敷金・礼金の消費税区分と勘定科目|借りる側の仕訳を税理士がわかりやすく解説

オフィス等の賃借時の敷金(保証金)・礼金の勘定科目と消費税について

「事務所や店舗を借りたとき、敷金や礼金はどの勘定科目で仕訳して、消費税はどう処理すればいい?」と迷っていませんか。

借りる側の経理は、「返ってくるお金かどうか」と「20万円基準」の2つを押さえるだけで、勘定科目も消費税区分もほぼ決まります。

処理を間違えると、経費にできない敷金を経費にしてしまったり、仕入税額控除(=支払った消費税を納税額から差し引く仕組み)を取り損ねたりするおそれがあります。いずれも税務調査で指摘されやすいポイントです。

本記事では、不動産業専門の税理士が、事務所・店舗を借りる側の敷金(保証金)・礼金の勘定科目と消費税区分を、仕訳例つきでわかりやすく解説します。

目次

【早見表】敷金・保証金・礼金の勘定科目と消費税区分

事務所や店舗を借りる側の処理は、「返還されるか」と「20万円以上か」の2つの基準だけで決まります。まずは結論の早見表をご覧ください。

支払うお金返還勘定科目消費税(事務所・店舗)
敷金・保証金(返還される部分)あり敷金・差入保証金(資産)不課税(対象外)
敷金償却・敷引き(20万円未満)なし地代家賃など(経費)課税仕入れ
敷金償却・敷引き(20万円以上)なし長期前払費用(資産)課税仕入れ
礼金(20万円未満)なし地代家賃など(経費)課税仕入れ
礼金(20万円以上)なし長期前払費用(資産)課税仕入れ

なお、住宅(社宅)として借りる場合の礼金や敷引きは非課税で、事務所とは扱いが異なります。

出典:国税庁タックスアンサーNo.6225「地代、家賃や権利金、敷金など」(令和7年4月1日現在法令等)。ここからは、この表の中身を順に確認していきます。

敷金(保証金)と礼金の違い|「返ってくるか」が分かれ目

敷金(保証金)とは貸主に預けておくお金で、礼金とは返ってこない謝礼です。まずは3つの用語を整理します。

敷金(保証金)

家賃の滞納や物件の破損に備えて、契約時に借主が貸主へ預けておくお金(=預け金)です。原則として退去時に返還されます。

事務所・店舗では家賃の6か月分程度と高額になることもあります。

礼金

契約成立時に貸主へ謝礼として支払うお金です。返還されません。

事務所・店舗では礼金なしの物件も多く、支払う場合は家賃の1〜2か月分程度が目安です。

礼金の代わりに、保証金の償却(敷引き)が設定される契約もよく見られます。

敷金償却(敷引き)

敷金のうち、契約で最初から「返還しない」と決められている部分です。

退去時の精算を待たずに、返還されないことが確定します。

同じ初期費用でも、返ってくるお金は「資産」、返ってこないお金は「経費か繰延資産」と性質がまったく違います。

なお、敷金・礼金を受け取る大家側の処理は「敷金の勘定科目と仕訳|大家向けの解説記事」にまとめています。次の章からは、借りる側の処理を順に見ていきます。

返還される敷金・保証金の勘定科目は「敷金」または「差入保証金」

返還される敷金・保証金は、経費ではなく「敷金」「差入保証金」などの資産として処理します。

貸主に預けているだけのお金で、退去時に手元へ戻ってくるためです。

例として、月額家賃20万円の事務所を借り、敷金として家賃6か月分の120万円を支払った場合の仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
差入保証金120万円現金又は預金120万円

敷金は支払った時点では1円も経費になりません。利益に影響しない「資産の移動」として処理するのがポイントです。

退去時には、原状回復費用(=借主がつけた傷や汚れを元に戻す工事代)が敷金から差し引かれることがあります。

原状回復費用20万円が差し引かれ、100万円が返金された場合の仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
現金又は預金100万円差入保証金120万円
修繕費20万円

差し引かれた修繕費20万円は、課税仕入れとして消費税の対象になります(詳しくは消費税の章で解説します)。

では、最初から返ってこないと決まっているお金は、どう処理するのでしょうか。

返還されない敷金(敷金償却・敷引き)は「20万円基準」で判断

返還されない敷金は、20万円未満なら支払時の経費、20万円以上なら繰延資産(長期前払費用)です。

繰延資産(=支払いの効果が1年以上続くため、数年に分けて経費にする支出)に当たるかどうかが、20万円で線引きされます。

20万円未満の少額なものは、支払った年度に全額経費にできます。

例えば、敷金150万円のうち敷引き15万円が契約時に確定している場合の仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
差入保証金135万円現金又は預金150万円
地代家賃15万円

敷引きが20万円以上の場合は、長期前払費用(資産)に計上したうえで、次の償却期間で経費に振り替えていきます。

契約の内容償却期間
原則5年
賃借期間が5年未満で、更新時に再び権利金等の支払いが必要な場合その賃借期間

出典:国税庁タックスアンサーNo.5460「建物を賃借するための権利金等」(令和7年4月1日現在法令等)。

計算例として、敷金300万円のうち敷引き30万円が契約時に確定している場合(償却期間は原則どおり5年)を見てみましょう。契約時の仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
差入保証金270万円現金又は預金300万円
長期前払費用30万円

期末には、30万円÷60か月×12か月=年6万円ずつ地代家賃へ振り替えます。

借方金額貸方金額
地代家賃6万円長期前払費用6万円

5年経過すると長期前払費用の残高はゼロになり、敷引き30万円がきれいに経費へ振り替わった状態になります。

20万円の判定は「契約ごと」の支払額で行います。月額家賃ではなく敷引き・礼金そのものの金額で判定します。また、消費税の経理処理を税込経理方式としている場合は税込金額で、税抜経理方式としている場合は税抜金額で判定する点にも注意してください。

礼金の勘定科目と仕訳|20万円未満は地代家賃・20万円以上は長期前払費用

礼金も敷引きと同じ20万円基準で、20万円未満は地代家賃(経費)、20万円以上は長期前払費用で処理します。

礼金10万円(20万円未満)の場合は、支払時に地代家賃で全額経費にできます。

借方金額貸方金額
地代家賃10万円現金又は預金10万円

礼金36万円(20万円以上)の場合は、まず資産に計上します。

借方金額貸方金額
長期前払費用36万円現金又は預金36万円

期末に償却分を地代家賃へ振り替えます。償却期間5年なら、36万円÷60か月×12か月=年7.2万円です。

借方金額貸方金額
地代家賃7.2万円長期前払費用7.2万円

なお、不動産会社へ支払う仲介手数料は繰延資産に当たらず、支払った年度にそのまま経費にできます(国税庁No.5460)。

勘定科目が決まったら、最後の関門が消費税区分です。

敷金・礼金の消費税|事務所は課税・住宅は非課税・預け金は不課税

事務所・店舗の礼金と返還されない敷金は課税仕入れ、返還される敷金は不課税、住宅用は非課税です(国税庁No.6225)。

まず、消費税の3つの区分を整理しておきましょう。

課税仕入れ

消費税がかかる支払いのことです。支払った消費税は、仕入税額控除(=納税額から差し引く仕組み)の対象になります。

非課税

消費税の対象ではあるものの、法律で「消費税をかけない」と決められた取引です。住宅の家賃や礼金がこれに当たります。

不課税(対象外)

そもそも消費税の対象にならない取引です。預け金のやり取りである敷金の差し入れ・返還がこれに当たります。

返還される敷金はただの預け金で、貸主からサービスの提供を受けていないため不課税です。

一方、返還されない敷金や礼金は「物件を借りる権利」の対価なので、事務所・店舗では課税仕入れになります。物件の用途別にまとめると次のとおりです。

支払うお金事務所・店舗住宅(社宅)
返還される敷金・保証金不課税不課税
返還されない敷金(敷引き)課税仕入れ非課税
礼金・更新料課税仕入れ非課税

課税仕入れに計上する時期は、返還されないことが確定した日です。

契約時から敷引きが決まっていれば契約時に、退去時に確定するものは退去時に課税仕入れを計上します(出典:消費税法基本通達9-1-23)。

仕入税額控除を受けるには、原則として貸主が発行する適格請求書(インボイス)の保存が必要です。

ただし、家賃や礼金が口座振替で請求書が発行されない場合は、登録番号等が記載された契約書と通帳の保存で代用できます

貸主がインボイスを発行できない免税事業者の場合も、経過措置により次の割合だけ控除できます(令和8年度税制改正で見直し)。

期間控除できる割合
2026年9月30日まで80%
2026年10月1日以降70%(以後、段階的に縮小)

ここまでのインボイス保存や経過措置の話は、借主である自社が原則課税(=実際の仕入れ・経費の消費税を集計して控除する方式)で申告している場合の論点です。自社が簡易課税制度(=課税売上5,000万円以下の事業者が、売上の消費税×業種ごとのみなし仕入率で納税額を計算する方式)や2割特例(=インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった小規模事業者が、売上の消費税の2割だけを納める特例)で申告している場合は、仕入れ側の消費税を集計しないため、敷金・礼金の消費税区分が納税額に影響することはありません。

契約から退去までの経理処理の流れ【3ステップ】

経理処理のタイミングは「契約時→期末→退去時」の3つだけです。時系列で確認しましょう。

STEP
契約時

返還される敷金は差入保証金(資産)に、敷引き・礼金は20万円基準で経費または長期前払費用に計上します。事務所・店舗なら課税仕入れの処理もあわせて行います。

STEP
期末(決算時)

長期前払費用に計上した敷引き・礼金を、償却期間(原則5年、再支払いが明らかなら賃借期間)に応じて地代家賃へ振り替えます。

STEP
退去時

返還された敷金で差入保証金を消し込み、差し引かれた原状回復費用は修繕費(課税仕入れ)として処理します。

敷金・礼金の処理でよくある間違い【注意点】

実務での間違いは「経費にする時期」と「消費税の区分」の2点に集中しています。

  • 返還される敷金を支払時に経費にする:正しくは資産計上です。経費にすると利益が過少になり、税務調査で否認されます。
  • 20万円の判定を月額家賃で行う:判定するのは礼金・敷引きそのものの金額です。
  • 社宅の礼金を課税仕入れにする:住宅用は非課税のため、仕入税額控除はできません。
  • 敷引きの課税仕入れを退去時まで放置する:契約時に返還不要が確定していれば、契約時の課税期間で計上します。

まとめ|「返還の有無」と「20万円基準」で迷わない

事務所・店舗を借りたときの敷金・礼金の経理は、次の4点を押さえれば迷いません。

返還される敷金・保証金=差入保証金(資産)・不課税
返還されない敷金・礼金=20万円未満は経費、20万円以上は長期前払費用(5年または賃借期間で償却)
消費税=事務所・店舗は課税仕入れ、住宅は非課税
インボイス=口座振替の家賃・礼金は契約書(インボイスが記載されている)+通帳の保存で対応

契約書の敷引き条項や償却期間の判断に迷ったときは、税理士にご相談ください。

敷金・礼金の勘定科目と消費税に関するよくある質問

敷金は経費になりますか?

返還される部分は経費にならず、敷金や差入保証金(資産)として処理します。経費になるのは敷引きなど返還されない部分だけで、20万円未満なら支払時に、20万円以上なら償却を通じて経費にします。

礼金10万円の勘定科目は何ですか?

20万円未満なので、地代家賃で支払時に全額経費にできます。事務所・店舗用であれば消費税は課税仕入れです。

敷金償却(敷引き)に消費税はかかりますか?

事務所・店舗は課税仕入れ、住宅用は非課税です。返還されないことが確定した日(多くは契約時)の課税期間で計上します。

レンタルオフィスの保証金はどう処理しますか?

通常の敷金と同じです。契約上返還されるものは差入保証金(資産)・不課税とし、返還されない部分は20万円基準で経費または長期前払費用として処理します。

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