利害関係者との関係で会社の決算を黒字化したい場合の方法!
この記事のポイント
  1. 翌期以降に不動産購入を考えており、銀行融資との関係で当期は黒字で終わりたい会社
  2. 事務所移転を考えていて、新しい大家への印象を悪くしたくないため黒字化したい会社
  3. 株主等のその他利害関係者との絡みで、赤字を出したくない会社

くま君くま君

おさる先生!
このままだと、当期は赤字見込みなのだけど、翌期に銀行から融資を受けたいので、どうにかして黒字で終われる方法はないかな?


おさる先生おさる先生

今期は不動産を購入していたよね?
登録免許税とかの会計処理はどうしてたっけ?


くま君くま君

ちょっと待ってね。
調べてみる………
損金(経費)に計上しているね。


おさる先生おさる先生

それなら、登録免許税部分を固定資産計上に振り替えようか。
不動産売買時の資料だと、建物の固定資産税評価額が1,500万円だから、大体60万円ぐらいの損金(経費)を減らせるかな。


くま君くま君

うん、これでぎりぎり黒字になったよ。
でも、登録免許税を固定資産に振り替えるといつ損金(経費)になるの?


おさる先生おさる先生

建物の取得価額は減価償却の対象になるので、毎年一定額ずつ損金(経費)に振り替えられるよ。
だから、翌期以降の損金(経費)がちょっと増えてしまうことにはなるね。


くま君くま君

そうなんだね。
ありがとう!

損金を減らし、黒字化する対策が必要になる

翌期に銀行融資を考えている場合等、利害関係者との絡みで、当期は絶対に黒字化しないといけないことがあります。

ただし、会社の経営を続けている限り、思いがけない事情で支出が多くなり、そのままでは赤字になってしまうこともあります。

特に、新規事業開始時などは、通常通りに会計処理すると、黒字化を目指すことが非常に難しいことも多いです

よって、新規事業開始時の事業年度などを黒字化するためには、損金(経費)を減らす対策をとらなくてはなりません。

つまり、売上高を増やすことには限界があるので、損金(経費)を減らして、黒字化する対策が必要になります。

固定資産に計上して損金を減らせる場合がある

ここで着目したいのが、会社の場合、通常は損金(経費)として落としているものですが、固定資産に計上し、減価償却を通して損金経理処理できるものがあるということです。

不動産購入時に、損金(経費)として普通は処理されてしまう、「建物」の登録免許税・不動産取得税・司法書士報酬は固定資産計上し、減価償却を通して損金経理処理することができます

あくまで、法人税法上は「経費にできる」(法人税法基本通達 7-3-3の2)といっているだけなので、原則論に戻って、固定資産計上しても全く問題ないということです。

なお、参考までに個人事業主の場合ですが、登録免許税などの経理処理は必要経費算入が強制されていますので、ご注意ください。

注意点としては、会社の場合、「土地」に関する登録免許税等も固定資産計上できるのですが、こちらは減価償却できない(売却するときまで固定資産計上されたまま)ということです。

「建物」の場合と異なり、売却により損金計上されるまで長い時間がかかることが多くなるので注意してください。

ただし、土地に関する登録免許税等を固定資産計上した場合は、土地の取得価額がその分大きくなるので、売却の時に利益が出にくくなり、それはそれで良い時もあります。

領収書を外して損金を減らさないといけない場合もある

どんなに調整しても、当期の決算が赤字になってしまう場合の最終手段が、本来損金計上できる領収書を外すことです。

損金が減ると翌期以降の繰越欠損金が減るため、実質的には、増税となりますが、当期の黒字化が必須ならば仕方ありません。

税務署的にも、多く税金を納めてもらえる調整なので、問題ないでしょうし、なりより領収書を外して損金を減らしても誰にも分かりません

ただし、1点だけ注意点を挙げると、必ず、現金で支払っている領収書を外してください

クレジットや銀行引き落としの領収書を外すと、後で帳簿上の銀行残高と実際の通帳の銀行残高が合わなくなり、大騒ぎになります

通常の経理処理に惑わされないで

今回書いたスキームは、通常の経理処理と逆になります。

どんな会社でも、固定資産と損金経理の両方を選べるものは、損金経理にしたいですし、領収書は一枚でも無駄にせず、きちんと損金計上したいと考えています。

しかし、利害関係者のために黒字化するには、通常の経理処理とは逆の処理をしなければならないこともあります。

特に中小企業では、状況により、異なる経理処理が必要になる場合もありますので、通常の経理処理に惑わされないように注意しましょう。