現金仕訳(領収書仕訳)は件数が多く、会計ソフトへの入力に時間がかかります。法人の経理担当者にも、自分で帳簿をつける個人事業主にも共通する悩みです。
現金仕訳の入力方法は手入力・スキャン取込・エクセル取込の3つで、確認の体制や求める速さに合った方法を選ぶと、入力時間を大きく減らせます。
一方で、入力方法によっては、領収書の保存要件を別に確認する必要があります。入力の速さだけで方法を選ぶと、仕訳の精度が下がり、税理士や経理責任者の確認作業が増えます。
本記事では、現金仕訳の入力方法3つの違いと体制に応じた選び方、具体的な仕訳例、領収書の保存ルールを、税理士が初心者向けに解説します。
現金仕訳(領収書仕訳)とは?領収書を元に現金の支払いを記録する仕訳で、件数がもっとも多い
現金仕訳(領収書仕訳)とは、領収書を元に現金で支払った経費を「現金」の勘定科目で記録する仕訳をいい、法人・個人事業主を問わず日々の仕訳の中でもっとも件数が多くなります。
交通費や消耗品、取引先への手土産などを現金で支払った時の仕訳が現金仕訳の典型です。1件ごとの金額は小さくても、月に数十件から数百件になります。
実務では、事業用の現金より、法人は役員の財布から、個人事業主は自分の財布から経費を支払う場面のほうが多くなります。財布から支払った経費も、領収書を元に仕訳する点は同じです。
財布から支払った場合、事業用の現金は減っていないため、貸方を「現金」にはできません。貸方は、法人なら役員借入金(=役員が会社に立て替えたお金)、個人事業主なら事業主借(=事業主が事業に立て替えたお金)になります。
仕訳そのものの考え方は不動産の経理・簿記の基礎|初心者向けに5要素と仕訳例を税理士が解説で説明しています。本記事は、現金仕訳を会計ソフトへどう入力するかに絞って解説します。
現金仕訳(領収書仕訳)の入力方法は3つ|手入力・スキャン取込・エクセル取込
現金仕訳を会計ソフトに入力する方法は、手入力、領収書の画像から仕訳を作成するスキャン取込、エクセルに入力した仕訳を取り込むエクセル取込の3つです。
3つとも元になる書類は領収書であり、違いは領収書の情報を会計ソフトに入れる経路と、入力の速さ・修正のしやすさ・確認のしやすさです。次の表で全体像を確認してください。
| 入力方法 | 入力の速さ | 修正のしやすさ | 領収書の確認 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 手入力 | 遅い | 手間がかかる | 紙で別に確認 | 仕訳件数が少ない場合 |
| スキャン取込 | ふつう | 取込後に修正 | データで確認 | 第三者確認が必要な場合 |
| エクセル取込 | 速い | エクセル上で簡単 | 紙で別に確認 | 入力を素早く行いたい場合 |
3つの方法は、弥生会計・freee・マネーフォワードなど主要な会計ソフトの標準機能で対応できます。新しいソフトを買い足さなくても、現在使用している会計ソフトの機能を切り替えるだけで別の方法に変更できます。
なお、預金口座の入出金を記録する預金仕訳は、銀行データの自動連携が中心になります。預金仕訳は預金仕訳の入力方法を初心者向けに解説|自動連携・CSV・手入力の違いとコツで解説しています。
現金仕訳の入力方法3つのメリットとデメリット
3つの入力方法にはそれぞれ長所と短所があり、手入力は確実だが遅く、スキャン取込は確認しやすいが取込後の修正が必要で、エクセル取込は速いが最初の様式作りに手間がかかります。
手入力|会計ソフトの入力画面に1件ずつ入力する方法
担当者が領収書を見ながら、日付・勘定科目・金額・摘要を会計ソフトの入力画面に1件ずつ入力する方法です。
- メリット
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会計ソフトを使ったことがある人なら、誰でも迷わず始められます。追加の設定や様式作りも不要です。
- デメリット
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1件ごとに画面を操作するため時間がかかり、入力後の修正にも同じ手間が生じます。
月の仕訳件数が数十件を超える事業者では、手入力は3つの方法の中でもっとも時間を要します。
スキャン取込|領収書の画像から仕訳を作成する方法
担当者が領収書をスキャナーやスマートフォンで画像にし、会計ソフトに取り込んで仕訳を自動作成する方法です。
- メリット
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取り込んだ領収書の画像が仕訳と並んで表示されるため、税理士や経理責任者が根拠を見ながら仕訳を確認できます。
- デメリット
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日付・金額・勘定科目の読み取りが誤ることがあり、取込後に担当者が1件ずつ確認して修正する手間がかかります。
スキャン取込は、入力する人と確認する人が別の場合に、確認の手間をもっとも減らせる方法です。
エクセル取込|エクセルに入力した仕訳を会計ソフトに取り込む方法
エクセルでCSV(=項目をカンマで区切った、どの会計ソフトでも読み込める表形式のファイル)の仕訳表を作り、そのまま会計ソフトに取り込む方法です。
- メリット
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エクセルはコピーや並べ替えが自由なため、入力と修正がもっとも速く済みます。
- デメリット
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取込形式が会計ソフトごとに異なるため、最初の様式作りに手間がかかります。
エクセル取込は、仕訳件数が多い場合に入力時間をもっとも短くできる方法です。
現金仕訳の入力方法の選び方|確認のしやすさか入力の速さかで決める
現金仕訳の入力方法は、確認のしやすさを重視するならスキャン取込、入力の速さを重視するならエクセル取込を選ぶのが効率的です。
手入力を続けている法人や個人事業主は、月の仕訳件数が数十件を超えた時点で、どちらかへの切り替えを検討してください。
スキャン取込を選ぶ場合|複数人で確認する、紙の領収書を廃棄したい
入力後の仕訳を税理士や経理責任者(個人事業主なら事業主本人)が確認する体制では、領収書のデータと仕訳を画面上で見比べられるスキャン取込が向いています。修正の指示も画面上で完結します。
紙の領収書を廃棄したい場合も、スキャン取込が前提になります。廃棄の要件は、後述の「領収書のスキャン保存と帳簿の保存期間」の章で説明します。
エクセル取込を選ぶ場合|入力を速く済ませたい、入力後の変更が多い
入力を速く済ませたい場合は、1件ずつ画面を操作せずにまとめて入力できるエクセル取込が向いています。当事務所の実測では、自己チェックの時間を含めても、エクセル取込はスキャン取込の3分の2程度の時間で作業が終わっています。
入力後に勘定科目や摘要を直す機会が多い場合も、エクセル上で修正して取り込み直せるため、エクセル取込が向いています。
現金仕訳の具体例5つ|法人は役員借入金、個人事業主は事業主借の仕訳が多い
現金仕訳は、貸方に「現金」を置いて現金の減少を記録し、借方に支払った経費の勘定科目を置くのが基本です。
法人と個人事業主に分けて、仕訳の例を確認します。
法人の現金仕訳の例|会社の現金払いと役員借入金
例1:書類を送る宅配便の送料2千円を会社の現金で支払い、領収書を受け取った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 通信費 | 2千円 | 現金 | 2千円 |
例2:役員が自分の財布から取引先との会食代5万円を支払い、領収書を受け取った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 交際費 | 5万円 | 役員借入金 | 5万円 |
役員が立て替えた経費は、会社の現金が動いていないため、貸方を役員借入金にして計上します。法人が役員に精算した日に、役員借入金を消し込む仕訳をすれば、立替払いの処理は完了です。
例3:例2の立替分5万円を、役員の口座へ普通預金から振り込んで精算した
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 役員借入金 | 5万円 | 普通預金 | 5万円 |
個人事業主の現金仕訳の例|事業用の現金払いと事業主借
例4:事務用品8千円を事業用の現金で購入し、領収書を受け取った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 8千円 | 現金 | 8千円 |
例5:自分の財布から文具3千円を支払い、領収書を受け取った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 3千円 | 事業主借 | 3千円 |
事業主が事業用の現金を用意している場合は、例4のように貸方を「現金」にします。事業用の現金を用意していない場合は、例5のように貸方を事業主借(=事業主が個人のお金で事業の経費を立て替えたことを記録する勘定科目)にし、返済の仕訳は不要です。
現金仕訳でミスしやすい3つのポイント
現金仕訳のミスは、領収書の金額と違う金額を入力する誤り、領収書が発行されない支出の仕訳漏れ、同じ領収書の二重計上の3つに集中します。
3つのミスは、起きる場面と防ぎ方が決まっています。次の表で確認してください。
| ミス | 起きる場面 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 金額の誤り | 桁の打ち間違い、税込と税抜の取り違え | 入力後に領収書と金額を照合する |
| 仕訳漏れ | 電車代や自動販売機など領収書が発行されない支払い | 日付・金額・相手先・内容をエクセルなどにまとめ、まとめた記録を元に仕訳する |
| 同じ領収書の二重計上 | 領収書の枚数が多く、入力済みの領収書を再び処理する | 入力済みの領収書を未入力の領収書と分けて保管する |
スキャン取込では、読み取り時に桁数の誤りや数字の誤変換が起こることがあるため、取込後の金額の照合は欠かせません。
領収書が発行されない支出も、日付・金額・相手先・内容の記録を元に仕訳すれば経費になります。仕訳をしなければ経費の計上が漏れ、漏れた分だけ税金が増えます。
同じ領収書の二重計上は、どの入力方法でも領収書の枚数が多くなるほど起こりやすくなります。入力済みの領収書を未入力の領収書と分けて保管すれば、同じ領収書を2回処理する機会を減らせます。
領収書のスキャン保存と帳簿の保存期間|要件を満たせば紙を廃棄できる
領収書をスキャンして保存する場合、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たせば、画像の保存をもって紙の保存に代えられます(国税庁「電子帳簿保存法の概要」)。
弥生会計・freee・マネーフォワードなど主要な会計ソフトは、電子帳簿保存法のスキャナ保存に対応しています。各社が案内するスキャナ保存の手順どおりに領収書を取り込めば、要件を満たした保存になり、紙の領収書は廃棄できます。
領収書の画像を仕訳に添付しただけでは要件を満たさず、紙を廃棄すると帳簿書類の保存義務に反します。会計ソフトの電子帳簿保存法対応の機能と手順を使っているかを確認してください。
領収書の保存期間は、法人の場合、確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。青色申告で欠損金が生じた事業年度の分は、10年間に延びます(国税庁 タックスアンサー No.5930「帳簿書類等の保存期間」)。
個人事業主の領収書の保存期間は、青色申告なら原則7年間(国税庁 タックスアンサー No.2070「青色申告制度」)、白色申告なら5年間です(国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」)。
まとめ|現金仕訳は目的に合った入力方法を選び、領収書を元に漏れなく仕訳する
現金仕訳(領収書仕訳)は、複数人で確認するならスキャン取込、速さを重視するならエクセル取込を選び、領収書を元に漏れなく仕訳することが基本です。
- 入力方法は目的に合わせて選ぶ:複数人で確認する、または紙の領収書を廃棄したいならスキャン取込、入力を速く済ませたい、または入力後の変更が多いならエクセル取込を選びます。
- 事業用の現金以外から支払った経費は貸方が「現金」にならない:役員や事業主が個人のお金で支払った場合、貸方は法人なら役員借入金、個人事業主なら事業主借です。
- 現金仕訳の入力では金額の誤り・仕訳漏れ・二重計上に注意する:金額は入力後に領収書と照合し、領収書が発行されない支出は記録を元に仕訳し、入力済みの領収書は未入力と分けて保管します。
- 紙の領収書は要件を満たしてから捨てる:会計ソフトの電子帳簿保存法対応の手順で取り込めば廃棄でき、保存期間は法人7年(欠損金の年度は10年)、個人事業主は青色7年・白色5年です。
入力方法の切り替えは、会計ソフトの標準機能ですぐに始められます。現金仕訳は仕訳の中でもっとも件数が多いため、入力方法を見直す効果がもっとも大きく表れます。
現金仕訳の入力方法に関するよくある質問
現金仕訳の入力方法について、法人の経理担当者や個人事業主からよく寄せられる質問と回答をまとめました。
- 現金仕訳(領収書仕訳)を会計ソフトに入力する方法は、手入力のほかに何がありますか?
-
領収書の画像から仕訳を作成するスキャン取込と、エクセルに入力した仕訳をまとめて取り込むエクセル取込の2つがあります。どちらも弥生会計・freee・マネーフォワードなど主要な会計ソフトの標準機能で利用できます。
- 税理士や経理責任者が現金仕訳を確認する場合、どの入力方法を選べばよいですか?
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領収書の画像から仕訳を作成するスキャン取込が向いています。領収書の画像が仕訳と並んで表示されるため、確認する側が根拠を見ながら修正を指示できるためです。
- 領収書を会計ソフトにスキャンして取り込めば、紙の領収書は捨ててもよいですか?
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電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たしている場合に限り、紙を廃棄できます。会計ソフトに画像を取り込んだだけでは要件を満たすとは限らないため、スキャナ保存対応の機能で保存しているかを確認してください。
- 領収書をもらえず、レシートしか手元にない場合でも現金仕訳に使えますか?
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レシートも領収書と同じ支払いの証拠として現金仕訳に使え、経費の計上に問題ありません。消費税のインボイス制度でも、小売業・飲食店業・タクシー等が発行するレシートは、宛名がなくても適格請求書として認められています(国税庁 タックスアンサー No.6625「適格請求書等の記載事項」)。
- 役員や事業主が自分の財布から経費を支払った時は、どのように仕訳しますか?
-
貸方を「現金」ではなく、法人なら役員借入金、個人事業主なら事業主借にして、借方に経費の勘定科目を置きます。法人は役員に精算した日に、役員借入金を消し込む仕訳をします。
参考文献


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