- 会社の不動産賃貸料の法人税法上の収益認識時期を知りたい人
- 会社の不動産賃貸料の消費税法上の認識時期を知りたい人
- 賃借人から事前に長期間の家賃を受け取っている(前受している)会社の経理処理を知りたい人
- 賃借人が長期の家賃滞納をしている場合の会社の経理処理方法(賃貸人側)を知りたい人
法人税の家賃の収益認識時期について
賃貸人である会社が受け取る家賃の法人税の収益認識時期は以下のように定められています。
- 前受金を除き不動産賃貸借契約で定められた家賃受取日
- 家賃に関しての争い(家賃の増減額の争いを除く)があった場合は判決や和解等があった日
よって、基本的には、家賃に関する紛争(家賃の増減額の争いを除く)がある場合を除いて、前受金を除き、不動産賃貸借契約で定められた家賃受取日が法人税法上の家賃の収益認識時期になります。
ところで、賃貸人である会社が受け取る家賃ですが、不動産賃貸借契約書上では翌月分を当月末払いとして定めているのが一般的です。
例えば、4月分の家賃は、3月末日に賃借人から入金があった時点(場合によっては、4月初旬に入金があった時点)で、前受金計上が必要になります。
【当月末に受け取った翌月分の賃貸料の仕訳(3月末日)】
借方
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金額
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貸方
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金額
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---|---|---|---|
普通預金
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20万円
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前受金
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20万円
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そして、翌月末に前受金から振り替えて売上高を計上することになります。
【翌月末の賃貸料の仕訳(4月末日)】
借方
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金額
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貸方
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金額
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---|---|---|---|
前受金
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20万円
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売上高
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20万円
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家賃の滞納がある場合の賃貸人(会社)の経理処理
通常の不動産賃貸借契約に基づく経理処理は、以下のサイクルが不動産賃貸借契約が終了するまで続くことになります。
- 家賃の前受処理
- 前受金の売上高への振替処理
しかし、賃借人の家賃滞納がある場合は、イレギュラーな経理処理サイクルになり、場合によっては、売上高の計上を漏らしてしまうリスクがあるため注意しましょう。
つまり、①そもそも家賃滞納のため、家賃の前受処理がなされず、②結果的に、前受金の売上高への振替処理も行われない場合があるということです。
賃貸料(家賃)の仕訳に関しては、月次のルーティーン業務になっていることが多く、処理が単調なため、経理初心者が第一次仕訳を行っていることが多々あります。
さらに、AI化が進んでいる会社では、通帳の入出金データを会計ソフト(弥生会計やFreeeなど)と自動連携させて、仕訳を作成しているところもあります。
この場合、経理初心者やAIの自動仕訳では、通帳に記載されていない仕訳を行うことはできませんので、家賃滞納があると何も仕訳がなされないことになります。
法人税の収益認識時期は、前受金を除き不動産賃貸借契約で定められた家賃受取日になります。
つまり、賃借人の家賃滞納があった場合、すでに経過した月分の家賃を賃貸料として受け取っていなくても売上高に計上しなければなりません。
経理初心者やAIの自動仕訳任せにしていると結構な可能性で売上高の計上漏れを起こしているので、最後(期末日)に必ず以下の調整仕訳を計上すべきか経理責任者が検討してください。
【家賃滞納者がいる場合に期末日に行う調整仕訳】
借方
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金額
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貸方
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金額
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---|---|---|---|
未収入金
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30万円※
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売上高
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30万円※
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※ 期末日までに経過している月数に対する滞納額
長期間の家賃を前受した場合の会社の経理処理
例えば、3月末決算の会社で、12月末の支払日に翌月分の1月分から1年間分の家賃を前受した場合、法人税法上どう処理したらよいでしょうか。
仕訳は以下の通りです。
【事前に長期間の家賃を受け取った時の仕訳(12月末)】
借方
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金額
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貸方
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金額
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---|---|---|---|
普通預金
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240万円
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前受金
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240万円
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【各月末(1月末〜3月末)に行う仕訳】
各月末に前受金を取崩して売上高に振り替える仕訳を行います。
借方
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金額
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貸方
|
金額
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---|---|---|---|
前受金
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20万円
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売上高
|
20万円
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なお、きちんと仕訳ができれば、前受金から売上高へ3ヶ月分(1月〜3月分)の賃貸料(家賃)が振り替えられ、売上高が60万円になり、毎月賃貸料(家賃)を収受していた時と同じ金額になります。
賃貸料(家賃)に係る消費税について
まず、賃貸料(家賃)に係る消費税は、土地、借地権、居住用の建物の賃貸借では、非課税であることを覚えておいてください。
よって、以下の議論は、事業用の建物の賃貸借の場合の賃貸料(家賃)に絞られます。
事業用の建物の賃貸借の場合、賃貸料(家賃)に係る消費税の適用は、賃貸借期間で判断されることになります。
事例で確認した方が早いので、次の2つの事例を確認してください。
- 3月末決算の会社で1月分(1月1日〜1月31日)の賃貸料(家賃)の受け取りを賃貸借契約書では12月31日までに行うことになっている場合、消費税の認識時点はいつでしょうか?
- 1月31日に賃貸料を前受金から売上高に振り替える時に消費税を認識します。
12月末(賃借人の支払遅延によっては、1月初旬頃)に前受金を計上した時は消費税を認識しません。 - 3月末決算の会社で4月分(4月1日〜4月30日)の賃貸料の受け取りを賃貸借契約書では3月31日までに行うことになっている場合、消費税の認識時点はいつでしょうか?
- 4月30日に賃貸料を前受金から売上高に振り替える時に消費税を認識します。
3月末(賃借人の支払遅延によっては、4月初旬頃)に前受金を計上した時は消費税を認識しません。
上記の事例から分かることが2つあります。
まず1つ目は、実務上は、前受金を売上高に振り替える時に消費税を認識するということです。
つまり、期末日前に受け取った翌期の賃貸料の前受金は当期の消費税の認識に含まないことになります。
2つ目は、前受金を売上高に振り替える仕訳を会計ソフト(弥生会計やFreee)で行えば、結局法人税にも消費税にも対応できているということです。
つまり、前受金を売上高に振り替える仕訳は前述の通り(以下に再度掲載します)なのですが、会計ソフトでは、売上高という勘定科目に法人税の益金設定がされていると共に、消費税の課税売上設定がされていますので、仕訳ができれば法人税の収益認識時期も消費税の認識時期もクリアされているということです。
【(既出)前受金を売上高に振り替える仕訳】
借方
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金額
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貸方
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金額
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---|---|---|---|
前受金
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20万円
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売上高
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20万円
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よって、きちんと毎月家賃の前受処理と前受金の売上高への取崩し処理を行っていれば、消費税も問題ないことになります。
なお、賃借人の家賃滞納がある場合も、期末に前述の仕訳(以下に再度掲載します)を行っていれば、売上高が計上されるため、消費税も問題ないことになります(逆に、以下の追加仕訳をしていないと法人税と消費税の計上漏れというダブルパンチを受けることになります)。
【(既出)家賃滞納者がいる場合に期末日に行う調整仕訳】
借方
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金額
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貸方
|
金額
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---|---|---|---|
未収入金
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30万円
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売上高
|
30万円
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簡単に言えば、原則通りにきちんと仕訳を行っていれば、日常の消費税の認識についてはクリアされているということです。
ただし、消費税率の改定があった時に税率の変更のタイミングを理解する上で、賃貸料(家賃)に係る消費税の適用は、賃貸借期間で判断されるという情報が非常に必要になりますので覚えておきましょう。
つまり、4月1日から消費税率が変更されたならば、4月1日〜4月30日までの家賃を前受金から売上高に振り替える4月末の売上高から消費税率の変更を行うことになります(3月末の前受時は消費税の変更は考慮しなくて良い)。