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法人の役員報酬で節税する方法|給与所得控除と所得分散を不動産業専門税理士が解説

2026 6/05
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節税
2026年5月25日2026年6月5日
役員報酬を使った節税方法

法人の役員報酬は、正しく設定すれば強力な節税ツールになります。

不動産業を営む経営者にとって、役員報酬の最適化は毎年の税負担を大きく左右します。

この記事では、不動産業専門の税理士が、給与所得控除の活用・家族への所得分散・退職金制度まで、役員報酬による節税の仕組みを具体的な数値例でわかりやすく解説します。

目次

役員報酬による節税の仕組みとは?

役員報酬を使った節税は、法人と個人それぞれの税制上の違いを活かしてトータルの税負担を軽減する方法です。

個人事業主は自分自身に給与を支払えませんが、法人では役員報酬として自分自身に給与を支払うことができます。

法人側では役員報酬が全額損金(経費)になる

役員報酬は、法人の損金(経費)として全額計上できます。

たとえば法人の利益が1,000万円のとき、500万円の役員報酬を支払えば、法人の課税所得は500万円に圧縮され、法人税を大幅に減らせます。

個人側では給与所得控除が使える

役員報酬を受け取った側(役員個人)には給与所得として所得税・住民税が課されますが、「給与所得控除」が自動的に適用されます。

個人事業主の事業所得にはない優遇措置です。

給与収入額給与所得控除額(令和8・9年は特例あり)
190万円以下74万円(最低保証・令和8・9年特例)
190万円超〜220万円以下74万円(最低保証・令和8・9年特例)
220万円超〜360万円以下収入×30%+8万円
360万円超〜660万円以下収入×20%+44万円
660万円超〜850万円以下収入×10%+110万円
850万円超195万円(上限)

給与所得控除の最低保証額は74万円(2026年度税制改正後)に引き上げられました。

さらに基礎控除(年収665万円以下の方は最大104万円)と合わせると、所得税がかからない年収の壁は従来の103万円から178万円に大幅に拡大しています(令和8年・9年の特例を含む)。

役員報酬を複数名に分散することで、この控除枠を最大限に活用できます。

役員報酬の3つの種類と損金算入のルール

役員報酬が損金に算入されるためには、税法上の要件を満たす必要があります。

損金算入が認められる役員報酬は主に3種類です。

①定期同額給与(最も一般的)

毎月一定額を継続して支払う役員報酬の基本形態です。

事業年度開始から3ヵ月以内に金額を決定し、以降は同額を支払い続ける必要があります。

期中に金額を変更すると損金に算入されません。

②事前確定届出給与(役員賞与を損金にする方法)

通常、役員に支給する賞与は損金にできません。

しかし事前に税務署へ届出をした金額・時期で支給することで、損金算入が認められます。

届出と異なる金額・時期での支給は全額損金不算入になるため注意が必要です。

③業績連動給与(大企業向け・同族会社は原則不可)

会社の業績に連動して支給額が変わる役員報酬です。

主に上場企業が対象で、同族会社(中小不動産会社)には原則として適用できません。

不動産業の中小法人では①②を中心に活用しましょう。

役員報酬の最適額:法人税「800万円の壁」を意識しよう

資本金1億円以下の中小法人には、課税所得800万円以下に15%の軽減税率が適用され、800万円を超えると税率が23.2%になります。

この「800万円の壁」を意識した役員報酬の設定が節税の基本戦略です。

具体的な数値で比較してみよう

事業全体の利益800万円、法人税率25%(概算)の場合の比較です。

区分個人事業主法人(役員なし)法人(役員あり)
個人事業主利益・役員報酬800万円−500万円(本人400万円+配偶者100万円)
所得税約120万円−約17万円
住民税約80万円−約28万円
法人利益・法人税(25%)−800万円×25%=200万円300万円×25%=75万円
合計納税額200万円200万円約120万円

役員報酬を活用することで、年間80万円もの節税が実現できます。

国税庁の通達(法人税法34条)に基づき、定期同額給与として適切に設定することが重要です。

家族(配偶者・子)への所得分散でさらに節税する方法

法人化すれば、実際に業務に従事している配偶者や子を取締役に就任させ、役員報酬を支払うことができます。

所得税は個人単位の累進課税のため、1人に集中させるより分散させた方が税率を抑えられます。

特に配偶者への役員報酬100〜150万円の支給は、所得を分散する節税として非常に有効です。

ただし、名義だけの役員(実態のない役員)への報酬は税務調査で否認されるリスクがあるため、実際の業務実態(記帳・管理・連絡対応など)が必要です。

役員退職金を活用した大幅な節税

法人では役員退職金を支給でき、受け取った側は退職所得として大きな税制優遇を受けられます。退職所得は以下の計算で課税されます。

退職所得 =(退職金額 − 退職所得控除額)÷ 2

退職所得控除額は「勤続年数×40万円(20年超は70万円)」と非常に大きく、さらに課税対象は1/2に圧縮されます。

退職金は社会保険料の対象にもならないため、長期的な節税戦略として非常に効果的です。

役員報酬設定の注意点・よくある間違い

役員報酬による節税を行う際は、以下の点に注意してください。

注意①:社会保険料の負担増

役員報酬を設定すると厚生年金・健康保険への加入義務が生じ、会社と役員で保険料を折半します。

現在の保険料率は、厚生年金18.3%+健康保険(東京都・協会けんぽ)9.85%で、40歳未満は合計約28.2%、40歳以上は介護保険1.62%を加えた合計約29.8%(≒約30%)となります。

年600万円の報酬では、40歳以上の場合の会社・役員合計の保険料負担は年間約179万円となります(都道府県・加入保険組合によって異なります)。

節税効果と保険料負担のバランスを必ず試算してください。

注意②:過大役員報酬の否認リスク

税法上「不相当に高額」と判断された役員報酬は、損金算入が否認されます(法人税法34条2項)。

同業他社や事業規模との比較で「常識的な水準」を保つことが重要です。

税務調査では役員報酬額の妥当性が必ずチェックされます。

注意③:期中変更は原則禁止

定期同額給与は、事業年度開始から3ヵ月以内に設定額を決め、以降は変更できません(臨時改定事由・業績悪化改定事由を除く)。

役員報酬は毎期の事業計画と合わせて慎重に検討しましょう。

まとめ:役員報酬節税の5つのポイント

  • 役員報酬は法人の損金に算入でき、給与所得控除も使えるため、ダブルの節税効果がある
  • 法人税「800万円の壁」を意識して法人利益と役員報酬のバランスを設定する
  • 配偶者・子への所得分散で税率を抑え、家族全体での納税額を最小化する
  • 退職金を活用した長期節税戦略も組み合わせると効果が大きい
  • 社会保険料・過大役員報酬・期中変更禁止のリスクを把握した上で設定する

役員報酬の最適化は、税理士と共に、毎期シミュレーションしながら設計することが重要になります。

役員報酬はいつまでに決める必要がありますか?

定期同額給与は事業年度開始から3ヵ月以内に決定する必要があります。

期中に変更すると損金算入が認められなくなるため、毎期の期首に税理士と相談しながら決めることをお勧めします。

一人社長でも役員報酬で節税できますか?

はい、一人社長でも役員報酬を設定することで給与所得控除を活用した節税が可能です。

ただし、社会保険料の負担も発生するため、事業利益と報酬額のバランスをシミュレーションしてから決定しましょう。

不動産賃貸業(大家)が法人化して役員報酬を設定するメリットは?

不動産所得が一定規模以上になると法人化し役員報酬を設定することで、所得の分散・給与所得控除の適用・退職金の活用など多面的な節税が可能になります。

目安として不動産所得(不動産賃貸業の利益のこと)が年間500万円を超えると法人化の検討をお勧めします。

配偶者への役員報酬はいくらまで支払えますか?

金額に法律上の上限はありませんが、実際の業務実態(経理・管理業務など)に見合った金額であることが必要です。

税務上は同業他社との比較で「不相当に高額」とならない水準が求められます。

多くの場合、年100〜200万円程度が実務上の目安となります。

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