小規模宅地等の特例の代表例である特定事業用宅地等の概要について!

小規模宅地等の特例(相続時の敷地評価額の減額特例)でもっとも有名なのが、居住用の宅地に対するものです(特定居住用宅地等といいます)。

しかし、必ずしも居住用でなくても、言い換えると、事業用宅地に対しても小規模宅地等の特例は適用できます

今回は、事業用宅地に適用できる小規模宅地等の特例の代表例である特定事業用宅地等の概要についてみていきましょう。

小規模宅地等の特例の適用対象になる事業用の宅地のパターンについて

小規模宅地の特例の対象となる事業用の宅地は以下の3パターンがあります。

  1. 貸付事業用宅地等(貸付事業用 ※1)
  2. 特定事業用宅地等(一般事業用 ※2)
  3. 特定同族会社事業用宅地等(同族会社への貸付事業用

※1 例)建物などの賃貸事業(事業的規模でない場合も含む)、駐車場業、自転車駐車場業

※2 逆に貸付事業用に含まれなければ、基本的に一般事業用と考えて良いです。

事業用の宅地の減額割合について

それぞれの事業用の宅地の小規模宅地等の特例の減額割合は以下のようになります。

区分
限度面積
減額割合
貸付事業用宅地等
200㎡
50%
特定事業用宅地等
400㎡
80%
特定同族会社事業用宅地等
400㎡
80%

特定事業用宅地等の立法趣旨

特定事業用宅地等の立法趣旨は、「個人」の家業としての事業の承継を相続税の面から保護することです。

例えば、親の個人事業を子が相続によって承継することが典型例になります。

特定事業用宅地等として想定されるパターン

特定事業用宅地として想定されるパターンは次の2通りです。

  1. 被相続人の事業を相続によって承継する場合
  2. 同一生計の後継者が生前に事業を承継する場合

被相続人の事業を相続によって承継する場合

被相続人の事業を相続によって承継する場合、小規模宅地等の特例を適用するためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 親族 ※1が相続開始時から相続税の申告期限までの間に宅地等の上で営まれている被相続人の事業を引き継ぐ
  2. 申告期限まで引き続き宅地等を保有する
  3. 申告期限まで引き続き承継した事業を営んでいる
  4. 新規事業を始めてから3年以内の相続でないこと ※2

※1 小規模宅地特例で事業を引き継ぐのは親族であれば良く、相続人である必要はありません
例えば、兄の死亡によって相続人でない弟が事業を引き継ぎ、遺贈によってその事業用の宅地を取得した場合でも小規模宅地の特例を受けることができます。

※2 ただし、新規事業に利用する宅地の評価額の15%以上の建物や構築物などの減価償却資産を保有していれば、3年以内の相続でも小規模宅地等の特例を適用できます

同一生計の後継者が生前に事業を承継する場合

以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 被相続人と生計を一にしていた親族が相続開始時から相続税の申告期限まで引き続き宅地等を有していること
  2. 相続開始前から申告期限まで引き続き宅地等を事業の用に供していること
  3. 新規事業を始めてから3年以内の相続でないこと ※1

※1 ただし、新規事業に利用する宅地の評価額の15%以上の建物や構築物などの減価償却資産を保有していれば、3年以内の相続でも小規模宅地等の特例を適用できます

同一生計の後継者が生前に事業を承継する場合の例としては、以下の2つが考えられます。

  1. 父親が生前に自らの宅地等の上で営んでいた事業を息子に引き継ぎ、その後も親子で同居している場合
  2. 同居の息子が父親の不動産を無償で借りて事業を始め、その後も親子で同居している場合

但し、上記例の息子が生計を別にする子である場合は、特定事業用宅地等には該当しないので小規模宅地等の特例は受けられません。