「銀行に融資を断られた」「決算書が赤字で、また審査が通らないかもしれない」——そんな不安を抱えたまま、融資の申し込みをためらっていませんか。
銀行は融資の審査で、まず決算書を見ます。
そのとき最初に確認するのが「利益が出ているかどうか」です。
赤字の決算書は「返済できないかもしれない会社」とみなされ、それだけで審査のハードルが一気に上がってしまいます。
ただ、赤字だからといって手詰まりではありません。
税法上、認められた会計処理の選択によって、決算書の数字を合法的に改善できる方法がいくつかあります。
脱税でも粉飾決算でもなく、税理士も推奨する正当な方法です。
この記事では、不動産業を営む経営者の方が銀行融資を通しやすくするために、今すぐ実践できる5つの具体的な方法をわかりやすく解説します。
銀行融資と決算書の関係とは?
銀行は融資審査で決算書を見るとき、主に次の3点を確認します。
①営業利益・経常利益がプラスか、②純資産がプラスか(債務超過でないか)、そして、③債務償還年数(不動産業では20年以内が目安)です。
国税庁の法人税の基本通達等に基づき、不動産業者が合法的に活用できる決算処理は複数あります。
【方法①】減価償却費の計上を調整する
法人は減価償却費を当期に計上するかどうかを、固定資産ごとに選択できます。
不動産業では建物・設備の減価償却費が大きく、計上しない選択をすれば利益が増え、決算書を黒字化できます。
| 項目 | 減価償却あり | 減価償却なし(選択) |
|---|---|---|
| 売上高 | 500万円 | 500万円 |
| 経費(減価償却除く) | 450万円 | 450万円 |
| 減価償却費 | 80万円 | 0円(計上しない) |
| 利益 | ▲30万円(赤字) | 50万円(黒字) |
なお、当期の減価償却費の計上を取り止めても、翌期に減価償却費に計上できるのは、、翌期分の80万円のみです(当期分+翌期分で160万円にはなりません!)。
当期に計上しなかった減価償却費は、減価償却費を計上できる期間が延びることで調整されます。
つまり、例えば元々10年で減価償却費を計上するはずだった場合、当期に減価償却費を計上しないと11年目に減価償却費が計上されることになります。
減価償却費の計上を取り止める対策は、融資を優先する年度のみ活用する戦略的な判断が必要になりますので、税理士と相談の上、判断することをおすすめします。
【方法②】一時的な費用を特別損失に計上する
銀行が最も重視する「経常利益」を守るために、一時的な大きな支出は特別損失に計上しましょう。
特別損失は経常利益の計算に含まれないため、融資審査で有利になります。
不動産取得税、大規模修繕費(資本的支出に当たらない部分)、役員退職金、固定資産の除却損などが対象です。
【方法③】節税保険の解約益を活用する
過去に節税目的で加入した生命保険・損害保険がある場合、解約により解約返戻金が収入に計上されます。
これを赤字が見込まれる年度に解約することで、決算書を黒字化できます。
解約返戻金の額と時期は事前に保険会社に確認し、解約後は保障がなくなるため代替の保障も検討が必要です。
毎年の解約返戻率の推移を把握し、最適な解約のタイミングを税理士と相談してください。
【方法④】役員報酬を適切に設定する
役員報酬が極端に低いと、銀行から「黒字にするために無理に抑えているのでは?」と疑われることがあります。
経常利益が赤字でも、「経常利益+減価償却費+役員報酬」がプラスであれば実態黒字とみなされやすいです。
役員報酬は期首から3か月以内に決定し、定期同額給与として年間固定額にする必要があります。
不動産業の規模・利益水準に見合った適切な金額設定が、決算書の信頼性を高めます。
【方法⑤】決算月の変更を検討する
不動産賃貸業では、家賃収入は安定している一方、修繕費・固定資産税などの支出が特定の月に集中することがあります。
決算月を変更することで、支出の多い月を次の決算期に移し、今期の利益を改善できます。
決算月の変更には株主総会の特別決議による定款変更が必要です。
また、融資を受けたい時期の2〜3か月前に決算月を設定すると、最新の決算書を提出しやすくなります。
変更後の事業年度が12か月未満になる場合、消費税の課税期間等への影響にも注意してください。
よくある間違いと注意点
3期連続赤字はほぼ融資不可となります。
信用保証協会付き融資も原則ゼロ回答になるため、赤字が続く前に早めに対策を講じることが重要です。
一方で、コロナ禍・退職金支給など一過性の赤字は、金融機関に正直に説明すれば問題ないケースが多いです。
また、創業融資の場合は、対象となる決算期がない場合が多く、この時点で融資を受けられれば、実績に関係なく融資を受けられる可能性があります。
まとめ:融資のために今すぐできる決算対策5つ
銀行融資を通すために決算書を黒字化する5つの方法をまとめます。
- 減価償却費の計上を固定資産ごとに調整する
- 一時的な費用は特別損失に計上して経常利益を守る
- 節税保険の解約タイミングを赤字見込みの年度に合わせる
- 役員報酬は実態に合った適切な金額を設定する
- 決算月の変更で利益の出やすい期間を作る
いずれも合法的な会計処理の選択であり、脱税ではありません。
- 赤字決算でも銀行融資を受けられますか?
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一過性の赤字(コロナ禍・退職金・設備投資の特別償却など)は、金融機関に説明することで融資審査に大きな問題が生じないケースも多いです。
ただし2期連続赤字から追加担保条項が発動するリスクがあり、3期連続赤字では原則融資困難となります。
なお、日本政策金融公庫は民間銀行より審査が柔軟です。
- 減価償却費を計上しないと税務上問題はありますか?
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法人の場合、減価償却費は計上するかどうかを選択できます(税法上の「任意償却」)。計上しなくても税務上の問題はありません。
翌期以降に繰り越して計上することはできないため、長期的な税負担を考慮した上で判断することが重要です。
- 不動産賃貸業の債務償還年数の目安は?
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一般的に、不動産賃貸業では債務償還年数20年以内が融資審査の目安です。
計算式は「有利子負債÷(税引後利益+減価償却費)」です。
この数値が高いほど融資審査で不利になるため、計画的な借入管理が必要です。
- 決算月の変更はどのように手続きすればよいですか?
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決算月の変更には、株主総会での特別決議による定款変更が必要です。
変更後、税務署・都道府県・市区町村への異動届出書の提出も必要です。
変更後の事業年度が12か月未満になる場合、消費税の課税期間や各種特例の適用に注意が必要です。
税理士に相談の上、手続きを進めることをおすすめします。
- 融資対策で税理士に相談するメリットは何ですか?
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税理士は決算書の信頼性を高めるプロです。
不動産業専門の税理士であれば、減価償却・特別損失・修繕費区分など不動産特有の会計処理に精通しており、融資のための資料作成・数値調整・面談対策までサポートできます。


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