「法人税が高くて、手元にお金が残らない」──そんな悩みを抱える経営者は少なくありません。
会社の税金の申告方法には「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、どちらを選ぶかで会社に残るお金は大きく変わります。
青色申告は、日々のお金の出入りをきちんと記録する手間と引き換えに節税の特典を受けられる制度で、届出をしなければ特典のない白色申告のままです。
本記事では、不動産業を専門とする税理士が、法人の青色申告7大メリットと申請期限を初心者向けにわかりやすく解説します。
法人の青色申告とは?白色申告との違い
法人の青色申告とは、複式簿記による帳簿(=日々の取引を記録する台帳)を備え、税務署から青色申告の承認を受けた法人が利用できる申告制度で、数々の節税特典の入口になります。
白色申告の法人には、欠損金の繰越控除(=赤字を翌期以降の黒字とぶつけて税金を減らせる仕組み)をはじめとする特典がほとんど認められません。
帳簿作成の負担は白色申告でもほとんど変わらないため、同じ手間で特典を受けられる青色申告を選ぶほうが断然有利です。
- 複式簿記とは:1つの取引を2つの側面から記録する帳簿の付け方です。例えば銀行から100万円を借りたときは「預金が100万円増えた」「借入金が100万円増えた」の両面で記録します。会計ソフトに日々の取引を入力すれば、自動的に出来上がります。
まずは、青色申告の承認を受けた法人が使える特典の全体像を、一覧表で確認します。
法人の青色申告7大メリット【一覧表】
法人の青色申告のメリットは、欠損金の10年繰越控除を筆頭に大きく7つあります。
| No. | 特典 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | 欠損金の10年繰越控除 | 赤字を翌期以降10年間の黒字と相殺できる |
| ② | 欠損金の繰戻し還付 | 赤字が出た年に、前の年に納めた法人税を返してもらえる |
| ③ | 少額減価償却資産の特例 | 40万円未満の資産を年300万円まで即時経費化できる |
| ④ | 特別償却 | 対象設備を買った年に、通常より多くの金額を経費にできる |
| ⑤ | 税額控除 | 一定額を法人税額から直接差し引ける |
| ⑥ | 各種優遇税制の前提 | 中小企業向け優遇の多くが青色申告を要件とする |
| ⑦ | 帳簿の信頼性 | 税務署の推測で税額を決められる「推計課税」を受けない |
7つすべてを使いこなす必要はありません。自社に当てはまる特典から使えば十分です。
法人の青色申告7大メリットを順に解説
7つのうち効果が特に大きいのは、欠損金の10年繰越控除と少額減価償却資産の特例です。一覧表の番号順に、7つすべてを解説します。
①欠損金の10年繰越控除で赤字を無駄にしない
欠損金の繰越控除とは、赤字(欠損金)を翌期以降10年間繰り越し、黒字と相殺して法人税を減らせる制度です(国税庁タックスアンサーNo.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」)。
資本金1億円以下の中小法人なら、繰り越した赤字を黒字の全額と相殺できます。
| 事業年度 | 損益 (赤字▲・黒字+) | 相殺する過去の赤字 | 税金がかかる利益 | 法人税 (税率15%) |
|---|---|---|---|---|
| 1期目 | ▲800万円 | ― | 0円 | 0円 |
| 2期目 | +300万円 | ▲300万円 | 0円 | 0円 |
| 3期目 | +600万円 | ▲500万円 | 100万円 | 約15万円 |
同じ利益でも、赤字を繰り越せない白色申告なら法人税は3期合計で約135万円(2期目45万円+3期目90万円)かかります。
青色申告なら約15万円で済み、繰越控除の有無だけで税額に約120万円の差が付きます(中小法人の軽減税率15%で計算)。
適用には、赤字が出た事業年度に青色申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出していることが必要です。
②欠損金の繰戻し還付で前期の法人税を取り戻す
繰戻し還付とは、当期の赤字を前期の黒字と相殺し、前期に納めた法人税の還付を請求できる制度です(国税庁タックスアンサーNo.5763「欠損金の繰戻しによる還付」)。
言い換えると、今年の赤字を昨年の黒字とぶつけて、昨年納めた法人税の一部を返してもらえる仕組みです。
対象は原則として資本金1億円以下の中小企業者等です。前期に黒字で納税し、当期に赤字へ転落した場合、資金繰りの立て直しに直結します。
同じ赤字を繰越控除と繰戻し還付の両方には使えないため、どちらが有利かは翌期以降の利益見通しで判断します。
③少額減価償却資産の特例|40万円未満の資産は買った年に全額経費化
少額減価償却資産の特例を使うと、1つ40万円未満の資産を、年間合計300万円まで取得した年度に全額経費化できます(適用期限:令和11年3月31日)。
なお、この特例を利用できるのは、①青色申告、②資本金1億円以下、③従業員数400名以下の3つの要件をすべて満たした法人だけです。
本来、高額な設備は減価償却(=購入代金を決められた年数に分けて経費にするルール)により、買った年に全額を経費にすることはできません。
少額減価償却資産の特例を使えば、35万円の業務用エアコンやパソコンでも、買った年度に全額を経費にでき、税金のかかる利益をすぐに減らせます。
仕訳のやり方や適用要件の詳細は「少額減価償却資産の仕訳と勘定科目|40万円未満特例の要件を税理士が解説」をご覧ください。
④特別償却
特別償却とは、対象の設備を買った年に、通常の減価償却に上乗せして経費にできる制度です。
代表例の中小企業投資促進税制では、1台160万円以上の新品の機械装置などを買うと、取得価額(=本体価格に送料・設置費などを加えた合計額)の30%を上乗せで経費にできます(国税庁タックスアンサーNo.5433「中小企業投資促進税制」)。
ただし、特別償却は経費の前倒しで、トータルの経費額が増えるわけではありません。納税を先送りして手元資金に余裕を作る制度と理解してください。
⑤税額控除
税額控除とは、計算された法人税額から一定額を直接差し引ける制度です。
上の中小企業投資促進税制なら、特別償却の代わりに取得価額の7%の税額控除を選べます(資本金3,000万円以下の法人などに限る)。
特別償却とどちらを使うか迷ったら、経費の前倒しではなく税額そのものが減る税額控除のほうが有利なことが多いです。
税額控除の対象になる投資や賃上げの内容は、その時々の政策で変わります。
特別償却との使い分けは「特別償却と特別税額控除ではどちらが有利か?」で詳しく解説しています。
⑥各種優遇税制の前提
中小企業向けの優遇税制の多くは、青色申告の法人であることが利用の条件になっています。
代表例である④の特別償却も⑤の税額控除も、白色申告の法人は使えません。青色申告の承認は、あらゆる優遇税制の入場券にあたります。
⑦帳簿の信頼性(推計課税を受けない)
推計課税とは、税務署が帳簿によらず、売上や利益などを推測して税額を決める課税方法です。
青色申告の法人は帳簿に基づいて調査されるのが原則で、推計課税は適用されません(e-Gov法令検索「法人税法131条」)。きちんと付けた帳簿が、税務調査で会社を守る盾になります。
青色申告承認申請書の提出期限【設立3か月ルール】
青色申告の承認を受けるには、原則として適用したい事業年度(=会社の会計期間)の開始日の前日までに、青色申告承認申請書を税務署へ提出する必要があります(国税庁「青色申告書の承認の申請」)。
例えば4月1日設立・3月決算の会社なら、3か月を経過した日は7月1日なので、提出期限はその前日の6月30日です。
ただし、設立1期目だけは特別で、承認申請書の提出期限は「設立日から3か月を経過した日」と「1期目の事業年度終了日」のいずれか早い日の前日までです。
決算期が近い2月1日設立・3月決算の会社なら、1期目の終了日(3月31日)のほうが早く、提出期限はその前日の3月30日になります。
承認申請の手続きは、次の3ステップで完了します。
原則は適用事業年度の開始日の前日まで、設立1期目は3か月ルールの期限までに提出します。
事業年度終了日など所定の時期までに却下の通知がなければ、承認されたものとみなされます。
提出が1日でも遅れると、その事業年度は白色申告となり、欠損金の繰越などの特典を丸ごと失います。設立直後の忙しい時期こそ要注意です。
最後に、不動産賃貸業の法人ならではの活用ポイントを紹介します。
不動産賃貸法人の活用ポイント
不動産賃貸業の法人では、物件取得初年度の赤字を10年繰越で、その後の家賃収入と相殺する使い方が青色申告の定番です。
物件購入の年は、登録免許税や不動産取得税などの初期費用で赤字になりがちです。青色申告なら赤字を捨てずに、翌期以降の黒字にぶつけられます。
外壁塗装や屋上防水といった大規模修繕で赤字になった年も同じです。その赤字も10年繰越の対象になり、翌期以降の家賃収入と相殺できます。
設備投資の場面では、後付けのルームエアコンや防犯カメラなど1つ40万円未満の備品を、少額資産の特例で即時経費化できます。
以上を踏まえて、要点を整理します。
まとめ|青色申告は法人節税の土台
法人の青色申告は、それ自体が節税になるだけでなく、あらゆる中小企業向け優遇税制の土台になる制度です。
- 赤字を資産に変える:欠損金は10年繰越と繰戻し還付で無駄にしない
- 40万円未満は即経費:1つ40万円未満の資産は、年間合計300万円まで買った年に全額経費にできる
- 期限が生命線:青色申告承認申請書は事業年度開始日の前日(設立1期目は3か月ルール)までが期限
承認申請書は、設立日や決算期から期限を逆算して、忘れずに提出することが肝心です。ど
法人の青色申告のよくある質問(FAQ)
法人の青色申告について、よくいただく質問をまとめました。
- 白色申告で運営中の法人は、いつから青色に切り替えられますか?
-
切り替えたい事業年度の開始日の前日までに青色承認申請書を提出すれば、その事業年度から青色申告になります。
例えば3月決算の会社が来期(4月1日開始)から青色にしたい場合は、今期中の3月31日までに青色承認申請書の提出が必要です。
- 青色申告の承認が取り消されることはありますか?
-
はい、あります。ただし単純な記帳ミス程度で取り消されることは、通常ありません。
取り消されるのは、税務調査で帳簿を見せない、売上を隠す・書類を偽る(隠ぺい・仮装)、2期連続の期限後申告といった重大なケースです。
- 青色申告の承認が取り消された後、復活できますか?
-
復活できます。取消しの通知を受けた日から1年たった後に承認申請書をもう一度提出し、承認されれば青色申告に戻れます。
通知から1年以内に再申請しても、却下される場合があります(e-Gov「法人税法123条」)。
- 欠損金の繰越と繰戻し還付は同時に使えますか?
-
併用できます。ただし同じ赤字を2回使うことはできないため、赤字をどちらへ充てるか振り分けます。
例えば、赤字1,000万円なら、300万円を前期の黒字と相殺して還付を受け、残りの700万円を翌期以降に繰り越せます。
- 少額減価償却資産の特例は中古資産にも使えますか?
-
取得価額(=本体価格に送料・設置費などを加えた合計額)が40万円未満なら、中古資産も特例の対象になります。年間合計300万円の上限に注意してください。
参考文献(国税庁・財務省・中小企業庁・e-Gov法令検索の公式ページ)
- 国税庁タックスアンサーNo.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
- 国税庁タックスアンサーNo.5763「欠損金の繰戻しによる還付」
- 国税庁「C1-19 青色申告書の承認の申請」
- 国税庁「青色申告の承認申請書(様式PDF)」
- 中小企業庁「少額減価償却資産の特例(パンフレット)」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
- 国税庁タックスアンサーNo.5433「中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」
- e-Gov法令検索「法人税法(昭和40年法律第34号)」第123条・第131条


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