不動産売却時には印紙税・登録免許税・譲渡所得税・消費税という4種類の税金と、仲介手数料・司法書士報酬などの手数料が発生します。
「不動産を売ったら税金はいくらかかるの?」「節税できる方法は?」と疑問を感じている不動産オーナーのために、不動産オーナーを多数サポートしてきた日本橋小伝馬町の不動産業専門の税理士が、税金の種類・計算方法・節税対策を初心者向けにわかりやすく解説します。
不動産売却時にかかる税金の種類一覧
不動産を売却するときにかかる税金は、大きく4種類あります。
それぞれ発生タイミングが異なるため、事前に把握しておくことが重要です。
| 税金の種類 | 発生タイミング | 課税対象 | 金額の目安 |
|---|---|---|---|
| 印紙税 | 売買契約時 | 売買契約書 | 1万〜16万円程度 |
| 登録免許税 | 抵当権抹消登記時 | 抵当権抹消登記 | 1,000円/件 |
| 譲渡所得税 | 翌年確定申告時 | 売却益(譲渡所得) | 20.315〜39.63% |
| 消費税 | 売買契約時 | 建物の売却代金 | 建物代金の10% |
①印紙税:売買契約書に貼る税金
印紙税は、不動産売買契約書に収入印紙を貼ることで納税します。
売却代金の額によって税額が変わります。令和9年3月31日までは軽減税率が適用されています。
| 売却代金 | 本則税率 | 軽減税率(令和9年3月31日まで) |
|---|---|---|
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
| 5億円超~10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
節税ポイント:買主が信頼できる場合、売主が売買契約書のコピー(写し)を受け取ることで、売主の印紙税負担をゼロにできます。写しには印紙税が課税されません。
②登録免許税:抵当権抹消登記にかかる税金
不動産の売却時には、所有権移転登記に伴う登録免許税は買主が負担します。
ただし、売却する不動産に抵当権が残っている場合は、売主が抵当権抹消登記の費用を負担します。
- 抵当権抹消登記の登録免許税:1,000円/件
- 銀行の借入を完済しても、手続きをしなければ抵当権は自動的に消滅しない
- 売却前に抵当権の有無を必ず確認し、完済済みなら早めに抹消手続きを行うことが重要
③譲渡所得税:不動産売却で最も重要な税金
不動産売却で利益(譲渡所得)が生じた場合にかかる税金が譲渡所得税です。
所得税・復興特別所得税・住民税の3つを合わせた総称であり、不動産売却で最も金額が大きくなる税金です。
計算方法を正しく理解することが節税の第一歩となります。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は以下の計算式で求めます(所得税法・租税特別措置法に基づく)。
譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額
- 譲渡価額:実際の売却金額
- 取得費:不動産の購入価格+購入時の諸費用(登記費用・仲介手数料など)−建物の減価償却累計額。取得費が不明な場合は概算取得費(売却価額の5%)を使用(国税庁通達)
- 譲渡費用:仲介手数料・印紙税・測量費・建物取壊し費用など売却に直接要した費用
- 特別控除額:居住用財産の場合は最大3,000万円(詳細は後述)
長期・短期譲渡所得の税率比較
税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって大きく異なります。
5年を境に税率が約2倍変わるため、売却タイミングは非常に重要です。
| 区分 | 所有期間 | 所得税率 | 復興特別所得税 | 住民税率 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
- 所有期間の判定は「売却した年の1月1日時点」が基準です。例えば2021年3月に購入した不動産を2026年10月に売却した場合、2026年1月1日時点の所有期間は約4年9か月なので、短期譲渡所得になってしまいます。
- 相続で取得した不動産は、被相続人(亡くなった方)の取得日を引き継ぐため、長期譲渡所得になりやすい点に注意!
具体的な計算例
【事例】2015年に5,000万円で購入したマンション(土地2,000万円・建物3,000万円)を2026年に7,000万円で売却した場合(所有期間11年・長期譲渡所得)
| 計算項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 譲渡価額 | 7,000万円 | 売却金額 |
| (-)取得費 | △4,400万円 | 購入費5,000万円 − 建物減価償却累計600万円 |
| (-)譲渡費用 | △237万円 | 仲介手数料(3%+6万円+税)等 |
| 譲渡所得 | 2,363万円 | 特別控除なしの場合 |
| (×)税率合計 | 20.315% | 長期譲渡所得 |
| 納税額(目安) | 約480万円 | 所得税約354万円+住民税約118万円+復興税 |
④消費税の注意点:土地は非課税・建物は課税
消費税で最も重要なのは、土地の売却は消費税非課税・建物の売却は課税という点です。
この区分を間違えると、多額の税額ミスにつながります。
- よくある計算ミス:「固定資産売却益(売却価格−帳簿価額)」に消費税を課税してしまうケース。正しくは建物の売却価額全体に消費税が課税されます(消費税法第6条・別表第一)
- 課税事業者のみ建物の売却に消費税が発生します(免税事業者・個人は不課税)
- 土地・建物の売却価額が一括で設定されている場合は、固定資産税評価額等の合理的な方法で按分する必要があります
不動産売却で使える節税対策・特別控除
不動産売却では、一定の要件を満たすことで大きな節税効果を得られる特別控除・特例があります。
事前に適用できるかどうかを必ず確認してください。
3,000万円特別控除(居住用財産の譲渡)
自分が住んでいたマイホームを売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます(租税特別措置法第35条)。
これは不動産売却で最も効果の大きい節税特例で比較的要件が緩い特例になります。
- マイホーム(居住用財産)を売却した場合に適用可能
- 所有期間の長短を問わず適用できる(短期所有でも使用可)
- 売却した年と前年・前々年に同特例を使用していないことが要件
- 配偶者・直系血族・生計を一にする親族などへの売却は適用不可
- 住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが必要
10年超所有の居住用財産:軽減税率の特例
マイホームを10年超所有して売却する場合、3,000万円控除と併用して、さらに低い税率が適用されます(租税特別措置法第31条の3)。
| 課税長期譲渡所得金額 | 所得税率 | 住民税率 | 合計(復興税含む) |
|---|---|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 10% | 4% | 14.21% |
| 6,000万円超の部分 | 15% | 5% | 20.315% |
法人・不動産賃貸業の場合の節税ポイント
不動産賃貸業を営む個人事業主や法人が不動産を売却する場合、居住用財産の特例は原則として適用されません。
ただし、以下の節税対策を検討できます。
- 法人の場合:売却損益は他の損益と通算される。赤字の年度に売却することで税負担を抑えられる可能性がある
- 個人の場合:長期譲渡所得(5年超)になるよう売却時期を調整する
- 共通:譲渡費用(仲介手数料・解体費用等)を漏れなく計上する
不動産売却時にかかる手数料の種類
税金以外に、不動産売却では以下の手数料が発生します。
税金と同様に事前に把握しておくことが重要です。
- 不動産仲介手数料(上限額):売却代金400万円超の場合 → 売却代金×3%+6万円+消費税。例:5,000万円の不動産を売却の場合 → 156万円+消費税=約171.6万円
- 司法書士報酬:抵当権抹消登記等の手続き費用。数万円〜10万円程度が目安(事務所により異なる)
不動産売却でよくある間違いと注意点
- 消費税の計算ミス:売却益ではなく建物の売却価額全体に消費税を計算すること。取引金額が大きいため致命的なミスになります
- 取得費の過小計上:購入時の仲介手数料・登記費用・印紙税・不動産取得税も取得費に含まれます。領収書を購入時から保管しておくことが重要です
- 所有期間の確認不足:1月1日基準で5年を超えているかを確認せず、短期譲渡所得(税率39.63%)を長期譲渡所得(税率20.315%)として申告してしまうケースがあります
- 確定申告の失念:譲渡所得税は売却した翌年の3月15日までに確定申告が必要です(国税庁・所得税法第120条)
- 3,000万円控除の適用漏れ:居住用財産であるにもかかわらず特例を適用しないまま多額の税金を納付してしまうケースがあります
まとめ:不動産売却の税金・手数料を正しく把握して節税を
- 不動産売却の税金は印紙税・登録免許税・譲渡所得税・消費税の4種類
- 最も重要なのは譲渡所得税で、所有期間5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%の税率
- マイホームなら3,000万円特別控除で大幅な節税が可能。10年超所有なら軽減税率も適用可
- 消費税は建物の売却価額全体に対して課税(土地は非課税)
- 手数料は仲介手数料(3%+6万円+税)と司法書士報酬が主なもの
- 確定申告の失念・消費税の計算ミスには特に注意が必要
不動産売却の税金は金額が大きく、計算を誤ると大きな損失につながります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 不動産売却で利益が出なければ税金はかかりませんか?
譲渡所得税については、利益(譲渡所得)がゼロまたはマイナスであれば課税されません。
ただし印紙税と登録免許税(抵当権抹消がある場合)は、利益の有無にかかわらず発生します。
なお、損失が出た場合でも確定申告することで、他の所得との損益通算が可能な場合があります。
Q2. 相続した不動産を売却する場合の税金は?
相続で取得した不動産の場合、取得費は被相続人(故人)の取得価額を引き継ぎます。
また、所有期間についても被相続人の取得日から計算するため、長期譲渡所得(20.315%)になるケースが多いです。
相続税を支払っている場合、一定の条件下で相続税額の一部を取得費に加算できる特例(相続税の取得費加算の特例)があります。
Q3. 確定申告はいつまでに行えばよいですか?
不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日が確定申告期間です(国税庁)。
3,000万円特別控除などの特例を適用する場合も、この期間内に確定申告が必要です。
申告が遅れると無申告加算税や延滞税が課されるため、売却が決まったら早めに税理士に相談することをおすすめします。
Q4. 不動産会社に支払う仲介手数料は経費になりますか?
はい、不動産売却のために支払った仲介手数料は譲渡費用として計上でき、譲渡所得から差し引けます。
同様に、測量費・建物の取壊し費用・売買契約書の印紙税なども譲渡費用として計上可能です。


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