- 役員が連帯保証人になっている場合、連帯保証料を設定できます。
- 連帯保証料は会社では損金(=経費)になり、役員側では雑所得になります。
- 一般的に所得税の税率<法人税の税率になるように、連帯保証料を決めてやると一番節税になります。
- 社会保険料も考慮に入れるとさらに節税になる可能性もあります。
役員への連帯保証料の損金(=経費)計上可否について
事業用の不動産を購入する場合、借入金額が非常に多額になるため、会社が銀行などの金融機関から借入れをするにあたり、役員自身が会社の連帯保証人になることがあります。
このような場合、会社が自社の役員に連帯保証料を支払い、支払った金額を会社の損金(=経費)にすることが可能となります。
連帯保証料の「税務上の」適正額について
役員に連帯保証料を支払うことは可能ですが、会社が自由に金額を決定できるわけではありません。
連帯保証料の上限を決めておかないと会社の利益操作に使えてしまうからです。
過去に以下のような判例が出ていますので、まずはご覧ください。
法人が金融機関から借入れをするに際して代表取締役等の役員の保証を受け、当該役員に対して保証料を支払う場合、法人税法上損金として認められる保証料の額は、信用保証協会の最高保証料率である年利率(1%)を適用して算出される額を上限とするのが合理的であるとの見解~(以下省略)
引用元: 平成10(行ウ)6 法人税賦課処分等取消請求事件
平成12年11月27日 宮崎地方裁判所
要は、信用保証協会の最高保証料率の範囲内であなたの会社の適正な保証料率を選べば良いということになります。
信用保証協会は各都道府県にあるので、保証料率表を調べるときは、Yahoo検索で「信用保証協会 東京都(〇〇都道府県)」と入れて検索をかけてください。
なお、参考までに一例を挙げると、東京の信用保証協会の保証料率は「信用保証料率の体系」をクリックして頂けると調べることができます。
上記判決の「信用保証協会の最高保証料率である年利率(1%)」は宮崎の判決当時の料率なので、あなたの会社の保証料率として合致するわけではありません。
必ず、信用保証協会のホームページからあなたの会社にあった保証料率を選んで適用してください(根拠資料としてのファイリングも忘れずにしてください)。
仮に信用保証協会の保証料率が1%、法人税率等が30%だったとして、会社の損金(=経費)に計上できる金額を以下に記載します。
期末借入残高
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損金増加金額
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節税金額
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---|---|---|
5,000万円
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50万円
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15万円
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1億円
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100万円
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30万円
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2億円
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200万円
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60万円
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不動産賃貸業を営んでいる会社の場合、銀行からかなりの借入金額があるはずなので、連帯保証料による追加の損金(=経費)もかなり計上できるでしょう。
また、同族会社の場合、連帯保証人が複数設定されていることもあります。
例えば、役員2人が会社借入の連帯保証人になっているのならば、2倍の追加の損金(=経費)が計上できるでしょう。
なお、保証料の期末未払金計上も可能なので、期末日後に設定すれば、「利益が多すぎて、納税額も多いな…」という時に、後から利用できます。
仕訳例は以下のようになります。
借方
|
金額
|
貸方
|
金額
|
---|---|---|---|
支払保証料
(非課税取引) |
100万円
|
現金預金
又は未払費用 |
100万円
|
保証料を受け取った役員の税金はどうなる?
連帯保証料を貰った役員側は、所得税の雑所得を計上しなければなりません。
雑所得 = 総収入金額 ― 必要経費
連帯保証料が総収入金額に計上され、必要経費は通常0だと考えらますので、連帯保証料がそのまま雑所得の金額の増加になるでしょう。
役員報酬しか貰っていない役員の方ならば、確定申告をしていない人も多いですが、雑所得の金額が発生する場合、所得税の確定申告が必要になりますので注意してください。
ただし、雑所得の確定申告は非常に簡単です。
実際保証料をいくらに設定するか?
連帯保証料の上限は「役員の連帯保証金額×信用保証協会の最高保証料率」で計算できましたが、あくまで連帯保証料の上限額の決まりなので、上限の範囲内であれば、損金計上額(=経費計上額)は変えられます。
連帯保証料は一方で、貰った役員の雑所得を増やすので、年間の役員の連帯保証人の所得金額が高くなります。
また、所得税は累進課税税率なので、役員等の連帯保証人の所得金額が高くなると、その分税率も上がります。
つまり、「所得税の税率<法人税の税率」になるように計算して、連帯保証料を決定すべきです。
そして…
連帯保証料は役員報酬ではないので、連帯保証料を支払ったことで、会社の社会保険料・個人の社会保険料が上がることはありません。
つまり、社会保険料を支払わないで良いのに、役員にお金を渡せるということになります。
そうならば、役員報酬を連帯保証料分だけ減額してしまえば、役員の手取りは同じなのに、会社・役員が負担する社会保険料が減額され、会社・役員の両方に残るお金は多くなります。
ただし、役員の将来貰える年金が減るのと、役員報酬が減ると最終役員報酬月額で計算される役員退職金(=将来の損金)の見込額が減るので、きちんとした判断をして決めてください。
結論
不動産会社の場合、役員の連帯保証料を設定することは節税対策としては非常に有用になります。
連帯保証料の上限を守ることが一番重要ですが、上限の範囲でいくらに設定するかも大切な要素になります。
その際、連帯保証料見合い分の役員報酬の引き下げも考えられれば、さらなる節税になります。
ただし、役員の年齢等により役員報酬をどう考えるかは人それぞれなので、連帯保証料見合い分の役員報酬引き下げを行う場合、十分に役員の意思を確認した方が良いでしょう。
特に引退が近い役員の場合、役員報酬を引き下げることは役員退職金の上限を下げることに直結するため注意してください。