配偶者居住権の設定後に子供が先に死んだ場合の小規模宅地等の特例の適用

1次相続(両親のうち片方が亡くなった時の相続)時に、配偶者居住権を設定しても、その後、配偶者より子供が先に死んでしまうことも考えられます

配偶者居住権を設定した時点で、ある程度可能性のある事態ですが、あまり深く考えられていない場合も多いです。

子供が先に死んでしまった場合の相続では、小規模宅地等の特例をどのように適用できるかが相続税法上非常に重要になってきます。

そこで、今回は配偶者居住権の設定後に子供が先に亡くなってしまった場合の小規模宅地等の特例の適用について見ていきましょう。

配偶者居住権と配偶者居住権に基づく敷地利用権とは

配偶者居住権とは、配偶者が被相続人(亡くなった人)所有の建物に他の相続人の相続後も無償で住み続けることができる権利です。

なお、建物に配偶者居住権が設定されると、その建物が建っている土地についても配偶者居住権に基づく敷地利用権が設定されます

相続税法上は、配偶者居住権と配偶者居住権に基づく敷地利用権(以下、敷地利用権)についてそれぞれ評価額が生じます

なお、配偶者居住権や敷地利用権は建物・土地の評価額を所有権から分離するもので、全体の相続税評価額を増やすものではありません

相続人の違いによる小規模宅地等の特例の分岐

1次相続で配偶者居住権の設定後に子供が先に死んでしまった場合の主な相続人として考えられるのは、①存命している親(以下、親)又は②子供の子供(以下、孫)になります。

親が子供の宅地等を相続するか、孫が子供の宅地等を相続するかで小規模宅地等の特例の適用範囲が異なってきます

なお、小規模宅地等の特例として評価額を減額できるのは、あくまで「宅地等」になりますので、建物に関しては減額が生じることはありません

親が子供の土地を相続した場合

配偶者居住権を設定している理由は、1次相続後も配偶者(親)がその建物に住み続けられるようにするためです。

よって、子供が先に死んでしまった時点でも、親は配偶者居住権の設定対象になった建物に住み続けています。

子供と同居している場合は同居特例が適用でき、子供と同居していなくても子供と同一生計ならば生計一親族の特例が適用できます。

よって、親が息子から相続した土地については、特定居住用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例(80%減額)が適用できる可能性が極めて高いことになります。

ちなみに、親が子供より先に亡くなるという通常の場合には、配偶者居住権・敷地利用権とも親が亡くなった時点で消滅し、相続税法上の評価額は無くなりますので、小規模宅地等の特例の話し自体が出てこなくなります

孫が子供の土地を相続した場合

配偶者居住権に基づく敷地利用権は配偶者の権利なので、孫が子供から相続したものは土地の所有権そのものです。

よって、孫が子供から相続した土地の所有権について小規模宅地等の特例が適用できないかを検討していくことになります。

なお、その場合でも、配偶者居住権に基づく敷地利用権は継続し、配偶者の死亡と共に配偶者居住権や配偶者居住権に基づく敷地利用権は消滅することになります(子供の相続では、相続税の計算に影響を及ぼさない)。

さて、孫が子供から相続した土地の所有権に小規模宅地等の特例が適用できるかどうかですが、通常の相続の場合と同じになります。

例えば、特定居住用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例を適用したければ、同居親族の特例や家なき子特例などの要件を満たしていけば良いことになります。