税務調査で経費が否認されたら?経営者の心構えと対応を税理士が解説

税務調査を受ける際の経営者の心構え【経費編】

「この経費は税務調査で否認されないだろうか」——そんな不安を抱える経営者は少なくありません。

経費の判断を誤ったまま放置すると、税務調査で追徴課税や加算税という思わぬ負担につながることもあります。

この記事では、税務調査で経費が否認される理由と追徴税額の仕組み、調査当日の対応、そして日頃からできる準備を、不動産業を専門とする税理士がわかりやすく解説します。

目次

税務調査で経費が否認されるとどうなる?

税務調査で経費が否認されると、不足していた本来の税金(本税)に加えて、加算税と延滞税という2種類のペナルティが上乗せされます。

加算税(=申告の誤りに対するペナルティの税金)は誤りの内容によって税率が変わり、延滞税(=納税が遅れた期間にかかる利息のような税金)は納付が遅れた日数に応じて課されます。

まずは、どの税金がどれだけ増えるのかを整理しましょう。

加算税などの種類課されるおもなケース税率(原則)おさえておきたいポイント
過少申告加算税申告した税額が少なかった10%
(一定額超は15%)
調査の連絡前に自分で直せば原則かからない
無申告加算税申告期限までに申告しなかった15〜20%300万円を超える部分は30%(令和6年1月〜)
重加算税事実を隠したり偽ったりした35%
(無申告は40%)
過去5年内の再発はさらに+10%
延滞税納付が期限に遅れた年2.8%/9.1%納期限から2か月を境に率が上がる
(令和8年)

延滞税の割合は2026年(令和8年)時点のものです。

延滞税は納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、それを過ぎると年9.1%です。

なお、期限内に申告していれば、法定申告期限から1年を超えて修正申告・更正があっても、1年を超える期間は延滞税の計算に含めない特例(除算期間)があります。

ただし、仮装・隠蔽などの不正行為で重加算税が課される場合は、この特例は適用されず全期間に延滞税がかかります。

経費が否認されやすい4つのパターン

経費が否認される原因の多くは、「事業との関連性を説明できない支出」に集約されます。

次の4つは特に指摘されやすいため、心当たりがないか確認しておきましょう。

とくに指摘されやすい経費

  • プライベートとの線引きが曖昧な支出…自宅兼事務所の家賃や水道光熱費など。按分(=自宅兼事務所なら仕事で使った割合だけを経費にできる考え方)の根拠を示せないと否認されやすい支出です。
  • 事業との関連性を証明できない交際費・旅費…誰とどんな目的で使ったのか、記録が残っていないもの。
  • 領収書や帳簿などの証拠が不足している支出…記録や保存がなく、支出の事実そのものを示せないもの。
  • 交通系ICカード(SUICA・PASMO)へのチャージ…チャージした時点ではまだ「前払い(預け金)」にすぎず、その全額が経費になるわけではありません。実際に業務で乗車した分だけが経費です。物販が混じると否認された場合、役員報酬や給与の加算になってしまうため特に注意してください。

否認された場合の追徴税額シミュレーション

否認される金額が大きいほど、本税だけでなく加算税・延滞税の負担も雪だるま式に増えます

ここでは、経費50万円が否認されたケースを例に、増える税額をざっくり計算してみます。

項目金額(概算)計算の考え方
否認された経費50万円
追加の本税(法人税等)15万円50万円 × 税率30%と仮定
過少申告加算税(10%)1.5万円15万円 × 10%
延滞税(年9.1%・約1年分※特例)約1.4万円15万円 × 9.1%
追徴税額の合計約17.9万円本税+加算税+延滞税

※税率は説明のための仮定値です。延滞税は計算期間の特例により、通常は最大でも約1年分にとどまります(重加算税が課される不正行為の場合、全期間に延滞税が課税されます)。

経営者が持つべき5つの心構え

税務調査で大切なのは、聞かれたことに誠実に答え、根拠をもって主張する姿勢です

あわてて全部を認めたり、逆に感情的に反発したりするのは得策ではありません。

次の5つを意識しましょう。

調査の場で意識したい5つの姿勢

  • 指摘の理由を必ず確認する…なぜ否認なのか、根拠となる条文や考え方を聞きます。
  • 根拠資料をもって冷静に説明する…事業との関連性を示す資料で淡々と主張します。
  • 明らかな誤りは素直に認める…誤りを認めることで信頼が生まれ、調査が円滑に進みます。
  • グレーゾーンは議論しすぎない…少額で見解の分かれる論点に時間を使いすぎないことも大切です。
  • 不安なときは税理士に立ち会ってもらう…専門家の同席で交渉がスムーズになります。

否認を防ぐ日頃の経費管理

否認を防ぐ最大の対策は、支出の事業関連性を後から説明できる状態にしておくことです。

調査は過去の取引を対象にするため、日頃の記録と保存がそのまま結果を左右します。

帳簿や領収書には法律で定められた保存期間があります。

法人は原則7年(青色申告で欠損金が生じた事業年度は10年)、個人事業主(青色申告)も原則7年です。

さらに、帳簿を提示できないと加算税が加重される制度が令和6年1月から適用されており、提示の拒否などがあると加算税が5〜10%上乗せされます。

日頃からできる備え

  • 支出の目的・相手をメモに残す(事業関連性の説明材料になります)
  • 帳簿と領収書を保存期間にわたり整理する(法人は原則7年)

税務調査当日の対応フロー

税務調査は事前準備から修正対応まで、流れを押さえておけば落ち着いて対応できます。一般的な進み方は次のとおりです。

STEP
事前準備

帳簿・領収書・契約書を整理し、顧問税理士と論点を打ち合わせておきます。

STEP
当日の質問対応

聞かれたことに事実ベースで回答し、推測では答えません。

なお、聞かれたこと以外は、基本的に回答しないのが無難です。

STEP
指摘内容の確認

否認の理由と、その根拠(条文や考え方)を具体的に確認します。

STEP
主張または修正

正当性があれば資料で主張し、誤りがあれば修正申告に応じます。

STEP
調査終了後

結果と指摘内容を記録し、再発を防ぐしくみを整えます。

よくある間違いと注意点

税務調査では、よかれと思った対応が裏目に出ることもあります。次の3つは避けましょう。

やってはいけない3つの対応

  • 根拠なく即座にすべて認める…本来は不要な追徴まで確定してしまいます。
  • 感情的に反論する…冷静な議論ができず、調査官の心証を損ねます。
  • 証拠書類を破棄する…説明材料を失い、かえって不利になります。

まとめ

この記事のポイント

  • 否認されると本税+加算税+延滞税がかかる(重加算税は隠蔽・仮装がある場合に限られます)
  • 日頃から事業関連性を説明できる記録と保存を(法人は原則7年)
  • 調査では誠実かつ根拠をもって対応する

税務調査で経費を認めさせる鍵は、日頃の備えと、誠実で根拠ある対応にあります

判断に迷う支出があれば、調査を待たずに早めに税理士へ相談しましょう。

よくある質問(FAQ)

税務調査で経費が否認されたら必ず重加算税がかかりますか?

いいえ。

重加算税は事実の仮装・隠蔽(=事実を偽ったり隠したりすること)があった場合に限られます。

単純な見解の相違や計算ミスでは、原則として過少申告加算税(10%、一定額を超える部分は15%)にとどまります。

経費の否認に納得できないときは争えますか?

はい。

調査官の指摘に対し根拠をもって反論できます。

修正申告(=自分で誤りを直して申告し直すこと)に応じず、税務署が税額を直す更正処分(=税務署による訂正の処分)を受けた場合は、再調査の請求や審査請求などの不服申立ての手続きもあります。

領収書を失くした経費は必ず否認されますか?

必ずではありません。

出金の事実と事業との関連性を、出金伝票・通帳の記録・メールなどの客観的な資料で合理的に説明できれば、認められる余地があります。

なお、消費税については、インボイス制度の導入により、領収書を失くした場合は再発行してもらわない限り、課税仕入れになりませんので、消費税の納税額が多くなります。

経費を否認されないために日頃できることは?

支出の目的や相手がわかるメモを残し、帳簿と領収書を保存期間(法人は原則7年)にわたって整理しておくことです。

帳簿を提示できないと加算税が発生する可能性がある点にも注意しましょう。

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