「うちの相続税はいくらになるのだろう?」と不安に感じていませんか。
相続税の計算方法は、基礎控除・財産評価・税率という3つの仕組みを押さえれば、初心者の方でも概算できます。
この記事では、自宅などの不動産を含む遺産1億円のケースを例に、課税価格の算定から実際の納税額まで5つのステップでわかりやすく解説します。
相続税とは?課税される仕組みをやさしく解説
相続税とは、亡くなった人から受け継いだ財産の合計額が一定の基準を超えたときに、その超えた部分にかかる税金です。
まず押さえたいのは、相続したすべての人に課税されるわけではないという点です。
遺産の総額が基礎控除額の範囲内であれば、相続税はかからず申告も原則不要です。
- 被相続人
-
亡くなって財産を遺した人
- 相続人
-
財産を受け継ぐ人(配偶者・子など)
- 課税価格
-
各相続人が取得した財産を相続税評価額で合計した金額
- 基礎控除
-
課税されない一定額。3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税の基本的な仕組みは、国税庁「No.4152 相続税の計算」でも確認できます。
相続税の基礎控除と法定相続人の数え方
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で求めます。
たとえば、法定相続人が子ども2人だけの場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。
遺産総額がこの金額以下であれば相続税はかかりません。
相続放棄をした人も、法定相続人の数には含めて計算します。
養子は、実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人まで数えられます。
法定相続人が多いほど基礎控除額が増え、相続税の負担は軽くなります。
不動産(土地・建物)の相続税評価額の出し方
相続財産に不動産がある場合、土地は「路線価方式」または「倍率方式」、建物は「固定資産税評価額」で評価額を計算します。
路線価は道路ごとに定められた1㎡あたりの価額で、国税庁が毎年7月に公表します。
土地の面積に路線価を掛けて評価額の基礎を求めます。
現預金が残高そのままで評価されるのに対し、不動産は時価より低く評価されやすいため、相続税対策で重視されます。
| 財産の種類 | 相続税評価額の基準 |
|---|---|
| 現金・預貯金 | 残高そのままの金額 |
| 上場株式 | 課税時期の終値など4つのうち最も低い価額 |
| 土地 | 路線価方式または倍率方式 |
| 建物(家屋) | 固定資産税評価額(マンションは下記の補正あり) |
分譲マンションは、2024年1月以降の相続・贈与から「居住用の区分所有財産の評価」という新ルールが適用されます。従来の評価額(土地+建物)に区分所有補正率を掛けて計算する仕組みで、築浅・高層階ほど評価額が上がりやすいのが特徴です。
そのため、上記の戸建てと同じ感覚で計算すると差が出ることがあります。詳しい計算式は国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」をご確認ください。
路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に一定倍率を掛ける倍率方式で土地を評価します。路線価図・倍率表は国税庁の路線価図・評価倍率表で調べられます。
相続した不動産に使える「小規模宅地等の特例」3区分【比較】
自宅や事業用の土地は、「小規模宅地等の特例」を使うと相続税評価額を最大80%減らせます。
前章の評価額をさらに大きく引き下げ、このあとの計算例でも使う相続税の要となる特例のため、先に押さえておきましょう。
特例は土地の用途によって次の3区分に分かれ、限度面積と減額率が異なります。
| 区分 | 対象の土地 | 限度面積・減額率 | 主な要件・注意点 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 自宅の敷地 | 330㎡まで80%減 | 配偶者・同居親族などが取得し居住を継続 |
| 特定事業用宅地等 | 事業に使う土地 | 400㎡まで80%減 | 事業を承継し申告期限まで継続 |
| 貸付事業用宅地等 | 賃貸アパート等の敷地 | 200㎡まで50%減 | 貸付事業を申告期限まで継続 |
自宅の土地(特定居住用・330㎡)と事業用の土地(特定事業用・400㎡)は、調整計算なしで合計最大730㎡まで併用できます。
一方、賃貸物件の土地(貸付事業用・200㎡)も一緒に使う場合は、限度面積を200㎡以下に調整する計算が必要になり、適用できる面積が小さくなる点に注意しましょう。
【計算例】遺産1億円のケースを5ステップで計算
ここからは、遺産総額1億円の相続を例に、相続税額を実際に計算してみましょう。
事例として、母が亡くなり、相続人は長男と次男の2人(父はすでに他界)とします。
相続財産は、自宅6,000万円(土地5,000万円・家屋1,000万円)、預貯金3,000万円、株式1,000万円の合計1億円です。
自宅は同居していた長男が、預貯金と株式は次男が相続しました。
| ステップ | 計算内容 | 金額 |
|---|---|---|
| ①課税価格の算定 | 長男:土地5,000万円×(1−80%)+家屋1,000万円/次男:預貯金3,000万円+株式1,000万円 | 長男2,000万円・次男4,000万円 |
| ②課税遺産総額 | 課税価格の合計6,000万円−基礎控除4,200万円 | 1,800万円 |
| ③相続税の総額 | 課税遺産総額を法定相続分で按分(長男・次男 各1/2=900万円)し、各人ごとに税率10%を掛けて(各90万円)、最後に合算する | 90万円+90万円=180万円 |
| ④各人の相続税額 | 相続税の総額を実際の取得割合(長男1/3・次男2/3)で按分 | 長男60万円・次男120万円 |
| ⑤納付税額の確定 | 税額控除(配偶者の税額軽減など)を適用。本例は配偶者がおらず該当控除なし | 長男60万円・次男120万円 |
このように、小規模宅地等の特例で長男の土地評価額が80%下がった結果、課税遺産総額が圧縮され、相続税の総額は180万円にとどまりました。
特例を使わなければ税額は数百万円単位で増えるため、適用可否の判断が重要です。
相続税の申告・納付までの手続きの流れ
相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
被相続人が亡くなった日から相続手続きが始まります。
不動産・預貯金・株式などを洗い出し、相続税評価額を算定します。
相続人全員で話し合い、だれが何を相続するかを決めて協議書にまとめます。
特例を適用して税額を計算し、被相続人の住所地の税務署へ申告します。
原則として申告期限までに、現金で一括納付します。
遺産分割をスムーズに進めるには遺言書も有効です。
詳しくは以下の記事をご覧ください。

相続税の計算でよくある間違いと注意点
相続税の計算では、特例の適用漏れと申告期限の超過が特に起こりやすい失敗です。
- 小規模宅地等の特例の適用漏れ:特例は申告して初めて適用されます。申告しなければ自動では受けられません。
- 申告期限(10か月)の超過:遅れると無申告加算税や延滞税が課されます。
- 名義預金の申告漏れ:家族名義でも実質が被相続人の預金なら相続財産です。税務調査で最も指摘されやすい項目です。
- 配偶者の税額軽減の使い過ぎ:配偶者には最大1億6,000万円まで相続税がかからない軽減があります。ただし最初の相続(1次相続=例:父が亡くなったときの相続)で配偶者がたくさん相続して使い切ると、その配偶者が亡くなったとき(2次相続=母の相続)に、子の税額が高くなることがあります。
まとめ|相続税の計算は5ステップで概算できる
相続税の計算方法は、①課税価格→②課税遺産総額→③相続税の総額→④各人の税額→⑤納付額の確定という5ステップで概算できます。
なかでも基礎控除・不動産の評価・小規模宅地等の特例の3つを押さえることが重要で、早めの対策で納税負担を抑えられます。
【この記事のポイント】
- 基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 不動産の評価=土地は路線価、建物は固定資産税評価額
- 小規模宅地等の特例で自宅の土地は最大80%減
- 申告・納付は10か月以内に行う
不動産を含む相続税の試算や申告でお困りの場合は、税理士にお早めにご相談ください。
生前からの対策で、納税資金の準備や節税の選択肢が広がります。
相続税対策には生命保険の活用も有効ですので、以下の関連記事も参考にしてみてください。

よくある質問(FAQ)
相続税の計算について、初心者の方からよくいただく質問をまとめました。
- 相続税は遺産がいくらからかかりますか?
-
遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合にかかります。
子ども2人なら4,200万円が基準です。
- 不動産の相続税評価額はどうやって調べますか?
-
土地は国税庁が公表する路線価(路線価方式)、建物は固定資産税評価額が基準になります。
路線価がない地域は倍率方式です。
- 小規模宅地等の特例を使うとどのくらい安くなりますか?
-
自宅の土地(特定居住用宅地等)なら、330㎡まで評価額を80%減らせます。
- 相続税の申告期限はいつまでですか?
-
被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
期限を過ぎると加算税や延滞税の対象になります。


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