配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、亡くなった人(被相続人)の配偶者が相続開始時に居住していた建物に住み続けることを認める権利のことです。

例えば、父親が亡くなり、両親が同居していた父親所有の土地・建物を息子が相続した場合、母親の居住を保護するために、両親が同居していた建物に母親が住み続けることを認める権利になります。

配偶者居住権に基づく敷地利用権の評価

配偶者居住権は建物に対する権利ですが、その建物の敷地には制限が生じますので、相続税法上は配偶者居住権に基づく敷地利用権として評価することになります。

まずは、相続で重要になる配偶者居住権に基づく敷地利用権などの相続税評価額の算定方法を以下の事例で確認してみましょう。

【事例1】
父親は自己所有の土地(300㎡)に建物を建て、母親と長男と同居していました。
父親が亡くなり、土地・建物を長男が取得し、母親は配偶者居住権を取得し、引き続き居住を継続しています。
相続開始時の母親の年齢は70歳なので、平均余命は20年、法定利率を3%とすると複利現価率は0.554になります。
土地の相続税評価額は1億です。

敷地「利用権」(母親の権利)の相続税評価額は以下の算式で計算できます。

敷地「利用権」の相続税評価額

土地の相続税評価額-土地の相続税評価額×複利現価率

よって、本事例の敷地「利用権」の相続税評価額は1億-1億×0.554=4,460万円になります。

また、敷地「所有権」(長男の権利)の相続税評価額は以下の算式で計算できます。

敷地「所有権」の相続税評価額

土地の相続税評価額-敷地利用権の相続税評価額

よって、本事例の敷地「所有権」の相続税評価額は1億-4,460万円=5,540万円になります。

なお、敷地「利用権」の相続税評価額と敷地「所有権」の相続税評価額を合計すると元の土地の相続税評価額と一致することになります。

配偶者居住権に基づく敷地利用権と小規模宅地等の特例の適用について

配偶者居住権に基づく敷地利用権は土地の上に存する権利になので、小規模宅地等の特例を適用することができます

また、敷地所有権にも、当然、小規模宅地等の特例が適用できます

では、配偶者居住権に基づく敷地利用権が設定された場合、相続税法上重要になる土地「全体」の評価額はどのように計算するのでしょうか?

以下の事例で確認してみましょう。

【事例2】
父親は自己所有の土地(300㎡)に建物を建て、母親と長男と同居していました。
父親が亡くなり、土地・建物を長男が取得し、母親は配偶者居住権を取得し、引き続き居住を継続しています。
配偶者居住権に基づく敷地利用権の相続税評価額3,000万円(母親)、敷地所有権の相続税評価額6,000万円(長男)とした場合、この土地全体の小規模宅地等の特例を適用後の評価額はいくらになるでしょうか?

土地全体の小規模宅地等の特例の適用後の評価額を算定するためには以下の4つのステップを踏む必要があります

【ステップ1:母親・長男がそれぞれ相続により取得した宅地等の面積を算定する】

①配偶者居住権に基づく敷地利用権(母親取得)の面積
配偶者居住権に基づく敷地利用権の面積は、土地の面積×敷地利用権の相続税評価額÷土地の相続税評価額で計算できます。

よって、300㎡×3,000万円÷(3,000万円+6,000万円)=100㎡となります。

②敷地所有権(長男取得)の面積
敷地所有権の面積は土地の面積×敷地所有権の相続税評価額÷土地の相続税評価額で計算できます。

よって、300㎡×6,000万円÷(3,000万円+6,000万円)=200㎡となります。

【ステップ2:取得者ごとの小規模宅地等の特例の判定】

①配偶者居住権(母親取得)のうち特定居住用宅地等に該当する部分

配偶者居住権に基づく敷地利用権100㎡(3,000万円)

②土地所有権(長男取得)のうち特定居住用宅地等に該当する部分

敷地所有権200㎡(6,000万円)

【ステップ3:限度面積の判定】

特定居住用宅地等の限度面積は330㎡までです。

今回は100㎡+200㎡=300㎡であるため、全体に対して小規模宅地等の特例が適用できます

【ステップ4:評価額の計算】

配偶者居住権に基づく敷地利用権(母親取得)、敷地所有権(長男取得)共に特定居住用宅地等に該当するため80%の減額が出来ます

①配偶者居住権に基づく敷地利用権の評価額
3,000万円×(100%-80%)=600万円

②敷地所有権の評価額
6,000万円×(100%-80%)=1,200万円

③土地全体の評価額
600万円+1,200万円=1,800万円