「預り金」に計上
- 敷金や保証金を賃借人の退去時に返還しない→賃貸借契約で返還しないと決めた時期に「売上高」に計上
返還するのであれば、賃借人から預かっているだけなので、売上高ではなく預り金として処理することになります。勘定科目の名称は、預り保証金や預り敷金でも構いません。
【仕訳イメージ】
〈返還予定がない敷金・保証金〉
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10万円 | 売上高 | 10万円 |
※ 売上高の下に返還予定がない敷金や保証金の補助科目を作っておくと、内訳を区分して把握できます。
〈返還予定がある敷金・保証金〉
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 20万円 | 預り金 | 20万円 |
不動産管理業の業務手順|家賃を預かってから賃貸人に支払うまで
不動産管理業では、管理会社が賃借人から家賃を預かり、必要な支出を差し引いて賃貸人に支払います。
不動産管理業とは、他人が所有する不動産を管理し、その対価として管理委託料を受け取る事業です。
不動産管理業の業務手順は、以下の3ステップに分けられます。
管理会社の口座に賃借人から家賃が振り込まれますので、部屋ごとに家賃・礼金・敷金・更新料などを把握して月次管理報告書にまとめます。
共用部分の水道光熱費や管理会社が立て替えた工事費用を月次管理報告書にまとめます。
管理会社は、管理委託契約書で定めた自社の管理委託料も月次管理報告書にまとめます。
管理会社はお金を管理しているだけなので、賃貸人に収入から支出を差し引いた残額を支払うことになります。
業務の流れが分かったところで、次は不動産管理会社の仕訳を見ていきましょう。
不動産管理業の売上高の仕訳|家賃は預り金・管理委託料は売上高
管理会社が売上高に計上するのは管理委託料だけで、預かった家賃は売上高になりません。仕訳は、家賃を受け取った時に預り金を増やし、費用の支払いと賃貸人への送金で預り金を減らす流れになります。
【仕訳イメージ】
〈STEP1〉
まずは、賃借人から家賃を受け取った時の仕訳です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10万円 | 預り金 | 10万円 | ウエストステージ 101号室 家賃 |
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 8万円 | 預り金 | 8万円 | ウエストステージ 102号室 家賃 |
管理会社は、あくまで賃借人から賃貸人に対する家賃を預かっているだけなので、売上高ではなく預り金が増加するという仕訳をします。
〈STEP2〉
次に、預かったお金から不動産の管理にかかった費用を支払った時と、管理委託料を差し引いた時の2つの仕訳です。
〈①管理にかかった費用を支払った時〉
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 預り金 | 2万円 | 普通預金 | 2万円 | ウエストステージ共用部分電気代 |
共用部分の電気代や工事費用は、本来は賃貸人が負担する費用で、管理会社は預かったお金から代わりに支払っているだけです。そのため、管理会社の経費ではなく、預り金の減少という仕訳をします。
〈②管理委託料を差し引いた時〉
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 預り金 | 3万円 | 売上高 | 3万円 | ウエストステージ管理委託料 1月分 |
※ 売上高の下に管理委託料の補助科目を作っておくと、内訳を区分して把握できます。
管理委託料だけは、管理会社が自分の仕事に対して受け取る対価です。預かったお金から差し引いた時点で、預り金を減らすと同時に売上高に計上します。
〈STEP3〉
最後に、収入から支出を差し引いた残額を賃貸人に支払った時の仕訳です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 預り金 | 13万円 | 普通預金 | 13万円 | ウエストステージ賃貸人への支払い 1月分 |
仕訳の金額は、月次管理報告書の「賃貸人への支払い額」をそのまま使います。今回の例では、預かった家賃18万円から電気代2万円と管理委託料3万円を差し引いた13万円が、その金額にあたります。
不動産管理会社の仕訳の確認方法|預り金の残高は必ず0円になる
不動産管理会社が賃借人から預かった家賃は、経費の支払い・管理委託料・賃貸人への送金ですべて出ていくため、預り金の残高は必ず0円になります。
0円にならない場合は、どこかの仕訳が間違っています。家賃を受け取ったところから順に、収入と支出の仕訳をすべて確認してください。
なお、不動産管理会社の仕訳では、収入と支出が通帳に1本ずつ記帳されるため、1つ1つ仕訳の形にしてください。
仕訳の量が増えるのを嫌い、収入項目と支出項目を相殺して預り金を表示させず、管理委託料を売上高に計上する仕訳だけをしてしまうパターンが目立ちます。
相殺すると預り金の残高が0円になるかを確認できないため、仕訳の誤りを見つけられません。さらに、青色申告の要件である日々記帳にも抵触します。
不動産仲介業の売上高|仲介手数料は売買と貸借で仕訳が分かれる
不動産仲介業の売上高になるのは仲介手数料で、売買の仲介と貸借の仲介の2つに分けて仕訳します。
仲介は、不動産会社の一般的な業務のひとつです。仲介業とは、不動産の専門家である仲介会社が、取引をスムーズに進めるために売買や貸借の間に入って媒介する業務です。
仲介手数料は、取引が成立した時だけ受け取る成功報酬です。売上高に計上するのは、原則として売買契約が成立した日です。
ただし、継続して適用することを条件に、引渡日で計上することも認められています。契約日と引渡日のどちらを選ぶかは、仲介手数料の売上計上時期|契約日か引渡日かで詳しく解説しています。
それでは、次の章からは、①売買の仲介、②貸借の仲介の順に、それぞれの仕訳を見ていきます。
売買仲介時の売上高の仕訳|仲介手数料は媒介契約ごとに計上する
売買の仲介では、媒介契約を結んだ相手ごとに仲介手数料を売上高に計上します。
成功報酬は、媒介契約を結んだ相手から受け取ります。売主または買主の一方とだけ媒介契約を結んでいればその相手から、売主と買主の両方と媒介契約を結んでいれば両方から受け取ります。
売主と買主の両方から成功報酬を受け取る場合は、それぞれの媒介契約ごとに売上高を計上するため、仕訳は2本になります。
成功報酬を受け取った時の売上高の仕訳は、以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 100万円 | 売上高 | 100万円 |
※ 売上高の下に仲介手数料の補助科目を作っておくと、内訳を区分して把握できます。
貸借仲介時の売上高の仕訳|敷金・礼金などを預からない場合
借主から敷金や礼金などを預からない貸借の仲介では、預り金が発生しないため、仕訳は成功報酬を受け取った時の売上高の計上だけです。
成功報酬は、媒介契約を結んだ相手から受け取ります。貸主または借主の一方とだけ媒介契約を結んでいればその相手から、貸主と借主の両方と媒介契約を結んでいれば両方から受け取ります。
貸主と借主の両方から成功報酬を受け取る場合は、それぞれの媒介契約ごとに売上高を計上するため、仕訳は2本になります。
成功報酬を受け取った時の売上高の仕訳は、売買の仲介と同じです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 100万円 | 売上高 | 100万円 |
※ 売上高の下に仲介手数料の補助科目を作っておくと、内訳を区分して把握できます。
借主から敷金や礼金などを預かる場合は、預り金が発生して仕訳の本数が増えます。次の章で詳しく見ていきます。
貸借仲介時の売上高の仕訳|敷金・礼金などを預かる場合
借主から預かったお金は、いったん全額を預り金で処理します。売上高になるのは、仲介手数料と火災保険・家賃保証の代理店手数料の部分です。
賃貸借契約時に借主が支払う敷金・礼金・日割り家賃・仲介手数料・火災保険料・家賃保証会社契約金などを、まとめて初期費用といいます。
初期費用を借主から預かって貸主に支払う仲介会社は、預かった金額と支払った金額が銀行通帳に記帳されるため、仕訳が少し難しくなります。
事例で仕訳を確認していきましょう。
【事例】
- 建物賃貸借契約の借主から、敷金20万円、礼金10万円、日割り家賃14万円、仲介手数料11万円(税込)、火災保険料2万円、家賃保証会社契約金4万円を預かった
- 火災保険は当社が保険会社に代理店手数料20%控除後の金額を支払う
- 家賃保証会社契約金は当社が家賃保証会社に4万円を支払う(代理店手数料20%は後ほど家賃保証会社より当社に振り込まれる)。
- 決済日(鍵渡し日)に、預かったお金のうち敷金・礼金・日割り家賃を貸主に振り込む
〈①借主から初期費用を預かった時〉
借主から預かった初期費用61万円は、全額を預り金の勘定科目で処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 61万円 | 預り金 | 61万円 |
火災保険料と家賃保証会社の契約金は、仲介会社が契約を代行する場合に預かります。代行しない場合は預からないため、次の2つの仕訳は発生しません。
〈②火災保険料を支払った時〉
借主から預かっている2万円のうち80%部分である1万6千円を保険会社に支払い、20%部分である4千円は、代理店の売上高になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 1万6千円 | 普通預金 | 1万6千円 |
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 4千円 | 売上高 | 4千円 |
※ 売上高の下に代理店手数料(火災保険・家賃保証)の補助科目を作っておくと、内訳を区分して把握できます。
〈③家賃保証会社に契約金を支払い、代理店手数料を受け取った時〉
借主から預かっている4万円を家賃保証会社に支払うため以下の仕訳になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 4万円 | 普通預金 | 4万円 |
後日、代理店手数料の4万円×20%=8千円が家賃保証会社より振り込まれた場合は、代理店手数料部分を売上高に計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 8千円 | 売上高 | 8千円 |
※ 売上高の下に代理店手数料(火災保険・家賃保証)の補助科目を作っておくと、内訳を区分して把握できます。
〈④貸主に預り金を支払った時〉
借主から預かっている敷金20万円、礼金10万円、日割り家賃14万円を決済日に貸主に支払います。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 44万円 | 普通預金 | 44万円 |
〈⑤預かった仲介手数料を売上高に計上した時〉
決済が完了した時点で、預かっていた仲介手数料11万円を売上高に計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 11万円 | 売上高 | 11万円 |
※ 売上高の下に仲介手数料の補助科目を作っておくと、内訳を区分して把握できます。
貸借仲介時の売上高の仕訳のポイントは以下の3つになります。
- 売上高には、仲介手数料だけでなく代理店手数料(火災保険・家賃保証)も含まれます。
- 預り金の残高は、最終的に必ず0円になります。0円にならなければ仕訳が間違っています。
- すべての取引を通帳で行うと、入出金から相手先を把握でき、管理が楽になります(逆に取引を現金で行うと管理が非常に難しくなります)。
参考文献


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