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不動産賃貸業の法人化のデメリットとは?後悔しない判断基準を税理士が解説

2026 7/10
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会社の税金
2026年7月10日
個人事業主の事業を法人化する際のデメリットになる事項について!

「そろそろ法人化したほうが節税になるのでは」──家賃収入が増えてきた個人事業主の大家さんなら、一度は考える悩みです。

法人化にはたしかに節税メリットがありますが、デメリットを知らずに法人化すると、赤字の年でも消えない固定費と事務の手間に後悔しかねません。

例えば、社会保険は役員1人の会社でも加入が義務になり、月30万円の役員報酬(=社長が会社から受け取る給与)なら会社負担分だけで年約50万円の固定費が生じます。

さらに社会保険は払って終わりではなく、毎月の保険料の計算・納付や年1回の算定基礎届の提出といった事務が続き、費用と手間の両方が重くなります。

本記事では、不動産業を専門とする税理士が、不動産賃貸業の法人化のデメリット5つと、法人化すべきかどうかを見極める判断の目安を初心者向けにやさしく解説します。

目次

法人化のデメリットは5つ|設立前の把握が肝心

法人化のデメリットは、会社を設立する前に全体像を把握しておくことが何より重要です。一度法人化すると、会社をたたむにも解散・清算の手続きと費用がかかり、簡単には個人事業へ戻れないためです。

法人化(法人成り)とは、個人事業主が株式会社や合同会社を設立し、事業を会社へ引き継ぐことです。

節税メリットの情報は豊富にある一方で、デメリットは設立後に初めて気づくものが多いのが実情です。

たとえば「会社にすれば経費の幅が広がる」と聞いて設立したものの、社会保険料の増加で手取りが減ったという相談は少なくありません。数字での事前確認が何より重要です。

まず、5つのデメリットを一覧で押さえましょう。

  • 法人の設立費用がかかる
  • 赤字でも均等割が毎年かかる
  • 社会保険料の強制加入
  • 経理・人事・総務の雑務が増える
  • 税理士報酬など維持費が増える

どれか1つが致命傷になるというより、複数の負担が同時に始まるのが法人化の特徴です。設立前に「年間でいくら負担が増えるか」を見積もれるよう、次章から1つずつ確認します。

デメリット1|法人の設立費用がかかる

法人化の1つ目のデメリットは設立費用です。個人事業の開業届は無料ですが、法人の設立には株式会社で16万5,000円〜24万円、合同会社で6万円〜10万円の実費がかかります。

費用がかかる場面は、主に2つあります。会社のルールブックにあたる「定款」を作って認めてもらうときと、法務局へ会社の登記を申請するときです。

定款の認証とは、国が任命した専門家である公証人に「正しく作られた定款です」と証明してもらう手続きです。株式会社では必須ですが、合同会社では不要です。

登記の際には、登録免許税という税金を国へ納めます。設立費用の大部分を占めるのがこの税金です。

金額は次の表で確認してください(国税庁タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」、日本公証人連合会「Q3 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか」)。

項目株式会社合同会社
設立の登録免許税資本金の0.7%(最低15万円)資本金の0.7%(最低6万円)
定款認証公証人手数料1万5,000円〜5万円(資本金・要件による)不要
収入印紙(紙の定款)4万円(電子定款は不要)4万円(電子定款は不要)
合計(実費の目安)16万5,000円〜24万円6万円〜10万円

節約のコツは、定款を紙ではなくPDFなどの電子データ(電子定款)で作ることです。紙の定款にかかる収入印紙という税金が不要になります。

また、会社を作る人(発起人)が3人以下といった要件を満たす小さな会社なら、認証手数料は半額の1万5,000円で済みます(日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」)。

設立費用は一度きりの負担です。しかし次に見る均等割は、法人が続く限り毎年かかり続ける負担です。

デメリット2|赤字でも均等割が年7万円かかる

均等割とは、法人住民税のうち、利益に関係なく毎年かかる部分のことです。赤字の年でも、年7万円(都道府県2万円+市区町村5万円)を納め続けるのが標準です(総務省「法人住民税」)。

たとえるなら、法人でいるための「年会費」です。会社を続ける限り、利益ゼロの年も納税だけは続きます。

なお、資本金や従業員数が増えると、均等割の金額は段階的に上がります。事業拡大の予定がある方は、将来の区分まで確認しておきましょう。

続いて、法人化で最も見落とされがちな社会保険料です。

デメリット3|社会保険料の強制加入で負担が跳ね上がる

法人は社長1人の会社でも、健康保険・厚生年金への加入が法律上の義務になります。

個人事業主時代の国民健康保険・国民年金と違い、保険料は役員報酬に連動します。会社負担分と本人負担分を合わせると、おおむね報酬の3割前後になるのが一般的です。

従業員を雇っている場合は、従業員分の社会保険料の会社負担も発生します。人件費の実質コストは、給与の額面より大きくなると考えてください。

節税で減る税金より、増える社会保険料のほうが大きいケースも珍しくありません。法人化の損得は、税金と社会保険料をセットで試算する必要があります。

お金の次は、手間の負担を見ていきます。

デメリット4|経理・人事・総務の雑務が増える

法人化の4つ目のデメリットは、経営者自身の雑務が増えることです。経理・人事・総務にまたがる細かな事務が、個人事業のときより確実に増えます。

経理では、法人の決算・申告が個人の確定申告より格段に複雑になります。記帳や申告書の作成は税理士に任せられますが、領収書・通帳・請求書といった資料の整理と受け渡しは経営者の仕事として残ります。

人事・総務では、社会保険の加入・脱退の手続きや毎月の給与計算、年末調整といった仕事が新たに加わります。社長1人の会社でも、役員報酬から所得税を源泉徴収して国へ納める義務があります。

雑務を減らすには、税理士や社会保険労務士への依頼が現実的な選択になります。ただし手間を外注すると、今度は維持費という次のデメリットに直結します。

デメリット5|税理士報酬など維持費が毎年かかる

法人を維持するには、税理士報酬を中心に毎年数十万円単位の維持費がかかります。

税理士報酬の相場は事業規模によって幅がありますが、個人時代より負担が増えるのが通常です。顧問料と決算料を合わせた年額で見積もりましょう。

税理士報酬のほかにも、株式会社では役員の任期が切れるたびに重任登記の登録免許税1万円〜がかかるなど、細かな維持費が積み重なります。

ここまでが5つのデメリットです。次章では、これらを年額に置き換えて、法人化すべきかの判断基準をまとめます。

不動産賃貸業の法人化の判断基準|固定費を上回る安定利益

不動産賃貸業の法人化は、増える固定費と手間を上回る利益が、家賃収入から安定して出ているかどうかで判断するのが基本です。

法人化を検討し始める目安は、所得(=家賃収入から経費を差し引いた利益)がおおよそ500万円を超えたあたりです。

500万円という数字は、個人と法人の税金の合計を比べて、法人のほうが税額が安くなり始めるラインです。詳しい計算の根拠は「不動産管理会社の設立メリット・デメリット完全ガイド」で解説しています。

ただし、この目安は税金の損得だけを比べた数字です。実際には、本記事で見た均等割・社会保険料・税理士報酬といった固定費が年間数十万円単位で加わり、経理・人事・総務の手間も増えます。

そのため、目安の所得をぎりぎり超えた程度なら急ぐ必要はありません。節税額から増える固定費を差し引いても手取りが増え、手間を引き受ける価値があると思えたときが法人化のタイミングです。

なお、不動産賃貸業の法人化には3つの方式があります。物件を会社へ移す「会社所有方式」、管理料を会社に支払う「管理委託方式」、会社が物件を一括で借り上げる「サブリース方式」です。

どの方式を選ぶかで、節税効果も物件移転コストの要否も大きく変わります。仕組みと注意点は、それぞれのリンク先で確認してください。

まとめ|法人化のデメリットは数字にしてから決める

不動産賃貸業の法人化は、本記事の5つのデメリットをすべて年間の金額と手間に置き換えてから決めることが、後悔しない近道です。

  • デメリットは5つ:法人化すると、設立費用・均等割・社会保険料・雑務の増加・維持費という5つの負担が新たに始まります。
  • 固定費は毎年続く:均等割は赤字の年でも年7万円かかり、社会保険料は会社と本人の合計で役員報酬の約3割に達します。会社をやめない限り、毎年出ていくお金です。
  • 目安は所得500万円:家賃収入から経費を引いた利益が500万円を超えたあたりが、法人化を検討し始めるラインです。超えていても、増える固定費と手間を差し引いて手取りが増えるかまで確認しましょう。
  • 方式は3つ:物件を会社へ移す「会社所有方式」、管理料だけ会社に払う「管理委託方式」、会社が一括で借り上げる「サブリース方式」があります。どれを選ぶかで、節税の大きさも物件を移す税金の有無も変わります。

不動産賃貸業の法人化のよくある質問(FAQ)

法人化のデメリットについて、よくいただく質問をまとめました。

利益がいくらになったら、法人化を検討すべきでしょうか?

所得(=家賃収入から経費を差し引いた利益)が、おおよそ500万円を超えたあたりが目安になります。

合同会社を選べば、費用面のデメリットは小さくなりますか?

はい、小さくなります。合同会社の設立費用は6万円〜10万円で、株式会社(16万5,000円〜24万円)の半分以下です。

なお、法人住民税の均等割や社会保険料など毎年かかる費用は、どちらの形態でも同じです。

物件を個人名義のまま、法人化することはできますか?

はい、可能です。管理料を会社に支払う管理委託方式や、会社が物件を一括で借り上げるサブリース方式であれば、物件を個人名義のまま法人化の節税効果を得られます。

物件を会社名義に移す必要があるのは会社所有方式のみで、その場合には不動産取得税や登録免許税といった移転コストが発生します。

個人事業のときのように、家賃収入を生活費に回すことはできますか?

できなくなります。個人事業では家賃収入はそのまま自分のお金ですが、法人化後は会社の財産となり、経営者は役員報酬という決まった額で受け取ります。

役員報酬は原則として事業年度の途中で変更できません(国税庁タックスアンサーNo.5211「役員に対する給与」)。会社のお金を私的に引き出すと「役員貸付金」として扱われ、銀行融資の審査でマイナス評価につながります。

一度設立した会社を閉じて、個人事業に切り替えることはできますか?

はい、可能です。ただし、会社を閉じるには解散・清算という登記手続きが必要になり、費用と数か月単位の期間を要します。

参考文献(公式ページ)

  • 国税庁タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」
  • 総務省「地方税制度|法人住民税」
  • 日本公証人連合会「Q3 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか」
  • 日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」
  • 国税庁タックスアンサーNo.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」
  • 日本年金機構「適用事業所と被保険者」
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