社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)を利用した節税方法について!
この記事の概要
  1. 社会保険料の会社負担額を決算期末に未払費用計上することで節税に繋がることがあります
  2. つまり、会社が(借方)法定福利費 / (貸方)現金又は預金という仕訳をしている場合、仕訳方法を変更するだけで節税できる可能性があります

突然ですが、貴社では社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)の仕訳はいつ行われているでしょうか?

当月末?、翌月の保険料納入告知額・領収済額通知書が届いた時?、翌月の払込みもしくは口座振替時?

今回は、社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)の仕訳を当月末以外で行っている会社に対する節税対策を説明します。

節税額が思いのほか大きくなることもしばしばありますので、是非確認してみてください。

社会保険料の種類

社会保険料の種類としては厚生年金保険健康保険があります。

労災保険や雇用保険などの労働保険も社会保険料に含めて考えることもありますが、今回は厚生年金保険料・健康保険料だけだと考えてください。

厚生年金保険・健康保険ともに保険料は会社と従業員が折半して支払うことになっています。

基本的な社会保険料の仕訳を確認しよう

まずは、基本的な社会保険料の仕訳の形を確認しましょう。

社会保険料の基本的な仕訳を知らなければ、節税対策の話しが理解出来ないからです。

【社員全員分の給料支給日の仕訳】

借方
金額
貸方
金額
給料手当
100万円
普通預金
預り金(所得税)
預り金(住民税)
預り金(厚生年金・健康保険)
預り金(雇用保険)
78万円
8万円
2万円
11万円
1万円

【会社負担分の社会保険料の当月末の仕訳】

借方
金額
貸方
金額
法定福利費
11万円
未払費用
11万円

※「保険料納入告知額・領収済額通知書」が年金事務所より翌月下旬に届いた時点で、日付を遡って、当月末に未払費用計上をします
計上額は保険料納入告知額・領収済額通知書額-給与台帳などで計算している従業員負担分の社会保険料(総額)です。

会社負担分の法定福利費を計上する日で損金(=経費)は異なる

今回の節税対策で重要になるのは、会社負担分の社会保険料の仕訳(上記2つ目の仕訳)です。

実は、会社負担分の社会保険料の仕訳をどのタイミングで計上するかによって、当期の損金(経費)の計上額が変わってきます

社会保険料の損金算入時期については法人税基本通達9-3-2に記載されいるので、オレンジの文字に注意しながら確認してください。

(社会保険料の損金算入の時期)
法人が納付する社会保険料の額のうち当該法人が負担すべき部分の金額は、当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる

簡単に言うと、「社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)の損金(経費)算入時期は当月末でもいいよ!」と言っています。

ところが、経理担当者しては、仕訳を簡単にしたいので、保険料納入告知額・領収済額通知書が年金事務所から届き、社会保険料の支払いが終わった日(翌月下旬の日付)に以下の仕訳を行っていることが多いです。

【社会保険料支払時の仕訳(会社負担部分)】

借方
金額
貸方
金額
法定福利費
11万円
現金又は預金
11万円

もし、上記のような仕訳が計上されている場合、決算期末に(借方)法定福利費/(貸方)未払費用という仕訳を追加することで、当期末の損金(経費)が増え、節税に繋がります

社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)の料率は非常に高く、給料手当総額の13%~14%程度を占めています。

例えば、月々の給料・役員報酬の総額が1,000万円あった場合、実に130万円~140万円の節税対策に繋がることになります

一度未払費用を計上すると、翌年度以降も期末日に未払費用を計上しなければならなくなり、多少煩雑になりますが、経理処理としては、未払費用を計上する方が正しい処理方法になりますし、利益が出過ぎた事業年度の期末にでも変更することを検討してみてください