個人事業主では無理でも、法人化すれば小規模宅地等の特例を適用できる!

小規模宅地等の特例には、①個人事業の宅地を保護する特例(特定事業用宅地等)と②同族会社(一族経営の会社)の事業の宅地を保護する特例(特定同族会社事業用宅地等)の2種類があります。

また、個人事業の宅地を保護する特例(特定事業用宅地等)には、次の2つの形態があります。

  1. 被相続人の事業を相続によって承継する形態
  2. 同一生計の親族(後継者)生前に事業を承継する形態

事業承継が相続によって行われる場合、営んでいる事業が個人事業でも、同族会社の事業でも、小規模宅地等の特例に与える影響はほとんどありません。

問題になるのは、個人事業を生前に承継する場合です。

個人事業でも、同一生計の親族(後継者)が生前に事業を承継する場合は、特定事業用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例(80%減額)を適用することが出来ます。

しかし、別生計の後継者が個人事業を生前に承継する場合生計一の要件を満たしていないため、特定事業用宅地等には該当せず、小規模宅地等の特例を適用できなくなります

また、事業承継時は同一生計であったとしても、後継者が同居を解消し、経済的に独立してしまった場合(後から別生計になった場合)、特定事業用宅地等には該当しなくなり、小規模宅地等の特例を適用できなくなります

上記のように個人事業では小規模宅地等の特例を適用できなくなってしまった場合でも、法人化すれば小規模宅地等の特例を適用できるようになる場合があります

例えば、別生計の後継者が被相続人の個人事業を生前に承継する場合、個人事業を事前に法人化しておけば、特定同族会社事業用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例(80%減額)を適用出来る可能性が出てきます

また、後継者が「途中で」別生計になりそうならば、事前に被相続人の個人事業を法人化しておけば、特定事業用宅地等とは要件が異なるので、特定同族会社事業用宅地等として、小規模宅地等の特例(80%減額)を適用出来る可能性が出てきます

特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等は個人を対象とするか法人を対象とするかの違いだけと考えられがちですが、そもそもの要件が全く異なるため、個人事業を法人化すれば、小規模宅地等の特例を適用して節税対策が出来る可能性が出てくることを覚えておきましょう。

宅地の相続税評価額は相続財産の大部分を占めることもあるため、小規模宅地等の特例の適用可否は事前に検討しておいた方が良い案件になります。

特に今回のような、後継者が別生計又は途中から別生計になりそうな事案では法人化すれば小規模宅地等の特例を適用できる可能性もあるので、事前に検討してみることが大切だと考えられます。