この記事の概要 重要度
  • 不動産売買の仲介手数料の売上計上時期は原則売買契約が締結された日、継続適用を前提に契約に係る取引が完了した日です。
  • 不動産売買の仲介手数料の売上計上日基準を変更するためには合理的な理由が必要になります。
  • 節税を考えるなら不動産仲介業者の決算時期は3月末以外が良いです。




最近不動産売買の仲介会社の方から「売上の計上日基準を変えれば翌期に売上高を繰延べられますか?」と質問を受けました。結構よくある質問なので、記事にしておきます。

不動産売買の仲介手数料の計上時期について

恐らく質問者さんは期末に多額の利益が計上されるためになんとか節税できないかと調べたところ、以下の内容を見つけたのでしょう。

土地、建物等の売買、交換又は賃貸借(以下2-1-11において「売買等」という。)の仲介又はあっせんをしたことにより受ける報酬の額は、原則としてその売買等に係る契約の効力が発生した日の属する事業年度の益金の額に算入する。ただし、法人が、売買又は交換の仲介又はあっせんをしたことにより受ける報酬の額について、継続して当該契約に係る取引の完了した日(同日前に実際に収受した金額があるときは、当該金額についてはその収受した日)の属する事業年度の益金の額に算入しているときは、これを認める

簡単に言うと、不動産売買を仲介した場合の仲介手数料は、
原則⇒売買契約が締結された時に売上計上
例外(継続適用を前提)⇒不動産(鍵)の引渡し日(通常は決済日になります)に売上計上
ということになります。

不動産売買取引は3月末に多い

会社の決算日が3月末に集中している影響で、利益調整や損失回避のため、不動産売買取引を3月末までに行いたい会社は多いです。

そのため、3月末をあなたの会社の決算期にしておくと、契約日が3月下旬で不動産の引き渡しが4月上旬のようなちょうど決算期を跨ぐ取引が発生したりします

また、不動産の売買取引の仲介手数料は値引きしなければ、片手で3%程度、両手で6%程度なので、金額が大きければ大きいほど期末間際で多額の仲介手数料としての売上高を計上することになります。

売上計上日基準を変更するには理由がいる

不動産仲介料の売上計上基準は税務上非常に論点になるところです。

計上基準を簡単に変更できれば、それは利益調整につながる可能性が高く税務署も厳しくチェックしています。

だから、上記の税法基本通達2-1-11でも、一度決めた売上計上基準を継続することを求めています

もし、あなたの会社が設立第1期目だとしたら、法人税の申告書を税務署に提出していないはずです。その場合には、まだ売上の計上基準を誰にも公表していないので、2期目以降も継続することを前提に不動産(鍵)の引渡し日(=決済日)をもって仲介手数料の売上高を計上することも可能でしょう。

しかし、あなたの会社が設立2期目以降で前年度までの売上計上基準と今年度の売上計上基準を変えることは税務上リスクが非常に高くなります

前年度までは、原則通り、売買契約が締結された時に不動産仲介料の売上計上をしていたのに、今年度から不動産(鍵)の引き渡し日に不動産仲介料の売上計上をし始めた場合、売上計上基準の変更になるので、「変更する合理的な理由(根拠)」が必要になります。

もし、万が一税務調査が来て、あなたが「売上計上基準の変更は3月末契約、4月引渡しの不動産仲介料(=売上高)を4月以降に計上したかったためです。」と答えたら、変更するための合理的な理由とならず、間違いなく追徴課税される原因になるでしょう。

では、合理的な理由(根拠)とはなにかというと、現状採用している売上計上基準より変更した方がより取引の実態を反映できる理由です。

例えば、ローン特約条項があり、不動産仲介業者が発行する「支払承諾書」あるいは「不動産取引承諾書」等の中で仲介手数料はローン特約が適用されたとき(=不動産売買取引が破談した時)に全額返金すると毎回謳われている場合は、不動産の引き渡し日(決済日)に売上計上する方が実態にあっているので、契約締結日基準から引渡し日基準に売上計上基準を変更しても問題ないと考えられます(私がふと考え付いた事例なので保証はできませんが…)。

不動産仲介料の売上計上基準の変更はどうしても売上高を翌期に遅らせるための節税手法という印象を税務調査官に与えがちですし、合理的な理由を考えるのもかなり難しいかなと思います。

ただ、禁止されているわけではないので、どうしても節税したいというのなら、取引先や自社の状況に合わせて売上高計上基準の変更の合理的な理由を考えてみても良いでしょう。

不動産仲介を行う会社の決算期は3月末以外が良い

不動産売買取引は3月末に多いということは前述の通りですが、もしこだわりがなければ、決算期変更をして、不動産仲介を行う会社の決算期を3月末以外にした方が良いでしょう。

理由は節税目的ですが、2つあります。

  • 「期末間際」の仲介手数料の売上高でなければ、節税対策(保険加入や決算賞与など)をとれる可能性が高い
  • 3月末決算でなければ、取引先と交渉し契約日をずらしてもらえれば、そもそも売上計上基準に関係なく翌期の売上に計上できる可能性がある
  • 1つ目の理由ですが、節税対策を行うには、期末日が終わる前までに準備が必要になります。節税対策のための手段があっても、それを実行できる時間がなければ節税対策はとれません

    もし、3月末に不動産売買取引に係る仲介手数料が売上高に計上されても、例えば、4月末決算なら1か月以上の猶予があるので、節税対策としての手段を講じることができます

    2つ目の理由ですが、取引先が会社ならば決算の締め日である、3月末や9月末(上場企業の場合は3月末、6月末、9月末、12月末)までに不動産売買取引を行いたいはずです。

    逆を言うと、それ以外の月であれば、月末でも月初でも契約日付がズレても事前に交渉さえしていればさほど問題ない場合もあります

    例えば、あなたの会社の決算日が7月末で、7月31日に契約を行う予定でしたが、取引先と交渉して8月1日に契約をしてもらうことにすれば、売上計上基準は契約書基準でも翌期の売上高に堂々と計上できることになります

    相手先があることなので、毎回できる方法ではないですが、事前に交渉しておけばすんなりOKしてくれる取引先も多々あります。なにより税務基準に違反しているわけでないので、税務リスクがなく、堂々と売上計上できるので、後々の追徴課税の心配をしなくて済みます。

    上記2つの節税メリットがあるため、決算期変更を勧めていますが、決算期変更自体は意外に簡単にできます

    貴社の過去の経験から一番不動産売買の仲介実績が少ない月を決算期に変更すれば、節税対策に繋がる可能性は大きいです。

    なお、7月決算や8月決算にしてもらえば、税理士さんも閑散期なので、繁忙期に比べてよりきちんと貴社に向き合える可能性が高くなりますので、その意味でもお勧めします