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不動産経営者の生命保険節税|2019年改正後の損金算入ルールを税理士が解説

2026 6/05
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生命保険
2026年6月10日
生命保険の種類と節税効果

不動産経営をしていると、毎期の利益が安定しない・将来の役員退職金を準備したい・万が一のときに事業継続資金を確保したい、といった悩みが出てきます。

「生命保険で節税できるらしい」と耳にして検討を始めた社長や個人事業主の方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、生命保険は「永久的な節税」ではなく「課税の繰延べ」と「保障の確保」を両立する手段です。

2019年7月の法人税基本通達改正で、保険料を全額損金にできる契約は大きく限定されました。

本記事では、不動産経営者が押さえるべき法人契約と個人契約の違い、現行ルール、計算例、注意点を税理士の視点でわかりやすく整理します。

目次

不動産経営者にとっての「生命保険による節税」とは

不動産経営者にとっての生命保険による節税とは、支払保険料の一部を損金または所得控除として課税所得から差し引き、納付すべき税金を一時的に軽減する仕組みを指します。

あわせて、被保険者に万一のことがあった際に保険金で事業継続資金や納税資金を確保できるという保障機能も重要なポイントになります。

不動産賃貸業を法人化している場合は、損金算入が、個人事業として営んでいる場合は、生命保険料控除(所得控除)が主な節税ルートです。

根拠条文は法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2(国税庁ホームページ)と所得税法第76条になります。

損金算入

法人の支払保険料を税務上の経費(損金)として法人税の課税所得から差し引く処理。

所得控除

個人が支払った保険料の一定額を、所得税・住民税の課税所得から差し引く処理(生命保険料控除)。

最高解約返戻率

契約期間中に解約返戻金の割合が最も高くなる時点の数値。

①50%以下、②50%超70%以下、③70%超85%以下、④85%超の4区分で損金算入割合が決まる。

法人契約と個人契約で節税の仕組みはどう違うか

節税の方式は、法人契約が「損金算入」、個人契約が「生命保険料控除(所得控除)」と根本から異なります。

法人は支払保険料を経費として法人税の課税所得から差し引くのに対し、個人事業主は所得税・住民税の所得控除(合計上限12万円)として差し引く仕組みです。

受取保険金の課税方法や役員退職金原資への活用可否にも差があり、不動産管理会社の有無で取りうる選択肢が大きく変わります。

項目法人契約個人契約(個人事業主)
節税の方式損金算入生命保険料控除(所得控除)
控除・損金の上限返戻率50%以下なら保険料の全額が損金算入可。
返戻率50%超は損金算入が40〜60%程度に制限され、残額は前払保険料として資産計上
所得税12万円・住民税7万円(合計)
受取保険金の課税益金として法人税課税相続税・所得税(一時所得)等
役員退職金原資への活用○(解約返戻金で準備可)×

法人契約のメリット

  • 保険料の最大100%まで損金算入が可能な契約区分がある
  • 解約返戻金を役員退職金や事業承継資金に充当できる
  • 不動産経営者本人の万一の際、相続税納税資金や事業継続資金を確保しやすい

2019年改正後の損金算入ルール|最高解約返戻率の4区分

現行ルールのポイントは「最高解約返戻率に応じて損金算入できる割合と期間が決まる」の一点に集約されます。

2019年7月8日以降に契約した定期保険・第三分野保険が対象で、法人税基本通達9-3-5の2に規定されました。

いわゆる「全額損金保険による節税スキーム」を抑制する目的で設けられた改正です。

最高解約返戻率資産計上割合資産計上期間取崩開始時期
50%以下0%(全額損金)−−
50%超70%以下支払保険料の40%保険期間の前半40%保険期間の75%経過後
70%超85%以下支払保険料の60%保険期間の前半40%保険期間の75%経過後
85%超(最高返戻率×0.9)〜70%最高返戻率となる期間解約返戻金額が前年を下回った期
出典:国税庁タックスアンサーNo.5364-2をもとに筆者作成

なお、最高解約返戻率が70%以下で、かつ被保険者1人あたりの年換算保険料相当額が30万円以下の契約は、上記の資産計上ルールが適用されず全額損金算入できる「30万円特例」が用意されています(国税庁タックスアンサーNo.5364-2)。

中小規模の不動産管理会社が福利厚生規程を整備したうえで活用するケースが多い区分です。

計算例と仕訳|法人契約・年払保険料60万円・最高解約返戻率60%のケース

最高解約返戻率60%の長期平準定期保険に法人で加入し、年払保険料60万円を20年間支払うケースを例に、契約期間中から解約までの各フェーズの仕訳を具体的な金額で示します。

前提を以下のメモにまとめたうえで、①支払時 → ②全額損金期 → ③取崩期 → ④解約時の4フェーズに分けて仕訳を示します。

本計算例の前提

  • 保険期間:20年(年払保険料60万円 × 20年 = 累計支払1,200万円)
  • 最高解約返戻率:60%(区分「50%超70%以下」に該当)
  • 資産計上期間:1〜8年目(保険期間の前半40%)
  • 全額損金期:9〜15年目(保険期間の40〜75%)
  • 取崩開始:16年目(保険期間の75%経過後、残存5年で均等取崩)
  • 解約タイミング:20年満期解約
  • 設定する解約返戻金:720万円(=累計支払1,200万円 × 60%)

※ 実際の長期平準定期保険は解約返戻率のピーク時期や金額が商品ごとに異なります。本例は計算過程を分かりやすく示すための設定です。

STEP
支払時(1〜8年目/資産計上期間)

保険期間の前半40%(1〜8年目)が資産計上期間です。

各期、支払保険料60万円のうち40%にあたる24万円を「前払保険料」として資産計上し、残額36万円を「支払保険料(損金)」として処理します。

STEP
全額損金期(9〜15年目)

資産計上期間が終わると、保険期間の75%経過時点まで(9〜15年目)は支払保険料60万円を全額損金算入できます。

この期間は資産計上も取崩も発生しません。

STEP
取崩期(16〜20年目/残存期間で均等取崩)

保険期間の75%経過後(16〜20年目)は取崩期です。

当期保険料60万円は全額損金算入し、加えて1〜8年目に積み上げた前払保険料192万円を残存5年で均等取崩(毎期38.4万円)して損金算入します。

STEP
解約時(20年満期解約・解約返戻金720万円)

20年満期で解約し、解約返戻金720万円を受領します。資産計上残高は16〜20年目で全額取崩済のため、受領した720万円は雑収入として益金算入され、法人税の課税対象になります。

① 支払時の処理(1〜8年目/資産計上期間・各期分)

借方金額貸方金額摘要
前払保険料24万円現預金60万円保険料の40%を資産計上
支払保険料36万円保険料の60%を損金算入

② 全額損金期(9〜15年目/各期分)

借方金額貸方金額摘要
支払保険料60万円現預金60万円保険料の全額を損金算入

③ 取崩期(16〜20年目/1期分の仕訳)

借方金額貸方金額摘要
支払保険料60万円現預金60万円当期保険料の支払
支払保険料38.4万円前払保険料38.4万円192万円 ÷ 残存5年で均等取崩

④ 解約時(20年満期解約・解約返戻金720万円)

借方金額貸方金額摘要
現預金720万円雑収入720万円資産計上残高は取崩済

不動産業ならではの活用ポイント

解約返戻金受領時は大規模修繕や物件入替(買換特例)の支出時期と合わせると、出口時の益金課税を吸収しやすくなります。長期キャッシュフロー計画と一体で設計するのが推奨です。

不動産経営者がやりがちな注意点と税務調査で指摘される論点

節税目的のみで加入すると解約・受取時に多額の益金が一気に立ち、結果として税金が増える──これが現場でもっとも多い失敗パターンです。

税務調査でも以下の論点が指摘されやすいため、必ず留意してください。

よくある間違い・税務調査での指摘事項

  • 出口戦略がないまま全損保険に加入し、解約返戻金受領時に多額の益金が発生する
  • 個人事業主が「専従者を被保険者にした生命保険料を必要経費にできる」と誤解する(原則として経費不可、生命保険料控除のみ)
  • 不動産管理会社が役員でない親族を被保険者にして加入し、福利厚生規程との整合性が取れない
  • 2019年7月7日以前の契約と以後の契約を混同し、損金算入割合を誤って計上する
  • 受取人を法人ではなく経営者個人にしているのに、保険料を全額損金算入してしまう(給与認定リスクあり)

補足|2026年(令和8年)の生命保険料控除の取扱い

個人契約については、令和8年分の所得税に限り、23歳未満の扶養親族がいる場合の一般生命保険料控除(新契約)の上限が4万円→6万円に拡充されます。ただし生命保険料控除全体の上限12万円は据え置きです(参考:令和7年度税制改正大綱)。

まとめ|不動産経営者が生命保険を活用する3つのポイント

不動産経営者が生命保険を活用するうえで外せないのは「保障・資金準備・出口戦略」の3点をセットで設計するという鉄則です。

「節税」を単独の目的にすると、ほぼ確実に出口で課税が膨らみます。

本記事のまとめ

  • 法人契約は損金算入、個人契約は所得控除と節税の仕組み自体が異なる
  • 2019年改正で全額損金にできる契約は最高解約返戻率50%以下または30万円特例のみ
  • 解約返戻金受領時の益金課税を見据え、役員退職金や大規模修繕の支出時期と合わせる出口戦略が不可欠

不動産管理会社の設立や役員退職金準備とあわせた検討は、税制改正の動きが早く個別性も高い分野です。

具体的な契約を選ぶ前に、契約者・被保険者・受取人の組み合わせと出口時期を税理士と事前に設計しておくと、想定外の課税を避けやすくなります。

不動産業の個人事業主でも生命保険料を必要経費にできますか?

原則として、個人事業主本人や専従者を被保険者とする生命保険料は事業の必要経費にはなりません。

所得税の生命保険料控除(最大12万円)で処理します。

法人契約で全額損金にできる生命保険はありますか?

最高解約返戻率が50%以下の定期保険・第三分野保険、または最高返戻率70%以下かつ年換算保険料30万円以下の「30万円特例」に該当する契約は、原則として全額損金算入できます。

2019年7月7日以前に契約した法人保険はどう扱われますか?

旧通達(改正前9-3-5、長期平準定期保険等の取扱い)が引き続き適用されます

新ルールの最高解約返戻率区分は適用されないため、契約日を必ず確認してください。

解約返戻金を役員退職金に充てれば節税になりますか?

退職金として適正な金額であれば、雑収入として計上した解約返戻金と退職給与の損金算入額が相殺され、結果として課税が中和されます。

退職金規程と功績倍率の整備が前提条件です。

不動産業特有の生命保険活用ポイントはありますか?

大規模修繕の支出時期や物件入替(買換特例の活用時期)と解約タイミングを合わせると、出口時の益金課税を吸収しやすくなります。

長期キャッシュフロー計画と一体で設計するのが推奨です。

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