相続税法では、同居親族が、被相続人(亡くなった人)の居住の用に供していた敷地を相続することが、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例(敷地の80%減額)を適用するための条件になります。
一方、所得税法の同居親族等の扶養控除(58万円控除)の条件は、納税者が、老親と同居を常況としていることです。
相続税法と所得税法の2つで「同居親族」というキーワードが出てきますが、この2つの同居親族は微妙に概念が異なります。
相続税法(小規模宅地等の特例)の趣旨は、残された同居親族の居住を保護することにありますので、居住を保護する必要がある親族か否かが同居親族の要件になります。
所得税法(老親の扶養控除)の趣旨は、息子(娘)が親と同居して面倒をみることを支援することにあり、実際に息子(娘)が親と暮らしているかが同居親族の要件になります。
具体例で相続税と所得税の同居親族の差異を確認してみましょう。
【事例1】
息子と生活を共にしていた父親が老人ホームに入居しました。
なお、母親はすでに他界しています。
相続税法(小規模宅地等の特例)では、居宅を保護する必要がある親族か否かが同居親族の要件になりますので、要介護認定等を受けることが条件になりますが、父親が老人ホームに移住しても、父親が所有している居宅に居住している息子は同居親族に該当することになります。
一方、所得税法(老親の扶養控除)では、実際に息子が親と暮らしていることが同居親族の要件になりますので、父親が老人ホームに移住してしまった本事例では同居親族に該当しないことになります。
【事例2】
父親が所有する敷地内にA家屋(父親所有)とB家屋(息子所有)の2軒の家が建っています。
A家屋には父親が住んでおり、B家屋には息子が住んでいます。
相続税法(小規模宅地等の特例)では、仮に、息子が父親の身の回りの世話をしていたり、食事を共にしていても、建物が分かれている限り同居親族には該当しません。
一方、所得税法では、父親と一緒に食事をするなど日常生活を共にしているときは、実際に息子が父親と一緒に暮らしていると考えられますので、同居親族に該当します。
所得税法(老親の扶養控除)の同居親族と同じように相続税法(小規模宅地等の特例)の同居親族をとらえていると、相続時に小規模宅地等の特例を適用できない事例が生じてしまう可能性がありますので注意しましょう。